インターンシップは、企業が学生に就業体験を提供する制度です。多くの学生が、就職活動が本格化する前の3年生(場合によっては1、2年生)の間にインターンを経験し、「企業の一員として働くこと」のイメージをつかみ、志望する企業選びの参考にする機会となっています。

応募するだけでインターンシップに参加できる企業もありますが、事前に選考を経て、希望者を絞り込む場合もあります。特に人気企業は多くの就活生が集まるため、本選考よりも狭き門になる場合もあります。

本記事ではインターンシップに志願するエントリーシートの書き方を、例文とともに説明します。巻末にエントリーシート確認用のチェックリストも用意しているので、ぜひ参考にしてください。

インターン選考でのエントリーシートの役割

インターン選考でのエントリーシートの役割

最初に、インターン選考でのエントリーシートとはどのようなものなのか、また就活生はどのように取り組むべきなのかを整理しましょう。

エントリーシートとは?

エントリーシートは、企業がインターンとして採用する学生を選考する際の判断材料にするものです。

ほとんどの企業では、1回のインターンシップに参加する学生数を30人未満に絞っています。一方、インターンを志望する学生は、採用予定人数の数倍から数十倍にも上ります。そのため企業は、エントリーシートと面接の二段階選考を行います。

就活生にとってのエントリーシートとは?

エントリーシートを提出し、通過すれば面接に進むというインターンシップは、本選考の前に学生が本格的な就活を体験できる貴重な機会です。「自分の考えをまとめてエントリーシートを書く」という経験だけでも大きなプラスになります。さらに、エントリーシートを提出し、企業から見て、現在の自分が求める人材の要件を満たしているかどうか、客観的に把握することもできます。

企業によって異なるエントリーシートに注意しよう

エントリーシートは共通のフォーマットがあるわけではなく、各企業が独自に作っています。そのため企業ごとに異なる形式と内容で作成しなければなりません。また、項目によっても「400字」などの指定がある項目や、字数指定のない項目など、さまざまです。企業が求めるエントリーシートの要項をよく読んで、適切なエントリーシートを作成します。

大量のエントリーシートが集まることを意識する 

採用担当者が大量のエントリーシートを読むという事実は、次の2点を意味します。

  • ・読みにくいエントリーシートは丁寧に読んでもらえない
  • ・ありきたりなエントリーシートは担当者に読み流されてしまう

エントリーシート作成の前提として、この2点をつねに意識してください。

インターンのエントリーシートで重視される3つのポイント

インターンのエントリーシートで重視される3つのポイント

エントリーシートで重視されるのは、主に次の3つのポイントです。

インターンシップへの参加意欲

採用担当者が最も知りたいのが、学生のインターンシップへの参加意欲です。企業が時間とお金を投資してインターンシップを行うのは、意欲の高い学生と出会いたいからにほかなりません。

学生の参加意欲は、エントリーシートの「志望動機」や「インターンシップで何を学びたいか?」などの項目で評価されます。

  • ・インターンシップ参加の目的が明確になっているか?
  • ・自社のプログラム内容と目的が一致しているか?
  • ・自社に関心を持っているか?

学生の能力やスキル

採用担当者はエントリーシートを通して、自社が求める要件に学生の能力やスキルがマッチしているかどうかを知りたいと考えています。

能力やスキルは「学生時代に力を入れたこと」や「自己PR」、またエントリーシート全般からうかがえる文章力や語彙力を通して評価されます。

  • ・インターンシッププログラムにふさわしい経験を積んでいるか?
  • ・インターンシッププログラムの内容に対して、学生の能力やスキルが低(高)過ぎないか?
  • ・学びや仕事に対して積極的か?

自社とマッチする人材か?

企業にとってインターンシップは、学生に自社のことを理解してもらい、ミスマッチを防ぐことが目的のひとつです。そのため、企業との適合性は、各項目だけでなく、文体や語彙の選び方、エントリーシート全体から感じられる人物像などで評価されます。

  • ・コミュニケーション能力があるか?
  • ・協調性はあるか?
  • ・主体性はあるか?
  • ・自社が求める特質を備えているか?

エントリーシートで押さえるべき3項目の書き方と例文

エントリーシートで押さえるべき3項目の書き方と例文

エントリーシートの中心となるのが「志望動機」「学生時代に力を入れたこと」「自己PR」です。この3項目の書き方を説明します。

志望動機

志望動機は次の3ステップで進めます。

ステップ1:インターンシッププログラムを読み、企業がどのような学生を求めているかを考える

ステップ2:インターンシッププログラムの内容と自分が学びたいこととの接点を考える

ステップ3:その接点を次の問いに対する回答に落とし込む

  • ・インターンシップになぜ参加を希望するのか?
  • ・自分がつちかってきたスキルや知識、長所を元に、インターン先で何がしたいか?
  • ・自分がインターンを通じて達成したいことは何か?

志望動機を考えるとき、最初に企業視点で考えるのは、インターンシップは、企業が最終的には自社の目的に合った学生を採用するために行われるものだからです。自分の視点から志望動機を書いてしまいがちですが、あくまで企業目線から見て、自分のどのようなところがどれだけその企業に役に立つかを伝えるようにしましょう。

【例】家電業界のインターン志望動機例

家電業界は、人々の生活に密接に関わる重要な産業です。貴社のインターンシップを通じて、家電製品の製造プロセスを見学し、現場での働き方や製品開発について深く学びたいと考え、応募いたしました。
私は子どもの頃から「ものづくり」に興味があり、大学も機械工学科を専攻しました。大学で学んだ最大のことは、持続可能な開発目標を支える技術の重要性です。貴社のインターンシッププログラムに私が大きな魅力を感じたのは、貴社が世界に先駆けて取り組んできた環境に配慮した製造プロセスを見学できるという点でした。貴社の製造プロセスを現場で学び、そこで働く方々や、製品開発に携わる方々の話をうかがえることは、私にとって大変な勉強になるに違いありません。インターンシップを通じて自分自身を成長させ、将来的に社会貢献度の高い製品を生み出せるようになりたいと考えています。

学生時代に力を入れたこと

エントリーシートでは「体験談+主張=協調性/創造力/行動力/リーダーシップetc…」というパターンが一般的になっています。そのため、このパターンで作成すると、採用担当者の側も「また、このパターンか」と感じてしまう可能性があります。

そうならないための対策としては次の方法があります。

  • ・体験談の幅を広げる

体験談を「リーダーシップ」などのような抽象的でありふれた言葉でまとめるのではなく、その経験をした人でなければ気づけないような言葉で採用担当者に印象づけます。自分自身の過去を見つめ、掘り下げて考えてみましょう。

  • ・志望動機と対応させる

志望動機と対応させることで、志望動機を補強することにもつながります。

【例】家電業界のインターン志望者の「学生時代に力を入れたこと」

私がこれまでの経験で最も力を入れてきたのが、課題と仮説検証の言語化です。大学2年生の時、チームでロボットの製作を行いました。私はこの時、初めて回路の設計を経験したのですが、痛感したのがコミュニケーションの大切さでした。トラブルを言語化して共有することで課題が明確になります。また、解決に向けて全員で仮説を出し合い、検証します。コミュニケーションを介在させることで、前後のプロセスとの連携も取れ、解決スピードも上がりました。
それまで、ものづくりは無口な職人の仕事というイメージを持っていたのですが、この時、解決のためのコミュニケーションの重要性を痛感しました。以来、1人の実験でも、自分の気づきや仮説の言語化を心掛け、意見を求めるプロセスを重視しています。

自己PR

自己PRで伝えるべきなのは、自分にどのような資格や強みがあるのかではなく、「自分は何に価値を置き、どのように行動する人間なのか」ということです。

自己PRは次の4ステップで作成します。

ステップ1:人物にとって最も価値のあることと、その価値を得るためにどのように行動するかを考える

ステップ2:その根拠となる具体的なエピソードを考える

ステップ3:インターンシップに参加して何をしたいか(何ができるか)を考える

【例】家電業界のインターン志望者の「自己PR」

私にとって最も価値を感じるのは、人々の暮らしが少しでも便利に、快適になるよう、何かを作り出している時です。そう考えるようになったきっかけは、小学生の時、膝の悪い祖母のために牛乳パックを組み合わせて正座用の椅子を作った経験です。自分の持っている知識や技術と工夫で祖母の痛みを軽減できた経験は、何にも勝る喜びでした。それから身の回りの道具を見ては、しくみを考え、どうしたらもっと便利になるだろうかと考えるようになりました。
身近な生活家電は、人の暮らしを便利にするだけでなく、痛みやハンディキャップのある人の生きづらさを改善するものでもあります。利用する人の声に耳を傾け、それを形にすることを、自分の使命としたいと願っています。

インターンのエントリーシートで留意すべき点

インターンのエントリーシートで留意すべき点

インターンのエントリーシートを作成する際に気をつけるべき6つの点を説明します。

読みやすさを工夫する

大量のエントリーシートを読む採用担当者になって、自分自身のエントリーシートを眺めてください。余白を取り、悪筆でも丁寧に、字の大きさをそろえることで、読みやすさは大きく改善されます。

多すぎる情報は記憶に残らない

先述のように、採用担当者はエントリーシートを1枚ずつ熟読しているわけではありません。目を走らせながら「このエントリーシートの書き手はどんな学生か」というイメージを作りながら読んでいます。

各項目一つひとつに情報を盛り込みすぎると、多すぎる情報が1つの像を結ばず、「どんな学生か」が見えてきません。エントリーシートを通して、採用担当者の頭の中に1人の人物像が浮かび上がるように、情報を絞り、互いに関連付けながら書く(描く)ことが重要です。

結論⇒Why⇒Howで具体的に書く

最初に結論を書き、「なぜ」そうなのか、そのために具体的に「どんな」方法を取っているのか、という書き方をすることで、読み手にストレスなく内容が伝わります。

体験談で理系らしさを伝える

理系学生を求める企業は多く、理系学生だけを採用するインターンシップもあります。理系学生を求める企業は、次のような点で理系学生に期待しています。

  • ・専門知識・スキル
  • ・論理的思考力
  • ・計画性
  • ・情報収集力
  • ・粘り強さ

体験を通して理系らしい強みを伝えましょう。

社会人に読んでもらおう

エントリーシートはキャリアセンターの担当者や指導教官、OBやOG、両親など、実際に社会で働いている人に読んでもらい、フィードバックをもらいましょう。社会経験のない学生では気づかないような、思い込みや考えちがいがあるかもしれません。特に、キャリアセンターの担当者は就活指導のプロなので、そのエントリーシートを元に、面接のアドバイスなども受けることができます。

不採用通知を受け取るのも経験

インターンに採用できる学生は限られているため、新卒で採用される学生数よりも、インターンに採用される学生の方が少ない企業がほとんどです。そのため、仮に不採用通知を受け取ったとしても、がっかりする必要はありません。

覚えておきたいのは、インターン選考で不採用になったとしても、その後の本選考には悪影響はないということです。不採用通知を受け取った場合は、自分の作成したエントリーシートをキャリアセンターやOB・OGに見せ、課題を指摘してもらいましょう。課題の箇所を改善することで、本選考に向けてより良い準備ができます。不採用通知に落ち込むことなく、次の準備に活かしましょう。

インターンのエントリーシートチェックリスト

インターンのエントリーシートチェックリスト

エントリーシートを作成したら、インターンシップに応募する前に、チェックリストを利用して見直してみましょう。

チェック項目チェック欄
1.企業が求めるフォーマットに一致しているか?
2.求められる文字数を満たしているか(多すぎないか)?
3.十分な自己分析ができているか?
4.最初に結論を端的に述べてあるか?
5.具体的な根拠をあげているか?
6.体験談は自分自身のものか?
7.体験から何を学んだかが述べてあるか?
8.「読む気」を起こさせるエントリーシートか?
9.社会人に読んでもらったか?
10.採用担当者の求めるものに応えているか?

エントリーシートでインターン選考を突破しよう

インターン選考のためのエントリーシートは、3年生が初めて行う本格的な就活です。エントリーシートは企業からの初めてのメッセージ。よく読み込んで、企業がどんな就活生を求めているか、何に期待しているかを考えましょう。

自己分析を行った後は、企業に向けて、自分はなぜインターンに応募したのか、何を頑張り、どんな人間なのかを伝えます。借り物の言葉ではなく、自分自身の体験に裏打ちされた言葉で、志望動機や学生時代に力を入れたこと、自己PRを行ってください。

インターン選考を通過するのは、簡単なことではありません。企業によっては本採用よりも厳しい場合もあります。結果に一喜一憂せず、本選考までのプロセスだと考え、準備を重ねていきましょう。