理系と文系では志望する職種や業界、企業などが異なることが一般的です。多くの人が企業名を聞いただけで「理系(出身者が多い)企業」「文系(出身者が多い)企業」を分類できるでしょう。
では、理系の就活と文系の就活はどこが違うのでしょうか? 企業が求めるものは、理系と文系では異なっているのでしょうか? そして、気になるのはその「違い」が年収の差になっているかどうかです。
本記事では、理系と文系の違いや企業が期待するものの違い、さらに年収の差を中心に、それぞれの年収が高い職種を紹介します。また、あわせて年収を上げるために何が必要なのかもあわせて説明します。
長期的なキャリアを考える上で参考にしてください。
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理系・文系は何が違う?
理系と文系の違いを3つの角度から見ておきましょう。
専門性の違い
・理系
理系学生は主に科学技術・工学などの専門的な分野に焦点を当てたカリキュラムが組まれています。数学・自然科学・工学・情報科学などの分野で専門的な知識を習得し、就活に活かすことが一般的です。
・文系
文系の中でも法学部は高い専門性を持っており、就職も専門性を活かしたキャリアを選ぶ場合が多いです。しかし、一般的には学部で習得した専門知識がビジネスに直結しないケースもあります。
企業が期待するものの違い
・理系
企業が理系学生に求めるのは、専門知識・スキルと論理的思考力です。理系学生の専門に合わせて、データ分析・プログラミング・製造・設計などのスキルが重宝されます。
・文系
企業が文系学生に求めるのは、非専門的なスキル、例えばコミュニケーション能力・チームで働く能力・プレゼン力などです。
職種の違い
・理系
理系学生はエンジニア・研究者・データサイエンティスト・IT専門家など、大学での専攻を活かし、関連する多くの職種でキャリアを築けます。
・文系
文系学生は企業で営業・マーケティング・事務・人事・広報などの役職に就くほか、メディア・法律・政府関連の仕事など、幅広い職種でキャリアを形成します。
理系・文系の平均年収に差はある?
長期的なキャリアを検討する際の判断材料として、平均年収を見ておきましょう。
平均年収を比較すると?
2011年に発表された独立行政法人経済産業研究所の調査結果によると、理系・文系および男女別の46歳前後の平均年収は以下のようになっています。
理系出身者と文系出身者の年収比較-JHPSデータに基づく分析結果を参考に自社作成
理系と文系の年収差の背景には、正規社員が理系出身者の割合が高いこと、さらに役職者も理系出身者の割合が高いことがあります。文系と理系の正規社員、役職者の割合を比較してみましょう。
出典:理系出身者と文系出身者の年収比較-JHPSデータに基づく分析結果
正規社員・役職者・経営者を合計した割合が文系出身者61.0%に対して、理系出身者が82.4%と、かなり差があることがわかります。
上記の表からアルバイト・パートタイマーの割合が多く、役職者の割合が極端に少ない女性を除いた男性のみの職位分布が以下の表になります。
出典:理系出身者と文系出身者の年収比較-JHPSデータに基づく分析結果
正規社員で非役職者の割合はそれほど違いはありません。
しかし、役職者を比較すると文系出身者が32.1%であるのに対し、理系出身者が39.6%と理系出身者の方が多いことがわかります。経営者も理系出身者がやや多い傾向です。
理系出身の男性の方が、文系出身者の男性よりも役職に就きやすいことが想定されます。
生涯年収を比較する
次のグラフは、理系国立男子、文系男子、理系非国立男子の年収を、年齢別に比較したグラフです。
出典:理系出身者と文系出身者の年収比較-JHPSデータに基づく分析結果
スタート時には文系と理系国立はほとんど差がありませんでしたが、年齢が進むにつれ、文理の差は開き、40代になると理系非国立にも抜かれることがわかります。
また、2011年「週刊東洋経済」推計によると生涯年収は理系で2.25億円、文系は2.10億円弱となり、1500万円以上の差がついたということです。
生涯年収を比較しても、国立・私立を問わず、理系の方が多く獲得できることがわかります。
理系と文系に差がつく理由
理系の方が文系よりも年収が高い主な理由は以下の点が挙げられます:
・専門知識とスキルの需要
理系学部出身者は工学・情報などの専門知識を持っており、これらの分野で高い技術的スキルを習得します。特にIT関連の高い技術を持つ人材は、金融やコンサルタントなど、従来「文系」と考えられていた業界でも需要が高まっています。
・産業別の給与格差
理系の仕事は多くの場合、企業の根幹となる開発・製造技術・複雑な専門知識を必要とするため、これらの職種に従事する人々は高い給与が用意される傾向があります。例えば、情報技術・エンジニアリング・医療などの産業では、高給与の職種が多く存在します。
ただし、年収は専攻分野だけでなく、職業経験・企業・地域・経済状況など、多くの要因に影響を受けます。給与の違いは単純に専攻によるものではなく、市場の状況・個々人の経歴・選択・スキルなど、多くの要素に影響されます。
理系・文系で年収の高い職種は?
理系・文系が就く職種の中から、年収の高い職種を紹介します。
理系で年収の高い職種
理系で年収の高いのは次の職種です。
・医師
高齢社会となる日本の医療を支える医師は、大きな責任がありますが、年収の面では高い所得を得やすい職種です。
・金融系専門職(アクチュアリーなど)
金融機関のIT化は急速に進んでおり、この分野で高いスキルを持ったIT系人材の需要は高くなっています。銀行、証券業界ではAI技術者やデータアナリストなども求められています。また、統計学の知識を駆使し、保険の掛け金などを決定する専門職のアクチュアリーも年収の高い職種です。
・MR
MR(Medical Representative=医療情報担当者)は製薬会社に所属し、医師・薬剤師などの医療従事者に医薬品の説明・提案を行う業務です。薬学部以外の出身者でも就業は可能ですが、膨大な種類に及ぶ薬剤の知識が必要なため、薬学部出身者が有利な職種です。
・プロジェクトマネージャー
多岐にわたるITプロジェクトを統括する業務です。クライアントとのヒアリングから計画立案・予算策定・進捗管理・品質管理など、さまざまな業務の責任者として、強力なリーダーシップとコミュニケーション能力が求められます。
・コンサルタント
理系分野が就くコンサルタントは、企業のIT化・DX化を進めるITコンサルタントやデータ分析を活かした金融コンサルタントなどがあります。いずれもコミュニケーション能力・調査・分析能力・プレゼン能力などが求められる職種です。
理系で年収の高い職種に興味がある人は、次の記事も参考にしてください。
文系で年収の高い職種
文系で年収の高い職種には次のものがあります。以下の職種の多くは理系出身者であっても就業可能です。ただし、資格の取得が条件となる職業もあります。
・営業(総合商社)
ほとんどの会社が営業部門を備えているため、一口に営業職といっても年収には大きな幅があります。その中でトップクラスなのが大手総合商社です。
・コンサルタント(経営)
経営コンサルタントの中でも外資系のコンサルティングファームは、高い年収で知られています。また、国内のファームでもシンクタンク系のコンサルタントは高い年収が得られる職種です。
・法務関連職
裁判官・検察官・弁護士など司法試験に合格し、司法修習を経て就く法律専門職が挙げられます。ほかにも、司法書士・社会保険労務士などさまざまな法務関連職があります。
・士業
士業とは、弁護士や税理士などのように「〇〇士」と呼ばれる職業です。上記で紹介した弁護士・司法書士・社労士の他にも、特許事務所に所属する弁理士・企業の会計を担当する公認会計士・税務を担当する税理士など、士業関連は高い年収が得られます。
・国家公務員
国のためにさまざまな分野で働く国家公務員は、重い責任を負う年収の高い職業です。
年収を上げるために必要なこと
統計的に見て理系の方が年収が高い傾向はあっても、実際に年収を上げるためには、自分に合った計画を立て、その計画に沿って実行する必要があります。年収を上げるためには次のポイントを押さえておきましょう。
- ・自分の適性を知る
- ・業界/企業分析を行う
- ・求められる知識/スキルを身につける
- ・オファーサイトに登録する
自分の適性を知る
自己分析を通じて自分の適性を理解し、その方向でキャリアを積むことは非常に重要です。過去を振り返り、自分の選択とその結果の分析を通して、どの分野で強みがあり、何に興味があるのかを理解しましょう。適性に合った職種や業界を選ぶことで、就活の指針が得られると同時に、仕事へのモチベーションが高まります。
自己分析については次の記事で詳しく説明しています。ぜひ参考にしてください。
業界・企業分析を行う
理系学生の強みを活かせる業界や企業は数多くあります。将来の年収を上げるためには、選択した業界や企業が成長中であるかどうかを見極めることが重要です。経済紙・業界の専門誌・Webサイトなどに目を通し、最適な選択をするための情報を収集することで、業界の成長性や企業の評判を評価しましょう。
企業分析については次の記事で詳しく説明しています。ぜひ参考にしてください。
求められる知識・スキルを身につける
継続的な学習とスキルの向上は、将来の昇給や昇進の機会を増やす助けになります。しかし、知識やスキルの向上には時間がかかります。将来のキャリア目標に合わせて必要なスキルを理解し、計画的に専門知識を深化させましょう。
オファーサイトに登録する
成長性の高い企業は、誰もが知っている有名企業以外にも数多くあります。特に、理系出身者が多く在籍するBtoB(法人向け)企業の中には、知名度は低くても、その業界では有力な企業が少なくありません。そうした企業と学生のマッチングを行ってくれるのがオファーサイトです。
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高年収を目指すなら専門性がカギ
年収が高いと言われる理系出身者ですが、本記事では、統計によって理系出身者が平均年収・生涯年収ともに文系出身者を上回っていることを紹介しました。
理系出身者の年収が高い背景には、理系出身者が多く就く職種や業界の方が専門性が高く、そのスキルの需要が高いことや理系の仕事は高給与の職種が多くあることなどが考えられます。
しかし、理系出身者だというだけで、高い年収が約束されるわけではありません。自分に合った仕事を見つけ、専門性やスキルを身につけることが重要です。