企業の採用担当は、その年に採用したい学生像を明確に持っています。学歴や学部、個人の資質など、重視するポイントは企業風土や会社の状況によって様々です。

個々の企業が求める学生像を知るために「企業分析」は必須ですが、多くの企業が共通して好ましいと考える資質についても併せて知っておくべきかと思います。

この記事では、企業が採用したい理系人材に共通する資質や、反対に敬遠される性質について解説していきます。

【人事採用担当者の視点理解】理系就活の中で企業が採用したい人材に共通する資質

企業の多くが新卒採用者に求めるものは「採用後の成長性」です。

新卒採用を実施する企業の大半は、採用者を即戦力としては考えていません。学生時代のバックグラウンドを活かし、採用後どれだけ成長してくれるかに重点をおいています。

一方で、終身雇用が一般的だった過去に比べ、企業が新卒者育成に割ける時間やコストの余裕がなくなっているのも事実です。

グローバル化による優秀な海外人材の流入もあり、外資系企業的な考え方を持つ、即戦力重視の人事担当者も徐々に増えつつあります。

つまり、現代の新卒採用で求められるのは、なるべく短い教育期間で戦力として成長し、求められた成果を出せる人材といえます。

では、成長と成果へのコミットを両立できる人材には、どのような資質が必要なのでしょうか。

好奇心と行動力

「好きこそ物の上手なれ」というように、人は興味のあることについては自ら進んで勉強し、上達していきます。好奇心を持って仕事に取り組む人材は、指示を待たずに自ら行動できる人材として好感を持たれます。

好奇心を、すぐに行動力へ繋げられるスピード感も重要なポイントです。

開発や分析などの業務に携わる理系人材には、気づきや閃きの能力が求められますが、これらは仮説と実証を繰り返す中で磨かれます。

好奇心に連動する行動力を併せ持った人材は、採用担当者に評価される資質といえます。

チャレンジ精神とやり遂げる力

学生時代から困難なことに挑んできた人は、チャレンジ精神を深掘りしてアピールすることをおすすめします。

社会に出てからは、正解の無い課題に挑む場面に多く遭遇します。失敗のリスクをとってチャレンジできる人材は、それだけ成長のポテンシャルを秘めた人材といえます。

チャレンジ精神は、挑んだ事実だけでは完結していません。始めたことを責任をもって最後までやり遂げる力が同時に求められます。

チャレンジ精神をアピールするのであれば、途中で投げ出さずに最後までやり遂げたエピソードは必須です。仕事に対して、責任を持って取り組む人材であることを意識して伝えましょう。

謙虚さと素直さ

新入社員として入社した場合、ほとんどの社員が上司にあたります。つまり、「謙虚で周囲と協調できる人物」「アドバイスや指導を素直に受け入れる人物」といった、部下として好まれやすい資質も重要視されます。

ただし、謙虚さと素直さを「消極性」ととられないように注意が必要です。「自主的に考えて行動できない人物」「自己主張のできない人物」などと誤解されないように気をつけましょう。

謙虚さのアピールは、自分の成功体験と対にすることで相乗効果を得られます。

例えば、卒業研究を評価された自己PRをする場合、以下のようなコメントを締めの一文として加えます。

「研究当初の仮説に誤りがあり、先輩の〇〇さんに矛盾点を指摘していただいたことで、研究の方向性を修正することができました。今回の成果までたどり着いたのは〇〇さんの指導のおかげです」

自分の成果を過度に主張せず、同僚や上司からの指摘をポジティブに受け入れられる人材とみなされ、評価に繋がります。

学び続ける姿勢

理系の専門職では、継続して学び続ける力を重要視されます。特に研究職やIT職の場合、競合分析や新技術への理解など、自主的に知識をアップデートし続けられる資質が求められます。

スポーツやアルバイトを続けた経験は、継続力をアピールできる格好のエピソードですが、成長過程からつながる具体的な成果や実績についても、必ず交えるようにしましょう。

学び続ける姿勢とレベルアップした経験を紐づけることで、自己PRの説得力に繋がります。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力に優れる人材は、どの業界、どの職種においても重宝されます。

一つの仕事に対し、チームメンバーや仕入先、クライアントなど多くの組織が関わることがほとんどだからです。折衝業務や交渉力は、役職者への昇進を考える上では欠かせない能力の一つです。

企業が求めるコミュニケーションとは、相手の意図を正確に読み取りながら、こちらの意見をわかりやすく伝えることです。

明るく楽しい人が、全員コミュニケーション能力に優れているという訳ではありません。

シャイで一見おとなしそうな人でも、場の空気を読み、円滑な雰囲気を保ちながら仕事を遂行できる人は優秀なコミュニケーション能力を持っているといえます。

企業に敬遠される理系就活人材の性質

業界や企業風土、職種によって、敬遠される人材の属性は異なります。そのため「頑固さ」や「慎重さ」など、長所にもなりえる性質は除き、多くの企業に共通して敬遠される性質のみピックアップしました。

一見あたりまえに敬遠されるものばかりですが、面接やセミナーの際、ふとした瞬間にそう見られてしまうかもしれません。

採用担当者からの誤解を受けないよう、念のためチェックすることをおすすめします。

成長志向がみられない

新卒採用は、入社後の成長に期待する、いわゆる投資に近い採用方法です。

新卒採用のまま一定の給与がもらえれば満足だ、責任が増えるのは嫌なので昇進したくない、現在の研究と同じことをしたい等、成長志向やチャレンジの姿勢がなく、普通に働きたいという考えは、正社員採用では受け入れられない可能性が高いです。

働きやすさや給与など、待遇面で会社を選ぶことは間違ってはいませんが、面接では「入社後、または近い将来に自分が会社に提供できる価値」を意識するように心がけましょう。

なお、管理職としての昇進を望まない場合でも、専門家としてのキャリアを積みたいなど、成長意欲が見られる姿勢であれば問題ありません。

自分の実績ばかりに固執する

面接では、研究やスポーツで修めた実績を元に自己PRをすることが多いでしょう。ただし、PRの仕方を間違うとマイナスに働くので要注意です。

企業は、自己主張の強すぎる人材を避ける傾向にあります。なぜなら、「自己主張が強い=自分の実績に固執する=チームでの取り組みに向いていない」と判断される可能性があるからです。

自分の評価を下げたくないために責任を押し付けたり、周りを下げることで相対的に自分の評価を上げようとする人材は、仮に優秀だったとしても受け入れられることはないでしょう。

面接の場で自分の実績を語る場合は、失敗や困難をフォローしてもらった経験など、成功体験の過程で受けた、周りからのサポートについても触れると好印象です。

攻撃性が強い

ビジネスの場においては批判も重要なスキルですが、過度に攻撃的な人材や意見・自己主張の強い人材はチームワークに問題ありとみなされて敬遠されます。

「就職活動中に攻撃的な態度をみせることなどないのでは?」と思うかもしれませんが、例えばグループワークでのディぺードなどでは注意が必要です。

対立する意見を主張し合う場では熱が入り、つい語彙が強くなってしまうことはありませんか。冷静さは採用担当者が厳しくチェックするポイントです。

相手は打ち負かすべき敵ではなく、協力して答えを導く協力者であると認識することで、理知的な議論が行えます。

また、面接ではあえてあなたの主張に反するような意見をぶつけて、反応をみる面接官も存在します。議論や反論はあくまで冷静に、根拠に基づいた主張をこころがけましょう。

企業が採用したい理系就活人材=「心・技・体」が一致する人材

前章までは、企業が採用したい理系人材に共通する資質について解説しました。ここからは、個々の企業が採用したい学生像と、人材としての自分を比較する方法について解説します。

「心・技・体」は掛け算の考え方

「心・技・体」で企業研究や自己分析を行う方法は、稲盛和夫氏の提唱する方程式の考え方がベースとなっています。

稲盛和夫氏は、京セラやKDDIを創業した実業家で、経営破綻に陥ったJALを再建したことでも有名ですね。稲盛氏は自書「京セラフィロソフィ」の中で、以下の方程式を提示されています。

「人生・仕事の成果」=考え方×能力×熱意

この方程式においては、考え方を「心」、能力を「技」、熱意を「体」で表します。

ポイントは、それぞれの項目が掛け算である点です。3つのうちの2つが突出していたとしても、1つにゼロが含まれれば結果はゼロになります。

心(考え方)と体(熱意)に満ちていても能力(技)がなければ成果には結びつきません。体(熱意)と技(能力)が伴っていても、心(考え方)がマッチしていなければ、企業・人材の双方にとって採用はリスクとなります。

心(考え方)、技(能力)、体(熱意)が志望する企業と一致しているか、しっかりと把握することが就職活動の成功に結びつくといえます。

企業と自分の「心・技・体」を照らし合わせてみよう

心・技・体の考え方を企業にあてはめると以下のようになります。

・心(考え方):企業理念、コーポレートミッション、企業風土など

・技(能力) :技術力、業界での位置づけ、事業の成長性など

・体(熱意) :働いている役員・従業員のキャラクター、マインドなど

自分が今行きたい企業について、上記のように分解し企業分析をしてみてください。会社のホームページやインタビュー記事、Wantedlyやnoteのコーポレートサイトを参考にするのもよいでしょう。

企業分析が終わったら、自分自身の「心・技・体」について自己分析をします。

・心(考え方):自分の価値観や考え方、行動理念など

・技(能力) :専攻する分野と研究成果、学業成績など

・体(熱意) :キャラクター、人間性、体力、応募先業務で熱意を持ち努力できるかなど

企業分析と自己分析の結果を比較しながら、共感できる理念はあるか、要求される技能のレベルを有しているかなどを比較検討してみましょう。面接の場面を想像しながら行うと効果的です。

なお、「心・技・体」による企業分析については、別記事で詳細に解説していますので、詳しく知りたい方は、是非そちらを参考にしてみてください。

これだけは知っておきたいポイント(まとめ)

企業が採用したい人材について、求められる資質について詳しく解説しました。今回の記事のまとめポイントは以下の3点です。 

1.企業が採用したい理系人材は「成長性」があり「成果を出せる」人

2.企業が採用したい人材になるためにはいくつかの資質があり、アピール方法が重要

3.「心・技・体」の分析法で、企業が求める人材像と自分が重なるかを考える

この記事が、現在就職活動中の皆さんのお役に立てば幸いです。