鉄鋼メーカーを中心とした鉄鋼業界は技術力の高さで評価の高い企業が多く存在しています。

事業規模が大きいためグローバルに展開する企業も多く、私たちの社会生活に大きな影響力をもつ業界です。

そんな鉄鋼業界ですが、どんな企業や仕事があるか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は鉄鋼業界について現状・将来性・仕事内容などを紹介します。

鉄鋼業界を志望し業界について詳しく知りたいと考える理系学生はぜひ参考にしてみてください。

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鉄鋼業界にはどんな企業がある?

鉄鋼業界にはどんな企業がある?

鉄鋼業界は鉄鋼メーカーや鉄鋼製品を仕入れて販売する卸売事業者などが存在する業界のことです。

その中でも鉄鋼メーカーの数が多く、大きく以下3つに分類されます。

・高炉メーカー
・電炉メーカー
・特殊鋼メーカー

高炉メーカーとは、鉄の原料となる鉄鉱石から粗鋼までを一貫して生産するメーカーのことです。

巨大な設備である高炉は大量生産が可能なため生産コストを抑えながら製造でき、細かな成分調整も可能なことから質の高い鉄鋼を生産できます。

電炉メーカーとはくず鉄などを溶解し鋼鉄を生産するメーカーのことを指します。

高炉メーカーと比べると大量生産では劣りますが、初期投資が少なく済み生産量の微調整がしやすい点がメリットです。

特殊鋼メーカーとは電路でくず鉄を溶解し、レアメタルなどを加えて特殊な機能を備えた鉄鋼を生産するメーカー。

主に航空機のエンジンやパソコンなどに使われています。

この3種類の中でも高炉メーカーの数が多く、その割合は全体の8割以上。

このことはそれだけ日本の鉄鋼企業が設備投資できる資本力があることを示しています。

また高炉は一旦運転をやめてしまうと、溶けている鉄が固まってしまい再稼働に大きなコストがかかってしまいます。

このことから高炉は少なくとも10年以上年中無休で稼働させ続けることが基本。

長期的に事業を継続する視点で経営を行わないと成り立たない事業と言われています。

鉄鋼業界の現状の景気・市場規模

鉄鋼業界の現状の景気・市場規模

ここでは鉄鋼業界の現状と市場規模について解説します。

まず鉄鋼業界の現状ですが、世界的にみてみるとアメリカのトランプ大統領による設備投資の拡充や南米経済が回復傾向にあることからアメリカでの鉄鋼材の需要が大きく見込まれるでしょう。

またアジア地域でもASEANを中心に設備投資が盛んに行われているため、アメリカ同様鉄鋼材の需要は今後も増加傾向が予想されます。

一方で中国に関しては設備投資の減少傾向が見られるため、現状維持もしくは徐々に鉄鋼材市場の縮小が進んでいくでしょう。

市場規模に関しては、業界動向サーチの報告によると2020年〜2021年における鉄鋼業主要45社の売り上げは約13兆円となっており、日本産業の中でも大きい規模となっています。

鉄鋼業界の職種一覧と仕事内容

鉄鋼業界の職種一覧と仕事内容

製造業と同様に鉄鋼業界も分業化が進んでいるため、数多くの職種があります。

すべてを取り上げられないため、鉄鋼業界で代表的な職種と仕事内容を解説します。

・研究開発:機能性のある鉄鋼製品や環境に優しい鉄鋼製品の研究開発をおこなう
・生産管理:鉄鋼製品の製造計画の作成や製造ライン管理やトラブル解消をおこなう
・営業:製品の販路拡大や新規の顧客獲得に向けて提案活動をする

【2024年】鉄鋼業界における今後の動向と将来性

【2024年】鉄鋼業界における今後の動向と将来性

ここでは鉄鋼業界の将来性について解説します。

鉄鋼業界では現在以下2つの課題に直面しています。

・国際競争力
・温暖化対策

上記2つについてここから詳しく見ていきましょう。

国際競争力

鉄鋼業の市場はグローバルを中心に伸長を見せているため、海外企業との競争に勝てるかが大きなポイントとなります。

現在国内の鉄鋼メーカーは生産拠点を集約し生産効率の向上を図るのに加え、海外企業のM&Aを通じて海外に生産拠点を設立する流れが盛んです。

また、国際競争力の観点では価格競争を避けいかに高品質な鉄鋼材を供給できるかが鍵となるため、各メーカーは新素材の開発に精力的に取り組んでいます。

日本の鉄鋼メーカーは従来から技術力の高さや鉄鋼材の品質の良さが評価されており、「高アレスト鋼」や「ハイテン鋼」といった高い強度をもつ鉄鋼材の製造に秀でています。

日本の鉄鋼業界はいかに品質の高い鉄鋼材を安定して供給できるかが国際競争で重要となるでしょう。

温暖化対策

近年地球温暖化への対策に世界的な注目が集まる中、日本の鉄鋼業界では省エネルギー設備が広く普及しており熱やガスなどの排出を最小限に抑えられています。

しかし鉄鋼材の製造には大量のエネルギーを必要とするため、二酸化炭素の完全なゼロ排出実現は難しいのが現状です。

温暖化対策に向けた二酸化炭素排出の最小化もしくはゼロ排出を達成できるかが鉄鋼メーカー生存の鍵とも言えるでしょう。

鉄鋼業界にはどんな仕事がある?

ここでは鉄鋼業界で携われる仕事について代表的な以下3つの職種を解説します。

・製造技術
・設備技術
・研究開発
・生産管理
・原料調達

ここではイメージしやすいよう高炉メーカーを例に職種を解説します。

製造技術

製造技術では顧客が求める品質や機能を作り上げ、製品に組み込める形に仕上げる技術開発を主な業務としています。

高品質かつ高機能な技術をいかに低コストで安定的に供給できるかも重要。

これまでにない新技術を世に送り出せる仕事であるため、技術を通して社会に大きな変革を与えたい人には魅力的な仕事と言えるでしょう。

設備技術

設備技術では製造設備や工場の建設から運用までを主な業務としています。

機械や電気制御、エネルギーなどさまざまな分野で設備のエンジニアリングを行い、設備の効率化などを通して鉄鋼材の安定供給を支えるやりがいのある仕事です。

研究開発

研究開発では鉄鋼材自体の企画開発、基盤技術開発を主な業務としています。

鉄鋼材開発は自動車や電気といった産業分野ごとに分かれているのが一般的で、顧客のニーズに叶う製品を実現するため日夜研究活動に取り組む仕事です。

生産管理

生産管理では製品の生産計画の立案から管理・実行、製造過程の管理を主な業務としています。

納品期日に間に合わせるため綿密な計画設定や進捗管理を行っており、営業部門や製造部門との連携も重要な仕事です。

原料調達

原料調達では製品の原料となる鉄鋼材や石炭を世界中から購入し、製品製造に原料を輸送するといった調達業務を中心としています。

質の高い原料を購入するため、資源開発への投資なども行う部門です。

鉄鋼業界の最新ニュース

鉄鋼業界の最新ニュース

ここでは鉄鋼業界の最新ニュースについて解説します。

  • ・注目される最新鋼材「高アレスト鋼」と「ハイテン鋼」
  • ・高炉メーカーが取り組む脱炭素に向けた最新技術

注目される最新鋼材「高アレスト鋼」と「ハイテン鋼」

近年鉄鋼メーカーが国際競争力の向上を目的に開発した新製品として「高アレスト鋼」と「ハイテン鋼」が注目を集めています。

高アレスト鋼とはコンテナ船用に開発された鋼材です。

コンテナ船は近年大型化する傾向があり、船体安全確保のためにより強度の高い極圧の厚鋼板が求められています。

高アレスト鋼は鋼材に亀裂が入った場合でも亀裂の広がりを抑えられるアレスト性能という技術が使われており、船体のダメージを最小限に抑えられるのが特徴です。

この性能のおかげで船舶事故等による海洋汚染などの2次被害の抑制が期待されています。

ハイテン鋼とは「High Tensile Strength Steel Sheets」を省略したもので、引っ張る力に対して強度を見せる鋼材のことを指します。

一般的な鋼材と比べて高強度でありながら軽量でもあるため、輸送コストの軽減にも貢献できます。

また耐食性にも優れているため、沿岸部や凍結防止剤が散布されるような塩分濃度の高い環境であっても錆びづらい鋼材として高い評価を得ているのです。

近年では上記の製品が高く評価されており、世界中から重要があるため大量生産が行えるようになったことから製造コストも下がりつつあります。

国際競争力の向上が求められる鉄鋼業界において、非常に注目されている商品の1つです。

高炉メーカーが取り組む脱炭素に向けた最新技術

鉄鋼業界では地球温暖化への対策が求められていますが、日本でも数の多い高炉メーカーが脱炭素に向けて新しい技術の開発に取り組んでいます。

その技術に100%水素還元があります。

高炉で水素還元の技術を使うことで二酸化炭素の排出を抑えることが可能です。

しかし高炉における水素還元の過程で水が発生してしまい、高炉内の温度が低下し鉄鉱石が溶けにくくなることからうまく鉄ができないという課題がありました。

そこで注目される技術は「100%水素還元」で、天然ガスを使用して鉄鉱石を固体のまま還元し電路に移して溶解する方法です。

この技術は現在開発中であり、成功すれば二酸化炭素の排出量をゼロにすることができます。

エネルギー効率が低いなどの課題がありますが、カーボンニュートラルが鉄鋼業の達成すべきミッションであるため各企業が力を入れて取り組んでいる分野です。

鉄鋼業界における業界大手の売上ランキング

鉄鋼業界における業界大手の売上ランキング

鉄鋼業には広い敷地や大規模な設備が必要になることから、資本力のある大手企業が中心となる業界です。

業界研究をする上で、大手企業の動向は押さえておくべきポイントになります。

本章では鉄鋼業界における業界大手を売上ランキング順に紹介します。

企業名売上
日本製鉄株式会社8兆8,680億
JFEホールディングス株式会社5兆1,746億円
株式会社神戸製鋼所2兆5,431億円
株式会社プロテリアル1兆1,189億円
大同特殊鋼株式会社5,485億円

参考:日本製鉄株式会社 有価証券報告書 99期
参考:JFEホールディングス株式会社 有価証券報告書 第22期
参考:株式会社 神戸製鋼所 有価証券報告書 第171期
参考:株式会社プロテリアル 有価証券報告書 2022年度
参考:大同特殊鋼株式会社 有価証券報告書 100期

鉄鋼業界に向いている人の特徴

鉄鋼業界に向いている人の特徴

鉄鋼業界を目指すにあたり、業界に向いているかどうかを気にする方は多いでしょう。

本章では、鉄鋼業界に向いている人の特徴を3つ解説します。

鉄鋼業界に向いているとわかれば、より鉄鋼業界を目指すモチベーションにもなるため、ぜひチェックしてください。

協調性のある人

鉄鋼業界に限らず、ものづくりの現場は協力での作業が基本のため、協調性のある方が向いています。

職種の専門性が高まっている昨今では、各工程間で協力し合えるかが製品の品質や生産性に影響します。

チャレンジ精神のある人

さまざまな業務やポジションに興味を持ち、チャレンジしていける方が鉄鋼業界に向いています。

鉄鋼業界の企業は配置換えや部署替えなど、頻繁に業務やポジションの入れ替えがあるためです。

ローテーションで経験を積んだ後、特定のキャリアに特化しますが、キャリアの序盤は業務やポジションの入れ替えが多いと認識しましょう。

グローバル志向の人

グローバル志向の人も鉄鋼業界に向いています。鉄鋼メーカーは海外に工場を持っているケースも多く、海外赴任の機会があるためです。

異国の地での仕事は業務面はもちろん、文化的に知見を広げる絶好となるため、成長の機会となります。

グローバル志向の方も鉄鋼業界には向いています。

鉄鋼業界を志望する志望動機例

鉄鋼業界を志望する志望動機例

本章では、鉄鋼業界の志望動機の例文を解説します。具体的な例文は、以下のとおりです。

「私が御社を志望する理由は、大学での研究成果が最も生かせる企業と考えたためです。

私は大学で強度を保ったまま、より軽い金属を生み出す研究をしております。

研究に取り組むようになったきっかけは、趣味のバイクです。

エンジン部分をより軽量化できれば、燃費が抑えられ、さらに長く走れると知り、現在の分野に進みました。

きっかけは趣味でしたが、軽い金属は省エネルギーや環境対策にもつながると知り、研究に力を入れるようになりました。

御社は業界の中でも新しい鉄鋼製品の研究開発に力を入れていると伺い、自身の研究成果が最も生かせると考え、志望しました。

入社後は大学での研究成果を生かし、鉄鋼メーカーにも求められる環境に優しい製品作りにも貢献してまいります。」

志望動機作りに困っている方は、ぜひ参考にしてください。

鉄鋼業界によくある質問

鉄鋼業界によくある質問

鉄鋼業界は対企業向けのビジネスのため、私たちが知らないことも多くあります。

業界研究をしているうちに、さまざまな疑問が湧いてきても不思議ではありません。

本章では、鉄鋼業界によくある質問を解説します。

鉄鋼業界の魅力とは何か

鉄鋼業界の魅力は、製品がさまざまな物の材料となるため、幅広く日本社会を支えられる点です。

ビルや自動車、鉄道、バイク、船舶など企業活動や人々の生活を支える土台は鉄で作られています。

華やかな業界ではありませんが、鉄鋼業界で働く社会的意義は非常に高いです。

鉄鋼業界に将来性はない?オワコンなのか?

今までと同様のスタイルでは勝機が薄くなっているため、以下のビジネススタイル・製品作りにシフトできるかが鉄鋼業界のカギとなります。

  • ・ノウハウを生かした提案
  • ・高付加価値の製品や環境負荷の低い製品作り

海外企業の台頭や少子高齢化に伴う需要減少により、収益の減少傾向がみられたため、鉄鋼業界が「オワコン」との意見が散見されるようになりました。

鉄鋼業界が本当に「オワコン」なのかは、鉄鋼業界の取り組みを注視して、今後を見極める必要があります。

まとめ

鉄鋼業界はグローバル市場で需要が増えてはいるものの、国際競争にいかにして勝つかという課題が残されています。

日本企業はさまざまな技術革新を行い、高機能鋼材の開発や二酸化炭素排出をゼロにする技術の開発など国際競争力を高めるのに必死です。

今後も新しい技術が次々と登場する業界であるため、鉄鋼業界を志望する方は最新動向をチェックしておきましょう。

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