研究者として将来像を考えた場合、民間や公的機関の研究者などさまざまな選択肢が思い浮かぶでしょう。

身近な存在である大学教員も、現在の知識・経験をダイレクトに生かせるため、選択肢に入れている方は少なくありません。

一方で将来設計を考えた場合には、自身の知識・経験がダイレクトに生かせるだけで職種を決めにくい部分があります。

現実的な話として、雇用の安定性・年収の多寡などを考慮して決める必要があるためです。

今回は大学教員の年収と仕事内容、大学教員になる方法を解説します。

大学教員を将来の選択肢に入れている方は、ぜひ参考にしてください。

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大学教員とは大学で研究・教育をする職員

大学教員とは大学で研究・教育をする職員

一言で大学教員といっても、実にさまざまなポストがあり、大学教授はもちろん助手も大学教員になります。

複数に分かれていることからも想像ができるとおり、担当する仕事内容が異なります。

年収の多寡を把握するのも重要ですが、どのような仕事内容かも把握しておくべき内容です。

仕事内容と年収が、良い意味でも悪い意味でも釣り合っていない世の中には仕事は少ないためです。

本章では各大学教員の仕事内容を解説します。

大学教員の職階①:教授

大学教員の中で最も地位のあるポストは大学教授です。

大学教授の仕事は多岐にわたっており、自身の研究や学生への指導はもちろん、大学運営にも関わります。

他にも学会の運営やメディア出演など、大学教授にはさまざまな仕事があります。

大学教員の職階②:准教授

大学准教授は大学教授に次ぐポストです。

大学准教授の仕事は自身の研究と学生の指導になります。

研究や学生への指導の点では大学教授の仕事内容と差はありませんが、大学への関わり方に違いがあります。

大学教授は大学運営に関わりますが、大学准教授が関わることはほとんどありません。

大学教員の職階③:講師

講師といっても専任講師と非常勤講師で分かれており、各々で仕事内容が異なります。

専任講師は准教授に次ぐポストであり、仕事内容は自身の研究・学生への講義です。

一方で非常勤講師の主な仕事内容は学生への講義であり、研究は仕事内容に含まれていません。

専任講師は准教授へのステップアップが可能ですが、非常勤講師はあくまでスポットで携わります。よって、准教授へステップアップするケースはほとんどありません。

大学教員の職階④:助教

助教は2007年の法改正に伴い、新たに設置されたポストになります。

助教の仕事内容は自身の研究と学生への指導になります。

仕事の内容的には、講師と役割は変わりませんが、助教は若手の研究者が就くポストとされているのが一般的です。

大学教員の職階⑤:助手

助手とは文字どおり、教授・准教授の研究や講義のサポートが仕事内容のポストです。

あくまでサポートであるため、助手が学生への講義をすることはありません。

また助教以上のポストが自身の研究を独立しておこなうのに対し、助手は教授・准教授のもとで活動するポストになります。

国公立大学教員の平均年収は約791万円

国公立大学教員の平均年収は約791万円

どのような仕事をするのかも重要ですが、生活があるために年収は働くうえで切っても切れない関係にあります。

本章では各ポストの平均年収を、バイオ専門メディア「日経バイオテク」が発表したデータを基に解説します。

各ポストの平均年収から計算した結果、国公立大学教員の平均年収は約791万円です。

参考:全国立大学の教員年収を全て公開、2263万円の最高年収はどこの大学教授?

大学教員:教授の平均年収は約1,027万円

大学教員で最も地位の高い教授の平均年収は約1,027万円となっています。

一般的に1,000万円が貰える職種は決して多くはありません。そのため、大学教授は1,000万円を超える年収が期待できる数少ない職種です。

研究・学生の指導・大学運営など仕事が多岐にわたるため、大学教授は多忙なポストになります。

大学教員:准教授の平均年収は約847万円

教授に次ぐポストである准教授の平均年収は約847万円になります。

准教授の平均年収でも一般的な平均年収を上回りますが、さらに良い条件で働きたいと考える場合には、教授のポストを目指すとよいでしょう。

大学教員:講師の平均年収は約774万円

大学教員の中で、中間的なポストにあたる講師の平均年収は約774万円となります。

一般的な平均年収と比較しても高い年収となりますが、期限付きでポストに就いているケースもあります。

高年収とはなっていますが、期限がある場合には年収が安定しないケースは少なくありません。

大学教員:助教の平均年収は約673万円

若手研究者のポストである助教の平均年収は約673万円となっており、助教の平均年収も一般的な平均年収を上回っています。

助教も期限付きのポストがありますが、順調にステップアップしていけば、より雇用は安定して、年収もアップします。

大学教員:助手の平均年収は約764万円

教授や准教授をサポートする役割を担う助手の平均年収は約635万円です。

助手の平均年収も比較的高い平均年収となっていますが、安定したポストではありません。

研究も独自にはできないため、将来的に良い条件で働くためには助教のポストを目指すとよいでしょう。

大学教員における年収の傾向

大学教員における年収の傾向

一般的には公的機関より民間企業の方が、規模が小さい企業より規模の大きい企業の方が年収は高くなる傾向にあり、大学教員も同様の傾向があります。

本章では大学教員の年収がなぜ高いのか、大学教員における平均年収の傾向を解説します。

大学教授など大学教員の年収はなぜ高い?

大学教員の年収傾向を解説する前に、大学教員の年収がなぜ高いのかを疑問に持った方もいるでしょう。

大学教員の年収が高い理由は、専門性が高いためです。

大学教員になるには研究分野において高い知識や経験、実績が必要であり、大学教員になれるほどの人材が多くありません。

高い専門性を持つ人材は貴重な存在となるため、人材としての貴重さに比例して年収も上がる仕組みとなっています。

大学教員の平均年収は私立の方が高い傾向にある

大学教員における年収の傾向として、平均給料を基に年収を計算すると私立大学の方が年収は高い傾向にあります。

たとえば、2021年に政府が発表した平均給料のデータから、国公立大学と私立大学の教授の年収を計算すると、以下の結果となります。

・国立大学教授の平均月額給料から計算した年収:6,442,800円
・公立大学教授の平均月額給料から計算した年収:6,484,800円
・私立大学教授の平均月額給料から計算した年収:6,843,600円

年収には給料以外にもボーナスや手当が含まれるため、必ずしも私立大学の教授の方が年収は高くなるとはいい切れません。

一方でボーナスは給料ベースに計算をおこなうため、傾向としては私立大学の教授の方が年収が高くなる可能性があると考えてもよいでしょう。

参考:令和元年度「学校教員統計調査 給料月額別 職名別 本務教員数」

大学教員の平均年収は大学規模に依存する

一般的な傾向として、多くの方が働く大企業の方が事業をおこなう力が強いため、年収も高くなりがちです。

大学教員にも同様の傾向があり、大学規模の大きい方が年収は高くなります。

厚生労働省が令和4年度に発表したデータからは、規模(人数)の大きい方が年収は高くなるという結果がわかります。

・企業規模10~99人の大学教授の年収:8,162,800円
・企業規模100~999人の大学教授の年収:9,760,800円
・企業規模1,000人以上の大学教授の年収:11,356,000円

参考:厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査

教授・准教授・講師など大学教員になるには地道な活動が必要

教授・准教授・講師など大学教員になるには地道な活動が必要

自身の専門性を極めたいと考える方にとって、大学教員は理想的な職種です。

本章では大学教員になりたい方に向けて、大学教員になる方法を解説します。

博士課程を取得後に研究員として働き始める

大学教員である助手・助教のポストを目指すには、博士号を取得後に研究員として研究を続ける必要があります。

研究の実績を認めてもらう必要があるため、教授や准教授に指導を仰ぎつつ、成果を出すようにしましょう。

公募へ応募する

当人の研究実績や意欲などは大学教員に欠かせませんが、前提としてポストが空いてなければ就けません。

ポストに空きがない場合には、他大学の公募に応募しましょう。

各大学ではポストに空きが出た場合、公募の形で募集するケースがあります。

公募の競争率は高くなりますが、まずはアンテナを広く張り、公募がないかを常に確認しましょう。

客員教授として大学からのオファーを受ける

大学教員のポストは上がれば上がるほど、“イス”の数は減っていきます。

自然と大学教授のポストが空かないケースも少なくありません。

大学教授を目指す場合、自身でポストに応募する方法もありますが、大学からオファーを受けて教授になる方法もあります。

大学では優れた研究実績・専門分野のスペシャリストに対して、客員教授という形でオファーをするケースがあります。

客員教授は期限付きのケースがほとんどですが、大学教授の経験を積むことが可能です。

一方で客員教授は優れた研究実績が前提のため、教授を目指す過程と同じように研究成果を追求する必要があります。

まとめ

今回は大学教員の年収や仕事内容、大学教員のなり方を解説しました。

今回解説した内容をまとめると以下のとおりです。

・大学教員の仕事内容はポストにより変わる
・大学教員の平均年収は約791万円
・大学教員になるためには博士号を取得する必要がある

大学教員は雇用が安定的ではないポストも少なくありませんが、全体として高い年収が期待できる点は間違いありません。

ぜひ本記事を参考に、自身の研究を仕事にできる大学教員を目指していただければと思います。

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