SPIは、多くの企業や官公庁の採用選考で実施されている筆記試験です。SPIは性格特徴と能力が得点化され、評価されます。特に能力検査の結果によって、次の選考に進めるかどうか(いわゆる「足切り」)が決まるため、ある程度の得点は取っておきたいものです。
本記事では、SPIの基本的な情報と使われ方、理系学生に最適な勉強法を紹介します。
「SPI、まだ何にもやってないんだけど大丈夫?」
「SPIって何割くらい取ればいいの?」
「SPIの非言語問題は理系だったら何もしなくてもOK?」
このような疑問を持っている人は、本記事をぜひ参考にしてください。
SPIの基礎知識

SPIの基本的な情報を整理し、SPIについて正確に理解しておきましょう。
SPIとは?
SPIとは、Synthetic Personality Inventory(総合適性検査)の略で、
SPIの検査内容
SPIの検査は「性格検査」と「能力検査」の2種類があって、通常「SPIテスト」という言葉でイメージされる「テスト」は、「能力検査」のことです。
性格検査では次のような面で評価されます。
- ・行動的側面…日常の行動特徴を「社会的内向性」「内省性」「身体活動性」「持続性」「慎重性」の面で評価
- ・意欲的側面…意欲的かどうかを「達成意欲」と「活動意欲」の面で評価
- ・情緒的側面…気持ちの動きの基本的な特性を「敏感性」「自責性」「気分性」「独自性」「自信性」「高掲性」の面で評価
- ・社会関係的側面…社会との関わりの中で表れやすい面を「従順性」「回避性」「批判性」「自己尊重性」「懐疑思考性」の面で評価
能力検査では「言語」「非言語」の他、企業によっては「英語」や「構造的把握力」が加わる場合もあります。
SPIの検査結果はどのように使われる?
SPIの結果は各項目ごとに点数化され、テスト結果を元に、人物イメージや面接でのチェックポイント、職務適応性や組織適応性などが評価されます。
中でも能力検査の結果は、平均点を50とし、7段階に区分けされます。この段階を元に、次の選考に進めるかどうかが決まります。有名企業200社の合格平均は6だと言われています。まずは平均を超えられるよう、準備していきましょう。
SPIの準備を始めよう

この章では、SPIに備えて、何を準備したら良いかを説明します。
志望企業・業界の出題形式を調べる
志望企業や業界によって、検査内容が異なります。自分が志望している企業が求めているのが、「言語・非言語」のみか、英語や構造的把握力が求められるのかを最初に調べておきましょう。
SPI検査は4つの形態があります。
- ・テストセンター:指定会場のパソコンで受検
- ・インハウスCBT:企業のパソコンで受検
- ・Webテスティング:自宅などのパソコンで受検
- ・ペーパーテスティング:問題冊子とマークシートで受検
この中で、ペーパーテスティングだけは言語問題40問、非言語問題30問と決まっていますが、それ以外のテストは問題数は決まっていません。Item Response Theory(項目応答理論)方式といって、35分の間に言語・非言語の問題が出題されます。早く回答すればするほど、多くの問題を解くことができます。また、正解すればより難易度の高い問題が出題され、間違えれば問題は易しくなります。そのため、学生によって解いた問題数も、難易度も変わってくるのです。
SPIの準備に必要な時間
SPIのボーダーラインは企業ごとに異なり、企業側も合格ラインを明らかにはしていません。しかし、人気の高い大企業を目指すのであれば8割以上、それ以外であれば、6割〜7割を目指したいところです。
SPIテストに自信のない人でも準備で十分カバーできる
SPIテストには対策本が出ています。対策本を買い、繰り返しやることができます。最初はできなくても、できなかったところを復習することで、出題形式にも慣れ、短時間で解けるようになります。
7割取るために必要な時間は?
SPIの準備としては、30時間から60時間が必要と言われています。本試験は言語・非言語合わせて35分なので、長時間勉強するよりも短時間で集中して勉強した方がいいでしょう。
毎日1時間をめどに、タイマーを手元に用意して、言語を30分、非言語を30分と時間を区切って対策本を勉強しましょう。
計画を立てよう
大手企業のエントリーが3月1日に始まるので、そこから逆算して1月ぐらいから勉強する人が多くなっています。しかし、1月は後期試験の時期であり、希望の研究室に入るためにも試験に集中したいと考える人が多いでしょう。
その意味でも11月~12月には始め、後期試験が終わってから仕上げに入れるように計画を立ててください。
苦手分野を見つける
勉強を始める前に、対策本やネットでの模擬試験を時間を測りながらやってみます。自己採点で苦手な分野を割り出し、苦手な分野を重点的に勉強していきましょう。
スキマ時間を有効活用
机に向かってやるばかりがSPI対策ではありません。アプリなどを利用して、通学時間や待ち時間を活用しましょう。
模試を活用しよう
模擬試験は、勉強を始める前(苦手箇所を見つける)、対策本を1周した段階(定着度合いを測る)、直前(SPI試験前の実力を測る)など、要所要所で活用できます。問題の種類別に点数をスプレッドシートなどに記録し、進捗度合いを見える化しましょう。
SPI言語分野の勉強法

テストセンターの言語分野では次のような分野から出題されます。
- ・2語の関係
- ・語句の意味
- ・語句の用法
- ・文章整序
- ・空欄補充
- ・長文読解
2語の関係はパターンで整理
「2語の関係」は、例と同じ関係になっている対を語群の中から選ぶ問題です。
【例題】例:自転車:サドルア.新聞:雑誌 イ.パソコン:キーボード ウ.ワイン:ぶどう選択肢 A.アだけ B.イだけ C.ウだけ D.アとイ E.アとウ F.イとウ 【正解】Bのイだけ |
2語の関係で出される主なものは、次の関係です。主な関係のパターンが頭に入れば、回答時間が短縮できます。
・包含関係…一方が他方を含む関係。「A(B)がB(A)の一種である」という関係で、語のカテゴリーのレベルに着目する
〈例〉洗濯機:家電用品 魚:ヒラメ
・部分の関係…一方が他方の一部である関係。「A(B)が(A)Bの一部である」という関係で、言葉を映像でとらえてみる
〈例〉自転車:サドル パソコン:キーボード
・原料の関係…一方が他方の一部である関係。「A(B)はB(A)から作られる」という関係で、製品と原料の関係にないかに着目する
〈例〉ワイン:ぶどう 硝酸カリウム:火薬
・用途の関係…一方が他方の用途となっている関係。「A(B)はB(A)のために使う」という関係で、「何に使うものか」に着目する
〈例〉洋服ダンス:収納 治療:注射
・同列の関係…両方とも同じカテゴリーに属する関係。「AとBはともに〇〇の一種である」という関係で、大きなカテゴリーを考える
〈例〉新聞:雑誌 野球:テニス
2語間の関係だけでなく、語順も関係するので、注意が必要です。
〈例〉「コンビニエンスストア:小売店」「筆記具:シャープペンシル」
この場合、共に包含関係ですが、「コンビニエンスストアは小売店に含まれる(A∊B)」のに対し「筆記句はシャープペンシルを含む(A∋B)」のため、両者は一致しません。
語彙問題は量を解く
【例題】はじめにあげた言葉と意味が最もよく合致するものを選びなさい。 つまびらかA:丁寧なことB:くわしいことC:親切なことD:事態が切迫することE:やましいこと 【正解】B |
語句の意味や用法を問う問題は、言葉の意味や同意語・対義語、慣用句を知っていればいるほど、早く正解にたどりつきます。SPI対策用の問題集で語彙を増やすほか、アプリですき間時間を使って学習するのも良い方法です。
文章整序は接続詞と指示語がカギ
文章整序は選択肢を並べ替え、論理の通った文章を作成する問題です。
【例題】抗酸化作用を含む食品を取ることによって、人体に有害な過剰な活性酸素を消去できることがわかっています。つまり、活性酸素量のバランスが取れた状態なら何も問題はないのですが、体の防御能力を超えた量の活性酸素にさらされると、活性酸素は老化促進や炎症、病気の原因となります。この活性酸素は、免疫細胞が病原体を破壊するときに用いられるのですが、反面、人体に対して悪影響を及ぼすこともあるのです。私たちは呼吸することで酸素を体の中に取り入れていますが、そのうちの数%は活性酸素になります。抗酸化作用とは、活性酸素の発生を抑えたり、消去したりする働きのことです。選択肢D→B→C→A→ED→A→E→B→CD→C→B→E→AE→A→D→B→CE→C→B→D→A 【正解】3 |
文章整序問題は、接続詞と指示語に注目して、文章のまとまりを作ります。
例題のBは「つまり」という言い換えや要約の接続詞が使われています。そこで、Bはどの文章の言い換えや要約になっているかを探すと、Cが同じ内容を持っていることがわかります。Cの内容をより具体的に言っているのがB、という関係性にあります。そこで、C→Bの流れになっているものを探します。
次に、Cの「この」という指示語に注目します。Cの前にくるのは、活性酸素を中心としたトピックでなければなりません。活性酸素をトピックとするDをCの前に置くと、論理関係がスムーズに流れることがわかります。Eも活性酸素にふれてはいますが、Eが主題とするのは抗酸化作用であるため、E→Aと続いた方が自然です。
長文読解は設問の把握から
長文読解は1200字程度の問題を読み、設問に答えていくものです。限られた時間内に解くために、次のことを意識しましょう。
- ・最初に設問を把握し、何が問われているかを押さえてから読む
- ・内容一致を問う問題は、あらかじめ選択肢を頭に入れて読む
- ・空欄補充は、選択肢の中から空欄の前の文章と後の文章のつながりを作る言葉や文章を選ぶ
- ・指示語の指示対象は直前を探す
- ・選択肢が複数ある場合も多いので、1つを見つけただけで安心しない
長文を読むのが苦手な人は、問題文を音読するところから始めましょう。長文を読むのが徐々に苦痛ではなくなり、パラグラフごとに意味を把握することができるようになるはずです。
SPI非言語分野の対策法

非言語分野で出題頻度が高いのは、次のような項目です。
- ・推理
- ・表(数表・図表)
- ・確率
- ・速度
- ・集合
- ・金額
- ・分担
- ・割合
理系でも意外と厄介?非言語分野
非言語分野でかならず出題されるのが推理問題です。推理問題は種類も多く、これまでに見たことのないような問題が出されることも多いため、事前の準備が必要です。
一方、確率や速度、集合など、理系であればあまり苦にならない項目も多くあります。しかし、図表問題のように、問題自体は難しくなくても出題の仕方が特殊なものもあるので、対策本にひととおり目を通し、見た瞬間にどのように解いたら良いのかがつかめるようにしておくとよいでしょう。
読解力が求められる推理問題
推理問題は大別して次の5種類に分けられます。
- ・論理
- ・位置
- ・順序
- ・対戦
- ・命題
推理問題は次のような形で出題されます。関係がすべて文章で出題されるため、まず文章で言われている相互の関係性を正確に把握することが必要です。
【例題】A~Eの5人がテスト結果を比較しました。AさんよりBさんは12点悪く、BさんよりCさんは15点良かったです。DさんはCさんより20点悪く、Eさんよりも2点良かったです。ここで言えるのはどれでしょう。DはBよりも良かったCはEより良かったAはEより19点良かったア.1だけ イ.2だけ ウ.3だけ エ.1と2 オ.1と3 カ.2と3 キ.正しいものはない 【正解】カで2と3が正しい |
文章を図や数式に変換するコツをつかめば、速く解けるようになります。苦手な人も、繰り返し解くうちに、すぐに慣れるでしょう。
英語分野の対策法

SPIで英語が求められる企業は、外資系や商社、航空など外国との関連が多くなっています。TOEICのスコアを求めるだけでなく、実際の英語力を見たい企業が英語を実施します。
SPIの英語分野では、次のような項目が出題されます。
- ・語彙
- ・空欄補充
- ・会話
- ・整序
- ・長文
語彙問題対策はアプリがおすすめ
語彙問題対策は、すき間時間に単語集やアプリなどを使って語彙力をつけることがおすすめです。TOEIC中級レベルの単語集には音声がダウンロードできるようになっているものがほとんどなので、目と耳の両方を使ってボキャビルを行いましょう。
長文問題はパラグラフリーディングで
長文は1文ずつ読んでいては時間が足りなくなってしまいます。インターバルの間に設問に目を通し、パラグラフの最初の文に注目して、内容をつかみながら読み進めます。
要約問題では、選択肢の「主語」「動詞」「目的語」「時」「場所」をチェックし、すべて正しいものを選びます。
また、英語が必要な人は、なるべくTOEICを受けるようにしましょう。リスニング以外のテスト形式は、ほぼ一致しているだけでなく、2時間で200問のTOEICに慣れておけば、テストセンターの20分のテストも、さほど苦にならなくなるでしょう。
構造的把握力分野の対策法
構造的把握力分野はテストセンターでのみ実施されている検査で、通常のSPI検査のオプションとして設定されています。言語系と非言語系の2種類があり、グルーピングを行います。
言語系にはこのような問題が出題されます。
【例題】次のA~EをP(2つ)とQ(3つ)に分けるとき、Pに分類されるものはどれでしょうか。以下の選択肢の中から選んでください。電車が遅れている。前の駅でトラブルがあったようだ。雨に濡れてしまった。風邪を引いたようだ。春子も大きくなったなあ。机に手が届いている。やっと道路工事が終わった。これでやっと静かになる。わが社の収益が大幅に向上した。これも営業部が頑張ったおかげだ。 ア. AとB イ. AとC ウ. AとD エ. AとE オ. BとC カ. BとD キ. BとEク. CとD ケ. CとE コ. DとE 【正解】エ |
例題では、2つの文章の間に原因と結果の関係がありますが、2つの文章が原因→結果の順になっているものがB、C、D、結果→原因の順になっているのがAとEです。そのため正解はエになります。
非言語系では次のような問題が出題されます。
【例題】次のA~Dの中から問題の構造が似ているものを2つ選び、以下の選択肢の中から選んでください。コイントスをして3回連続で表を出す確率を求めよ2つのサイコロを振り、その和が7となる確率を求めよ10本のうち1本だけ当たりがあるくじで、2回とも当たりを引く確率を求めよ。引いたくじは元に戻すものとする小さい袋に赤玉1個と白玉3個、大きい袋に赤玉5個と白玉4 個が入っている。それぞれの袋から1個ずつ玉を取り出すとき、それらが同じ色の玉である確率を求めよ ア. AとB イ. AとC ウ. AとD エ. BとC オ. BとD カ. CとD 【正解】イ |
いずれも確率の問題ですが、AとCが独立試行、Bが従属試行となっています。Dも赤玉と白玉を求める確率は独立ですが、同じ色は背反であるため、それぞれの確率を足して求めます。そのためAとCが同じ問題といえるので、正解はイです。
専用の問題集でグルーピングに慣れよう
構造的把握力分野の問題は、「解く」のではなく「グルーピング」が求められるため、慣れが必要です。
問題を解くことでパターンをつかむことができるため、構造的把握力のテストが求められる人は、専用の問題集をやってみましょう。
忙しい理系学生だからこそメリハリが重要
採用選考は、就活生を総合的に評価しようとしています。そのため、面接や大学の成績だけでは把握できないところ、特に仕事でも重要な「言語」や「非言語」の能力を、企業は検査で知りたいのです。
志望する企業に採用されるためにも、SPIは避けて通れないものです。理系就活生は、非言語分野では慣れている問題もありますが、設問の仕方がこれまで慣れている問題の角度とは異なるため、ひととおりやっておきましょう。
逆に、言語系分野は長文読解など、苦手意識を持つ人も多いかもしれません。しかし、毎日時間を決めて少しずつ勉強することが高得点につながります。
忙しい毎日の中で、なかなかSPIに時間を割けないかと思うかもしれませんが、毎日30分、1時間と時間を決めて、メリハリをつけて勉強を続けましょう。
SPIの勉強を通じて基本的な思考力や語彙力、読解力や問題解決力を養うことは、社会人になった時、かならず役に立つことでしょう。