化学系といえば、化学メーカーを中心に就活に強いとされている専攻分野になります。

将来性を見据えて、化学系を専攻したという方も少ないでしょう。

一方で昨今はSNSなどを通じて、化学系を専攻していると就活が難しいなどのネガティブな情報も入ります。

今回は化学系を専攻している学生の就職率が本当に悪いのか噂の理由や就活のポイントを解説いたします。

これから就活を始めようしている化学専攻の学生、もしくは就活中の方はぜひ参考にしてみてください。

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本当に化学系は就職率が悪いのか

本当に化学系は就職率が悪いのか

結論から申しますと、化学系の就職率が悪いというのは、全くの噂といえるでしょう。

噂レベルと捉えて問題ありませんが、後ほど紹介する化学系の就職率が悪いとされる理由については注意が必要です。

基本的に化学系を専攻している学生は就活に強い方といえます。

モノづくりと基礎なる化学の知識はもちろん、研究を通じて身につけた粘り強さや論理的思考力は強みとなります。

様々な業界で働くための基礎を身につけているので、自己分析や企業分析をしっかりとおこなえば、就活で苦戦する展開は想像しづらいでしょう。

昨今はSNSなどを通じた情報の発信や拡散が多くあります。

化学系の就職率が悪いとされているのも、就活が思うようにいかなかった情報が広く拡散した結果でしょう。

悪い情報が積もりに積もって、化学系の就職率が悪いという噂が広がったものと推測されます。

化学系の就職率が悪い・厳しいといわれる理由

化学系の就職率が悪いといわれる理由

化学系の就職率が悪いと噂される理由は、主に3つあります。

  • ・学部卒では厳しい企業があるため
  • ・機電系の学部と比較しているため
  • ・専門にこだわりすぎるため

学部卒では厳しい企業があるため

化学系の就職率が悪いと噂される理由の1つとして、学部卒の研究開発職への就きにくさがあります。

研究開発職を募集している企業の中には、修士卒しか取らない企業も少なくありません。

理由はいたってシンプルで、学部卒では研究開発職に必要な知識や経験が足りないためです。

修士卒の場合、学部卒の学生より圧倒的に専門的な知識と実験の経験値を重ねています。

企業としてはできるだけ即戦力となる新卒が欲しいため、より知識と経験のある修士卒を採用するのは自然といえるでしょう。

もちろん学部卒で研究開発職に就けないわけではありませんが、企業側の本音を考慮すると狭き道といえます。

確かに化学系を専攻している学部卒の方では、研究開発職に就きにくい点はあるでしょう。

一方で研究開発職への就きにくさが、化学系の就職率が悪い理由にはなりません。

学部卒の学生が研究開発職に就けない点へ尾ひれがついた結果、化学系の就職率が悪いと噂になったのでしょう。

機電系と比較しているため

他の専攻分野と就活のしやすさを比較した結果、化学系を専攻している学生の就職率が悪いと噂になったパターンもあります。

同じ理系の中で機電系と呼ばれる分野、機械工学と電気工学、電子工学などは就職に強い分野です。

機電系の名前からも想像がつくとおり、製造業や建設業などと直接関わる分野のため、多くの求人があります。

また大手の家電メーカーなども、機電系を専攻している学生を多く募集している傾向があります。

機電系と化学系を比較すると、就活のしやすさには機電系の方に分があるでしょう。

他分野と比較すると、数値としては化学系を専攻している学生の就職率が悪く見えるかもしれません。

しかし、あくまで比較した結果であり、化学系を専攻している学生の就職率が悪いとはならないでしょう。

専門にこだわりすぎるため

化学を専攻している学生の場合、就活時に自身の専門にこだわりすぎると、就活が行き詰まる可能性があります。

特に就活で行き詰るケースが多いのは、名前の知れたBtoCの化学メーカーばかりを狙うケースです。

文系や理系などの分野を問わず、学生の多くは名の知れた企業を目指します。

マイナビ・日経が2023年卒の大学生に調査したところ、就活で人気の企業はほとんどBtoCの企業ばかりです。

化学を専攻している学生も例外ではなく、専門性を生かせる名前の知れた化学メーカーを目指すケースは少なくありません。

名の知れた化学メーカーは当たり前ですが、多くの応募が殺到するため、厳しい競争が待ち構えています。

名の知れた化学メーカーを多く狙った結果、就活が思うように進まない方もいるでしょう。

就活で思うような結果が出ない場合、化学を専攻していても就活がうまくいかないと考える方も現れます。

ネガティブな思考が、そのまま化学を専攻している学生の就職率が悪いという噂に発展している可能性があります。

専門性へのこだわりは重要な一方で、こだわりすぎると足を引っ張る結果になるでしょう。
化学専攻の学生が就活をする際のポイントは次章で解説します。

参考:「マイナビ・日経23卒大学生就職企業人気ランキング」上位100社を発表

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化学系の就職先となる大手化学メーカーの売上ランキング

化学系の就職先となる大手化学メーカーの売上ランキング

化学系の就職率が悪い噂は、大手化学メーカーばかりを狙うために就活がうまくいかなかった学生が原因の可能性はあります。

ですが、大手化学メーカーの内定獲得は難しいと理解しつつも、狙うだけの魅力がある点は否定できません。

たとえば、研究職を志す学生にとって、大手化学メーカーは潤沢な研究資金や充実した設備で研究ができる可能性があるためです。

内定の獲得は難しいですが、大手化学メーカーを数社狙うのは就活の戦略としては問題ありません。

以下のランキングは大手化学メーカーの売上順になっています。

大手化学メーカーを狙う場合はぜひ参考にしてください。

  1. 1.三菱ケミカルグループ:売上高(百万円)4,634,532
  2. 2.住友化学:売上高(百万円) 2,895,283
  3. 3.富士フィルム:売上高(百万円) 2,859,041
  4. 4.信越化学:売上高(百万円) 2,808,824
  5. 5.旭化成:売上高(百万円) 2,726,485

参考:日本経済新聞 売上高ランキング 業種:化学 2024/4

化学系学生が就職企業を選ぶポイント

化学系学生は自身の専門で就職先を絞ったとしても、大小を含めさまざまな企業の選択肢があります。

どのように選考を受ける企業を選べばよいのか、判断基準に困る学生も多いでしょう。

化学系学生が選考を受ける企業を探す場合には、以下2点で選ぶことをおすすめします。

1つ目はやりたい仕事があるのかです。

いくら興味のある企業とはいえ、自身の目指す職種がなければ、選択の対象とはなりません。

企業の採用HPをチェックして、募集職種に自身のやりたい仕事があるのかをチェックしましょう。

2つ目は研究開発費の大きさです。

研究開発費が多いほど、研究に力を入れている可能性が高くなります。

研究職として企業に入れたとしても、研究環境が全く整っていない場合には成果を出すことが難しくなります。

また研究に力を入れていない企業では、論文発表や学会参加などの活動も簡単にはできません。

研究開発費をチェックして、研究に力を入れている企業を目指しましょう。

化学系学生の就職事情や年収

化学系の就職率が悪いとの噂がある中で、実際に就職できた場合にはどのような状況になっているか気になる方も多いでしょう。

本章では化学系学生の就職事情や年収を解説します。

化学系企業の年収は高年収の傾向にある

化学系メーカーに就職するためには、高いスキルと豊富な知識が必要になりますが、相応の年収が用意されています。

就職四季報が調査したデータによると、化学系企業の平均年収は以下のとおりです。

  • ・三井住友化学:平均年収1,076万円
  • ・住友化学:平均年収1,071万円
  • ・三菱ガス化学:平均年収990万円
  • ・日産化学:平均年収982万円
  • ・東レ:平均年収969万円

一般的な平均年収が400万円である点を考慮すると、化学系企業の高年収であることがわかります。

参考:業界別年収ランキング【化学メーカー】 就職四季報 東洋経済新報社

化学系企業の就職に資格は役立つ

就活において資格は決定的な役割とはなりにくいですが、熱意のアピールには有効です。

化学系の資格を取得しておけば、化学系の企業を本気で目指していることをアピールできます。以下の資格は化学系企業の就活に使えるため、取得をおすすめします。

  • ・QC検定:品質管理に関する知識を問う検定
  • ・危険物取扱者(甲種):消防法に基づいた危険物を取り扱いに必要な知識を問う資格

化学系企業はホワイトな環境から就職人気が高い

大手化学メーカーは、潤沢な研究資金や充実した設備から理系学生に人気を博していますが、労働環境の観点からも人気が高くなっています。

大手化学メーカーはホワイトな労働環境となっており、優良な環境となっている理由は、以下のとおりです。

  • ・BtoBビジネスが中心のため、取引が安定傾向
  • ・対企業を相手にしているため、週末は基本的に休み
  • ・高い技術力から競合他社が少なく、競争にさらされにくい

昨今は劣悪な労働環境が社会から減りつつあるとはいえ、働く以上は良い環境で働きたいと誰もが思うでしょう。

大手化学メーカーはホワイトな労働環境を実現しているため、理系学生からの人気が高くなっています。

化学系の就職に強い大学一覧

化学系の学部・大学院を持つ大学は全国に数多くありますが、中には就職に強い大学もいくつかあります。以下の化学系の大学は就職に強い大学とされています。

  • ・北海道大学理学部化学科
  • ・東北大学理学部化学科
  • ・東京工科大学工学部応用化学科
  • ・北里大学理学部化学科
  • ・大阪公立大学化学工学科
  • ・福岡大学理学部化学科

もちろん上記で紹介した大学以外にも、まだまだ就職に強い化学系を持つ大学はあります。

就職実績や就職先のデータを各大学は公開しているため、大学を調べる際には参考にするとよいでしょう。

化学系の学生が就活をする際のポイント

化学系の学生が就活をする際のポイント

化学系を専攻している学生が就活をする際のポイントは2つあります。

  • ・やりたい仕事を就活の軸にする
  • ・企業研究を念入りにおこなう

やりたい仕事を就活の軸に定める

先行きが不透明な時代で重要なのは職種選びです。

今後は絶えずキャリアアップやスキルアップの必要性が迫られると考えれば、どこで働くかも大事ですが、何ができるかがより重要になります。

またやりたい仕事を軸におくことで、広い視野で就活ができるメリットもあります。

富士フィルムが写真フィルムの技術転用で化粧品を開発したり、食品メーカーの味の素がPCやサーバーの高性能半導体向け絶縁材(ABF)で世界一のシェアをもつなど、自社で培った技術を転用することで、業界を超えて新規事業に取り組む企業も少なくありません。エントリーする業界にこだわりすぎると、選択肢が限られるため、思うように就活が進まないこともあるので、やりたい仕事を軸におくことで特定の業界にとらわれず、無関係とも思えるような企業・業界で希望のポジションに出会える可能性が増えます。

企業研究を念入りにおこなう

企業研究は就活における重要な作業です。

一般的に企業研究をする具体的な目的は、以下3つの理由があるためです。

  • ・企業の特徴から、自身にマッチする企業かがわかる
  • ・志望動機がよりリアリティになる
  • ・入社後のイメージがわき、キャリアプランが作りやすくなる

化学を専攻している学生は前述した3つに加えて、さらに研究開発費や業績をチェックする必要があります。

理由はいたってシンプルで、研究開発費が多いほど、より良い環境で研究ができる傾向があるためです。

また企業の業績は、翌年の研究開発費用の割り当てに影響を及ぼすため、企業の業績も要チェックポイントです。

企業間で研究開発費を比較する場合には、売上高に対する割合でチェックをしましょう。

研究開発費用の大きさは企業規模に比例する傾向にあるためです。

企業規模があまりに違う場合、研究開発費用だけを比較してもあまり意味はありません。

売上高に対する割合を比較することで、売上高に対して、どれだけ研究費用を割いているかがわかります。

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化学系の学生におすすめの就職先業界

化学系の学生におすすめの業界

化学を専攻する学生の中には「化学業界は競争が厳しく、就活が難しいのでは?」と考える学生も少なくないでしょう。

本章では専門外とはなりますが、化学業界以外でおすすめの業界を4つ紹介します。

  • ・自動車業界
  • ・化粧品業界
  • ・食品業界
  • ・IT業界

無関係とも思える業界ですが、どの業界も専門性や強みが発揮できる業界です。

自動車業界

多数の部品で構成される自動車には、機械工学の他にも化学の力が多く活躍しているのは意外と知られていないところです。

例えば、車内の見た目を左右する内装には樹脂が多く利用されており、どのような樹脂を活用するかは化学の知識が必要になります。

また燃料タンクには質の高いプラスチックや樹脂を利用しており、化学の力が集まっています。

様々なテクノロジーが集まって作られる自動車の中で化学の力も大いに役立っており、化学を専攻している学生にも活躍の機会が多い業界といえるでしょう。

化粧品業界

化学と化粧品につながりがなさそうにみえますが、しっかりとつながりのある業界です。

例えば、メイク落としにはメイクの油成分を落とすために、界面活性剤が配合されています。

ただの水や洗顔料だけでは落ちないメイクを落とすために、化学の力を生かしたアプローチを取っています。

また昨今ではカラダに優しい原料やナノテクノロジーなど、化学の力が化粧品業界でも役立つ機会が多いといえるでしょう。

食品業界

化粧品業界と同様に関係性がなさそうな業界にみえますが、食品業界も化学と大きく関係しています。

例えば、化学調味料は文字どおり、化学の知識を生かして作られている食品です。

私たちが感じる旨味とは何かを解析して、人工的に調味料を作成しています。

他にも防腐剤が食品に与える影響を調べることで、人体に害の少ない防腐剤を作っています。

IT業界

IT業界は化学の知識を直接生かせる業界ではありません。

一方で化学の研究をする過程で、身につけたスキルや能力は十分に生かせる業界です。

例えば、論理的思考力はプログラミングやシステムの設計には欠かせない能力になります。

ロジックに漏れがなく、また矛盾のないプログラムを作るには、論理的思考力は欠かせません。

また化学の研究をする過程で、パソコンに触れる機会は多いでしょう。

IT業界は基本的にパソコンで仕事をおこないます。

昨今の学生はスマートフォンに触れる機会が多いため、パソコンに慣れている学生が減少傾向にあります。

パソコンに触れる機会の多い化学専攻の学生は、意外とアドバンテージになります。

まとめ

化学系を専攻している学生の就職率が悪いという噂はネットを中心に多く出回っています。

就活時に気をつけるポイントはある一方で噂は噂に過ぎず、化学を専攻している学生の就職率が悪いという事実はありません。

化学の基礎知識や論理的に物事を考える力、粘り強さを兼ね備えている化学専攻の学生は魅力的な人材です。

噂に惑わされず、今回紹介した就活のポイントをおさえていただきながら、就活をおこなっていただければと思います。