薬学部を中心に理系学生に人気の高い医薬品業界。
医薬品の研究開発は高い専門性が求められる上、英語力も求められるなど難易度の高い業界と言えます。

そんな医薬品業界ですが、具体的にどのような業務を行うか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、医薬品業界について現状や将来性・最新動向も踏まえて解説します。
医薬品業界を目指す理系学生の方はぜひ参考にしてみてください。

▼選考を成功させたいあなたはこちら▼
TECH OFFERの就活セミナーに参加する

医薬品業界にはどんな企業がある?

医薬品業界にはどんな企業がある?

医薬品業界は製薬メーカーを中心に医薬品の製造・販売を行う会社が集まった業界です。
病院や薬局で処方・市販される医薬品の製造だけでなく、既存医薬品の改良や新薬の研究開発など幅広い仕事があります。

医薬品は開発するのに長期間かつ多額の研究開発費がかかるため、資本力のある大企業が多いのが特徴です。
処方箋を必要とする医療用医薬品の市場規模が非常に大きいですが、ドラッグストアなどで市販される一般用医薬品を製造販売する企業も多く存在します。

また近年では医療費抑制の方針から、新薬と同じ有効性がありながら価格が安いジェネリック医薬品も広く浸透しています。

このように医薬品にも様々な種類があるため、医薬品業界の中でも様々な領域に携われるのが特徴です。

医薬品業界の現状と市場規模

医薬品業界の現状と市場規模

ここでは医薬品業界の現状と市場規模について解説します。

厚生労働省の「薬事工業生産動態統計年報」では、2020年度の医薬品生産金額は9兆4859億円と報告されています。

近年高齢化の影響により医療費が増加傾向にあり、政府は薬価を引き下げることで医療費を抑制する動きが活発です。
こうした影響から医薬品の製造元である製薬メーカーは新薬での利益率が低下しており、以前よりも収益をあげるのが難しくなっています。
さらに製薬メーカーは早期退職者の募集や採算の合わない事業の売却などコスト削減に乗り出しており、非常に苦しい現況であると言えるでしょう。

製薬業界では高い利益が見込める希少疾病医薬品の開発にシフトし状況の打開を試みていますが、薬価は毎年引き下げられているため各社厳しい状況が続いています。

医薬品業界の将来性

医薬品業界の将来性

ここでは医薬品業界の将来性について解説します。

現状苦しい状況が続く医薬品業界ですが、病気がなくなることはないため需要自体は安定していると言えるでしょう。
とはいえ薬価引き下げの影響から国内での収益確保が難しいため、最近では海外市場に進出し売上・利益の確保に努める企業が多くなっています。
象徴的な例として2019年1月の武田薬品工業によるアイルランド製薬会社シャイアーの買収が印象的でしょう。
武田薬品工業はシャイアーが強みとしていた希少疾病医薬品の開発を進め、2024年までに同領域で14もの新製品発売を予定しています。
また、アステラス製薬も外資製薬メーカーのファイザーと提携し前立腺がん治療薬の開発に成功。中国やアメリカでも承認され堅調に売上を伸ばしています。

このように医薬品業界は海外進出を積極的に行っており、今後は海外市場でのシェアを取れるかが事業継続の鍵となるでしょう。

▼選考を成功させたいあなたはこちら▼
TECH OFFERの就活セミナーに参加する

医薬品業界にはどんな仕事がある?

医薬品業界にはどんな仕事がある?

ここでは医薬品業界の代表的な職種について以下3つを解説します。

  • ・研究職
  • ・開発職
  • ・MR

医薬品業界を目指す方は上記職種を中心にどのような仕事があるのか詳しくチェックしておきましょう。

研究職

研究職は医薬品の有効成分分析や薬の合成実験など実験や分析がメインとなる職種です。
製薬メーカーの研究職につくには理系の修士・博士の取得など大学院の卒業を条件としている場合がほとんどです。
もしくは薬学部を卒業していてもエントリーできます。

主な研究内容としては医薬品の基礎研究から非臨床試験まで幅広い研究を実施します。
基礎研究とは医薬品の元となる化合物を発見し作り出す研究です。
植物や動物などから天然素材を抽出し、様々なテクノロジーを駆使して化合物の発見に繋げます。

非臨床試験とは新薬を人間に投与する前に、動物等へ投与し有効性・安全性を確かめる試験のことを言います。

開発職

開発職では臨床試験などを通して、医薬品開発をする職種です。
研究職と同様、理系の修士・博士など大学院の卒業が必須で、薬学部卒の学生もエントリーできます。

臨床試験とは医薬品を市場に流通させる前に健康な成人や患者に投与して有効性や安全性を確かめる試験のことです。
この臨床試験で医薬品としての有効性や安全性を証明できないと、製造承認を取得できず市場に流通させられないため、非常に重要な業務となります。

臨床試験では医療関係者とのコミュニケーションが大切なので、研究以外の能力も問われる職種です。
また、海外のデータや論文を目にする機会も多く、英語でのやりとりも頻繁に発生するため英語力も必要となるでしょう。

MR

MRとは製薬メーカーの営業担当のことで、正式名称は「Medical Representatives(医療情報担当者)」です。
病院やクリニックに訪問し、医師に自社の医薬品に関する情報を提供することが主な業務となります。
医薬品にもそれぞれ特性があるため、正確な情報を医師に提供し適切な患者に自社医薬品を処方してもらうことがMRの役割です。

医薬品業界の最新ニュース

医薬品業界の最新ニュース

ここでは医薬品業界の最新ニュースについて以下の項目を紹介します。

  • ・医薬品開発にAI活用が進む
  • ・バイオ医薬品の台頭

医薬品開発にAI活用が進む

近年医薬品開発でAI活用が進んでいます。
医薬品開発は長い年月と巨額の研究開発費がかかることから、資本力のある大手企業のみが事業を継続させられてきました。

こうした中AIを活用することで新薬の元となる化合物を素早く特定し、開発期間の短縮と開発コストの削減に取り組む流れが加速しています。
また、日立製作所が開発した医療向けの自然言語処理やディープラーニングなどのAI技術を活用することで、従来の作業と比較して臨床試験に関する情報収集時間を従来よりも70%削減できる見通しが立っており、臨床試験の短縮に貢献できる可能性も出てきているのです。

このように医薬品開発ではAI活用による開発期間短縮やコスト削減を目指しており、これまで資本力がなく医薬品開発に参入できなかった企業も着手できる日が近いかもしれません。

バイオ医薬品の台頭

近年医薬品業界では「バイオ医薬品」という新しいタイプの製品が登場しています。
バイオ医薬品とは人間の体内にあるホルモンや酵素などの生体分子を応用して作られる医薬品のことです。
バイオ医薬品は有効性が高く副作用も少ないという優れた性質を持ちますが、従来は比較的簡単な低分子化合物を用いた医薬品しか作成できませんでした。
しかし近年バイオテクノロジーが進歩したことにより、タンパク質医薬品や抗体医薬品といった複雑な生体分子の生産が可能となり、適応できる疾病の数も増えてきています。

具体的にはがんやC型肝炎の治療薬として使われるインターフェロンや糖尿病の治療薬として使われるインスリンなどが挙げられます。

バイオ医薬品も近年大量生産が可能となっており、希少疾病にも対応できる薬剤が多いことから今後も各製薬メーカーが力を入れて取り組む分野となるでしょう。

▼選考を成功させたいあなたはこちら▼
TECH OFFERの就活セミナーに参加する

これは知っておきたいポイント!(まとめ)

医薬品業界は理系学生からも人気の高い業界ですが、近年薬価引き下げなどの影響で収益がうまく確保できず苦しい状況となっています。

そんな状況を打開するため、大手を中心とした国内企業が海外進出による収益確保に努めており、グローバルに活躍できる人材が求められるでしょう。

特に理系学生に人気の職種である研究開発職は英語を多用するため、英語力に長けていた方が良いです。

医薬品業界についてしっかりと理解し、志望企業の内定を勝ち取りましょう。