こんにちは。理系就活情報局です。
農学部は、農業や畜産といった生産技術だけでなく、環境と生態系の保全、食品の製造や加工、バイオテクノロジーといった幅広い知識が学べる学部です。
エコロジーや食の安全性への意識が高まっている現代社会において、農学部出身者が活躍できるフィールドは広がりを見せています。
本記事では、時代の変化を受けて広がりを見せる「農学部の就職先」について取り上げます。
「就活シーズンが近づいてきたけれど、色んな選択肢があって困っている」
「農学部の専門性が活かせる就職先って、実はもっとあるのかも……」
という理系就活生の方は、ぜひ読んでみてください!
農学部=農業というイメージはもう古い?

2020年4月に農学部を新設した摂南大学が実施した「農学部に関するイメージ調査」によると、農学部出身者の73%が「世間が持つ農学部に対するイメージは実態とズレている」と感じているという結果が出ています。
農学部出身者がどういった点にズレを感じているかという質問では、①「時代遅れ」②「将来役立つ力を養えない」③「就職に困りそう」の3点が多くを占めています。
この結果からは、「農学部で学べるのは時代の変化に適応した社会に役立つ学問」であり、「農学部出身者は就職先に困っていない」という実態が分かります。
農学部卒が活躍できるフィールドは着実に増えている
農学部の分野は、以下の6つに大別できます。
・農作物を作る技術を研究する「農学」
・資源としての家畜や動物を研究する「畜産学・獣医学」
・化学や生物学を農業技術に取り入れる「農芸化学」
・農業の生産環境について研究する「農業工学」
・農作物の生産から消費まで見渡す「農業経済学」
・森林資源の利用と保全を目指す「森林科学」
この一覧を見ただけでも、専門領域の広さと将来の選択肢が豊富なことが窺えます。
農学部出身者が答えた「卒業後の進路先」の集計を見ると、製造業や農業・水産業が多くを占めます。同時に、官庁から不動産業、コンサルティング業、金融業まで、農学部出身者の進路はさまざまであることが分かります。
この調査結果から見て取れるように、農学部で得られるスキルは幅広いフィールドで活用できるのです。
SDGsという時代の風も農学部の活躍を後押し
農学部は、現代社会が抱える課題に幅広い観点から取り組む学部です。
2015年の国連サミットで「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されて以降、2030年までに持続可能な社会を実現する取り組みが世界的に活発化しています。
(参考:外務省「JAPAN SDGs Action Platform」)
安全な食品やより良い地球環境保全への意識が高まりを見せる時代の流れも、農学部の活躍を後押ししています。
SDGsで掲げられた「食料飢餓を解決するための持続可能な農業の実現」や「自然環境の保持」は、農学部で学べる領域と密接な目標です。
このような背景からも、社会における農学部卒のニーズが高まっていることが分かります。
農学部卒の女子が目指せる就職先もある
農学部卒の女子にはどんな就職先があるのか気になる方も多いですが、専門性を活かして幅広い仕事に就けます。人気があるのは、医薬・医療品関連企業・食品関連企業・化粧品メーカーなどです。農学部で学んだバイオテクノロジーなどの知識を活かせる業界では、就活も有利に進められます。
農学部で理系就活生が身につけられるスキル

最初に、農学部に対する世間のイメージと実態について解説しました。
農学部が多様なフィールドで活躍できる可能性を持っていることを理解したところで、次は「農学部で理系就活生が身につけられるスキル」について解説していきます。
食・健康・環境に関する知識
農学部は、人が生活する上で欠かせない「食」「健康」「環境」についてさまざまな方向からアプローチする学問です。
たとえば、「食」について学ぶ時、「農学」では日々の食事となる作物を育てる技術向上に取り組み、「農業経済学」では経済学の観点から生産や消費の流れを把握します。
農作物の生産だけでなく、安全性や経済、技術向上といったさまざまな視点から「農業にまつわる社会問題」に取り組むため、農学部では「食」「健康」「環境」の知識を包括的に身につけられます。
バイオサイエンスの知識
現代社会が抱えている「食」「健康」「環境」の課題に取り組む手段の一つに、遺伝子の働きが挙げられます。
生命の設計図である遺伝子の力を引き出して社会が抱える問題の解決を目指すバイオサイエンス(生命科学)は、食や健康、医学や環境などの分野に貢献する学問です。
幅広い分野で活かせる汎用性とニーズがある分野のため、バイオサイエンスの知識があれば、食品や化粧品などの製造業や製薬業、食品サービス業、卸売業などの業界で活躍できます。
(参考:東京農業大学生命科学部 バイオサイエンス学科「卒業生進路状況」)
農業土木や測量の知識
農学部では、農用地の生産向上と労働力の削減化を量るために、農業に関する土木の知識を学びます。
農業土木では、土や水を農業に利用する技術や土地の改良、農地の集約化に取り組みます。
農業土木や測量の知識があれば、農学部から建設業界に就職することも可能です。
土木系のゼネコンや建設コンサルティングの中には、農村整備や用水路の整備や設計に取り組んでいる会社もあります。
農学部から建設業界を目指す場合は、測量士補や土木施工管理技士の資格を取得しておくことをオススメします。
農学部におすすめの職種

ここからは、農学部におすすめの職種を解説します。
製造技術職
ものを作るのが好きな人は、製造技術職が向いています。農学部は食品や医療など幅広い知識を学ぶため、農業系以外の製造技術職に就くことが可能です。自身の能力が応募条件に合っていれば、業界を問わずエントリーしてみると良いでしょう。
研究職
農学部で学んだ知識や経験を活かして、研究職に就くことも可能です。企業における研究職の目的は、自社製品の開発に役立つ研究が中心になります。自分が関わった研究が製品やサービスに生かされる喜びを感じられる、やりがいのある職種です。
品質管理職
品質管理職は、消費者に安全な商品を届けるために、品質管理を行うポジションです。具体的な業務は、製品の検査・分析や製造環境の調査・改善、製造スタッフの衛生面に関する指導などが中心です。食品や食品の成分などに興味がある農学部生なら、幅広い企業の選択肢があるでしょう。
飼育員
動物園や水族館などで活躍する、飼育員も農学部生におすすめの職種です。幅広い動物はもちろん、農学部で学んだ牛や豚などの飼育に携わる道もあります。動物や水族館のほか、ペットショップや動物ショーなどさまざま飼育員の仕事があるため、志望先の業務内容を事前に深く調べておきましょう。
育種家
育種家は種苗メーカーにおいて、育種の技術を活用し品種を開発をする職種です。開発業務を中心に農場などを訪問して育成状態の調査や研究を行うこともあり、植物や食品関連の研究を行っている農学部生には非常に向いている仕事です。
グリーンコーディネーター
グリーンコーディネーターは植物の知識を生かし、植物を使用した空間演出を行う職種です。イベントや店舗などに対して季節や目的に応じた演出を行う仕事で、植物に関する知識や経験を積んできた農学部生におすすめです。
農学部に人気の就職先

農学部で身につくスキルについて確認しました。
次は、農学部の理系就活生に人気の就職先について紹介します。
食品メーカー
農作物の生産から加工技術まで「食」について学ぶため、専門性が活かせる食品業界が人気です。
新たな商品開発を行う研究職・食品製造技術職・食品の安全性を守る品質管理など、食品メーカーには農学部の理系就活生が活躍できる場があります。
人が生きていく上で必要な食品を扱うため、食品業界は景気に左右されにくく安定性が高いことも人気の理由です。
製薬・化粧品会社
バイオサイエンスや応用生物科学を専門とする農学部の理系就活生には、製薬会社や化粧品会社の研究職がオススメです。
製薬会社では、新薬の研究開発のほかに、医療機関を訪問して医師に自社製品の効能や使用法などを伝えるMRとして働く道もあります。
農家・農業協同組合
一次産業である農家で、直接農業や畜産業に携わる道も人気です。
農学部で学んだことを活かせる現場で、生産管理から販売まで幅広く携わることで、経験を積めます。
本格的に農業に携わりたい理系就活生の方は、個人や家族で営んでいる小規模農家だけでなく、会社のように組織化して農業を営む大規模ファームも検討してみましょう。
大規模ファームの仕事は、系統が立てられた上で割り振られています。
本格的に農作業に携われるだけでなく、ゆくゆくは農家として独立するためのノウハウを学ぶ場としてもオススメです。
農業に携わるという点では、農業協同組合に就職する道もあります。
農業協同組合では、直接農作業に従事するというよりも、農家への技術指導や支援を行う形で農業に関わります。
農薬・肥料メーカー
農業で使う化学薬品・農薬や肥料を開発するメーカーでも、農学部で学んだ「農芸化学」や「資源生物科学」の知識を活用できます。
肥料の開発や農薬の改良をする研究職のほかに、農業協同組合や園芸店に商品を売り込む営業職で就職する道もあります。
種苗メーカー
農学部のスキルが活かせる仕事に、種苗メーカーで働く技術職「育種」があります。
野菜や穀物の種子を研究し、バイオテクノロジーでさまざまな育種を交配することで新しい品種を開発する仕事です。
品種改良した後は、協力農家で試験栽培や生育状況の調査も行います。
種苗メーカーでは、種を製造する生産部門・小売店などに品種を提案する開発部門・発芽から成苗検査までチェックする品質管理部門などで、農学部卒の人員が活躍しています。
農学部におすすめの就職先ランキング

農学部におすすめの就職先を、ランキング形式でご紹介します。
農学部に就職先人気の高い食品メーカー
農学部生に最も人気があるのは、食品メーカーへの就職です。食品メーカーへの就職が人気である理由は、「安定企業が多い」「農学部で学んだ知識が活かせる」点にあります。食品系の研究などをしていた農学部生であれば、就活を有利に進められます。
農学部が就職で高収入を狙える薬品・製薬業界
高収入を狙える環境があることから、薬品・製薬企業への就職も人気があります。農学部在籍中に学んだバイオサイエンスの知識なども活かせるため、研究や開発に興味があれば視野にいれておきたい業界です。
農学部の経験が活かせる農業系企業
農業系企業への就職は農学部で学んだ知識や経験を存分に活かせるため、安定した人気があります。食品需給が不安定な昨今においては注目度も高く、今後も発展が期待される業界のひとつです。農業に携わる企業のほか、製品開発など農業支援を行う企業も比較的人気の高い傾向にあります。
意外な選択肢?農業以外でオススメの職種

最後に、「農業以外で農学部にオススメの職種」を紹介します。
自分の専門性やキャリアビジョンを考慮しながら、志望する職種を検討してみてください!
農学部が就職可能な公務員
農学部卒の理系就活生には、農林水産省や環境庁などの公務員として日本の農業をサポートする道もあります。
農学部の理系就活生が目指せる「農林水産省の農業工学系技術職員」には、以下の試験区分があります。
・食品の安全対策や農業用施設やダムなどの農業水利施設の保全対策を行う「農業技術系」
・農村振興局や地方農政局等で地域づくりに携わる「農業工学系」
・農業土木や農村整備を通じて地域振興を担う「農村振興技術系」
・林野庁を中心に自然環境保全に携わる「林学系」
・植物防疫官として病害虫の防止や被害拡大に努める「植物防疫系」
(参考:農林水産省「一般職(技術系)採用案内」)
直接農産業に関わる仕事も魅力ですが、公務員になると業界全体の支援や改善に繋がる仕事を担当できます。
観葉植物のリース業
農学部の理系就活生は、観葉植物のリース業でも活躍できます。
オフィスやモデルルーム、結婚式場などに観葉植物をレンタルするリース業を営む会社には、グリーンコーディネーターや貸出先である取引先を訪問して植物の世話や剪定(せんてい)を行うメンテナンススタッフが所属。
植物を使用した空間演出や企画の提案には、デザインセンスだけでなく専門的な知識と技術が求められます。
植物が好きな人や、農学部で培った園芸スキルや肥料への知識を活かしたい人に向いている仕事です。
農学部だからといって就職できない企業・職種はない
農学部だからといって、やめておいた方が良い就職先はありません。専門性を活かせない職種であっても自分が興味があるのもであれば、チャレンジしましょう。
チャレンジして良いかどうかは、自己分析と企業分析を行うことで判断しやすいです。企業が求めている能力や条件を理解し、自身の特徴に合っているかを判断しましょう。
農学部生が納得のいく就職先を選ぶポイント
農学部生だから農学部で学んだ専門性が活かせる企業に絞りがちですが、興味を惹く進路が見つからなければ一旦農業系以外の進路をみてみることをおすすめします。意外と農学部で経験したことは、自身の特徴や強みとなっているものです。自己分析をしたうえで、自身が興味を惹かれる業界や進路を深堀してみると、新たな視点が生まれることもあります。
農学部生が就職活動前に準備すべきこと

ここでは農学部生が就職活動前に準備すべきことについて解説します。
農学部に進学した理由を明確にしておく
就活前になぜ農学部に進学したのか、昔の記憶を掘り起こしておくことをおすすめします。「なぜ農学系に興味を持ったのか」を理解すれば、自身の興味や楽しいと思うことを簡単に把握が可能です。また、就活面接で進学理由を聞かれたり、志望理由に活用できたりすることもあるなど、思わぬところで役に立ちます。
農学部で学んだ内容を就職先でどう活かすかイメージしておく
農学部で学んだ内容を就職先でどう活かすか、できるだけ具体的にイメージしておくことも大切です。自分がもっている能力を活かすイメージができるため、志望先企業を決めやすいメリットがあります。
また、志望理由や自己PR時に伝える、入社後の展望にも活用できるため、事前にイメージしておくと就活を有利に進められます。空き時間をみつけて、しっかりと将来のイメージをしておきましょう。
農学部生が就職活動を効率的に進める方法
ここからは、農学部生が就職活動を効率的に進める方法を解説します。
農学系の資格を取得しておく
就活開始前に農業系の資格を取得しておくと、就活を有利に進めることができます。特に農学系の知識や技術が活かせる進路であれば、資格取得によって他の就活生との差別化を図ることが可能です。就活を有利に進めることで、就活全体を効率的に進めることができるでしょう。
選考では論理的思考力・計算力など理系ならではのスキルをアピールする
農業学系の専門性が活かせない企業を志望する場合は、理系特有のスキルや特徴をアピールすることが良策です。農業系の職種でない場合は、文系を含め多様な就活生がエントリーしています。だからこそ、文系にはない理系寄りのスキルをアピールすることが大切です。研究などを通して培った論理的思考力や計算力があることを伝えるだけでも、自分の個性のアピールに繋げられるでしょう。
農学部の就職で有利になりやすい資格

最後に、農学部の就職で有利になりやすい資格を整理しておきます。
栄養士・管理栄養士
栄養士や管理栄養士は、もっていると有利になりやすい資格のひとつです。食品メーカーなど食品系の就職を志望する場合にも有利に働くうえ、資格をそのまま活かして栄養士や管理栄養士になる道もあります。就活を有利にしながら進路の選択肢を広げられる、取得メリットの大きい資格です。
食品衛生管理者
食品衛生管理者資格は、食品系の職種であればぜひ取得しておきたい資格です。資格取得には決められた講習の受講が必要で、製造業もしくは加工業において衛生管理業務を3年以上経験することが求められます。資格取得が非常に大変だからこそ、就職に対する志のアピールに繋がります。
測量士補
測量の仕事に携わるのであれば、測量士補資格の取得が必要です。知識があれば特に経験や学力は問われないため、比較的簡単に取得できる資格でもあります。授業の単位取得と同時に資格が受けられるケースもあるため、取得したい場合は在学中に問い合わせてみるのも良い方法です。
家畜人工授精師
家畜人工授精師とは、家畜の人工授精や受精卵移植に必要な資格です。特に、養豚場や酪農地などを志望する農学部生は取得しておきたい資格です。測量士補と同様、単位取得と同時に受けられるケースもあるため、事前に調べておくことをおすすめします。
これだけは知っておきたいポイント(まとめ)
この記事では、「【理系就活】SDGsで広がりを見せる農学部の就職先を知ろう!」について解説してきました。時代の変化を受けて、農学部の就職先が多様化していることを理解いただけたでしょうか。自己分析などの準備をしっかりと実施したうえで、適性や興味に合致した就職先を選定しましょう。