大学院に進学するか、学部卒で就職するか・・・
この二択で迷う理系学生は多いのではないでしょうか?
高い学費を払い大学院に進学すると学部卒に比べて社会に出て働くのが二年遅くなります。
一方で学部卒はその二年間でお金を稼いでいます。
単純に考えると早く社会に出て働いている分、学部卒の方がお金を多く稼ぐのでは?と思う人もいることでしょう。
果たして、全体的に見たときに院卒は学部卒よりも収入の点で稼ぐことができるのでしょうか?
気になるお金の点を解説していきます。
院卒と学部卒の新卒年収差
院卒と学部卒では二年間の在学の差があり、院生はより専門的な知識や技術を身につけることが可能です。
そんな両者に就職後の年収に差は生まれるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう!
院卒年収
厚生労働省が行った調査「令和元年賃金構造基本統計調査結果の概況」によると院卒の初任給は、23万8,900円です。
また、院卒の新卒年収は平均309万円になります。
理系文系全ての一般的な新卒の平均初任給は約19万~21万円と言われているので、院卒の初任給は高めということがわかります。
(参考:令和元年賃金構造基本統計調査結果の概況)
学部卒年収
一方、先ほどの厚生労働省の調査によると学部卒の初任給は、21万200円です。
また、学部卒の新卒年収は平均で300万円という情報が出ています。
学部卒と院卒を比較しやすいように、同じ年齢の24歳時点での年収を見ると、学部卒の年収は平均で325万になります。
(参考:令和元年賃金構造基本統計調査結果の概況)
院卒の初任給は高めなはずなのにどうして社会人1年目の24歳時点では、学部卒より年収が低いの?と疑問に思う方もいるかと思います。
これは、2年間先に働いている実績が理由としてあげられます。
企業は働いている間の業績や業務への姿勢などを考慮し、給料をあげていくことがあります。
院卒生が勉強をしている2年間は学部卒の社会人にとって、毎日が新鮮であるとても重要な期間です。
また新卒ということもあり、やる気に満ちあふれているため、日々の業務に精を出している人はたくさんいます。
そのような頑張りがあると、毎月の給料だけではなく、年に何回か貰えるボーナスに反映されます。
そのため働き始めの1年目だけを見ると、学部卒の方がお金を稼いでいるという結果になります。
院卒と学部卒の年収に生まれる差額は?
初任給は、働いていた期間の差により学部卒の方が院卒より高いという結果になりましたが、「生涯年収」という全体的な視点から見るとどうでしょうか?
内閣府経済社会総合研究所が2014年に出した論文「大学院卒の賃金プレミアム」によると
男性の学部卒の生涯年収は2億9163万円
男性の院卒の生涯年収は3億4009万円
と院卒の方が4000万円以上高いことがわかりました。
生涯年収を比較すると院卒の方が学部卒より高い収入になります。
年齢が増えるごとに院卒と学部卒の年収の差は大きくなり、52歳まで年収の差は大きく開き、最大で約200万円もの年収差が生じると言われています。
その後徐々に差は縮みますが、全体的に見て、院卒の生涯年収の方が高いことは変わりません。
なので、院卒生は目先の給料で同い年の学部卒と比較し、気分が沈むことがないよう注意しましょう!
(参考:大学院卒の賃金プレミアム)
なぜ院卒の年収は高い?
上記のデータから学部卒よりも院卒の方が生涯年収は高いということがわかりました。
ここまで見てきて、なんとなく院卒の方が収入が多いと知っていた人も
「学部卒と院卒で年収の差がありすぎるのではないか・・・?」
「4000万円って家が買えるほどの金額だ・・・」
と驚いたのではないでしょうか?
では、一体なぜ両者にここまでの差が出るのでしょうか?
その理由を詳しく見ていきましょう。
院卒の給料を高く設定している企業が多い
皆さんは就活を進めている際に企業の採用実績データや募集要項など目を通しますか?
その欄に
院卒(〇〇万円)
大卒(〇〇万円)
短大・専門卒(〇〇万円)
高卒(〇〇万円)
と学歴ごとに異なる給与が書かれている情報を見たことがあると思います。
個人個人のスキルや熱意、業務への姿勢などを完全に把握できていない、そもそも業務に携わる時間が少なすぎてまだ業績を残すことができない期間の初任給などに限っては多くの企業では、学歴が高い順で給与も高く設定しています。
なので、特に特別なことをせずとも学歴の高い院卒の給与が一番高くなるのです。
もちろんこれはあくまで、よくある企業の給与形態の例です。
企業によって給与形態は様々で、初任給後は学歴ではなく実力主義という企業も多く存在しています。
給与に関する情報は募集要項などに記載している企業が多いので、気になる人は一度確認することをオススメします!
また、「採用実績データや募集要項に記載している情報=全て」というわけではない企業もあるので、積極的にインターンシップや説明会に参加し、何を基準に評価されるのか、ステップアップしている先輩社員に共通することなど質問しましょう!
専門知識を身につけている
院卒は大学院で二年間学ぶことにより、学部卒よりもより専門的な学びが増えます。
時間をかけて知識や技術を習得した院卒は、入社をする時点で即戦力となります。
一方で高卒や大卒は数年かけて社内で育成することが多いです。
両者を比べると院卒は社内での育成にかける時間も工数もかかりません。
また、自ら勉強することを選んだ院卒生の学びへの熱意や誠実さなどの理系学生としての姿勢や素養も評価されます。
企業目線から見ると、とても優秀かつ欲しい人材なのです。
そのため、企業も院卒を採用しようと、学生に直接オファーを送ったり、学校推薦などを活用しています。
院卒の年収が他の学歴と比べて高いのは、専門的な知識や技術を持ち、即戦力になりうる可能性が高いからと言うことができるのです。
理系と文系の年収差
ここまで、院卒と学部卒の年収額詳細と両者の年収に大きな差が生まれる理由について話してきました。
では、もう少し大きな枠組みの「理系と文系」では差が生まれるのでしょうか?
2011年に独立行政法人経済産業研究所が発表した「理系出身者と文系出身者の年収比較-JHPSデータに基づく分析結果-」という論文を参考にしていきます。
現在の日本では、年収は男女によって差があるので男女別で見ていきましょう。
男性の理系vs文系
・男性の理系出身者の平均年収 600万円
・男性の文系出身者の平均年収 559万円
理系、文系共に平均年齢は約46歳時点での年収の差は41万円でした。
女性の理系vs文系
・女子の理系出身者の平均年収 260万円
・女子の文系出身者の平均年収 203万円
理系の平均年齢は37.8歳、文系は44.67歳です。
年収の差は57万円でした。
(参考:理系出身者と文系出身者の年収比較-JHPSデータに基づく分析結果)
比較すると、理系出身者の方が平均年齢が低いにも関わらず、平均年収が高いという結果になりました。
なぜ理系は給料が高い?
男女別に理系と文系の平均年収の違いについて見ましたが、理系の方が文系よりも年収が多いのは一目瞭然でした。
さらに、女性の場合は、平均年齢の低い理系の方が平均年収が多いという結果でした。
20代より30代、30代より40代と基本的には、年を重ねるごとに毎月の給与も増え、年収が増えていく人が多い現状から見ると、理系就職者の高収入がうかがえます。
なぜ理系と文系の収入にはこれほどの大きな差が存在するのでしょうか?
それは理系と文系の持っている専門的知識やスキルの差が理由です。
専門的知識やスキルの差は院卒と学部卒の年収の差でも触れましたが、その視点で見ると理系と文系ではかなり大きな差が生まれます。
理系の学生は研究室などで専門的な知識やスキルを日々学んでいます。
その学んできたことを活かそうと意識し、就活を進めている学生も多いかと思います。
企業にとって、専門的知識をフルに活用し、即戦力となる可能性の高い理系学生の価値は高いと考えているのでしょう。
また、日本の大手と呼ばれる企業の大半がメーカー(製造業)というのも理由の一つです。
大手企業は高い給料が設定されている場合が多く、理系出身者はその大手企業に就職する可能性が高いです。
メーカーが今まで以上に発展・成長していくためには開発力や技術力が必要となります。
それら開発力や技術力に関しては、やはり専門的に学んでいる理系学生が得意とする強い分野となり、就職する可能性も高くなると言うわけです。
これら二つが主な理由となり、理系の給料は文系よりも高いという結果になります。
これだけは知っておきたいポイント(まとめ)
・院卒の年収は平均309万円
・学部卒の年収は平均で325万(24歳時点)
・学部卒の方が年収が多いのは二年間先に働いていた実績とボーナスのため。
・院卒と学部卒の生涯年収差額は約4000万円
・院卒の方が広い目で見ると年収が多い。
・院卒の方が収入が多いのはそもそも院卒の給与を高く設定している企業が多いことと専門的知識や技術を持っていること。
・文系より理系の方が給料は高い。
・理由は専門的知識や技術を持ち即戦力となる可能性が高いこととメーカーなどの大手企業に就職する可能性が高いこと。