就活生の皆さんにとって志望する企業に入れるかどうかが一番の懸念点だと思いますが、入社後のステップアップについて考えたことはあるでしょうか?
会社は入社するまでが大変ですが、一度仕事を覚えてしまうとその後は案外、楽に昇進することができます。課長などになるまでの間は上司に言われたことをできれば良く、ミスをしてもマイナス評価されにくいためです。成果主義の導入が進んでいるとはいえ日本企業に根付いた年功序列の文化は消えにくく、昇進は年齢によって決まることになります。
ただし40代以降はそうはいきません。自分自身が部署の上層部となるため、自分で仕事や事業を生み出す必要があります。仕事の成果が評価につながり、年収と昇進具合は同期でも上下するようになるでしょう。
企業の採用活動は、40代から会社を牽引してくれるリーダー人材かそうでないかということも念頭に置いて採用選考がなされています。40代から伸びる人材はどういう特徴を持っているかを知り、就職活動での自己PRに活かしましょう。
40代から何が変わるか
若手は目の前の業務
入社して数年は業務を通じて技術を蓄積する期間です。同じ分野といえどアカデミアとは異なるアプローチで業務に取り組むことがあり、企業独特の考え方や行動ルールを習得しなければなりません。業務も逐一、上司から指示を受けて実施するため、一週間後の業務内容が予測できないという場合もあります。
短期スパンで目の前の業務に取り掛かるのが新人の仕事です。企業や部署によってはルーティン作業ばかりを任されるため、つまらないと感じるかもしれませんが単調な作業でも何か学べることがないか探してみましょう。例えば、自分が経営者であったり商店主であると仮定して、より素晴らしい成果や仕事の納品ができないかを考えてみるという姿勢を持つと学べることや気づきも多くなるはずです。
また、上司によっては指示するのみで業務の背景や目的を伝えない人もいます。単に業務をこなすだけでは勉強にならないため、何のための業務であるか上司に確認して、把握するようにしましょう。一方で、理屈っぽく何事も理解しなければ行動できないということは敬遠されます。なぜなら、まず行動することで気づけて学ぶことができることも多いからです。
「とにかくやってみな」という時は、とにかくやってみて、そのうえで必要に応じて上司に意図や目的を確認するとよいでしょう。
昇進するほど長期スパンで考える
昇進するほど業務が長期スパンになり関わる人も増えていくでしょう。新人の間はマンツーマンで上司と業務にあたることが多いものの、30代になると数人の部下を抱えるようになり、月・年間を通したテーマを抱えることになります。納期もシビアになるかもしれません。
与えられた業務を時間内にこなすことが新人の業務ですが、中堅は期日までに課題をどう解決するか考えなければなりません。長期スパンで物事を考えられない人は、新人時代に優秀と言われていても、昇進後に存在感が薄まってしまうでしょう。
昇進してから急に長期スパンで考えようとしても上手く行きません。新人の間から上司の仕事内容を把握し、どのような方法で取り組んでいるか把握するようにしましょう。基本は会社や部署の大方針を把握して、そのうえで自身がプラスαで何ができるかを考えることにあります。自身の見えている仕事の範囲とスパンを広く、長くしていきましょう。
40代からは俯瞰的立場に
40代から課長、50代から部長というのが日本企業のスタンダードな昇進です。管理職になると長期スパンで考える上に広い視野をもって仕事をしなければなりません。開発職であれば営業と調整しながら、どのような製品・サービスが好まれるのか把握する必要があります。生産職であれば開発と相談し、安全かつ合理的に生産するプロセスを考えるようになるでしょう。
中堅までは部署内で完結する業務に携わることが多いですが、管理職は関係先と連携しながらの業務が多く発生します。人によっては関係先との連絡が業務のほとんどを占めるかもしれません。
技術だけでなく人事や予算、市場状況や関係先の事情やリスク評価を含め、俯瞰的視野をもって考える必要があります。もちろんこうした視野も数日で身に付くものではなく、若手の間から頭の中でシミュレーションし、徐々に身に付ける必要があります。ちなみに幅広い視野で考えるのが苦手という方はより狭い技術範囲を追求する職種を狙うという戦略をとると良いでしょう。
40代から伸びない人の特徴
仕事を生み出せない
新人は与えられた仕事をこなしますが、昇進すると仕事を考える側になります。これは職種や業種を問わず一律にいえることです。
開発職の場合、若手や中堅はテーマに沿って研究開発を進めますが、そのテーマ自体を考えるのが管理職の仕事です。技術営業であれば単に客先を回るのが中堅までの仕事であるのに対し、管理職は顧客や他部署と相談し、営業ルートや方針を決定します。
仕事を生み出す能力は単にこなす能力と全く別物であり、積極性だけでなく責任感や想像力が無ければ難しいかもしれません。
そして自ら仕事を生み出せない人は昇進の機会が断たれることになります。
仕事を生み出していく能力の身につけるためのおすすめの方法は、業務改善です。現在自身が取り組んでいる業務のあるべき姿を想像して、そのあるべき姿と実際との差分(デルタ)を書き出して、業務を理想的な状態にすべく改善を行っていくことは、プロジェクトの推進能力や(改善を行う)発想力、現状を疑い柔らかな思考を行う訓練ができます。
仕事人としての最初のうちは常に業務を改善できないかや、仕事のクオリティを挙げられないかを考えながら仕事をするとよいでしょう。
コミュニケーション能力が欠けている
これはかなり多くの人に見られますがコミュニケーション能力が欠けている人は40代から昇進しにくい傾向にあります。どんなに優秀なプランを構築できる人であっても相手に伝える能力が無ければ連携先や部下、上司はその人を評価できません。
間違った伝え方をしたために部下が全く異なる方向で業務を進めてしまう事もあります。専門技術を伝えるための論理的コミュニケーション能力が必要となるでしょう。また、人は心で動く生き物です。単に効率的な業務を生み出すだけでなく、相手への気遣いも必要になります。一緒に仕事をしてやりがいを感じられるような人になるためにも基本的なコミュニケーション能力が欠かせません。後述する社内政治という意味でもコミュニケーション能力は重要です。
技術が身についていない
昇進しない人の中にはそもそも専門技術が身についていないということが多々見られます。若手の間に何も考えず業務を取り組んでいれば、業務に必要な理論・知識を習得できません。そして将来を考えずに単調に過ごしていれば技術を身に付けようという意識も得られないでしょう。こうした社員が昇進しても課長以上に伸びないかもしれません。
これまで日本は年功序列が根強く課長までは順調に昇進できることが多かったものの、今後は功績主義が取り入れられる傾向にあるため、技術のみではなく市場や業務に関する知識が欠けている社員はこれまで以上に淘汰されやすくなります。
若手の間から与えられた業務の意味や背景を理解し、自分が管理職だったらどう計画するか考えるようにしましょう。将来のことを考えた上で計画することによって、しっかり勉強しようというインセンティブが働きます。また、他者がどのような仕事をしているか把握することで自分の範囲以上の知識が得られるようになります。
伸びるために必要な能力
仮説を立て検証する能力=仕事を作る能力
40代から伸びる社員は仕事と収益や有益性を生み出すことができる社員ですが、仕事を作るには仮説を立てて検証する能力が求められます。業務計画の立案には様々な案を考えその中から最適なものを選択します。
仮説を立て結果を想像する能力が無ければ業務を計画できないでしょう。
また、部下が遂行した業務の結果を検証する能力が無ければ、業務から何も学ぶことはできず、次の計画を立てることができません。こうした能力を得るためにも若手の間から自分の業務を検証するクセを身に付けるようにしましょう。
企業によっては若手が業務だけをこなし、立案と検証は上司の仕事として分けられている場合がありますが、若手であっても積極的に考えなければなりません。アカデミアにおいては、大学院で仮説・検証の能力が身に付けられることが多いですが、学部卒であっても入社後に身に付けることができます。
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論理的思考力
論理的思考力は物事や事象の因果関係を正しく整理し把握する能力のことで、理系就職では欠かせない能力の一つです。「なぜなぜ分析」とも言われますが、業務や実験結果の検証に必要な能力といえます。設計したシステムが上手く動かない、論文通りに化合物を合成したはずなのに目的物が得られないなど、上手くいかないことには必ず原因があり、原因を特定するために論理的思考力は欠かせません。
そして論理的思考力は新人でも必要な能力であり、普段の業務から身に付けることができる能力です。つまり、若手の間から訓練をしていたかどうかで40代以降の出世が決まるといってよいでしょう。
ちなみに論理性は専門分野だけでなく人事や人間関係でも求められます。部下が上手く業務をこなせない場合、その原因を追求し、どのように変更したら上手くいくのか考えてみましょう。
プラスαを考える想像力
専門技術、論理的思考力、コミュニケーション能力を有する社員が昇進する傾向にありますが、さらにその上を目指すにはプラスαの能力が求められます。
センスや窮地に陥った時の突破力と置き換えても良いでしょう。困ったときに思いつく異なるアプローチがプラスαであり、思いつくためには分野外の知識が必要です。しかしながら自分が携わる専門分野の情報・特許だけを読み漁っていては、その分野の知識しか身に付きません。周辺範囲や時には全く他分野の知識を身に付ける必要があります。
プラスαを思いつくための基板として他部署の技術資料から勉強するという方法も良いですが、アカデミアでも身に付けることができます。特に大学は様々なジャーナルと契約しており、幅広い分野の論文を漁ることが可能です。
自分と異なる分野の論文をあえて読んでみるといった方法でも良いでしょう。
また、先にも述べたように現状の改善などを考えるということも、当たり前のように存在していることや目の前の常識を疑い、頭を柔らかくして改善に取り組みますので、プラスαを考える訓練になります。
これだけは知っておきたいポイント(まとめ)
1)昇進するほど長期になり、視野も広がる
2)仕事を作れる人が出世する
3)業務改善に取り組むことで様々な能力を向上させることができる