こんにちは。理系就活情報局です。
あなたは「EV(電気自動車)」は好きですか?
乗った経験はなくても「排気ガスを出さない」「二酸化炭素(CO2)を出さない」「静か」「世界的にEVへのシフトが進んでいる」ことは、おそらく知っていることでしょう。
でもあなたは「機電系(機械・電気系)じゃないから」「志望は自動車関連じゃないから」EVは自分に関係ない、と思っていませんか?
EVは、自動車の概念を大きく変え、自動車産業を大きく変える「革命」です。今まで自動車と関係が薄いと思われていたテクノロジーや業界や企業が、EVには深く関係してくることも、ありえます。
ここではEVの将来性、世界戦略、国家戦略、関連産業、技術の方向性、企業の戦略、ホットな研究開発テーマなどについて、簡単に紹介していきます。
就活に際して、自分の専門性に照らしてEVに関わるテクノロジー、業界、企業を、意識して探ってみてはいかがでしょうか?
将来性が大きいEV
100年に一度の大変革「CASE」
ガソリンエンジンの「自動車」は1886年、ドイツ人のカール・ベンツが発明し、20世紀にどんどん改良されて爆発的に普及しました。発明から130年以上経過した21世紀のいま、自動車の世界には「CASE」と呼ばれる100年に一度の大変革が起きています。
C:Connected(情報ネットワークにつながる)
A:Autonomous(自動運転)
S:Shared & Service(カーシェアリングなど)
E:Electrified(動力源の電動化)
CASEの「E」(電動化)の主役が、EV(電気自動車)です。エンジン(内燃機関)の代わりに電気モーターで駆動し、燃料タンクの代わりにバッテリー(蓄電池)を搭載します。ガソリンスタンドで給油する代わりに、充電スタンドや家庭のコンセントからバッテリーに充電します。
このEVが、20世紀に自動車が爆発的に普及したように、21世紀の世界で爆発的に普及する可能性を秘めているのです。
カーボンニュートラルのカギを握る電動化
エンジンを搭載した自動車はガソリンや軽油(ディーゼル)のような化石燃料を燃やして動力を得るので、排気ガスを出します。排気ガスの中には、地球温暖化の原因の一つと言われている二酸化炭素(CO2)が含まれています。
しかしEVは電気エネルギーから動力を得ますから、車体からは排気ガスも二酸化炭素も出ません。それがSDGs(持続可能な開発目標)に合った「クリーンで環境にやさしいエコなクルマ」と言われているゆえんです。
地球温暖化、気候変動の問題を解決するために、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す動きは、2015年の「パリ協定」を契機に全世界にひろがっています。日本政府も「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」目標を表明しました。
そのカーボンニュートラル、脱炭素社会実現のカギを握っているのが自動車の電動化、EV化だと言われています。
異業種も参入してEVシフトは世界的な潮流
「カーボンニュートラル」を目指す世界で、EV化は今や巨大な潮流になっています。
EVの将来性を見込んで、電機メーカー、スマホメーカーなど自動車産業以外の異業種も続々とEV市場に進出しています。アメリカではアップルが、中国ではアリババやシャオミやファーウェイが、台湾ではホンハイが、日本ではソニーや帝人や出光興産が、EV完成車生産への参入を明らかにしています。
EVの世界戦略、国家戦略
EVは内燃機関と完全に決別した自動車
ここで、EV(電気自動車)とHV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(水素自動車)の違いを明確にしておきましょう。
EVはモーターとバッテリーで構成され最もシンプルですが、HVは「エンジンと燃料タンク」「モーターとバッテリー」という2つの動力系統が共存し、車外からの給電は行われません。そのHVに車外からの給電(プラグイン)機能を加えたのがPHVです。FCVはEVに水素タンクが加わり、水素は車外から供給されます。水素から電気を起こしてバッテリーに充電し、モーターを動かします。
EVとFCVは、二酸化炭素を排出しません。PHVとHVは「電動モード」時は二酸化炭素を排出しませんが、「エンジンモード」時には排出されます。それでも電動部分がないガソリン車、ディーゼル車と比べると排出量は少なくなり、燃費も良くなります。
EV、FCV、PHV、HVはそれぞれに長所と短所があり、当分の間は移動距離、用途に応じた使い分けがされるとみられています。
カーボンニュートラルの強い追い風が吹く
国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」の試算によると、日本の二酸化炭素総排出量全体の17.7%は運輸部門で、その87.6%が自動車で占められています。それが全てEVに転換したら二酸化炭素排出量が15.5%削減できるという計算です。これは家庭部門(15.9%)とほぼ同じで、産業部門(34.0%)のほぼ半分ですから、EV化のカーボンニュートラルへの寄与度が大きいことがわかるでしょう。
このようにEVには、カーボンニュートラルの強い追い風が吹いているのです。
世界各国の自動車電動化目標
自動車大国のアメリカは「2030年までにEV、PHV、FCVの比率50%以上」、EU(欧州連合)は「2035年までにEV、FCVを100%」、自動車販売台数世界一の中国は「2035年までにEV、PHV、FCVの比率50%以上」と、それぞれ目標を定めています。日本政府も「2035年までに乗用車の新車販売で電動車を100%にする」という目標を掲げました。
日本の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、自動車・蓄電池産業を「注力すべき14の重要分野」に位置づけました。
EV世界市場を牽引してきた日本メーカーの目標
EVというと「テスラ」が連想されそうですが、日本の自動車メーカーは、テスラの創業以前から世界のEVをリードしてきました。
2009年、三菱自動車が世界初の量産型EV「アイ・ミーブ」を発売し、2010年には日産自動車がEV「リーフ」を発売しました。その後「リーフ」の航続可能距離が10年で2倍以上になるなど改良が進み、情報化、デジタル化、自動運転化も進んで「第2世代EV」と呼ばれています。
ここで、日本の主要メーカーの2030年の目標をご紹介します(2022年6月現在)。
トヨタ:新たに30車種のEVを投入し、EV、FCVの世界販売350万台
ホンダ:電動車比率100%
日産:EV15車種を含む電動車23車種を投入し、電動車比率50%以上
マツダ:全車種を電動車に
三菱:全車種を電動車に
日本政府の普及促進策
「2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%(ガソリン車0%)」を目標に据えた日本政府は、EV、PHV、FCV対象の購入補助事業を行っています。2022年度には次のように1台あたりの購入補助金の額を引き上げました。
EV:40万円→65万円
軽EV:20万円→45万円
PHV:20万円→45万円
FCV:225万円→230万円
これはベース金額で、一定の条件を満たせば購入補助金がさらに上乗せされます。
EV、PHV用の充電スペース(家庭、企業の「普通充電」、高速道路のSA等の「急速充電」)、FCV用の水素ステーションも、政府は「2030年までに急速充電3万基、急速充電12万基、水素ステーション1000基」という数値目標を定めています。
EV用バッテリー(蓄電池)の材料、生産、リサイクルの事業者や、ガソリン車用部品生産から電動車用部品生産への業態転換・事業再構築にも、政府は補助金を出しています。そのために「グリーンイノベーション基金」が設立されたり、「自動車産業『ミカタ』プロジェクト」が始動したりしています。
EVの関連産業
「車体・機構」「モーター」「バッテリー」「給電・充電」
EV1台の構成を大きく4つに分けると「車体・機構」「モーター」「バッテリー」「給電・充電」になります。それぞれに関連産業があり、関連企業があり、技術課題があります。
たとえば同じ「駆動機構」でもガソリン車とEVのそれは違いますし、同じ「モーター」でも電車のそれとEVのそれは違います。たとえば路面電車の車輪をタイヤに取り替えてバッテリーを積んでも、動くことは動いても、営業運転に耐えうるEVバスという商品にはなれません。スマホのバッテリーとEVのバッテリーでは、電圧も容量も耐久性も求められるスペックも違います。
研究開発を行うエンジニアの視点で言えば、EVはガソリン車や電車やスマホなどで培った既存技術の延長線上にあるように見えて、EVならではの技術テーマがあり、あなたの果敢な挑戦を待っている技術的なボトルネックが存在する、ということです。
「材料」も「半導体」も「情報通信」も「住宅」も
自動車は機械工学をベースに空気力学、情報技術、人間工学、工業デザインなども含む「科学技術の集大成」と言われる工業製品ですが、電動化でEVの時代になってもそれは変わりません。いや、技術がより広く、深くなり、さらなるブレークスルーが求められていると言っていいでしょう。
たとえば「磁石」の「磁性材料」技術は、ガソリン車のエンジンとは関係が薄くても、EVでは搭載するモーターの性能を左右しかねない重要なテクノロジーです。
電力制御に関与する「パワー半導体」の技術が、内燃機関の自動車よりも電動車のほうが何倍も重要になることは、容易に想像できるでしょう。
ローム、富士電機、東芝、三菱電機からルネサス、デンソーまで、EV用パワー半導体の生産では激しい技術競争が展開されています。
自動車の電子制御化や情報化で、すでに重要になっている「電線」に関連する技術も、EV化が進めばいっそう進歩することでしょう。フジクラ、矢崎総業、住友電工のようなワイヤーハーネス大手だけでなく、スタートアップ企業でも技術開発の最前線に立てるチャンスがありそうです。
EVの動力機構の制御において、情報通信技術を活かしたインテグレーションが果たす役割が大きいことも理解できるはずです。ソフトウェアの自動アップデート機能は、当然のように搭載されるでしょう。
意外に思われそうですが、家庭内の電力配線とソーラーパネルなどを組み合わせた「スマートハウス」とEVは親和性が高く、建築工学も無関係とは言えません。
排気ガスを出さないEVなら住宅内で家族が集うリビングとホーム充電が行われる車庫との一体化が可能で、AV機器と組み合わせて「家庭内ドライブインシアター」をつくることもできるでしょう。
「ヘーベルハウス」の旭化成、「パナホーム」のパナソニック、「トヨタホーム」のトヨタ自動車、三菱電機などの企業がそんな「EVと住宅の一体化」の課題に取り組んでいます。
EVの技術の方向性
車体・機構
EVの車体・機構の設計は、自由度がより高まります。
内燃機関よりも部品点数が減るのでEVは車台がよりシンプルになり、ボディの寸法や駆動方式、バッテリーの大きさなどに応じて柔軟にカスタマイズできるようになります。
モーターも小型化できる分、車体をより軽量にしたり、より自由なデザインで設計することができます。
エンジンがそうだったように、1個のモーターからドライブシャフトで全車輪を駆動するだけでなく、4輪それぞれに4個の小型モーターを取り付け(「インホイールモーター」)、情報技術によって統合的に制御することも可能で、悪路や雪道など状況に対して最適な駆動モードをきめ細かく選ぶことができるクルマも設計できます。
モーター
くわしい説明は省略しますが、EVのモーターには「DCモーター」「ブラシレスDCモーター」「PMモーター」「ステッピングモーター」「誘導モーター」「サーボモーター」「超音波モーター」などの種類があり、制御方法には「PWM制御」「マイコン制御」「ベクトル制御」「定電圧制御」「定電流制御」「フィードバック制御」「フィードフォワード制御」「PID制御」などの種類があります。
それぞれのモーター、制御方法ごとに、研究開発が競われて、テクノロジーが進歩しています。
設計時、多数の選択肢の中から、車種や用途などに応じて最適なモーター、制御方法を選ぶのも、完成車のエンジニアの腕の見せどころになります。
モーターの騒音対策、振動対策、電子回路への影響を防ぐノイズ対策、シミュレーションを行う解析技術、メンテナンス対策なども、重要なテーマです。
バッテリー
現在のEVバッテリーの主力は、スマホにも使われているリチウムイオン電池です。大容量化、高出力化、長寿命化、安全性の確保、低コスト化など、取り組むべき技術テーマは多彩です。
中国のCATL(寧徳時代新能源科技)、韓国のLGエネルギーソリューションなど海外の強敵が多い中で、日本企業の健闘が期待されていますが、パナソニックが供給するテスラやトヨタはバッテリーの自社製造化を進めています。
寿命が尽きたEV用バッテリーのリサイクルネットワークの確立も大きな課題になるでしょう。
給電・充電
EVの給電・充電技術には「コンダクティブ充電器」「インダクティブ充電器」「ワイヤレス給電」などの種類があります。
ワイヤレス給電では、走りながらでも給電できる「走行中給電」の技術もトヨタ自動車などが研究しています。
電力の送配電については、交流を直流に変換しなくてもEVに充電できる「直流送電」の技術が注目されています。
その他
現在、EV普及のネックになっている問題は「航続距離」と「価格」だと言われています。
1回の充電でガソリン車と同等の航続距離が確保でき、かつ価格差も縮まれば、「電動車100%」の目標は前倒しで達成できると考えられています。
長い航続距離はもっぱら技術で、消費電力の低減、大容量バッテリーの採用で実現できます。
価格は政府の補助金政策も助けになりますが、やはり製造段階でいっそうのコストダウンを図っていく必要があります。バッテリーの寿命を延ばしてランニングコストを下げることも、それに含まれます。
民間企業のEV戦略の代表例
日立アステモ
日立グループの日立アステモ(日立Astemo)は2021年に自動車部品メーカー4社が経営統合して誕生しました。2022年9月、ホンダの中・大型BEV(バッテリ電気自動車)向けのeアクスルを受注したと発表。10月にはアクスルの日産EVへの供給も発表しました。
SiC高効率インバータ、高効率・低損失モーター、小型で静粛性が高いギヤボックスを組み合わせた、自社開発の高性能な一体駆動ユニットを提供しています。
日本電産モビリティ
2019年に日本電産のグループ会社になった日本電産モビリティは、自動車の制御に使用される各種コントローラー、スイッチ、センサーなどを生産しています。主要製品の「DC/DCコンバータ」はEVやHVの電気システムを構成し、高電圧のリチウム電池から14Vの電気を供給するなど、電圧を自在にコントロールします。
プライムアースEVエナジー
トヨタ自動車とパナソニックが出資するプライムアースEVエナジーは、HV用バッテリーを生産しています。1996年の設立以来、日本の自動車電動化の最前線を歩み、トヨタ「プリウス」などハイブリッド車向けのバッテリーでは世界シェア首位です。ニッケル・水素蓄電池、リチウムイオン電池、BMS(バッテリーマネジメントシステム)などで技術の蓄積があります。
新電元工業
1949年設立の新電元工業は、自らも1957年以来パワー半導体を生産していますが、EV向けでは複数のパワー半導体を組合わせたモーター駆動用の「大電流パワーモジュール」に強みを持っています。他に「DC/DCコンバーター」「充電インターフェイス」などのラインナップがあり、「非接触充電システム」の開発にも取り組んでいます。
古河AS
1950年設立の古河電工グループの古河ASは、自動車用のワイヤーハーネス(組み電線)や、それに関連した電装部品を生産しています。EV関連ではモーター、バッテリー周辺の最高数百Vに及ぶ高電圧ワイヤーハーネスに強みがあり、ケーブルだけでなくコネクタなどとも一体的に供給できる体制を整え、「DC/DCコンバーター」も開発中です。
愛知製鋼
愛知製鋼はトヨタ系の特殊鋼メーカーですが、材料メーカーでありながら2022年2月には「世界初の3万4000rpm・高減速のEV向け次世代eアクスル」の実証実験を成功させています。電磁鋼板、磁粉成型、銅、レアアース磁石などの材料技術を集結して実現しました。EVの電力消費を抑えてその航続距離を伸ばせると期待されています。
EV関連の次世代研究開発テーマ
eアスクル
モーターとインバーターと減速機を組み合わせたユニット「eアスクル(電動アスクル)」は現状、EVの機構の中で最もホットな技術開発競争が展開されている分野と言ってもいいでしょう。
日本企業では明電舎、三菱電機が三菱自動車に供給し、東芝、日本電産、日立製作所も参入。トヨタ系のメガサプライヤー(部品大手)のアイシン精機、デンソー、豊田自動織機も技術を磨いています。
その最大の技術的課題は電力消費を抑えて、1回の充電での航続可能距離を伸ばすことです。
モーター用磁石
EV用モーターの磁性材料(磁石)は、永久磁石などの「硬磁性材料」と、電磁鋼板などの「軟磁性材料」に大別できます。従来は軟磁性材料が主流でしたが、近年では硬磁性材料にシフトしていて、「フェライト磁石」「アルコニ磁石」「サマリウムコバルト磁石」「ネオジム磁石」などが次々と登場しました。
しかしそれらの原料の多くは「レアアース(希土類)」で、技術的には有利な材料でも世界的に産出量が非常に少なく産地も偏っていて、中にはアフリカなどの独裁政権に利権を握られたものや、地政学的リスクをはらんだ中国産などもあり、価格が高価になりやすいのが問題点です。
トヨタ自動車は「省ネオジム耐熱磁石」を自社開発し、レアアースの「ネオジム」の使用量の大幅削減に挑戦しています。それによりEV普及の大きな課題「低価格化」に寄与できると期待されています。
全固体電池
現在主力のリチウムイオン電池は+極と-極の間の「セパレーター」に液体の電解液が使われますが、それに代わって固体の電解質を使うのが全固体電池で、EV用の次世代電池の主役になると期待されています。リチウムイオン電池は劣化や液漏れ、発火など安全性に問題がありますが、全固体電池はその問題をクリアします。
実用化されているのは「薄膜型全固体電池」で、「バルク型」よりも寿命が長いのが特長です。課題はイオンを高速で伝導させ、高出力を安定的に得られる技術の確立です。
非接触給電
駅や商店で利用される「ICカード」「おサイフケータイ」は読み取り機器に接触させなくても反応して金額が引き落とされますが、それと同じようにEVを充電器に接続、接触させなくても充電を行える技術が「非接触給電」です。コイルとコイルの間の「電磁誘導」のしくみを利用する「電磁誘導方式」が主流で、これは「受電コイル」を搭載したEVが「非接触充電ゾーン」に乗り入れると、路上の「送電コイル」との間で電磁誘導が起き、接続の手間なしにワイヤレスで電力が供給され充電が完了するというしくみです。他の方式では電磁誘導の「磁界共鳴方式」、「電界結合方式」やマイクロ波やレーザーを使う「電波受信方式」も研究されています。
電池リサイクル
EVの大きな課題は「航続距離」と「価格」ですが、低価格化の大きな障害になりそうなのがバッテリーです。
現在の主流のリチウムイオン電池の原料のリチウム、コバルトは高まるEV需要に対して鉱業生産量が不足気味で、しかも生産国上位はボリビア(コバルト)やコンゴ(リチウム)のような独裁政権による政情不安、地政学的リスクを抱えた国々なので、価格高騰のリスクをはらんでいます。
そこで「都市鉱山」の発想で、各国で廃車になったEVの使用済みバッテリーを回収し、リチウム、コバルトをリサイクルで再利用する「電池リサイクル」ネットワークの確立が、真剣に検討されています。
今のところは新品をつくるよりもコスト高なのですが、将来の原料の高騰に備えて先進国では国家主導のプロジェクトを組んで取り組んでいます。この電池リサイクルの分野でも技術の進歩が期待されています。
研究者、技術者にとってのメリット(まとめ)
好環境、好待遇
内燃機関の自動車に比べると部品の点数が少ないために参入障壁が低いとされているEVは、今後の市場拡大の余地が大きいので、スタートアップ企業の新規参入、異業種からの参入が相次いでいます。そんな好環境の分野は、人材の奪いあいで待遇も良くなるのがふつうです。
社会貢献
電気を動力とするEVは、車体から排気ガスも二酸化炭素も出さない「クリーンで環境にやさしいエコなクルマ」で、地球温暖化、気候変動の問題を解決すべく「脱炭素」で温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル」にも、SDGs(持続可能な開発目標)にも合っています。どんな形であれEVの開発に関与することで、社会に貢献している手ごたえを感じることができそうです。
一般の人の前で「EVの開発に関わっています」と自己紹介したら、「環境にいいクルマだね」「これからはEVの時代だね」「自分も欲しいと思っている」と期待されて、印象もいいでしょう。やりがいも感じられるはずです。
自分の市場価値を高める
成長性のあるEVは、そこで実績を築いた技術者にとっては、転職市場で好待遇で迎えられる可能性が高い分野と言えます。技術者としての市場価値という観点で言えば、まずそこに身を置くだけでスタート台が高くなります。さらに努力し、チャレンジし、実績を積み重ねていけば、市場価値をよりいっそう高めていくことができるでしょう。そこには自分を試すためのフィールドが、大きく、広く、ひろがっているのです。