内定辞退にもマナーがあることをご存じですか。

就活の努力が実り、複数社からの内定を獲得したものの、入社できるのは一社のみ。他の内定は断らなければいけません。特に理工系学生は内定をもらいやすいので発生しがちな話題です。

この記事では、内定辞退についての悩みを抱える理系学生の皆さんに向けて、相手企業に失礼がない内定辞退の方法やタイミング、内定辞退を申し入れる際のビジネスマナーについて解説します。

理系就活で内定辞退の方法

まずは、内定辞退の基本的な方法と、申し入れる際の基本的なマナーについて理解しましょう。

内定辞退は電話とメールが基本

内定辞退の申し入れは、「採用担当者から内定の連絡を受けた方法」で行いましょう。

電話で内定通知をもらった場合は、一先ず電話で内定辞退の旨を伝えます。

電話での連絡は、先方企業の営業時間内にかけるのがビジネス上のマナーです。また、始業直後の30分や、昼休憩の時間も避けましょう。

通話終了後は、念のためメールも併せて送ることをおすすめします。電話のみで済ませると、「内定辞退を伝えた証拠」が残らないためです。

内定辞退はあなたと企業、双方にとって重要な選択ですから、メールのやり取りは残しておきましょう。

内定通知をメールでもらった場合は、メールのみでの申し入れで特に問題はありません。

企業への直接訪問や自筆の手紙は不要

ひと昔前は、内定辞退を電話やメールだけで済ませるのは失礼である、という考え方がありました。現在では、そのような企業はほとんど無いと言って良いでしょう。

内定辞退を伝えるために、企業へ訪問したり、自筆の手紙を書いたりする必要はありません。誠意のこもった電話、もしくはメールで意思を伝えれば十分です。

理系就活で内定辞退のタイミング

内定辞退のタイミングや、内定辞退を企業へ申し入れるまでの流れについて解説します。

内定を保留したい場合は期限を伝える

内定を承諾するか辞退するかに関わらず、内々定の連絡や内定通知を受け取ったら、指定された回答期限までに必ず一報を入れるようにしてください。期限が指定されていない場合でも、2、3日以内にこちらから連絡するのがマナーです。

一度連絡した上で、回答を保留したい場合は「何日まで待ってほしい」と具体的な期限を申し出ます。

なお、内定保留についてのノウハウは、別記事にて詳しく解説しています。

参考:第一志望の結果を待ちたい!内定保留のスマートな伝え方

内定辞退の報告はなるべく早めに

内定を辞退すると決めたら、なるべく早めに意思を伝えましょう。報告が遅くなるにつれ、企業や採用担当者への影響は大きくなります。

内定辞退を申し入れる最も適切なタイミングは、「内々定が出てから二週間以内」です。内々定はいわゆる口約束ですから、学生側、企業側双方から取り消すことが可能な段階です。

上記の期間であれば採用担当者の負担はほとんどないため、比較的スムーズに受け入れられる可能性が高いです。

法律上のリミットは「入社2週間前」まで

とはいえ、第一志望の企業の選考スピード次第では、内定辞退の決断をすぐに下せないケースもあるでしょう。では、いつまでであれば内定を辞退することができるのでしょうか。

法律では、入社2週間前までは内定を辞退しても問題ないとされています。内定承諾後の辞退は法律上「退職」にあたり、民法で以下のように定められています。

民法(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)627条1 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する。

ただし、上記はあくまで法律上の話です。

新卒採用のために、企業は莫大な費用と時間、労力を負担しています。採用担当者の負担を考えても、入社直前の内定辞退はおすすめできません。

よほどの事情ががない限り、「内々定の連絡を受けてから内定式まで」の期間が、内定辞退を許容される常識的なタイミングといえるでしょう。

内定承諾書へのサインについて

内定辞退に関して、「内定承諾書へサインした後でも、内定辞退できますか」と質問を受けることがあります。

結論から言えば、内定承諾書へのサイン後でも内定辞退は可能です。

内定承諾書へのサインは、企業との内定契約に合意した意思表示ですが、内定契約は合意後に取り消しても問題ないことになっています。企業からの引き止めはあっても、法的な拘束力はありません。

ただし、内定承諾書へサインした後の内定辞退は、企業側へ与える心象が良くありません。大学の推薦やリクルーター経由での内定だった場合、翌年以降の採用において、大学や後輩に迷惑がかかる可能性があります。

内定承諾書へのサインは、しっかりと考えてから慎重に行いましょう。

理系就活で内定辞退を伝える際のコツや注意点

実際に内定辞退を申し入れる場合のノウハウや、注意すべきポイントについて解説します。

お詫びの言葉は必ず伝える

内定辞退は就活生に認められた権利です。将来を考えての決断ですから悪いことではありませんが、採用する側の企業にとっては、多かれ少なかれ迷惑がかかることを理解しておきましょう。

内定辞退の理由に関わらず、申し入れの際は必ずお詫びの一言を沿えるようにしてください。

内定辞退の理由は伝えなくてもよい

ちなみに、内定辞退の理由はこちらから話す必要はありません。先方から理由を聞かれなかった場合や、メールで内定辞退を報告する場合、「一身上の都合」や「慎重に考えた結果」などとしておきましょう。

内定辞退を電話で伝える場合は、採用担当者から辞退の理由を聞かれる可能性が高いです。その場合は、正直に「他の企業の内定を受けることにした」と伝えます。

この時、「他社の方が条件が良かった」「御社の社風が合わなかった」など、ネガティブな理由は伝えない方が無難です。

辞退するとはいえ、あなたを見込んで内定通知をくれた企業です。最後まで敬意を払い、失礼のない対応を心がけましょう。

他社の社名を出す際には注意が必要

内定辞退を伝えた際、入社を決めた企業の社名について聞かれるケースがあります。

入社先が、同じ業界内のライバル企業や取引関係がある企業だった場合、思わぬ影響やトラブルを避けるため、直接の社名は出さない方が無難です。

ある程度、推測がつくような形で回答するのが良いでしょう。


一方で、他業界の会社や競合他社ではない企業に就職する場合には、誠意をもって選考していただいた対応として、社名を伝えてもかまいません。先方にも理解してもらえるよう、その会社を選んだ自身の気持ちを伝えるようにしてください。

一緒に働こう!と内定を出してくださった企業に対する、人としての礼儀と、一期一会の精神を大切にしましょう。

内定辞退の電話文例

上記でご紹介したコツを踏まえて、内定辞退を採用担当者に伝える際の会話例をご紹介します。

受付:お電話ありがとうございます。   
   □□□株式会社 総務部でございます。

学生:おはようございます。○○大学の○○と申します。   
   人事課の□□様はいらっしゃいますか。
   先日ご連絡いただいた内定の件についてご連絡いたしました。

受付:人事課の□□ですね。少々お待ちください。
   (保留中)
人事:お電話かわりました、人事課の□□です。

学生:おはようございます。○○大学の○○です。   
   ただいまお時間を少々いただいてもよろしいでしょうか。

人事:はい、かまいませんよ。

学生:先日は、内定のご連絡をいただきありがとうございました。
   折角の内定にも関わらず大変申し上げにくいのですが、
   この度御社からいただいた内定を辞退したいと考え、
   ご連絡させていただきました。

人事:そうですか。残念ですが承知しました。差し支えなければ、
   理由をお伺いしてもよろしいですか。

学生:はい。御社と並行して受けていた別の企業からも、
   内定をいただきました。私の適性などを考えた結果、
   そちらの企業とのご縁を感じた次第です。

人事:わかりました。そちらの会社でのご活躍をお祈りしています。

学生:ありがとうございます。
   貴重なお時間をいただいたにも関わらず、
   このような形となってしまい申し訳ございません。
   それでは失礼いたします。

内定辞退のメール文例

メールで内定辞退を申し入れる場合の文例です。

件名:内定辞退のご連絡(○○大学○○)

————————————————————
○○○株式会社
総務部 人事課 課長 □□ □□様(フルネーム)


お世話になっております。○○大学4年の○○ ○○(フルネーム)です。先日は内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。


折角いただいた光栄なお話にも関わらず大変恐縮ですが、この度貴社の内定を辞退させていただきたく、ご連絡を差し上げました。


家族とも相談し慎重に検討した結果、このような決断に至った次第です。貴重なお時間をいただいたにも関わらず、ご期待に沿えず誠に申し訳ございません。


本来であれば直接お伺いすべきところ、メールでのご連絡となりましたこと何卒ご容赦のほどお願い申し上げます。


末筆ながら、貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます。


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○○大学工学部 ○○工学科4年
(名前)
(携帯番号)
(メールアドレス)
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これだけは知っておきたいポイント

内定辞退の方法やタイミング、マナーについて解説しました。

今回押さえておくべきポイントは以下の3つです。

・内定辞退は就活生の権利。マナーを守れば辞退することに問題はない

・内定辞退の連絡は電話かメールが一般的。直接の訪問は不要

・内定辞退の連絡はなるべく早めに。遅くなるほど企業側の負担は大きくなる

この記事が、現在就活中の理系学生の皆さんにとって、お役に立てば幸いです。