理系就活生の皆さん、年収はキャリア選択の重要ポイントです。報道などでは新卒の給与が話題ですが、初任給だけでなく賃金の伸びも検討材料のひとつ。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、大企業の20代後半男性の平均賃金は26.7万円であるのに対し、小企業は23.8万円です。こうした差は年齢とともに拡大し、生涯賃金では5,000万円の差がつくことも。また、初任給や平均年収は業界によっても大きく差が出てきます。
本記事では年収を学歴別・業界別に比較し、理系就活生の将来設計に役立つリアルな年収事情を徹底解説します。
※本記事の内容は2025年6月22日時点の情報を記載したものです。
理系の年収、データで見ると?
ここでは、最新データに基づいた理系全体の年収事情に加え、学歴や性別による違いを詳しく見ていきましょう。
理系と文系の年収差は?
理系・文系を比較する公的データはありません。しかし、京都大学が2010年に大学卒業以上の学歴を持つ就業者1600人を対象に行った「理系学部出身者と文系学部出身者の平均年収の比較調査の結果について」では、次のことが明らかになりました。
・文系出身者の平均年収は583万円
・理系出身者の平均年収は681万円
上記の数字を40年間の勤続年数に基づいて生涯年収に換算してみると、文系出身者は2億3320万円・理系出身者は2億7240万円となります。
平均年収ではおおよそ100万円程度、生涯年収では約4000万円程度、理系出身者が文系出身者を上回っていることが分かります。
あくまで目安となりますが、一般的には理系出身者の方が収入面で優位な傾向があると言えるでしょう。
令和5年度 新卒の平均初任給は?
厚生労働省が発表している「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、大学卒の初任給の平均は23万7,900円、大学院卒では27万600円となっています。文系・理系を合わせた全体平均ですが、理系は専門性が高く特に研究開発職やITエンジニアなどは高い水準にある傾向が見られます。
学部卒・院卒の初任給・平均年収比較
理系において、学部卒と院卒では初任給やその後の年収にどのような違いがあるのでしょうか?職種や企業規模によっても差はありますが、一般的には学部卒よりも院卒の方が賃金の伸びは高くなっていく傾向があります。
【初任給と全年齢を通じた平均賃金の比較】
学部卒 | 大学院卒 | |
初任給(千円) | 237.3 | 276.0 |
平均賃金(千円) | 369.4 | 476.7 |
初任給の段階では数万円程度の差ですが、キャリアを重ねるにつれて上記の差は開いていく傾向にあります。大学院で培った専門知識や研究経験は高度な技術を要する職種において高く評価され、昇進や昇給のスピードにも影響を与えるケースがあるためです。特に、企業の研究開発部門や高度な専門知識が求められるコンサルティングファームなどでは院卒が有利となる場面も少なくありません。
男女別初任給と平均賃金
男女間の賃金格差は社会全体で問題視されていますが、理系の新卒採用においてはどうでしょうか。先述の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、大学卒の男性と女性、大学院卒の男性と女性の初任給と平均賃金は以下のようになっています。
【男女別初任給と全年齢を通じた平均賃金の比較】
学部卒男性 | 学部卒女性 | 大学院卒男性 | 大学院卒女性 | |
初任給(千円) | 240.3 | 234.3 | 283.2 | 260.8 |
平均賃金(千円) | 399.9 | 299.2 | 491.1 | 407.8 |
上記のデータを見ると、大学卒・大学院卒とも初任給も平均賃金も男性の方が高い傾向にあります。しかし、大学院卒ではその差が縮まっていることも見て取れます。
大学院に進む女性が増え、より専門性の高い分野で活躍する女性が増えてきたことの表れかもしれません。ただし、上記の数字はあくまで平均であり、個別の企業や職種によっては「男女差がほとんどない」「女性の方が高い」ケースも存在します。
理系の業界別年収を徹底比較
理系学生が活躍できる業界は多岐にわたり、各業界で年収水準やキャリアパスは大きく異なります。
ここでは、厚生労働省の統計データなどに基づき、主要業界における大学院卒の初任給を中心に各業界の特徴と年収水準の傾向を解説します。
【大学院卒業界別初任給】
※上記の初任給はあくまで目安であり、企業規模(大企業・中小企業・ベンチャー)、地域、個別の企業戦略、景気動向などによって変動します。また、職種によっても大きく異なる場合があります。
各業界の特徴と年収水準の傾向
業界別に年収水準の傾向を見ていきます。
IT・情報通信業
近年最も成長著しい業界の1つであり、特に情報系の専門知識を持つ人材にとっては非常に魅力的な選択肢です。技術の進化が速く常に新しい知識・スキルの習得が求められますが、成果に応じた高年収が期待できます。特に、外資系企業や急成長中のスタートアップでは年収水準が高い傾向にあります。
コンサルティング業
高度な問題解決能力と論理的思考力が求められる業界です。特に、戦略系やIT系コンサルティングファームでは専門知識を持つ院卒者が重宝され、非常に高い初任給を提示されるケースもあります。激務なイメージも強い業界ですが、短期間で圧倒的な成長を遂げられ、その後のキャリアパスも多様です。
医薬品・医療機器業
人々の健康に直結する製品を扱うため、安定した事業基盤を持つ企業が多いです。研究開発に膨大な投資を行うため、大学院で専門分野を深く学んだ理系人材が不可欠とされています。年収水準も比較的高く、充実した福利厚生も魅力の1つです。
総合電機・精密機器業
日本のモノづくりを支える基幹産業であり、多様な製品開発に携われます。グローバル展開している大企業が多く、安定した年収と充実した研修制度が特徴です。技術革新が常に求められるため、知的好奇心旺盛な理系学生に適しています。
化学・素材業
基礎研究から応用まで幅広い分野があり、人々の生活に不可欠な素材や製品を生み出しています。専門性が高く、特許などの知的財産が企業競争力の源泉となるため、長期的な視点での研究開発が多く行われます。
自動車・輸送機器業
自動車・輸送機器業は日本の主要産業の1つであり、世界をリードする技術力を持つ業界です。電気自動車(EV)や自動運転といった新たな技術革新が進む中で、機械、電気・電子、情報系など幅広い理系人材の需要が高まっています。
大規模な研究開発体制を持つ大企業が多く、安定した年収と充実した福利厚生が期待できます。グローバルに事業を展開しているため、海外勤務のチャンスも豊富です。
建設業
社会のインフラを支える重要な産業であり、建築物や土木構造物の設計、施工管理などに携わります。現場での経験が重視される傾向にありますが、近年はBIM/CIMなどのデジタル技術導入や環境配慮型の技術開発が進んでおり、高度な専門知識を持つ理系人材(特に建築、土木系)の需要が高まっています。建設業は大規模プロジェクトに携わる機会が多く、社会貢献を実感しやすい点も魅力の業界です。
食品・飲料業
私たちの日常生活に密接に関わる製品を扱うため、景気に左右されにくい安定した需要があります。研究開発職では、新商品の開発や品質管理、生産技術の改善などに貢献します。他業界と比較して年収水準はやや落ち着いている傾向にありますが、生活の安定性や働きやすさを重視する方には魅力的な業界です。
金融業(システム部門など)
伝統的な金融機関でも、近年はフィンテック(FinTech)の急速な発展に伴い、ITやデータサイエンスの専門知識を持つ理系人材の需要が急増しています。院卒者の割合が圧倒的に高く高度なITシステム開発やデータ分析、リスク管理など理系の論理的思考力や分析能力が求められる業界です。高い年収が期待できる一方で、専門性と責任も大きいです。
シンクタンク・調査業
高度な専門知識と分析力、リサーチ能力を駆使して、企業や官公庁の課題解決や政策立案を支援する業界です。経済・社会・技術など多岐にわたる分野で、データに基づいた洞察や提言を行います。専門性が非常に高く、大学院で培った研究能力や論理的思考力がダイレクトに活かされるため、院卒の活躍の場が多いのが特徴です。
理系院卒と学部卒の違いとは?
求められる選考基準が異なる
院卒と学部卒の違いの1つ目は、求められる選考基準が異なることです。
企業は学部卒を採用する際、将来性を重視しています。
学部卒は通常20代前半で就職活動を行うため、企業はじっくりと成長させるための研修を重視しています。
教育の成長の可能性や、企業に貢献できる人材となる見込みがあるかどうかが重要なポイントです。
一方、大学院卒の場合は学部卒と比べて2〜5年遅れて社会に出ます。
その分、院卒は学部卒より高い専門性が求められます。企業は、院卒学生が即戦力として活躍できる人材かどうかを見ています。
実務経験を積むか専門性を高めるか
院卒と学部卒の違いの2つ目は、実務経験を積むか専門性を高めるかです。
学部卒には、院卒よりも2年早く実務経験を積むことができるメリットがあります。
年収は大学院卒の方が高いかもしれませんが、早期に就職すれば仕事のスキルを磨きながら年収アップを目指せます。
一方で、院卒は進学したことで専門性を深めています。
大学院では、学部の4年間では習得しづらい専門性やスキルを習得できます。
一部の企業では研究職・開発職・文系の法務などの特定の部署において、高い専門性を持った学生を採用したいと考えています。そのため、大学院を卒業した方が就職の有利になる場合もあります。
キャリアの選択肢が異なる
院卒と学部卒の違いの3つ目は、キャリアの選択肢が異なることです。
院卒の場合は研究を活かして専門職として働くことが一般的です。しかし、学部卒の場合は様々な部署を経験したり、管理職へ進んだりする道があります。
同じ会社でも異なるキャリアを歩むため、院卒と学部卒ではキャリアビジョンも異なります。
エントリー時には、先輩社員の声をまとめた紹介を確認したり、OB・OG訪問で入社後のキャリアについて調べるておくと良いでしょう。
給与以外の待遇はほぼ変わらない
院卒と学部卒の違いは、給与以外の待遇ではほとんど変わらないと言って良いでしょう。
同じ会社で同じ雇用形態で雇われている場合、福利厚生や労働環境に差が付くことはありません。
差が付くとすれば部署異動やキャリアステップに関わる面ですが、企業によって異なるためエントリー時に確認しておきましょう。
生涯賃金から考える!学部卒と院卒の未来
ここでは長期的な視点に立ち、「生涯賃金」という観点から学部卒と院卒のキャリアを比較し、「大学院の学費がどのくらいで回収できるのか」をシミュレーションしてみましょう。
生涯賃金比較 学部卒 vs. 院卒
生涯賃金とは、新卒で就職してから定年退職するまでの間に企業から支払われる賃金の合計額です。大学院進学の費用対効果を考える上で、生涯賃金は非常に重要な指標となります。
2014(平成26)年に内閣府経済社会総合研究所が発表した「大学院卒の賃金プレミアム」によると、男性の場合、大学院卒は大学卒よりもさらに約5,000万円高いというデータがあります。
【大学卒・大学院卒の男女別の生涯賃金比較】
大学 | 大学院 | |
男女計平均 | 2億8587万円 | 3億3362万円 |
男性 | 2億9163万円 | 3億4009万円 |
女性 | 2億6685万円 | 3億1019万円 |
(上記は大学卒男性64,484人、大学卒女性19,519人、大学院卒男性5,396人、大学院卒女性804人を元に推計された数値)
上記のデータから言えるのは、学部卒と院卒の間には生涯で約5千万円の賃金差が生じる可能性がある点です。
生涯賃金の差は、院卒が持つ高度な専門知識や研究能力が企業内でより高い職位や専門職として評価され、結果として高い給与水準に繋がる点に起因します。特に、研究開発職や高度な技術を要する職種では、院卒者の法が早い段階での昇進や高給与を得られるポジションへの就く可能性が高まります。
大学院の学費回収シミュレーション
大学院に進学する場合、学部卒よりも2年間(修士課程の場合)社会に出るのが遅れることに加え、その間の学費や生活費がかかります。ここでは、学部卒との初任給の差額に着目し、学費をどれくらいの期間で回収できるかシミュレーションしてみましょう。
【シミュレーションの前提条件】
・学部卒の初任給(月額平均): 24万円
・院卒の初任給(月額平均): 28万円
・月々の給与差額: 4万円(院卒の方が高い)
・国立大学院の学費(修士2年間合計):
入学金:28万2,000円
授業料:53万5,800円/年 × 2年 = 107万1,600円
・合計学費:約135万円
・私立大学院の学費(修士2年間合計):
文系・理系、大学によって大きく異なるが、年間100万円〜150万円程度が目安。
合計学費:約200万円〜300万円(ここでは平均として250万円と仮定)
・その他コスト: 学部にいる間のアルバイト収入機会損失、生活費等(今回のシミュレーションでは単純化のため考慮しない)
【学費回収期間の算出】
月々の給与差額による回収期間(月数) = 合計学費 ÷ 月々の給与差額
1. 国立大学院の場合
・学費合計:約135万円
・月々の給与差額:4万円(※差額は年々開いていきますが、ここでは初任給の差を元に計算します)
回収期間 = 1,350,000円 ÷ 40,000円/月 =約 34か月(2年10か月)
2. 私立大学院の場合
・学費合計:約250万円
・月々の給与差額:4万円
回収期間 = 2,500,000円 ÷ 40,000円/月 = 約63か月(約5年3か月)
【シミュレーション結果の考察】
シミュレーションからわかるように、初任給の差額だけでも国立大学院の学費であれば約3年弱、私立大学院でも約5年余で学費分を「回収」できる可能性があります。
しかし、あくまで「学費」に限定したシミュレーションであり、実際には以下の点も考慮する必要があります。
・社会に出るのが2年遅れることによる機会損失: 学部卒が2年間働いて得られる給与や経験は、シミュレーションには含まれていません。
・キャリアアップによる給与上昇: 院卒は学部卒に比べて、その後の昇進や専門手当などにより、給与の上昇カーブが急になる傾向があります。年数が経つほど回収期間が短縮される効果を生み出します。
・奨学金の有無や種類: 奨学金を借りている場合、返済も考慮に入れる必要があります。
・研究の成果や経験: 大学院で得られる専門知識・研究能力・論文発表・学会発表などの経験は、単なる賃金差額以上の価値を持ちます。上記の経験が、将来的にさらに高収入な職種や企業への転職に繋がる可能性もあります。
したがって、大学院への進学は長期的なキャリア形成、専門性の深化、そして生涯賃金の視点から見ても十分な投資対効果が見込める選択肢です。特に、「特定の研究分野で最先端の知識を身につけたい」「研究開発職や高度な専門職を目指したい」理系学生にとっては、非常に有効なステップとなります。
年収の高い企業に就職する方法
高い専門性を身につける
院卒の方が年収が高くなる理由はいたってシンプルで、専門性が高いためです。
院卒の場合、学部卒と比べて最低でも2年間は専門的な知識を身につけていきます。
院卒の場合は、研究の内容も深まり、実績も学部卒と大きく異なります。
学部卒の場合、研究室に配属されるのは4年生の1年間だけです。
一方で院卒の場合にはプラスで2年間も研究をおこなう期間があります。
院卒の人材は専門的な知識と研究経験・実績があるため、企業にとっては高い専門性を身につけた人材とみなされます。
高い専門性は給与・年収に直結するため、院卒の方が年収が高くなるという仕組みです。
研究と就活を両立させることが重要
理系の大学院生は、学部生と比べて就活に費やせる時間が少なく、就活を始める時期が遅れたり、インターンシップやイベントに参加する機会が少なかったりする可能性があります。
これから大学院に進学する方は、入学前に志望動機や自己PRを準備しましょう。
まだ就活準備に取りかかれていない大学院生の方は、日頃の研究や講義に取り組みながら、就活に充てる時間を増やしていってください。
就活スケジュールに注意が必要
博士課程に進まない場合、大学院の期間は2年です。
大学院に進学する場合は、1年目から就職活動をスタートしなければなりません。
研究内容も深くなる上に、就職活動も進めなくてはいけないため、大学院生のスケジュールはかなりハードになります。
大学院に進学する方は、引率の就活スケジュールを把握して、学部の内からコツコツ準備を進めておくことをおすすめします。
早期から就活の準備を進める
年収の高い企業は、大手人気企業や専門性の高さが問われる企業です。
自ずと、年収の高い企業に入社するのは狭き道となります。
年収の高い企業に入社するためには、ほかの理系就活生よりも早い段階から就活を始めましょう。
企業からすれば、「あなたと同じくらいの大学を出た、同じくらいの専門性を持つ理系就活生」はたくさんいます。
同じレベルの理系就活生の中から頭一つ抜きん出るためには、準備を念入りにすることが大切です。
まずは就活スケジュールを始めて、目標のためにいつから行動しはじめればいいのか確認してみましょう。
逆求人型サイトを活用する
年収の高い企業に入社するためには、逆求人型サイトを活用するのもおすすめです。
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初任給で企業を選ぶ際の注意点
初任給の高さは競争率の高さ
初任給で企業を選ぶ際に注意すべきこと1つ目は、初任給の高さは競争率の高さであることです。
初任給が高いのは、企業が新卒者に対して、その給料に見合う専門性や能力を期待しているからです。高い給与に見合う人材になれるよう、努力しましょう。
高い初任給を支給する企業は、理系就活生の志望率も高くなります。
レベルの高い理系就活生と競うことを覚悟して、就活準備を念入りに行いましょう。
みなし残業代や固定残業代に注意
初任給で企業を選ぶ際に注意すべきこと2つ目は、みなし残業代や固定残業代に注意することです。
初任給が基本給であれば問題ありませんが、このような記載がない場合、諸手当が含まれている場合があります。
諸手当には、残業代や住宅手当、通勤手当などが含まれています。
特に、一定時間の残業手当が給与額に含まれている「みなし残業代」「固定残業代」には注意が必要です。
一見して額面が高くとも、手当も含めた合計の手取りでは低くなってしまうこともあります。募集要項をよく確認してみましょう。
固定残業代は、計上されている時間を超えた残業については、別途残業代として受け取れます。一方、みなし残業代を採用している場合、深夜割増や休日割増の賃金、週に40時間を超える残業を行った場合の割増賃金も支払われません。
給与が高くても、自分にあったスタイルで働けるのかはわかりません。
ワークライフバランスや体力、年齢を重ねた時のことを考えて、総合的に判断しましょう。
初任給が高い分求められるものが大きい
初任給で企業を選ぶ際に注意すべきこと3つ目は、初任給が高い分求められるものが大きいことです。
理系の場合、文系よりも初任給が高い傾向にありますが、給与に見合うスキルを求められることを忘れてはなりません。
特に、IT業界やコンサルティング業界、ベンチャー企業は初任給が高い傾向にあります。
優れた実力を持つ学生を確保する企業は、裏を返せば実力主義と言えます。
実力が認められれば、20代のうちに昇進して高収入を得ることも可能です。
収入を重視する方は、実務で役立つスキルを磨きましょう。
初任給を優先しすぎるとギャップが生まれる
初任給で企業を選ぶ際に注意すべきこと4つ目は、初任給を優先しすぎるとギャップが生まれることです。
給与の高さは就職先を選ぶ上で重視したいポイントですが、あまりに初任給ばかりを優先すると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。
志望企業を選ぶ時は給与だけでなく、残業時間などの待遇・社風・昇給などの項目もしっかりチェックしましょう。
入社後にギャップを感じて3ヶ月も経たないうちに辞めてしまっては、もったいないです。
給与を含めて、総合的に「自分に合っていて、入社後も腰を据えて働けそう」と思う企業にエントリーすることをおすすめします。
FAQ|理系就活生の年収に関するよくある疑問に答えます
ここでは、理系就活生の年収に関するよくある疑問を5つピックアップして紹介します。
Q1. 院卒でも初任給が低い業界はありますか?
A1. 残念ながら、あります。大学院で専門性を深めても、全ての業界で高額な初任給が保証されるわけではありません。例えば、伝統的な製造業の一部や公共性の高い業界、あるいは人件費が厳しく設定されている中小企業などでは院卒であっても学部卒と大差ない初任給となるケースが見られます。
重要なのは、業界全体の傾向だけでなく個別の企業規模や「理系人材、特に研究開発にどれほどの投資をしているか」を見極めることです。年収は低くても、働きがいや福利厚生が非常に充実している企業、あるいは将来的な成長性が高く、数年後に大きな昇給が見込まれる企業もあります。初任給だけで判断せず、総合的な視点を持つことが大切です。
Q2. 博士卒の初任給はどのくらいですか?
A2. 博士課程修了者(博士卒)の場合、修士卒(院卒)よりもさらに高い初任給が期待できる傾向にあります。具体的な金額は業界や企業、博士課程で研究した専門分野によって大きく異なります。しかし、大手企業の研究開発職や外資系企業、コンサルティングファームなどでは修士卒の初任給に加えて月額数万円〜10万円程度の「博士手当」が上乗せされるケースも少なくありません。
平均的には、修士卒の初任給から2万円〜5万円程度高い29万円〜35万円程度が目安となるケースが多いです。ただし、博士卒の採用枠は修士卒に比べて圧倒的に少なく、より専門性が限定されるため、企業選びの際には注意が必要です。大学や研究機関に進む道もありますが、企業就職を目指す場合は自身の研究内容が企業のニーズと合致するかをよく検討しましょう。
Q3. 文系と理系で年収に大きな差はありますか?
A3. 一般的に、新卒の段階では理系の方が文系よりも初任給が高い傾向にあります。理系が持つ専門性や技術力が企業の製品開発や研究、システム構築など、直接的な利益に繋がりやすいためと考えられます。特に、IT・医薬品・製造業などの分野では理系人材が不可欠であり、高い専門性が評価されるためです。
生涯賃金においても、理系大学院卒は文系大学卒と比較して数千万円単位で生涯賃金が高くなる傾向が見られます。しかし、最終的には個人の能力や努力、キャリア選択によって大きく変わることを理解しておきましょう。
Q4. 初任給が高い企業は激務なのでしょうか?
A4. 一概には言えませんが、初任給が高い企業ほど業務量が多く激務である傾向が見られます。特に、IT業界のベンチャー企業や外資系コンサルティングファーム、一部の金融機関などでは若いうちから高いパフォーマンスが求められ、長時間労働になりやすいです。
高い年収は、見合う成果や責任が伴う対価として支払われているケースが多いからです。しかし、近年は「働き方改革」やワークライフバランスを重視する動きが広がっており、高年収でも効率的な働き方を推奨する企業も増えています。入社前に企業の口コミサイトやOB・OG訪問などを活用し、実際の働き方や残業の実態について情報収集することが非常に重要です。
Q5. 大学院への進学は、必ず年収アップにつながりますか?
A5. 必ずしも「100%確実に年収アップに繋がる」とは言い切れませんが、年収アップに繋がる可能性は非常に高いです。特に理系の場合、大学院で専門分野を深く掘り下げて高度な研究能力や問題解決能力を身につけることは、より専門性の高い職種や研究開発部門への就職に有利に働きます。結果として、初任給の引き上げや、その後の昇給・昇進のスピードアップに繋がりやすくなります。
しかし、年収アップの恩恵を最大限に受けるには大学院での研究内容と就職希望先の企業・業界のニーズがマッチしていることが重要です。また、ただ進学するだけでなく研究活動で主体的に成果を出し、経験を就職活動で効果的にアピールすることも不可欠です。漠然と進学するのではなく、将来のキャリアパスを明確にした上で大学院を選ぶことが年収アップへの近道となります。
まとめ
本記事では初任給や生涯年収など、給与に焦点を絞って大学卒と大学院卒の比較を行いました。
企業規模や業界、職種によっても異なりますが、理系の学部卒の平均初任給が23.7万円であるのに対し、大学院卒の平均初任給は27.6万円となります。この初任給4万円の差が、生涯年収となると、5,000万円もの差を生みます。
就職先を検討する上で、給与は大きな判断基準の一つです。しかし、それだけではないのも、また確かです。
給与ばかり見ていると、社風や残業時間など、思わぬところでギャップを感じてしまう可能性もあります。
入社後に後悔しないためにも、企業研究を念入りに行って、自分に合う企業を見つけましょう!