これまでは比較的気が合う人と会話していたかもしれませんが、入社後は心情に関係なく、幅広い分野の人と関わることになります。

問題解決という同じ目標を持ち、1日8時間以上を一緒に過ごす可能性のある人とのコミュニケーションは重要です。技術的内容を伝えるための論理的コミュニケーション能力だけでなく、仕事を円滑に進めるための対人コミュニケーション能力も求められます。昇進する上では専門性といった能力も欠かせませんが、やはりコミュニケーション能力の高い人材が出世しやすい印象があります。入社後に求められるコミュニケーションの取り方を理系の専門分野ごとに見ていきましょう。

情報系職種のコミュニケーション

個人の能力と他者の協力を掛け合わせる仕事

情報系職種には主にプログラマー、システムエンジニア(SE)、ITコンサルタントなどがあります。一日中パソコンと向き合う事になりますが、誰と会話もしない訳ではありません。

プログラマーは要望書の通りにソフトウェアの開発を進める仕事ですが、設計通りに作動しないこともあり、つまづいた場合は上司や同僚に相談して解決策を編み出すことになります。

システムエンジニアは顧客とプログラマーの中間に位置する職業です。顧客もしくは上司から得られた開発の要望をまとめ、プログラマーに的確な指示を出さなければなりません。技術的内容を上手く伝えるための論理的コミュニケーション能力が必要になります。

ITコンサルタントは最も顧客に近い職種と言え、顧客のふわっとした要望を基にどんな解決策を提供できるかを考える職種です。情報系職種の中で最もコミュニケーション能力が求められると言って良いでしょう。

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【理系学生のための職種理解シリーズ】情報系就活生が知っておきたい応募職種で求められる心・技・体(情報システム職編)

円滑化のためのコミュニケーション

情報系職種はアカデミアで培った知見が入社後の業務で参考にならないことが多く、また、分野外の学生も募集しているため、入社後は長い勉強期間を過ごすことになるでしょう。

一度も使ったことのない言語・ツールを教えてもらうため、直属の上司との関係が重要になります。このような状況では自分がどの程度理解していて、どの部分を理解できないか、相手にしっかり伝えなければなりません。自分が分からないことを正直に伝えづらいという人も多いようですが、理解できていない部分をそのままにしておくと、次に教えられた知識を噛み砕くことができなくなってしまいます。経験を重ね、一人で仕事ができるようになった場合は直属の上司だけでなく周りも見るようにしましょう。

仮にコーディングを業務とし、一日中会話する必要が無かったとしても、他愛もない会話を少し交えるだけで職場の雰囲気は良くなるとおもいます。

昇進するほど相手の幅が広がる

プログラマー・SE・ITコンサルタントに立場の上下はありませんが、一般的に入社後数年はプログラマーやSEとして活躍し、管理職の立場になってからITコンサルタントやITアーキテクト、人事を担当することが多いようです。

初期の段階では同じ部署の社員とだけ会話することが多く、内容も技術的なものに限られます。しかしその後は開発したソフトウェアの説明やヒアリングのために顧客と接することになり、対外的なコミュニケーション能力が求められるでしょう。

ITコンサルタントのようなマネジメント業務を担当する場合、会社の内外関係なく幅広い分野の人と会話することになります。社内では予算・人員調整のために経理や人事部署の社員とコミュニケーションを取り、社外では案件獲得に向けて相手企業の管理職や取締役と密に交流します。技術的な内容だけでなく顧客の業種に関する内容といった専門外の知識も習得しておかなければなりません。

機械・電気・電子系職種のコミュニケーション

ノウハウを教える直属上司との関わり

機械系・電気電子系の職種は主に設計者と顧客のフォローを行う技術営業に分かれます。いずれの場合でもエラーを生じさせないよう設計・保守点検を実施するにはには経験を重ね、知見を得なければなりません。

特に機械の場合は安全にも考慮しなければならず、様々な規格・制限に縛られると思います。最初のうちは直属の上司と一緒に業務を担当しながら日々学んでいくことになります。

早く一人前になりたいと思うかもしれませんが、初期の段階では謙虚な姿勢を忘れないようにしましょう。上司が担当する業務を見て次に何が求められるか予測し、上手くサポートできれば上司の評価は上がります。「できるやつ」と思われれば、より難しい業務も任せられるようになるでしょう。

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【理系学生のための職種理解シリーズ】機械・電気電子系就活生が知っておきたい心・技・体

一定期間は同僚に頼る

機械系、電気電子系の職種はノウハウの積み重ねが重要です。半人前では一人で設計できませんし、保守点検においては顧客に迷惑をかけてしまいます。

特に保守点検の対象となる機械類は顧客が企業活動を行うために欠かせない機器であるため、迅速に対応しなければ相手先企業の売上高に影響を与えかねません。このような背景から初期の段階では必ず上司や同僚とペアを組んで仕事に取り組むことになるでしょう。業務の目的は自己の成長ではなく製品の設計または保守点検です。

分からない部分は素直に頼るようにしましょう。甘える必要はありませんが、普段からコミュニケーションをとることで上司や同僚が積極的にサポートしてくれるかもしれません。

問題解決を目的としたコミュニケーション

他の職種でも同様ですが機械系、電気電子系の職種は問題解決を目的としたコミュニケーションが重要です。

設計者の場合、ミスがあればエラーの要因になり、不要な部品・プロセスを組み込んでいればラグの発生要因になります。正確かつ合理的な製品を設計するためには上司や同僚との連携が欠かせません。技術的内容や問題点をを相手にわかりやすく伝えるべく論理的コミュニケーション能力が求められます。客先での保守点検や技術営業でも同様に問題解決力が必要とされますが、顧客は技術的内容をあまり把握していないため、専門用語を多用しないよう注意しましょう。

論理的コミュニケーション能力はすぐに身につくものではありませんが、上司への報・連・相を通じて向上させることができます。

化学・材料系職種のコミュニケーション能力

チームプレーの仕事

化学・材料系は研究開発と技術営業、生産管理に別れます。

トライ&エラーを通じてより良い化合物・素材を生み出すのが研究開発の仕事であり、設計から実験段階までチームプレーが欠かせません。アカデミアではひとり一人が各自のテーマに集中しがちですが、企業では複数人で意見を出しあいながら実験計画を組み立て、合成も複数人で協力し合います。

技術営業も同様に2人以上で行動することがあるでしょう。生産管理は工員に指示を出しながら工場レベルでの合成・成形を管理する仕事です。基本的に工員は与えられた業務を遂行する職種ですので、生産管理がリーダーシップを持って指示しなければ全体の業務が滞ってしまいます。

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【理系学生のための職種研究シリーズ】化学・生命系就活生が知っておきたい応募職種で求められる心・技・体

他部署とのコミュニケーション

チームプレーが求められる化学・材料系職種では業務を円滑に進めるために同じ部署の人間と気を許せるようになっておきたいものです。それに加えて他部署の社員ともある程度交流しておけば、より円滑に業務を遂行できるかもしれません。

化学・材料系メーカーでは技術営業が顧客から得た要求や情報を元に研究開発を進めるのが一般的です。基本的には部門長が同席する会議を通じて情報を交換しますが、横のつながりが有ると事前に把握できるかもしれません。

また、同じ研究開発部門でも他の実験室の社員と日頃から交流しておけば、何らかの知見を得られるでしょう。試薬や実験器具が不足してしまったときに借りやすいということもあります。

メールを通じたコミュニケーション

化学・材料系では正式な依頼を口頭や電話で済ませ、具体的な内容はメールで伝えるという例が多く見られます。

材料の組成や具体的な実験法は文章や表を使わなければ伝えられません。そのため、上手く相手に伝えるには文章力が求められます。実験内容を伝える際は論文と同様に「背景、目的、結果、まとめ」の順に記載すると伝わりやすいでしょう。

文章力を向上させる方法として本を読むことがおすすめですが、それ以外にも日々の業務を短い文章にまとめるだけでも効果があると思います。なお、メールで使う文頭の挨拶や締めの言葉はネット検索で見つけれらる基本的なもので十分です。

全職種に共通するコミュニケーション能力

理系・文系は関係ない

文系は明るく営業向きで、理系はおとなしく職人気質…。

こんなイメージを持たれることがありますが、コミュニケーション能力の重要性は理系・文系関係ありません。理系の場合は専門知識を交えて考え方を分かりやすく伝える論理的コミュニケーションの比率が高まるだけです。

近年ではジョブローテーションの普及によって同じ部署に居続けるという事も少なくなっています。理系として入社しても、いわゆる文系職種と呼ばれる部署に異動になることもあるため、理系・文系に分けて自己啓発の幅を狭める必要はないでしょう。BtoCのサービス業ではないため明るさや笑顔を多用する必要はありませんが、社会人としての基本的な能力は抑えておきましょう。

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理系就活生が知っておきたい、2種類のコミュニケーション能力と論理的思考力とは?

困ったら天気の話

無言で居続ける人はどこか難しい印象を持たれたり、怖い印象を与えたりしてしまう場合があります。同じ部屋にいる限り、何か目的が無くても一言くらいは会話を交えておきたいものです。

会話好きな方は話題に困りませんが、気の知れた人以外との会話が苦手な人は話題に困る場合があると思います。そんな話題探しが苦手な方は天気の話がおすすめです。

近年では余り見かけなくなりましたが、高級ホテルで行われるテーブルマナー講習では無難な会話の方法として天気を話題にすることが勧められています。「今日は暑くて出社が大変でしたよ~」と伝えるだけで、相手から話題を広げてくれるかもしれません。

同期を通じたつながり

同期との交流は他部署の上司、後輩へと繋がることがあります。社内において個人に関する情報は横のつながりを通じて縦のつながりへと伝達します。そのため同期の間でコミュニケーション能力が高いと思われれば、その印象が上司へと伝わるかもしれません。

何らかの誘いや業務上の依頼を同期を通じて受けることがあるため、同期の中でも幅広い人脈を持っておくと仕事の幅は広がるでしょう。余り気の知れない同期でも普段から最低限の会話はしておくと良さそうです。もちろん悪い噂も同期を通じて広がることがあるため、いくら仲が良い同期だとしてもハメを外さないようにしましょう。

これだけは知っておきたいポイント(まとめ) 

1)出世するほど幅が広がる情報系職種のコミュニケーション

2)機械・電気・電子系職種は問題解決のためのコミュニケーション

3)化学・材料系職種はチーム内のコミュニケーション

4)最低限の会話は自分のためになる