こんにちは。理系就活情報局です。
化学業界は石油や天然ガスなどの資源を原料として使い、プラスチックやゴムなどの最終製品を製造・販売しています。
化学業界に興味のある理系学生も多いかと思いますが、具体的にどんな企業がありどのような業務を行うのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は化学業界について現状や将来性・最新動向も含めて解説します。
化学業界に興味がある理系学生はぜひ参考にしてみてください。
化学業界にはどんな企業がある?
総合化学メーカー
総合化学メーカーとは、原料の調達から製品の企画・開発・製造まで自社で一貫して行うメーカーのことです。
扱う製品を限定しているメーカーが多い中で、中間材料から最終製品まで幅広い製品を生産している総合科学メーカーは非常に技術力が高いと言えます。
代表的な総合化学メーカーとして以下の企業が挙げられるでしょう。
・三菱ケミカル株式会社
・住友化学株式会社
・三井化学株式会社
・昭和電工株式会社
・UBE株式会社
・旭化成株式会社
・東ソー株式会社
誘導品メーカー
誘導品メーカーとは原料から製造される中間材料を販売するメーカーのことです。
中間材料とは企業の製造過程において最終製品完成までの中間で使用される材料のことで、化学製品の中でも大きなシェアを占めます。
中間材料は消費者が手にする製品の製造に必須であり、最終製品の品質にも大きく影響します。
代表的な誘導品メーカーとして以下の企業が挙げられるでしょう。
・信越化学工業株式会社
・東レ株式会社
・帝人株式会社
・JSR株式会社
電子材料メーカー
電子材料メーカーとは、電子材料の製造・販売を行うメーカーです。
代表的な製品として半導体やディスプレイが挙げられます。
電子材料は電子機器などの最終製品の製造過程で用いられるため、ビジネスモデルとしてはB to B(企業同士の商取引)となります。
化学メーカーの印象は薄くなりますが、電子材料メーカーも化学メーカーとして分類されることは覚えておいたほうが良いでしょう。
代表的な電子材料メーカーとして以下の企業が挙げられます。
・富士フイルムホールディングス
・日東電工株式会社
・住友ベークライト株式会社
・東京応化工業株式会社
2024年の化学業界の動向
市場規模が大きく海外需要が増加
国内の産業全体において、製造業全体のなかでも1割強を占めている化学業界は大きな存在です。
エチレンは化学業界における重要な原料であり、石油製品の基礎として幅広く利用されていますが、国内におけるエチレンの需要は減少傾向にあります。
一方で、エチレンの輸出量は着実に増加しており、海外での需要が高まっているのが現状です。
国内の化学産業は海外市場での需要が拡大しており、今後は海外市場への展開がカギを握ると考えられます。
市場拡大が見込まれる製品の台頭
化学業界は、最新テクノロジーの進化によって大きな変革を遂げています。
AI技術の発展により半導体などの化学製品への需要が急速に高まり、半導体市場は急成長を続けています。
化学製品は、バッテリーやICチップなど、電子機器の製造に不可欠な存在です。これらの製品は私たちの日常生活に深く関わっているため、需要は高い水準にあります。
今後、半導体市場の規模は2030年までに100兆円に達すると予想されています。それに伴い、化学製品の需要も大幅に増加すると見込みです
原油価格の影響が大きい
化学業界は原油を主要な製造原料としているため、原油価格の変動が業界全体に大きな影響を及ぼします。
2020年に約20ドル/バレルだった原油価格は、2023年には約90ドル/バレルまで上昇しているのが現状です。価格高騰の背景には、新型コロナウイルスやウクライナ情勢などの要因が考えられます。
原油価格の高騰は化学業界にとって深刻な問題となっており、原材料コストの上昇や収益への悪影響が懸念されます。
そのため、企業は原料の安定確保・代替品の検討・エネルギー効率の向上など、様々な対策の検討が必要です。
化学業界の将来性
10年後を左右するのは脱石油
化学業界は原油価格の変動に大きく左右される産業のため、10年後を左右するのは脱石油の取り組みです。
石油化学への過度の依存は、不安定な国際情勢の影響を受けやすく、安定的な原料確保が困難になるリスクがあります。
現在、日本の原油輸入の90%以上が中東に依存していますが、中東地域は政情が不安定で、原油価格の高騰リスクが常につきまといます。
このようなリスクに備えるため、化学業界では石油依存からの脱却が喫緊の課題です。原料の多様化や、再生可能資源の活用など、新しい取り組みが求められています。
半導体やEV、リチウムイオン電池へ期待
現在、EV市場の拡大を見込んで、各化学メーカーは車体の軽量化につながる材料の研究開発や、リチウムイオン電池関連製品の生産能力増強に注力しています。
代表的な例として、大手化学メーカーの旭化成は、リチウムイオン電池用セパレーター事業を強化しています。軍用車両や乗用車の電動化に伴う需要増に備え、生産能力の増強と整備を進めている流れです。
さらに、従来の顧客対応型ビジネスから、自動車の材料置換を見据えた提案型ビジネスへと移行する化学メーカーの動きも見られます。
モビリティ分野への取り組みを通じて、化学業界は新たな価値創造の機会を掴もうとしています。
総合化学メーカーの5年後を見るAI予測分析
XENO BRAINによる「総合化学メーカー AI予測分析サマリー」は、総合化学メーカーの国内市場規模は、現在の24兆1,373億円から5年で25兆7,636億円に達すると予測しています。
今後5年間で総合化学メーカーに影響する市場環境の変化を8つのカテゴリーに分類したとしましょう。具体的なプラス要因として、燃料電池自動車需要増加・電気自動車需要増加・ハイブリッド車需要増加が予測されています。
反対に、マイナス要因としては、脱石油進展やペーパーレス化進行、自然災害発生頻度上昇と予測されています。
参考:XENO BRAIN「総合化学メーカー AI予測分析サマリー」
将来性の高い化学メーカーの特徴
化学業界における企業の成長率は、一定ではありません。
そのため、就職を希望する化学メーカーを選ぶ際には、その企業の将来性を慎重に見極める必要があります。具体的には、以下5つの観点をチェックしましょう。
・利益率
・売上高
・社員の平均年収
・石油製品以外の取り扱い
・有望な市場の製品があるか
まずは、高い利益率を維持しているか確認しましょう。
企業の経常利益率が10%以上であれば、コスト管理に優れ、付加価値の高い製品を提供できている証拠です。利益率の高い企業は、経営が安定しており、倒産や経営悪化のリスクが低いと考えられます。
次にチェックするポイントとしては、売上高の増加傾向があります。
売上高が高く、今後の伸びが期待できる企業は、社員の収入にも良い影響を及ぼします。
ただし、売上高の増加だけでなく、利益率の確認もしておきましょう。
併せて見ておきたいのが、社員の平均年収です。
社員の平均年収が高い企業は、収入の安定性やキャリアアップの指標となります。
将来性という意味では、石油製品以外の製品の取り扱いをチェックしておきましょう。
石油価格の変動に左右されにくいリチウム電池関連製品などの製品を扱っている企業は、売上の安定性が高いと考えられます。
また、有望な市場の製品があるのかも確認しておきたいポイントです。
脱石油に向けた環境対応製品や、モビリティ分野の製品など、市場拡大が見込まれる製品を扱っている企業は、将来性が高いと言えます。
これらの5つのポイントを総合的に検討することで、化学メーカーの中から、就職先として最適な企業を見つけ出せます。
化学業界の課題
グローバル市場の確立
化学業界における企業は拡大する海外需要に伴い、グローバル市場での競争力確立に直面する重要な課題に直面しています。
企業が国際市場での競争力を高めるには、製品の品質向上・技術革新・環境対応など、多角的な取り組みが必要です。
サプライチェーン管理の構築
化学業界では、原料メーカーと最終製品メーカーの役割が複雑に絡み合っているため、サプライチェーン管理の負担が大きくなっています。
原料調達から製品の製造・流通に至るまで、両者との緊密な連携が不可欠で、サプライチェーンの効率化が喫緊の課題です。
さらに、多くの化学メーカーが海外に拠点を持っているため、グローバルなサプライチェーンの構築と管理が求められています。
人手不足を解決する取り組み
日本の労働人口減少は化学業界に限らず、さまざまな業界で深刻な課題となっています。
化学業界では高度な専門知識と技能を有する人材への需要が高まっている反面、供給が追いつかずに人手不足が解消されていないのが実情です。
ニーズに対して人手不足をどう解消していくのかが、今後の化学業界の発展を左右するでしょう。
ランキングに見る化学業界の主な企業
化学業界の主な企業として、「化学業界 売上高ランキング」で上位4社を占める企業を紹介します。
三菱ケミカルG
三菱ケミカルGは、化製品・樹脂・プラスチック加工品・炭素素材・電池材料・無機材料・化学繊維など、グローバルな主要トレンドを踏まえた市場に注力している会社です。
売上高(百万円) | 4,387,218 |
営業利益(百万円) | 261,831 |
当期純利益(百万円) | 119,596 |
営業利益率(%) | 6.0% |
純利益率(%) | 2.7% |
参考:三菱ケミカル株式会社_技術職_ 採用選考1次選考通過のES
富士フイルムHD
富士フイルムグループは、創業以来、写真フィルムで培った独自技術を進化させながらさまざまな製品、サービスを世の中に提供し、事業を通じた社会課題の解決に取り組んでいる会社です。
売上高(百万円) | 2,960,916 |
営業利益(百万円) | - |
当期純利益(百万円) | - |
営業利益率(%) | - |
純利益率(%) | - |
参考:25卒 理系就活生の本選考体験談 富士フイルムホールディングス株式会社
旭化成
旭化成は化学の技術をベースに、ケミカル・生活製品・繊維・住宅・建材・電子部品・電子材料・医薬・医療の事業を展開する総合科学メーカーです。
売上高(百万円) | 2,784,878 |
営業利益(百万円) | 140,746 |
当期純利益(百万円) | 43,806 |
営業利益率(%) | 5.1% |
純利益率(%) | 1.6% |
参考:旭化成株式会社
住友化学
住友化学は、エッセンシャルケミカルズ・ネルギー・機能材料・情報電子化学・健康・農業関連事業・薬品の事業分野にわたって、幅広い産業や人々の暮らしを支える製品をグローバルに提供している会社です。
売上高(百万円) | 2,446,893 |
営業利益(百万円) | -488,826 |
当期純利益(百万円) | -311,838 |
営業利益率(%) | - |
純利益率(%) | - |
化学業界にはどんな仕事がある?
研究開発
理系学生の志望職種として人気なのが「研究開発」です。
仕事内容は、新素材の研究や新規製品開発はもちろん、製品の基盤となる技術の開発も担当します。
研究は成果が出るまでに時間がかかる上、最新技術を常に勉強し続ける必要があるため根気と継続力の求められる仕事です。
またチームで仕事を進めるケースが多いため、コミュニケーション能力も重要となります。
自分の開発した製品が世の中の社会課題解決につながり大きな変革をもたらす可能性があるため、世の中を変える一端を担いたい理系学生にはおすすめの職種です。
生産技術
生産技術も化学業界の業務として重要なものです。
生産技術では調達した原料を加工し製品を生産する業務になっており、生産計画の策定や納品期限の進捗管理なども担当します。
生産技術の業務は化学製品の品質に影響するだけでなく、製造コストの削減などを通して企業の利益にも貢献できる職種です。
営業
化学業界での営業職は、他の業界と同じく顧客に対して自社製品の提案を行います。
顧客とのコミュニケーション能力も重要ですが、製品に対する専門的な知識を保つことも重要です。
入社前には専門知識がなくても就職できますが、就職後は顧客に対して製品の説明や提案を行う必要があるため、自社製品の勉強を常にし続ける必要があります。
志望動機に取り入れたい!化学業界の最新ニュース
取り入れられるIT技術
多くの業界でIT化が進んでいますが、化学業界でも近年IT技術を急速に取り入れています。
特にIoTと呼ばれるあらゆるものをインターネットに接続して製品を制御する技術が活用されており、化学業界では以下2つのケースで活用されています。
・工場生産の自動化
・安全管理
工場の自動化はこれまでも数多くの取り組みがされてきました。
しかし近年では生産設備から製造データを自動収集したり、画像解析による製品トレースの効率化などさまざまな生産関連のデータ管理が自動化されています。
また従来までは人の手で行っていた生産工程の最適化などもデータ活用により自動化されており、工場生産の自動化が大きな進歩を見せているのです。
また、安全管理に関してもIoT技術を取り入れたセンサーを活用し、製品の故障や不具合を自動で見つけるなど自動化が進んでいます。
国内市場縮小への対策
将来的に日本の人口が減少していくことから、国内市場はいずれ縮小していくことが予測されています。
海外進出の動きが進んでいる反面、収益が少ない事業の売却やエチレンプラントの廃止などが行われ、これまで推進してきた事業の全体的な見直しが求められている状況です。
海外進出が加速するとともに、国内市場縮小への対策が求められていくでしょう。
環境問題への取り組み
環境問題への対策も、化学業界の大きな取り組みとして挙げられるでしょう。
化学業界は生産工程での二酸化炭素排出量の増大やプラスチック製品の廃棄など環境負荷が高い業界としても知られています。
近年ではこうした問題からさまざまな環境負荷軽減の取り組みを企業が行っています。
例えば、三井化学では主力製品であるプラスチックについて、二酸化炭素を吸収し成長した植物を原料とする「バイオマスプラスチック」の開発に成功しており、従来の原油由来プラスチックからの脱却をはかろうとしています。
【参考】三井化学「気候変動・プラスチック問題」
このように、各メーカーは環境負荷の低い新規素材や製品を次々と開発しており、環境問題への対策だけでなく天然資源からの脱却を目指す取り組みが顕著です。
二酸化炭素排出量に関しても政府が排出量の実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル」実現を掲げており、各社二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいます。
こうした二酸化炭素排出量などは年々政府からの規制が厳しくなっていることもあり、各化学メーカーは事業継続のためにも環境問題への積極的な対応が求められているのです。
有望な化学メーカーを探すポイント
ホームページと口コミを調べる
有望な化学メーカーを探すポイント1つ目は、ホームページと口コミを調べることです。
企業のホームページには、企業概要に売上高・利益率・資本金などの情報が掲載されています。
併せて、口コミサイトや就職四季報で、企業の実態を調べることをおすすめします。
就活サービスを利用する
有望な化学メーカーを探すポイント2つ目は、就活サービスを利用することです。
就活のノウハウは、就活サービスや就活のプロであるエージェントに蓄積されています。
自分一人では行き詰まってしまうため、専門家のサポートを受けると、情報収集・分析・自己アピールの準備がスムーズに進められます。
企業からのオファーをうながす
有望な化学メーカーを探すポイント3つ目は、企業からのオファーをうながすことです。
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まとめ
化学業界は市場規模も大きいことから理系学生に根強い人気を誇っており、採用競争率も高い業界です。
化学業界での就職を考える場合、ESや面接などへの対策はもちろん、業界研究も怠ってはいけません。
近年化学業界は海外進出が積極的など転換期となっているため、就職できれば革新的な取り組みに携われる可能性があります。
化学業界について詳しく理解し、第一志望企業への就職を成功させましょう。