幸せなキャリアを作るということと、就職活動でうまく内定をもらうために、皆さんにぜひお勧めしたいのは「心・技・体」という3つの観点から自己分析と企業研究行い、結果を分析してマッチングを行う方法です。

この手法は就職活動を行う上での「自己分析」と「企業研究」に非常に役立つだけでなく、大学院や博士課程へ進学をするかどうかなどの大きな決断をしなければならない局面でも利用できる考え方です。

今回は実際のやり方と、なぜこの手法が就職活動で有効なのかについてご説明します。

理系就活の心・技・体での自己分析

就活生の「心・技・体」とは、それぞれ自分の中にある理性、悟性、感性の事をいいます。まずはそれぞれについて詳しく見て行きましょう。

自分の「心」(理性)

「心」とは自分が大切にしている考え方やマインド、理念のことです。

自分が大切にしているのはどんな考えなのか、どんな価値基準か、どんな風に生きて行きたいのか・・・。また自分として譲れない思いなども、どんどん書き出していきましょう。

文字にしていくと、自分の中でぼんやりしていたものがはっきりと分かってくるのではないでしょうか。自分の思考を理解するのは自己分析の中でもとても大切なことです。

自分の「技」(悟性)

「技」とはその文字の通り、自分が持つ技術的なものを指します。

特に理系の学生は大学の実験やゼミでの経験を通じて、専門的な知識や技術を学んできていると思いますが、これが「技」に相当します。

自身の研究に関わる技術や知識、スキルや、理系としてのものの見方や考え方、原理や本質を追求する理系としての姿勢なども「技」に含まれます。

また、「技」は悟性とも捉えることができ、論理的な思考力も「技」といえます。

理系学生の皆さんは研究過程で探究心や論理的な思考能力を身に付けていることが多く、また、同時に英語力や製図の描き方などの技術面に限らない能力なども習得しているかもしれません。

情報処理能力や実験のためにPDCA回しを行ったり、粘り強く継続して試行錯誤を行う力なども「技」に分類される能力です。

自分の「技」の部分の把握としては、「研究テーマ=自身の技術的能力」として狭くとらえるのではなく、理系ということ自体での能力や、研究を進める過程や、研究室での生活の中で培った能力(後輩の指導力)なども自身の能力として捉えましょう。

自分の「体」(感性)

「体」は自分の人間性や性格などの「性質」にあたるものです。

長所や短所、得手・不得手、自身のキャラクターなどのほかにコミュニケーション能力や体力なども含まれます。

それ以外にも気が合う人のタイプや合わない人のタイプ、やりがいを感じるのはどんな時か、どんな時に頑張れるかといったことも考えてみましょう。

仕事の理解度や、仕事に対する向き合い方や姿勢、仕事への情熱というものも「体」に含まれます。

また、自分は物事に対して正確に地道にコツコツと取り組むのが好きなタイプだとか、あるいは自分は様々な話題に触れてスピード感をもってあれこれ取り組むのが好きなタイプだとか、自分はある程度自分の考え方やアイデアを表現できたり裁量がある方が良いということなども洗い出して把握しましょう。

他の方法としては、これから就活するにあたり、自分はひとつのことを極めるスペシャリスト型か、いろいろなものに取り組みたいゼネラリスト型かも分析しておくのも大事な点です。

「体」の分析によって、自分の仕事への考え方や姿勢が見えてくるのではないでしょうか。

理系就活での心・技・体を用いた企業分析

次に就職を希望している企業についても同様に「心・技・体」での分析を行います。企業についても同じような図になっていますが、こちらは企業が就活生に求めるものは何かという点が中心になってきます。

企業の「心」(理性)

企業の「心」は企業理念やコーポレートミッションといった形で公にされています。企業のHPには必ず企業理念や経営者の考え方などが記載されています。

その企業が今後どのように発展していこうとしているのか、どんな価値観を持っているのかをきちんと確認しておきましょう。

また、企業の成り立ちや現在までの変遷などが掲載されていればそちらもチェックしておきます。

企業の「心」にはその企業のDNAともいえる「脈々と受け継がれてきた社風」のようなものが凝縮されています。

企業が大切にしている考え方を知らなければ、仮に就職できたとしてもミスマッチを起こすことが目に見えているのです。

このほかに、その企業が誇りに思っていることや、「企業」という捉え方だけではなく応募先の業界や応募職種において求められる「心」を理解するようにしましょう。

企業の「技」(悟性)

企業の「技」は、その企業が募集している職種で求められている技術・能力・スキルです。もちろん技術力や知識はあるに越したことはありません。

しかし、自分の技術や知識がその会社にとってそもそも必要なものなのかを考えてみてください。場合によっては、必ずしも突出した技術力を必要としておらず入社後に学べばよかったり、技術力よりもやる気を重視することもあります。

そして同時にその企業の技術力や成長性も見ておきます。どんどん成長している企業であれば自分も一緒に成長していくことができます。また、待遇面や安定性などを調べておくことも大切です。

企業の「体」(感性)

企業の「体」は、実際にその企業で働いている人たちや雰囲気です。働いている人のフィーリングやマインド、職場の雰囲気は企業によって千差万別です。

また業務の進め方のスピードや個人に与えられる裁量なども様々です。そういったものをひっくるめて、その企業が自分の求めているものに合致しているか、体力的に安心して働いていけるかをよくよく見極めてください。

心技体のマッチングが重要

この項では前項の分析を踏まえてマッチングのやり方と内容についてご説明します。

一般企業とのマッチング

自分と企業の分析が終わったら、それぞれの心・技・体の合致度を確認してみてください。上の表は分析結果の例ですが、「体」の部分の合致度がかなり低くなっています。

3つの観点の数値がすべて高いのが良いとされていますので、この場合はマッチングが上手くいっていないという結論になります。

また、業種、業界ごとに業務スピードや求められる性質や姿勢、心技体が異なりますので、この点も留意して業界分析をすると良いでしょう。

さらには職種によっても心技体は異なります。自分はどの業種のどんな職種に向いているのかということを自分の心技体を意識しつつマッチングしていきましょう。

いずれにしても自身と企業の心技体の分析のすり合わせでマッチング度が高くなるほどES(エントリーシート)や面接で通過する確率が高くなり、内定が出やすいと言えます。

ただ、注意していただきたいのは、それぞれの項目をただESに書けばいいというものではないことです。どの欄に心・技・体のどの部分を書くのか考えましょう。

理系だからと言って、技の部分ばかりをPRするのではなく、心技体の3つの観点で抜け漏れなくまんべんなく記載することで企業側もより自社との相性を判断しやすくなります。

なおこの分析は、就職活動が始まる前の秋までに行うのが効果的です。

官公庁とのマッチング

官公庁と民間企業では、仕事内容だけでなく仕事の目的や利益に対する考え方も大きく異なっています。上の表は同じ人物が公務員を目指していると仮定してマッチングを行ったものです。

官公庁はすべての業務が「国や地域に貢献すること」に繋がっています。「心」ではまずこの考え方に共感できるかがカギになるほか、高い倫理観を求められます。

「技」ではそれぞれが持つ専門分野を生かした業務に従事することになります。

公務員の給料は特別高いものではありませんが、倒産する可能性がなく、福利厚生なども一般企業に比べ手厚くなっており、安定性という点では間違いなく一番と言えるでしょう。

「体」については一般企業と比べればかなり穏やかなスピードで業務に取り組むことになると考えられ、「真面目にコツコツ」と職務に取り組める人におすすめの職場と言えます。

採用担当者の視点理解~稲盛和夫氏の成功の方程式

採用活動における人事の役割とは、自社で問題を起こさず、将来にわたって活躍してくれる人材を見つけ出すことです。前項では「心・技・体」での分析についてご説明しました。

なぜこのような分析を行うのか、ここではその理由を説明していきます。

人生・仕事の結果=考え方(心)×熱意(体)×能力(技)

皆さんは稲森和夫氏をご存じでしょうか。京セラ・KDDIの創業者であり、JALの再建を行った人物で「スーパー経営者」とも呼ばれています。その稲森氏が提唱しているのが「成功の方程式」と呼ばれているものです

人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力

考え方は「心」、熱意は「体」、能力は「技」に該当します。この方程式のポイントは足し算ではなく掛け算であるということです。

例えば理念の共感(考え方・心)や技術(能力・技)が100であっても熱意や働くマインドセット(熱意・体)ができていなければ「100×100×0=0」となってしまい、結果はゼロです。

また、能力(技)と熱意(体)があっても考え方(心)が同じ方向を向いていない場合、企業としてはその学生を採用することはリスクを抱えることになりかねません。

もしかすると周囲に悪影響が与えられるということでマイナスの値になるかもしれません。

こういった観点から、企業は応募者の「心・技・体」を把握し、活躍してくれる人材かどうかを判断しているのです。

ですから、最初にお話した「心・技・体」による自分と企業のマッチングは就職活動において非常に有効と言えるでしょう。

情熱を根拠とともに伝えることが、非常に重要

理系学生の採用選考で差がつく部分について解説をすると、意外に思うかもしれませんが「体(仕事への姿勢、熱意)」の部分となります。

採用選考において、企業はおおよそ同じような技術背景の学生、同じような基礎能力の学生の応募の中で採用選考を行います。

そのため「技」の部分では差がつきにくく、また大学での技術と企業での技術が合致しているということは稀だともいえます。

その結果、企業としては、「技」の部分は基礎能力が高く、一定の素養があれば入社後に学んで成長してくれれば良いと考えている場合も少なくないと考えられます。

理系の学生は特に「技」については専門的な知識や技術を学んできたという自負があるので、就職活動でも「技」をアピールしようと努力する人が多いはずです。

しかしこれまでお話してきたように、採用担当者は「心・技・体」の全てを把握しようとしていますから「心」や「体」もしっかりと織り交ぜていかなければうまくいきません。

特に「体」については、自分が入社したら本気で頑張りますという情熱(熱意)を根拠となるエピソードなどと共に伝えることが非常に重要であり、このアピールができない学生が多いことから、「体」が就活で差がつくポイントとなっているのです。

幸せな理系就職とは何か

幸せな就職とは何でしょうか。

大企業に入ること、お給料が高いこと、社会貢献できること、やりがいがあること・・・などいろいろ考えがあると思います。でもその気持ちは自分の一番大切な部分にちゃんとつながっていますか?

今回ご紹介した「心・技・体」による分析は、自分の大切にしていることを就活の中でうまく企業とマッチングさせることにあります。

それは就職活動をうまく切り抜けるために行うためのものだけではありません。

経済面や将来のことも含めて、この3つの観点からみて自分と企業がバランスよくマッチされていれば、自分にとって満足いく企業・業界・職種へ就職できることになります。

それこそが幸せな就職と言えるのではないでしょうか。

これだけは知っておきたいポイント(まとめ)

1)「心・技・体」の3つの観点でマッチング率が高いほど就職活動でESや面接を通りやすい。


2)「心・技・体」の分析は、企業側も取り入れている。



3)「心・技・体」で自分と企業がバランスよくマッチすることで満足のいく就職ができる。