研究職は、仕事として研究を続けられる理系学生にとっては憧れの職業です。キャリアの選択肢として考えている人も多いでしょう。 そこで気になるのは年収です。他の職業と比較して高いのでしょうか?
本記事では研究職の年収をさまざまな角度から紹介します。また、年収アップの方法や、研究者として年収1,000万円を稼ぐ方法もあわせて説明します。研究職を志望する人は、ぜひ参考にしてください。
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研究職の年収はどのくらい?
研究職の年収を見ていきましょう。
研究職の平均年収
令和4年賃金構造基本統計調査を見ると、研究職の収入がわかります。
- ・10人以上の組織で働く研究者の平均給与(年齢41.1歳 勤続12.1年)
月額給与…44万9,100円
年間賞与…165万200円
年収…703万9,400円
- ・1,000人以上の組織で働く研究者の平均給与(年齢40.8歳 勤続12.6年)
月額給与…45万9,500円
年間賞与…176万300円
年収…727万4,300円
厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、2021年1年間の日本全体の平均世帯年収は545万7,000円です。全世帯の中央値が423万円であることを考えると、研究者の平均年収は高い方であることがわかります。
所属機関や役職で異なる平均年収
大学の教員や公的研究機関の年収を見てみましょう。
- ・大学教員の平均年間給与
大学教授…1,065万6,600円
准教授…860万400円
(出典:令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況を元に算出)
公的研究機関は所属組織によって差があります。ここでは有名な理化学研究所とJAXAの平均年収を紹介します。
- ・国立研究開発法人理化学研究所平均年間給与
研究部長相当…1,231万9,000円
研究員相当…893万8,000円
(出典:国立研究開発法人理化学研究所の役職員の報酬・給与等について)
- ・国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)平均年間給与
本部部長…1,265万9,000円
研究員…562万6,000円
(出典:国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構の役職員の報酬・給与等について)
いずれも難関な研究所ですが、それだけに年収の面では恵まれていることがわかります。
初任給を比較すると?
研究者の初任給(月給)は、学歴によって次のようになっています。
- ・新卒研究員平均給与
大学院博士課程修了…27万9,555円
大学院修士課程修了…23万5,874円
大学卒業…21万2,722円
(出典:令和4年職種別民間給与実態調査の結果)
- ・新卒平均初任給
大学院卒業…26万7,900円
大学卒業…22万8,500円
新卒の段階では、研究職と平均値の間に大きな差はありません。
理系研究職の年収に関連しては、次の記事でも紹介しています。
研究職の年収が高い企業は?
年収の高い企業はどのようなところがあるのでしょうか。また、年収が高い業界を見ていきましょう。
研究開発職の平均年収ランキングより
Open Workは「研究開発の平均年収ランキング Top20」を発表しています。トップクラスの年収がどのくらいなのかが参考になります。
以下はOpen Workの2024年2月2日に更新されたデータを元に、上位5社の平均年収を一覧にしています。
(※Open Workのデータを元に自社作成)
年収の高い医薬品や電気機械器具製造は研究費の投資額も高い業界です。
次のグラフは業界別の研究費の売上⾼に占める⽐率の推移を示したグラフです。
【⽇本の産業部⾨の研究費対売上⾼⽐率の推移】
売上に比べて研究費の割合が高いということは、その企業が研究に力を入れているということです。上記のグラフでは、全体の中でも医薬品製造を始めとした6つの業界の研究費が売上高に対して高いことがわかります。
平均年収の高い企業はトップの武田薬品以下、いずれも上記の業界に属する企業が続いています。
研究職の年収はどのように決まる?
研究職の年収を決める要素として、以下のものがあります。
- ・専攻
- ・学歴
- ・研究実績
- ・語学力
各要素について、詳しくみていきましょう。
専攻
上記のグラフで見たように、業界の中でも研究に力を入れている業界があります。研究の専攻が、医薬や電気電子系など、研究に力を入れている業界であれば、高い年収が期待できます。
また、今後、イノベーションが期待されている分野、AIや機械学習、バイオテクノロジー、再生可能エネルギー、クリーンテック、量子コンピューティングなどの分野を専攻している研究者は、高いニーズがあるでしょう。
学歴
上記の「新卒研究員平均給与」の統計でも明らかになっているように、博士修了と修士修了では初任給の段階から差があります。博士修了者の方が専門分野での知識やスキルを修得しており、多くの企業は学歴を採用や昇進の評価基準にしています。
ただ、企業や業界によっては、研究職でも「学歴不問」で採用を行うところもあります。そのようなところは、高い専門性やスキルよりも顧客ニーズに応える製品開発を中心としているという傾向が見られます。
研究実績
論文は、その分野で知的貢献を行っていることを示す手段です。論文発表や学会発表などの研究実績を積むことが、企業内での評価にもつながります。
また、論文や学会発表を通して、組織の枠を超えた研究者コミュニティの中で存在感を持つことが研究者としての市場価値を高めることにつながります。アカデミックな学会以外にも、エンジニアのミートアップに参加することで、最新のトピックや技術動向に詳しいと評価されます。
語学力
論文や研究発表は英語でなされることも多いです。分野によっては国内でもすべて英語論文で発表されるところもあります。ネイティブレベルの英語でなくても、読み手が理解しやすい、論旨が明快に組み立てられた英語論文の作成が必要です。AIの進化で語学スキルは不要という説もありますが、AIはあくまで補助ツールであり、IT以外の専門領域の分野では、専門的な知識と語学スキルの両方が、今後も求められます。
また、英米圏以外の研究者と協力する場合でも、多くの場合、コミュニケーションは英語で行われます。自分の専門分野で国際的にコミュニケーションが可能な語学力を備えている研究者は、評価の対象となるでしょう。
研究職で1,000万円稼ぐには?
これまで見てきたように、研究者の平均値は40代でも700万円代です。1,000万円の大台に乗せるためには、どのような方法があるかを紹介します。
研究開発に力を入れている企業に就職する
研究分野の投資額と研究員の年収には高い相関があります。研究開発に力を入れている企業にとって、自社分野で知識とスキルを積んだ研究者は重要な資産だからです。
また、研究開発に力を入れている企業では、研究のレベルも高く、最新の情報や技術、研究ツールにアクセスできます。そこで働くことで研究者としての成長も可能になります。
研究職にどんな人が向いているかは次の記事で詳しく紹介されています。ぜひ参考にしてください。
マネジメント職に就く
マネジメント職は研究現場からは離れ、研究部門全体、企業全体を俯瞰的な立場で統括する役割です。マネジメント職に就くことで役職手当などが付き、年収も上がります。
転職する
高年収企業にランクインするような企業は、就活生にとっては非常に狭き門といえるでしょうが、関連分野で経験を積み、知識やスキルを磨いて転職するという方法もあります。
研究職は転職が難しいとも言われますが、専門分野の経験を求めている企業は多くあります。しかし、募集人数自体は少ないため、転職を考える場合は情報収集を積極的に行う必要があります。
海外で働く
円安の要素を除いても、海外の研究者の方が報酬は高い傾向があります。特にアメリカは高く、アメリカ版Indeedによると、平均値で$81,746(約1,220万円)となっています。
語学の問題や海外生活の問題もありますが、海外で研究職を目指すのも高い年収を得るひとつの方法です。国際論文を積極的に投稿したり、国際学会に参加するところから始めてみましょう。
研究職で1,000万円稼ぐために今、すべきこと
高い年収が得られる研究職を目指すために、今何をしたら良いのかを紹介します。
専門分野の能力を磨く
最も基本的で重要なことです。まず、自分の専攻分野で良い研究テーマを選ぶことから始めます。指導教官や先輩と相談しながら、「数年頑張れば解けそうな」テーマを選んでください。そのテーマの研究を進めることを通して、専門分野の知識やスキルを深めていきましょう。
研究開発に力を入れている企業を選ぶ
企業研究を行い、研究開発に力を入れている企業を探します。多くの大学生は消費者としてBtoC企業(消費者向けの商品を製造・販売する企業)の名前は知っていても、BtoB企業(企業間取引を中心に行う企業)の情報は、大企業を除くとあまり知りません。そのため、会社四季報などを見て、自分の専攻分野と重なる企業の情報を幅広く収集しましょう。
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研究職は年収面でも魅力的 せひ検討を
本記事では研究職の年収面に焦点を当て、さまざまな角度から年収について紹介しました。研究者の年収が高い企業は、それだけ研究開発に力を入れているということです。そのような企業に入社することで、研究者として自分自身の成長にもつながります。
高年収企業の研究職は、狭き門ではありますが、十分に挑戦しがいのある経験です。ぜひ、早い段階からの準備を始めてください。