研究者という進路を考えたとき、実際にどのくらいの収入が得られるのかは気になるところでしょう。

ひと口に研究者といっても、企業の研究所で働く人もいれば、大学で教育と研究を兼ねる人、国の研究機関に所属する人もいます。同じ「研究者」でも、どこに所属し、どんな雇用形態で働くかによって年収は大きく変わります。

この記事では、令和7年賃金構造基本統計調査と各研究機関が公表している給与水準をもとに、研究者の年収を所属先・年代・組織規模の3つの角度から整理しました。年収1,000万円に届く人がどのあたりにいるのかも、統計の数字から具体的に見ていきます。

研究者を進路の候補に入れている理系学生の方は、ぜひ参考にしてください。

\あなたに合った大手優良企業と出会える/


研究者の平均年収は約802万円

まずは全体像から確認しましょう。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、職種のひとつとして「研究者」が集計されています。

統計から見た研究者の平均年収

令和7年賃金構造基本統計調査(企業規模10人以上・男女計)によると、研究者の平均像は次のとおりです。

平均年齢42.5歳
平均勤続年数12.5年
きまって支給する現金給与額(月額)51万7,000円
年間賞与その他特別給与額181万6,100円
推計年収約802万円
労働者数18万1,620人
出典:令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表をもとに算出

ここでいう推計年収は、月額給与を12か月分にして年間賞与を足したものです。研究者全体の平均は約802万円ということになります。

給与所得者全体と比べるとどのくらいか

この802万円という水準を、給与所得者全体と並べてみましょう。国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円、正社員に限ると545万円でした。

研究者の平均は正社員全体の平均より250万円以上高い計算になります。専門性が求められる職種であり、大学院を修了してから就くケースが多いことを考えると、統計上は相応に報われている職種だといえるでしょう。

ただしこの802万円はあくまで平均です。次の章で見ていくように、所属先によって数百万円単位の幅があります。

研究者の年収は所属先で変わる

研究者の働く場所は、大きく分けて企業・大学・公的研究機関の3つです。それぞれの給与水準を、公表されている統計と各機関の開示資料から見ていきます。

企業で働く研究者の年収

民間企業の研究職は、勤務先の業界や企業規模によって水準が変わります。研究開発に多額の投資をしている医薬品や電気機器の分野では、平均を大きく上回る待遇が用意されていることも珍しくありません。

企業の研究職に絞った年収の相場や、年収が高い企業の傾向は、次の記事で詳しく取り上げています。

研究開発職として企業に就く場合の年収については、こちらもあわせてご覧ください。

大学教員の年収

大学で研究する場合、収入は職位によってはっきりと分かれます。令和7年賃金構造基本統計調査から職位別の推計年収を並べると、次のようになります。

職位平均年齢推計年収
大学教授(高専含む)57.5歳約1,082万円
大学准教授(高専含む)49.3歳約876万円
大学講師・助教(高専含む)41.6歳約712万円
出典:令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表をもとに算出

講師・助教から教授まで、職位が上がるにつれて約370万円の開きが生まれます。研究者全体の平均802万円は、ちょうど准教授と講師・助教の中間あたりに位置しています。

大学教員の仕事内容や、年代別・大学別の年収については次の記事にまとめています。

公的研究機関の年収

国立研究開発法人は、役職員の給与水準を毎年公表しています。ここでは代表的な理化学研究所と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の令和6年度の数値を見てみましょう。

機関・区分人員平均年齢年間給与額(平均)
理化学研究所 常勤職員(年俸制)研究職種273人49.0歳約1,232万円
理化学研究所 常勤職員(年俸制以外)研究職種110人54.5歳約1,161万円
理化学研究所 任期付職員(年俸制)研究職種740人40.5歳約802万円
JAXA 常勤職員 研究職種903人45.2歳約912万円
JAXA プロジェクト研究員(ポスドク)13人31.0歳約550万円
出典:文部科学省「独立行政法人、国立大学法人等及び特殊法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準(令和6年度)

理化学研究所では、職位別の年間給与額も開示されています。研究部長相当が約1,253万円、研究課長代理相当が約1,143万円、研究員相当が約1,016万円と、いずれも高い水準です。JAXAでは本部主任研究員が約892万円、研究員が約626万円となっています。

同じ機関でも雇用形態で差が出る

公的研究機関の数字を見るときに見落とせないのが、雇用形態による違いです。理化学研究所の研究職種は、無期の常勤職員が約1,161万〜1,232万円であるのに対し、任期付職員は約802万円と、400万円前後の開きがあります。

しかも人数を見ると、任期付職員が740人と最も多く、無期の常勤職員は合計383人です。機関全体の平均像に近いのは任期付職員のほうだという点は、進路を考えるうえで押さえておきたいところでしょう。平均年齢も40.5歳と、決して若手だけの区分ではありません。

博士号を取得した後に任期付のポストで研究を続ける働き方はポスドクと呼ばれ、待遇や任期の問題がしばしば議論されています。この働き方の実情については次の記事で解説しています。

研究者の年収は年代でどう上がるか

所属先と並んで年収を左右するのが年齢です。令和7年賃金構造基本統計調査には研究者の年齢階級別の集計もあり、キャリアに沿った収入の推移を追うことができます。

年代別の推計年収

年齢階級月額給与年間賞与推計年収
20〜24歳28万5,700円38万7,600円約381万円
25〜29歳36万4,300円101万4,600円約538万円
30〜34歳43万4,500円139万7,400円約661万円
35〜39歳49万2,400円172万3,100円約763万円
40〜44歳55万0,800円220万0,400円約881万円
45〜49歳59万7,500円222万7,600円約939万円
50〜54歳62万8,700円241万7,500円約996万円
55〜59歳66万8,400円281万8,000円約1,083万円
60〜64歳51万0,500円166万0,300円約778万円
65〜69歳50万2,800円76万2,000円約679万円
出典:令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第5表をもとに算出

年収が伸びる時期と頭打ちになる時期

表をたどると、収入の動き方には特徴があります。20代後半から40代前半にかけては5年ごとにおよそ100万円ずつ積み上がり、40〜44歳で約881万円と全体の平均を上回ります。

伸びのペースが緩むのは40代後半からで、45〜49歳から50〜54歳への増加は約57万円にとどまります。それでも上昇は続き、55〜59歳で約1,083万円とピークを迎えます。研究者という職種では、平均値だけを見ても50代後半で1,000万円台に届く計算です。

一方、60歳を超えると約778万円まで下がります。定年後の再雇用や勤務日数の変化が反映されているとみられ、生涯を通じて右肩上がりが続くわけではない点には注意が必要でしょう。

組織の規模でも年収は変わる

もうひとつ、意外と知られていないのが所属する組織の規模による差です。同じ調査を企業規模別に分解すると、次のようになります。

企業規模平均年齢推計年収労働者数
1,000人以上42.8歳約837万円12万9,880人
100〜999人41.4歳約731万円4万3,250人
10〜99人43.9歳約627万円8,490人
出典:令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表をもとに算出

最も規模の大きい組織と小さい組織では、平均年齢がほぼ同じにもかかわらず約210万円の差があります。年齢による違いではなく、組織の規模そのものが効いていると読める結果です。

背景には研究開発への投資余力があると考えられます。大規模な組織ほど継続的に研究費を投じられ、設備や人員にも厚みを持たせやすくなります。研究者全体の約7割にあたる12万9,880人が1,000人以上の組織に所属しているという分布も、この職種の性格をよく表しているでしょう。

\あなたに合った大手優良企業と出会える/


研究者が年収1,000万円に届く道筋

ここまでの数字を踏まえて、年収1,000万円という水準にどう近づけるのかを整理します。

平均で1,000万円を超えている層

統計の上で平均が1,000万円を超えているのは、研究者では55〜59歳(約1,083万円)、大学教員では教授(約1,082万円)です。公的研究機関では、理化学研究所の無期の常勤研究職が約1,161万〜1,232万円で、職位別に見ると研究員相当でも約1,016万円に達しています。

つまり1,000万円は、特別な成功例ではなく、キャリアを重ねれば平均としても届きうる水準だといえます。ただし50代を待たずに到達しようとするなら、所属先の選び方が効いてきます。

研究開発に力を入れている組織を選ぶ

組織規模による約210万円の差が示すとおり、どこに所属するかは収入に直結します。研究開発への投資が厚い組織では、最新の設備や情報に触れられる機会も多く、研究者としての成長という面でも得るものがあるでしょう。

企業を選ぶ際は、売上高に対する研究費の比率や研究開発費の推移といった公開情報が手がかりになります。名前を知っている企業だけで候補を絞らず、事業内容から探す視点を持っておきたいところです。

無期のポストを見据える

理化学研究所の例で見たように、同じ機関でも任期付か無期かで400万円前後の差が生まれます。研究の内容だけでなく、そのポストがどういう契約なのか、無期のポストへ移る道筋があるのかまで確認しておくと、長い目で見た収入の見通しが立てやすくなります。

職位を上げる

大学教員で講師・助教から教授まで約370万円、理化学研究所で研究員相当から研究部長相当まで約237万円の差があるように、職位が上がれば収入も動きます。研究の現場からマネジメントへ軸足を移す選択も、収入という観点では選択肢のひとつになるでしょう。

職位を上げるうえで土台になるのは、論文や学会発表といった研究実績の積み上げです。専門分野のコミュニティで存在感を持つことは、所属組織のなかでの評価にも、外に移るときの評価にもつながります。

研究者を目指す理系学生が今できること

学生のうちから準備できることを、3つに絞って挙げます。

専門分野の力を積み上げる

いちばんの土台になるのは、自分の専攻で腰を据えて研究に取り組むことです。指導教員や先輩と相談しながら、数年かけて手が届きそうなテーマを選び、その研究を通して知識と手法を深めていきましょう。

論文や学会発表の経験は、就職後の評価につながるだけでなく、研究者としての市場価値そのものになります。国際的な発表の場に触れておけば、語学の面でも早くから慣れることができるはずです。

所属先の選択肢を早めに比べる

企業・大学・公的研究機関は、収入だけでなく、研究テーマの決め方や成果の評価のされ方も異なります。どこで研究したいのかを早い段階から考えておくと、大学院への進学や研究室の選択といった手前の判断もぶれにくくなるでしょう。

研究者という職業の全体像や、そこへ至る道のりについては次の記事で解説しています。

TECH OFFERに登録して企業からのオファーを受ける

研究開発に力を入れている企業には、学生にはあまり知られていない企業も数多くあります。とくに企業間の取引を中心とする分野では、事業の規模が大きくても学生の目に触れる機会が少ないのが実情です。

TECH OFFERに登録すると、研究内容や専攻をもとに企業側からオファーが届きます。自分では見つけにくかった企業と出会うきっかけになりますので、まだ登録していない方はこの機会にぜひご利用ください。

\あなたに合った大手優良企業と出会える/


研究者の年収に関するよくある質問

研究者の年収について検索されることの多い質問に、公的な統計をもとに回答します。

研究者の年収は低いのでしょうか

統計の上では低くありません。令和7年賃金構造基本統計調査による研究者の推計年収は約802万円で、国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査における正社員の平均給与545万円を250万円以上上回ります。低いと感じられる場面があるとすれば、任期付のポストや小規模な組織に所属している場合など、平均から離れた条件のときでしょう。

大学の研究者と企業の研究者はどちらが年収が高いですか

一概には比べられません。大学は職位で明確に分かれ、教授で約1,082万円、准教授で約876万円、講師・助教で約712万円です。研究者全体の平均は約802万円ですので、准教授以上であれば大学のほうが高く、講師・助教の段階では下回るという関係になります。企業の場合は業界や企業規模の影響が大きく、規模1,000人以上では約837万円です。

研究者で年収1,000万円を超えるのは何歳ごろですか

平均値で見ると55〜59歳です。この年齢階級の推計年収は約1,083万円で、50〜54歳の約996万円からここで1,000万円台に乗ります。ただしこれは平均の話で、大規模な組織や公的研究機関の無期ポストであれば、より早い段階で届くケースもあります。

公的研究機関の研究者の年収はどのくらいですか

機関と雇用形態によります。令和6年度の公表資料では、理化学研究所の研究職種は無期の常勤職員が約1,161万〜1,232万円、任期付職員が約802万円でした。JAXAの常勤職員の研究職種は約912万円です。同じ機関のなかでも契約の形によって差が生じる点は押さえておきましょう。

研究者の年収は30歳でどのくらいですか

30〜34歳の推計年収は約661万円です。25〜29歳の約538万円から120万円あまり増える計算で、この時期は収入の伸びが大きい年代にあたります。博士課程を修了して就職するとこの年代からのスタートになることも多く、25〜29歳の水準と併せて見ておくとよいでしょう。

まとめ

研究者の年収を、所属先・年代・組織規模の3つの角度から見てきました。全体の平均は約802万円で、給与所得者の平均を大きく上回ります。

ただし平均という一つの数字では実態をつかみきれません。大学では職位によって約370万円、公的研究機関では雇用形態によって約400万円、企業では組織規模によって約210万円の幅が生まれていました。研究者の年収を考えるうえで効いてくるのは、何を研究するかと同じくらい、どこでどういう立場で研究するかだといえるでしょう。

年代別に見れば、40代前半で平均を超え、50代後半には平均でも1,000万円台に届きます。長い時間をかけて積み上がる職種ですので、学生のうちは専門分野の力を養いながら、所属先の選択肢を広く見ておくことが、その後の選択の幅につながります。

\あなたに合った大手優良企業と出会える/