こんにちは。理系就活情報局です。
理系学生の中には、プログラミングやシステム設計の授業を履修している人もいるのではないでしょうか。または、将来的にソフトウェア業界への就職を考えている学生もいでしょう。
「ソフトウェア業界に就職したいが、具体的にどんな仕事をするのかよく知らない」
「ソフトウェア業界を目指したいが、身についておいた方がいい資格などを知りたい」
そんな悩みを持つ理系就活生に向けて、ソフトウェア業界とはどんな業界かについて解説します。国内市場が2028年に30兆円規模へ拡大すると予測される成長著しいソフトウェア業界の仕事内容から求められるスキルなどを分かりやすく紹介します。
業界選びやソフトウェア業界に興味を持っている理系就活生の方は、ぜひ参考にしてみてください!
ソフトウェアって何?

ソフトウェアという言葉を聞く機会も随分多くなりましたが、そもそも「ソフトウェアとは何か」という言葉を説明できる人は多くありません。
ここでは、ソフトウェアが何なのかについて説明します。
ソフトウェアは「コンピュータ上で命令に従って動くプログラム」
ソフトウェアは、「コンピュータに対して命令を出すための情報や、コンピュータ・プログラムのことを指します。
ソフトウェアの対比語としては、こちらも聞いたことがあると思いますが「コンピュータそのものを物理的に構成している部品や装置・回路」であるハードウェアです。
それぞれを「ソフト」「ハード」と販売店や社内で呼ぶ場面も多く見られます。
ソフトウェアにも様々な商品(ソフト)がある
ソフトウェアと一口に言っても、その種類は様々です。ここでは、主な種類について紹介します。
アプリケーションソフトウェア
「アプリ」とも呼ばれるもので、最も私たちにとって身近かもしれません。
別名、「応用ソフトウェア」とも言われますが、特定のタスクを実行させるものです。
世間的によく知られているものを挙げると、マイクロソフト社の文書作成用に作られた「Word」表計算用に作られた「Excel」などがあります。
わたしたちが日常的に使っているLINEやTwitter・InstagramといったSNSアプリケーションや、動画を見るためのYouTubeなども該当します。
OS(オペレーティングシステム)
OSは別名、基本ソフトウェアとも呼ばれています。
PCやスマートフォンを使用するための基本的なプログラムです。
わたしたちがよく知っているものでは、Windows・iOS、Androidなどがあります。
サーバーなど大規模な計算処理を行うハードウェアにもOSがインストールされており、UNIXやLinuxなどが有名です。
プログラミングソフト
プログラマーが開発で使うことを前提にした支援ツールです。
シンプルにコーディングできるテキストエディタや、様々な機能を搭載したIDE(統合開発環境)などがあります。
ドライバ
コンピューター(PCやスマートフォン)から、プリンターなどの外付けハードディスクなど周辺機器を使うために必要なソフトウェアです。
ドライバは、OSからデータを収集し、ハードウェアに特定の動作やタスクを実行するように指示します。
ミドルウェア
オペレーティングシステム(OS)とアプリケーションの間に位置するものです。
両者の連携やデータ交換をスムーズに行うためのソフトウェアで、アプリケーション開発の効率化や複雑さの低減、異なるシステム間での互換性やデータの統合を実現する役割があります。
ユーティリティソフト
OSやアプリケーションなどの機能を補います。
パフォーマンスを最適化するために用いられ、コンピュータのハードウェアやアプリケーションソフトウェアの性能・状態を監視・円滑な動作をサポートします。
このように、ソフトウェアと言っても様々な種類があり、企業によって取り扱っているものは違いますので、志望企業を決める時に注目してみるといいでしょう。
IT業界5分類との関係図
ソフトウエア業界も含むIT業界には、主に以下のような5つの分類があります。

「基盤となるハードウェア」「その上で動くソフトウェア」「顧客向けに統合や運用を担う情報処理サービス(SIer)」「社会の通信基盤を支える通信・ネットワーク」そして「利用者に直接価値を届けるWeb・インターネットサービス」です。
各分野が関係しあってIT業界を形作っています。どの業界がいい・悪いはなく、それぞれのポジションでやることが少しずつ違うイメージを持っておくといいでしょう。
ソフトウェア業界の主な仕事内容

ソフトウェア業界にも、様々な職種が存在します。主な職種と年収は次の通りとなります。
職種 | 主な仕事内容・業務内容 | 平均年収(万円) |
システムエンジニア(SE)/プログラマー(PG) | システムの設計・開発・運用・保守。要件定義からテスト、納品までの一連の工程を担当。 | 約489万円 |
セールスエンジニア | 技術的な知識を活かし、製品の提案・デモ・導入支援を行う。営業と技術の橋渡し役。 | 約666万円 |
ITコンサルタント | 顧客の業務課題を分析し、ITを活用した解決策を提案・実行支援。 | 約598万円 |
ネットワークエンジニア | ネットワークの設計・構築・運用・保守。通信インフラの安定稼働を支える。 | 約447万円 |
組込みシステムエンジニア | ハードウェアとソフトウェアが組み合わさった組込み機器の開発・保守。 | 約453万円 |
データベースエンジニア | データベースの設計・運用・チューニング。データの整合性と効率的なアクセスを確保。 | 約463万円 |
AIエンジニア | 人工知能のアルゴリズム開発・機械学習モデルの構築・運用。高度な数学・統計知識が必要。 | 約556万円 |
参考:日本のビジネスパーソンの平均年収は?平均年収ランキング(平均年収/生涯賃金)【最新版】|doda
続いて、ソフトウエア業界でも特に多いシステムエンジニア(SE)・プログラマー(PG)・セールスエンジニア、そしてそれ以外の職種について解説します。
システムエンジニア(SE)
システムエンジニアは、クライアントの希望に沿ったシステムやプログラムを設計し、打ち合わせを行うのが主な仕事です。
設計したシステムやプログラムのコーディングをプログラマーに依頼し、その進捗管理なども行います。
コミュニケーション能力や納期管理能力が問われることも珍しくありません。
プログラマー(PG)
プログラマーは、システムエンジニアが設計した仕様書を基に、プログラムを作成し、動作に問題がないかデバッグまで行うのが仕事です。
時には、システムエンジニアのサポートとして、より使いやすいプログラムやシステムを設計する手伝いをすることもあります。
プログラマーからステップアップしてシステムエンジニアになる人も多く、キャリアアップの次のステップとして考えている人もいます。
セールスエンジニア(営業)
セールスエンジニアは、システムパッケージなどを売り込んだり、既に納入されているクライアント先で問題なく使えているかの保守点検を行うのが仕事です。
また、インストラクターの役割として使い方をデモンストレーションこともあります。
時には、システムエンジニアも同伴してクライアントとシステム設計を一緒に考えることもあり、システムエンジニアとしての経験を生かしてセールスエンジニアへ職種転換する人もいます。
その他(事務系や営業企画など)
事務系や営業企画などの職種は、ソフトウェア業界に限らずどの業界でも存在する一般的なものです。
ただ、事務系でもIT事務としてシステムエンジニアなどが参加するプロジェクトのサポート事務としてスケジュール管理やプロジェクトマネージャーの秘書的業務を行う部署が存在する場合もあります。
営業企画も、クライアントの要望に沿ったパッケージを考えるなど、ソフトウェア業界ならではの業務を含むことも珍しくありません。
ソフトウェア業界にも様々な企業があります。
テックオファーのようなスカウト型サイトに登録しておくと、希望のソフトウェア業界からだけでなく、多くの企業からコンタクトがあるかもしれませんので登録しておくことをおすすめします。
年収は業界平均・中央値を参考にしており、企業規模・地域・経験年数・スキルによって上下します。外資系の場合は、企業によって変動が大きいため、注意が必要です。
ソフトウェア業界の市場規模と将来性

引用:国内IT市場産業分野別/従業員規模別2025年最新予測を発表
IDJの調査によると、2025年の国内IT市場規模は前年比8.2%増の26兆6,412億円、2028年の国内IT市場規模は30兆2,176億円と予測しており、市場が今後も拡大していく予想を出しています。
世界経済の動向などで変動する可能性はありますが、基本的に技術革新が進み、市場拡大していくという方向性で間違いないといえそうです。
ソフトウエア業界の中でも、特にIoTやAI・機械学習の分野は今後特に大きく伸びると予測されています。
これらの分野を中心に、ニュースや企業の発表などからトレンドを掴んでいくことも大切です。
IT業界内での立ち位置と他業界との違い
まずは、IT業界内でのソフトウエア業界の立ち位置について確認していきましょう。
IT業界は主に5つに分類され、次のように大きく分けられます。
業界区分 | 主な内容 | 具体的な企業例 |
ソフトウェア業界 | アプリケーションやOSなど、ソフトウェア製品を開発・提供する | Microsoft(Windows)、 Adobe (Photoshop)、 任天堂 (ゲームソフト) |
ハードウェア業界 | パソコン、スマートフォン、周辺機器などのハードウェアを開発・製造・販売する | Apple (iPhone, Mac)、 Dell、 ソニー (PlayStation) |
インターネット/Web業界 | ホームページ制作、インターネット広告、ECサイト運営など、Web上のサービスやコンテンツを提供する | Google、 楽天、 Yahoo!、 サイバーエージェント |
通信業界 | インターネット回線やモバイル通信など、情報通信インフラを提供する | NTT、 KDDI、 ソフトバンク、 楽天モバイル |
情報処理サービス業界 | システムの開発・運用、データ処理、ITアウトソーシングなどを担う | NTTデータ、 富士通、 日立ソリューションズ、 TIS |
ソフトウェア業界の特徴
続いて、ソフトウエア業界の特徴を簡潔にまとめました。
特徴 | 内容 |
プロダクト志向 | パッケージソフトやSaaSなど「汎用性のある製品」を開発し、多くのユーザーに販売・提供する。 例:会計ソフト、グループウェア、セキュリティソフトなど。 |
スケーラビリティ | 一度開発したソフトウェアは、追加コストを抑えつつ複数の顧客に展開できるため、成功すると高い利益率を実現できる。 |
技術革新主導 | AI、クラウド、モバイルなどの先端技術がダイレクトに市場拡大につながる。海外市場との競合や連携も活発に行われる。 |
ソフトウエア業界とSIerの違い
では、ソフトウエア業界とSIerとの違いはどこにあるのでしょうか。以下の表にまとめました。
ソフトウェア業界 | SIer(システムインテグレーター) | |
提供価値 | ソフト自体を「製品・サービス」として提供 | 顧客企業ごとにシステムを企画・設計・導入 |
ビジネスモデル | パッケージ販売・SaaS課金・ライセンス収入 | 受託開発・プロジェクト型契約・保守サービス |
対象顧客 | 個人・中小企業・大企業など幅広い市場 | 主に大手企業や官公庁など法人 |
開発スタイル | 汎用性重視、ユーザー数を拡大して利益最大化 | 顧客ごとに要件定義からカスタマイズ開発 |
収益構造 | 売れれば規模の経済が働き、利益率が高い | 人月商売(人員稼働時間ベース)になりやすい |
企業の代表例 | マイクロソフト、アドビ、日本オラクル、サイボウズ | NTTデータ、TIS、日立ソリューションズ、富士通 |
SIerは「顧客特化型のサービス提供者」であり、ビジネスモデルが異なります。
一方でソフト業界はスケールメリットがあり、グローバル展開しやすい一方、SIerは日本独自の強み(大規模案件対応、顧客との密着関係)を持っています。
他業界との違い
他業界との違いについても簡潔にまとめました。
比較対象 | ソフトウェア業界(サービス提供者) | ハードウェア業界/通信業界(基盤提供者) | 関係性 |
ハードウェア業界 | ソフトウェアという無形の製品を扱う。更新や改善が柔軟。 | パソコンなど物理的な製品を扱う。物理的な制約がある。 | ハードウェア上でソフトウェアが動作する。 |
通信業界 | 通信インフラの上で動くサービス(クラウド、アプリ等)を提供する。 | 情報通信というインフラ(土台)を提供する。 | 相互に補完し合う関係。 |
ソフトウェア業界で必要とされる能力

ソフトウェア業界で必要とされる能力について紹介します。
論理的思考力
論理的思考力は、プログラムやシステムを設計・コーディングするときに必要となる能力です。特に、アルゴリズムの授業で学ぶ計算量の概念や数学で培う証明問題の思考プロセスは、バグが少なく効率的なコードを書く上で直接的に役立ちます。
コミュニケーション能力
黙々と一人で画面に向かってプログラミングをするイメージがあるかもしれませんが、コミュニケーション能力を求められる場面は非常に多くなります。
プロジェクトが社内だけでなく、複数の企業から集められて作られることもある上に、クライアントが望むシステムをヒアリングするなど社内外の人とやり取りする場面が多いからです。
もちろん、冒頭のように一人で画面に向き合ってひたすらプログラミングをしている人もいますが、プロジェクトが大型化していることもあって少なくなっています。
協調性
社内外の多くの人とかかわる場面が増えますので、協調性も必要です。
プロジェクトの中で円滑に業務が行えるよう、様々な立場・職種の人とうまく関係を築けなければ、クライアントの望むシステムが作れなかったり、納期が遅れたりとトラブルが起こることになりかねません。
新しい知識を貪欲に吸収する姿勢
ソフトウェアの知識は日進月歩です。
次々と新しいシステムが開発されたり、プログラミング言語の人気が変化したりと、目まぐるしく業界のトレンドも変わっています。
業界のトレンドを仕入れておくことも大切ですが、スキルアップのために新たなプログラミング言語の習得に励むなど、勉強し続けなければスキルを維持するのも難しくなることは覚えておいた方がいいでしょう。
状況対応力
ソフトウェア業界では、プロジェクトの進捗に遅れが生じたり、システム仕様が変更になったりするなど、状況の変化が多く起こります。
極端な例では、昨日までのシステム仕様と今日決まったシステム仕様がガラッと変わることもあるのです。
刻々と変化する状況に適応できる能力がないと、こうした現場についていくのが難しいかもしれません。
ソフトウェア業界の仕事に就くためにしておきたいこと

ソフトウェア業界は、未経験でも新卒入社できる会社が多く存在します。
しかしながら、身につけておきたいスキルもありますので、紹介します。
情報系の学部・専攻で知識を身につける
情報系の学部や専攻でプログラミングなどの経験を多く積んでおくと就活では即戦力に近い扱いとなる場合があります。
もし、情報系の学部などに在籍していなくても論理的な思考ができれば問題はありませんので安心してください。
情報処理技術者試験の資格を取る
情報処理技術者試験の資格を取るのも有効です。
「情報処理の促進に関する法律」に基づき経済産業省が、情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上の水準であることを認定している国家資格で、持っているとシステム関係の知識が一定水準あるとみなされます。
学生でも受験することができますが、合格率は25%前後と決して高いとは言えません。
合格するためには、しっかりと勉強することが必要です。
ソフトウェア業界を視野に入れている学生は、早いうちに取得を考えておくといいでしょう。
プログラミングができるようになる
独学でプログラミングをすることも可能です。
市販されているプログラミング言語の本やシステム設計の本を買い、独学で挑戦している学生もいます。また、大学に情報系の学部や授業があれば選択して受講するのもおすすめです。
まずは大学の授業で扱うPythonやC言語を完璧に理解することから始めましょう。その上で、GitHubで自分の作品を公開したり、AtCoderのような競技プログラミングサイトで腕試しをしたりするとスキルを客観的に証明する材料になります。
様々なアプリやソフトウェアを触ってみる
前述したとおり、ソフトウェアといっても様々な種類があります。
身近なものから積極的に触れて、自分ならどんな風に設計したら使いやすいか、どんな機能があればいいかなどを考えてみるのも勉強になるのでおすすめです。
英語力をつける
英語力も大切です。
プログラム言語は日本語ではありません。
基本的に英語がベースとなっており、英語力があれば海外の技術者との交流も可能です。
特に新しいプログラミング言語は、日本語のマニュアルや説明がないものもあり英語力がなければ理解できないという場面もあり得ます。
ソフトウェア業界に限らず、英語力を身につけておくと役立ちますので、TOEICなどの資格取得も視野に入れておきましょう。
まとめ
この記事では、ソフトウェア業界の概要や求められる能力・就くために身につけておきたいスキルについて解説してきました。
この業界は、日々めまぐるしく変化し続けています。
ニーズも高く、スキルや能力があれば新卒でも入りやすい業界なだけでなく、今後も求められる場面が増えていくと予測されています。
ぜひ、どんなアプリケーションやソフトウェアを開発してみたいか考えてみてはいかがでしょうか。