就職活動の最初の一歩といわれる自己分析。この記事を読んでいる方の中には、実はまだ自己分析をしていない人も一定数いるのではないでしょうか。

具体的に何をすればいいかわからない

時間がかかったり面倒なものは避けたい

そもそも自己分析は本当に必要か?

この記事では、上記のような疑問を持つ方に向けて、自己分析の意義や方法について徹底解説していきます。

研究と就職活動の両立で忙しい理系の皆さんのお役に立てるよう、論理的かつ効率的な自己分析を厳選しました。参考にしていただければ幸いです。

理系就職でやりたい仕事・いきたい会社を知るのに自己分析は必須

自己分析の目的は、自分の価値基準・判断基準を理解し、就職活動の軸を作ることです。自分の軸を設定することで、就職活動において目指すべきゴールが決まります。

「志望する企業も職種もはっきり決まっているので、自分に自己分析は必要ない」という方もいるかもしれません。

しかし「なぜその企業に入りたいか」「なぜその職種を選んだのか」まで突き詰めた場合、即答は難しいのでは無いでしょうか。

面接で上のような質問にすらすらと答えられる様、就職活動の軸決め、つまり自己分析が必要といえます。

人は自分自身の事をよく知らない

就職活動を始めたばかりでも、希望する業界については決まっている人がほとんどではないでしょうか。

例えば機械系、電気系専攻の場合「ものづくりに携わりたい、メーカーの開発職に就きたい」と考える方が多いと思います。

ものづくり=開発職のイメージは強いですが、ものづくりに携わる職業は開発職だけではありません。製造や分析、品質管理、技術営業など部署も職種も様々です。

希望職種を「メーカーの開発職」だけに絞った場合も、エンドユーザーとの距離が近い完成品に関わる商品開発職と、基礎的な技術部分に携わる研究開発職では、職務内容も適性も異なります。

このように希望する業界や職種について分解して考えると、「自分の適性とはなにか?」という疑問に行き着くのではないでしょうか。

適性を把握しないまま就職活動を始めてしまうと、企業や職種とのミスマッチが起きやすくなります。

まず自己分析を行うことで、自分の適性と志望条件が合致しているかの確認が必要です。

本音と建前をみえる化する

就職活動をはじめると、エントリーシートや職務経歴書など自分の経歴を文章化する機会が増えます。ここで気を付けなければならないのが、「本音」と「建前」です。

たとえば就職関連のポータルサイトを検索していて、志望する企業が見つかったとします。

①「残業ゼロでホワイトだし業界年収が高い」

②「海外進出もしていて自社開発の強みがある」

上記2つが志望理由だった場合、①の志望理由は、企業側へ伝えづらい本音ではないでしょうか。もちろん②の志望理由にも本音が含まれますが、志望企業に対して提示できる建前的な意見といえます。

ここで重要なのは、①、②のいずれの意見も就職先を決める条件として間違っていないことです。就職活動を進めれば、どうしても②の建前的な志望理由を口にする機会が増えます。

建前に引っ張られすぎて就職活動の軸がぶれないよう、自分の抱える本音としっかり向き合っておきましょう。

軸が決まると面接に強くなる

就職活動に対しての価値基準・判断基準が定まると、面接の本番に強くなります。

面接官は限られた中で学生の性格や特性を深掘りし、自社にとって必要な人材か、適性はあっているか等の判断をする必要があります。

そのため、場合によっては突飛な質問、踏み込んだ質問などをするかもしれません。

事前の自己分析によって価値基準を決めておくことで、あらかじめ答えを用意していなかった質問に対しても柔軟に対応できます。

過去から読み解く!ライフライン分析

自己分析にはいくつかの種類がありますが、過去に体験した出来事から自分の価値観を読み解く方法が一般的です。

過去から自己分析を行う方法として「ライフライン分析」について解説していきます。

ライフライン分析とは?

ライフライン分析は、自分のこれまでの人生を一本のグラフに表す分析法です。

縦軸に幸福度(出来事に対する感情の動き)、横軸に時間をとり、人生の大きな出来事や転機で、自分の感情がどう動いたのかを分析します。

なお、グラフに示す大きな出来事は、必ずしも社会的な成功や失敗に限りません。

人生で大きな転機になった、感情が大きく動いたと考えられる出来事を、点として記します。

点をつないでグラフ化することで人生を可視化し、自分の内面を客観的に観察することができます。

自分史作成との違い

自分史作成という自己分析方法をご存じでしょうか。自分史作成は、過去にあった出来事を時系列順、カテゴリ順にリストアップし、箇条書きにしていく自己分析の方法です。

過去から自分を分析する点では、ライフライン分析は自分史作成と似ています。ただし、グラフに落とし込むことで視覚的に理解できる点で優れています。

グラフの縦軸:幸福度

グラフの横軸:0歳を原点として、現在の年齢+αまでの年齢

下記のグラフのように曲線で自由に表現しましょう。

この方法は、各イベントを感情の動きのみに絞って羅列していくため、自分史を作成するよりも比較的短時間での自己分析が可能です。

ライフライン分析のやり方

実際にライフライン分析のやり方について解説していきます。

まずは、自分の半生を振り返り、感情が大きく動いたイベントを思い出してリスト化します。振り返りのスタートは、小学生~中学生頃からで問題ありません。

イベントリストは多いほうが自己分析の精度が高まりますが、ここでは説明のため⑥つの例を挙げました。

1.中学3年:中学卒業直前に転校し、友人と離れ離れになった

2.高校1年:中学時代の友人に再開。演劇部を立ち上げ文化祭で発表

3.高校3年:大学受験失敗で1年浪人

4.大学1年:バスケットボールサークルに所属し冬の大会に出場

5.大学2年:バスケットサークルの夏合宿で負傷し引退

6.大学3年:成績が上がり、第一希望の研究室に配属

上記の出来事を元に、以下のようなライフラインのグラフが作成できました。

グラフが完成したら、それぞれのピークについて分析をしてみましょう。

例えば、6つのピークのうち①、②、④が、友人や部活動のメンバーなど「集団での活動」に関わっていることがわかります。

この結果から「私はチームで何かを成し遂げることに、やりがいを感じるのではないか」と自身を分析することが出来ます。

また、③では大学受験失敗により幸福度が最低になっていますが、このマイナスのピークをプラスに転換した経験は重要です。

「何をモチベーションにしたか」「どのような努力を行ったか」などを掘り下げることで、面接でよく聞かれる「逆境の乗り越え方」についての回答が得られます。

⑤ではサークルを引退したにも関わらず、幸福度があまり下がっていない点、⑥の研究室配属でピークが最大になっている点も、注目すべきポイントです。

「ケガによる引退がきっかけで、結果的に学業や研究に興味が移る転換期だった」などの考察が得られます。

このように、人生の転機における自身の感情や行動を分析することで、判断基準の傾向や価値観の軸を浮き彫りにしていくのが、ライフライン分析です。

その他の自己分析

ライフライン分析以外にも、有効な自己分析方法が存在します。それぞれアプローチ手法がことなりますが、複数の方法を試すことで自己分析の精度は上がります。いくつかご紹介するので参考にしてみてください。

なぜなぜ分析

なぜなぜ分析とは、自分の経験した出来事に対して「なぜ」をひたすら問いかける自己分析法です。

自分の行動を「なぜ」で深掘りし、決断に至った背景や自分の本質的を理解します。

ライフライン分析との相性も良いため、ライフラインの各ピークについてなぜなぜ分析してみることをお勧めします。

なぜなぜ分析のやり方については、あらためて別記事で詳しく解説していきますので、是非ご参照ください。

エニアグラム診断

エニアグラム分析も、就職活動においてよく取り上げられる自己分析です。エニアグラム分析とは、人の性質や特徴ごとに9つのタイプに分類する方法です。

タイプ別に特性や行動指針が解説されており、大枠で自分を理解するのに役立ちます。

90問の質問に答えることで、、以下の9タイプのいずれかに分類される仕組みです。

1.改革する人

2.人を助ける人

3.達成する人

4.個性的な人

5.調べる人

6.忠実な人

7.熱中する人

8.挑戦する人

9.平和をもたらす人

引用元:各タイプの特徴(日本エニアグラム協会)

なお、TECH OFFERでもオリジナルのエニアグラム分析を用意し、この分析結果を採用担当者に共有できる機能があり、エニアグラムによって簡易診断を行い、それぞれのタイプ別に何%合致するかを表現します。

診断結果を元に、自分に当てはまる能力や特性をリストから追加し、そのまま企業向けPRとして提示することが可能です。

自身のことを第3者の言葉で客観的に表現していく手助けとなりますので、是非ご活用ください。

SWOT分析

カナダ出身の経営学者Henry Mintzbergが提唱した分析方法で、企業におけるマーケット分析などに使用される方法です。

厳密には自己分析の方法ではありませんが、就職活動に応用できるため有名になりました。

対象の持つ特徴を以下の4つに分類して分析します。それぞれの特性の頭文字からSWOT分析と呼ばれています。

Strength:強み

Weakness:弱点

Opportunities:機会

Threats:脅威

自己分析にあてはめた場合、「強み」と「弱点」は自身の内面にある特性を表します。

「機会」は自分にとって有利に働く外的要因、「脅威」は自分にとって不利に働く外的要因です。それぞれの例は以下の通りです。

Strength:強み
英語が得意な理系人材
野球部主将の経験から得たリーダーシップ

Weakness:弱点
気分屋でパフォーマンスが安定しない
慎重で考えながら動くことが苦手

Opportunities:機会
理系人材の需要増加
幹部人材の慢性的な不足

Threats:脅威
外国人学生の日本市場流入による、英語人材の飽和
スタートアップ企業における仕事のスピード感の重要性

内面的特性と外的要因を対比させることで、就職市場における自分のポジションや強みを、客観的に理解するのに役立ちます。

他己分析

他己分析とは、友人や家族など第三者から客観的な意見を聞くことで、セルフイメージとの比較を行いギャップを理解する分析方法です。

主観的になりがちな自己分析の軌道修正に有効な方法で、自分では知らなかった長所や短所がわかることも特長です。

やり方は簡単。自分の長所や短所、対人特性などに関する10程度の質問リストを作成し、自分の回答と第三者の回答を比較します。

質問をお願いする相手の年齢や性別、職業にはなるべく幅を持たせるようにしましょう。

より客観的な意見が得られます。友人、親、教授、先輩など、10人以上に頼むのが理想的です。

これだけは知っておきたいポイント(まとめ)

ライフライン分析を中心に、理系就活向けの自己分析方法をいくつか紹介しました。どの方法も一長一短です。できれば複数の自己分析を行い、就職活動における軸の精度を上げていきましょう。

今日のポイントは以下の3点です。

自己分析は就職活動をする上での価値基準・判断基準の軸を決めること。

ライフライン分析は過去の体験を幸福度によって表し、自分の特性を理解する方法

自己分析は複数の方法を試すことで精度が上がる

精度の高い自己分析で、自分に合った企業への就職を目指しましょう。