博士課程に進んだ学生にとって、数ある悩みの種の1つに次の進路があるでしょう。
アカデミアなどの公的機関で研究を続けようと考える一方で、民間企業を選択肢として検討している方もいるはずです。
民間企業ではアカデミアにはない研究のスピード感や規模感があるので、魅力的と考える方もいるでしょう。

しかし博士学生の就活は難しく、中々内定が決まらないといった声もあがっています。
今回は博士学生の採用をおこなっている企業就活のポイントを解説します。
博士学生で就活に不安を感じている方はぜひ参考にしてみてください。

修士と博士では正社員率が異なる

修士と博士では正社員率が異なる

博士学生を採用している企業や業界を紹介する前に、1つのデータを紹介しておきます。

平成30年に発表された科学技術白書によると、修士と博士ではいわゆる正社員率が大きく異なるという事実が発表されています。

本章ではデータが示す修士と博士の正社員率を紹介し、博士課程修了後の採用状況について解説します。

引用:平成30年版科学技術白書

修士課程後の就職者の9割が無期雇用

平成30年に発表された科学技術白書によると、理工系を修士課程で修了した37,128人中、約33,000人が就職しています。

就職した約33,000人のほとんどが無期雇用での採用です。

無期雇用とは雇用期限のない被雇用者、一般的には正社員を指しています。

修士課程を修了した後、就職した修士学生のほとんどが正社員として働いていることがデータからわかります。

博士課程後の就職者の5割が無期雇用

同じく科学技術白書によると、博士課程を修了した4,809人中、約3,400人が就職しています。

無期雇用として就職したのは約半数の1,700人です。

博士課程を修了した後、就職した博士学生の半数が正社員枠で働いていないことがデータからわかります。

博士学生の採用をしている業界・企業

博士学生の採用をしている業界・企業

博士学生が持つ高い専門知識とヒューマンスキルに魅力を感じる企業は少なくありません。

本章では博士学生の採用をしている業界や企業を紹介します。

博士学生で民間企業への就職を検討している方はぜひ参考にしていただければと思います。

化学メーカー

化学メーカーは製品開発に向けた研究や基盤技術の研究など、多くの研究がおこなわれているため、研究所の数も自然と多い業界です。

研究所の数に比例して、求人も多くなることから博士学生を採用する企業も多くなります。

化学メーカーの大手企業といえば、以下の企業が有力なのでまずはチェックしてみましょう。

製薬

製薬業界も化学メーカーと同様に基礎研究や応用研究など多くの研究がおこなわれている関係から、研究所の多い業界です。

製薬業界でいえば、以下の企業をまずはチェックしてみましょう。

電子・電気

電子・電気系技術の発展は大きなアドバンテージを生むため、多くの企業で力を注いでいます。

特に海外勢との競争は熾烈なため、多くの企業が優秀な人材を集めようとしています。

電子・電気業界では以下の企業をチェックしてみましょう。

博士学生が就職活動をするときのポイント

博士学生が就職活動をするときのポイント

博士学生が民間企業へ就職するのが難しいとされている理由の1つに、就活のスタイルが未確立な点があげられます。

確かに学士卒・修士卒の学生とは年齢や身につけているスキルも異なるため、同じように就活をすればよいわけではありません。

本章では博士学生が就活をする際のポイントを解説します。

これから就活予定、就活中の博士学生はぜひ参考にしてみてください。

就職活動は早めに始める

先んずれば人を制すということわざがあるとおり、博士学生の就活は早めに始めましょう。

就活は一般的に卒業年の前々年から始める傾向にあります。

学士でいえば、大学3年生の夏ごろから始める傾向にありますが、博士卒はもっと早く始めるのをおすすめします。

なぜなら、博士課程はとにかく忙しいからです。

博士学生は研究や論文の執筆はもちろん、勉強会や後輩の指導などやることが目白押しです。

博士課程はとにかく忙しく、まとめて就活の時間が取れるとは限りません。

博士課程後に就職を検討しているのであれば、博士課程が始まった直後からコツコツと就活・就活準備を進めましょう。

博士学生だからといって特別なステップは必要ない

博士学生は学士・修士卒とは状況が異なるので、就活のやり方も少し違うのではと考える方もいるでしょう。

結論としては、博士学生だからといって、就活のやり方を学士・修士卒と変える必要はありません。

まずは自己分析と企業分析をおこない、自身に合う企業や活躍できる企業を探しましょう。

次に面接対策をおこない、どのような質問がきても質問の意図を読み取り、的確な返答ができるように訓練をします。

一連の準備が整えば、実際に企業にエントリーして、選考を受けましょう。

就活で困ったことや詰まりを感じたのであれば、周囲に相談してみるのもおすすめです。

特に就職済みの学士卒や修士卒の知人に相談するとよいでしょう。

就活を実際に経験しているので、より具体的な解決策を講じてくれる可能性が高いからです。

他にも就活サービスを利用しているのであれば、サービス側に相談してみるのも良い手になるでしょう。

研究からどのような成果につながるかを意識する

博士学生にとって、研究が一番のアピールポイントになる点はいうまでもないでしょう。

問題はどのようにアピールするかです。

企業はあくまで営利企業のため、研究から何が生まれ、どのようなことができるようになったかを意識しています。

企業にアピールするためには、自身の研究から何が生まれ、どのような成果が生まれるかを意識してアピールするようにしましょう。

学術的には非常に面白い研究でも、アピールの仕方によっては企業側に刺さらない可能性も十分にあります。

企業選びは専門性を意識する

企業選びをする際には専門性を意識しましょう。

例えば、電気系を専攻している方が薬学系のメーカーを受けても、企業から良い反応は得にくい傾向にあります。

当然ながら、電子・電気系の業界を受けた方が企業からの”ウケ”が良くなるのはいうまでもありません。

ただし専門性は必ずしも限定していく必要はありません。

博士学生になると、高度な研究をしているが故に専門分野は狭くなりがちです。

限定された専門性とマッチする企業がないと考えてしまう方がいるかもしれませんが、無理に専門分野を限定していく必要はありません。

仮に超高速処理を可能とする次世代の半導体研究を専門分野にしていたとしましょう。

上記の場合、半導体メーカーのみではなく、電子・電気系の業界を広く受けるようにしましょう。

企業選びの大きな方向性として専門性を用いるのはよいですが、あまり専門性を意識して、限定的にする必要はありません。

博士学生の就職活動は即戦力性を意識する

学士卒や修士卒の就活と唯一違う点があるとすれば、ポテンシャル採用ではない点です。

博士学生がポテンシャル採用ではない理由はズバリ、高い訓練を受けているためです。

博士学生は博士課程を通じて、高い専門知識とヒューマンスキルを身につけているため、魅力的な人材といえるでしょう。

一方で長期にわたり、高度な訓練を受けているので、学士卒や修士卒とは異なり、即戦力性が求められています。

また年齢的な部分も、即戦力性を期待する一部の要素になっています。

年齢で仕事をするわけではありませんが、一般的な博士学生の年齢は27歳前後で学士卒でいうところの入社5年目あたりです。

入社5年目は立派な戦力となっている頃合いであり、企業側の期待も大きいでしょう。

博士学生の就活で唯一博士と意識すべき過程があるとすれば、ポテンシャル採用ではなく、即戦力性が求められている点でしょう。

博士学生を採用している企業を探す方法

博士学生を採用している企業を探す方法

博士学生を積極的に採用している企業が、就活をしているタイミングで募集をかけているとは限りません。

リスクを回避するために、自身で博士学生を採用している企業を探す術を知っておいた方がより安全です。

本章では博士学生を採用している企業を探す方法を解説します。

大学のキャリアセンター

就活というと就活のナビサイトが頭に浮かびやすいため、大学のキャリアセンターは選択肢に思い浮かばない方も多いでしょう。

大学のキャリアセンターは、ナビサイトに載っていない独自の求人が載っている可能性もあり、非常に魅力的な場所です。

キャリアセンターは文字どおり、キャリアの相談に乗ってくれるため、ESの書き方や面接対策もおこなっています。

近年は大学のキャリアセンターの有用性が証明されてきたのか、大学のキャリアセンターの利用率が向上しているデータがあがっています。

参考:2021年度<22年卒>キャリア・就職支援への取り組み調査 株式会社マイナビ

知人や教授の紹介

知人や教授に博士学生を採用している企業を紹介してもらうのも良い方法です。

特に近年では知人に紹介してもらうリファラル採用という採用スタイルが浸透しつつあります。

リファラル採用の大きなメリットはマッチした企業に出会える点です。

知人も企業に人材を紹介する立場のため、企業と人材のマッチ度を見計らいます。

例えば、体育会系の企業と理路整然としたタイプの方はマッチしにくいため、知人も紹介はしないでしょう。

知人はどのようなタイプが自社に合うかを肌感覚で理解しているため、マッチする企業を紹介してもらえる確率が非常に高い方法といえます。

就職エージェント

近年は就活サービスの細分化がおこなわれており、新卒にもエージェントサービスがあります。

エージェントサービスのメリットは何といっても、自身に合う企業を選定・紹介してくれる点です。

自身の経歴やスキル、キャリア志望に応じて、企業を紹介してもらえるため、企業を探す手間を省けるだけでなく、マッチ度の高い企業と出会えます。

研究が忙しく、企業選定をしている余裕がない場合には、活用してみるのも効率的な就活につながります。

マッチングサイト

企業と顧客をつなげるマッチングサイトは、企業と学生という採用市場にも登場しています。

マッチングサイトのメリットは、自身のプロフィールや経歴、スキルを登録しておけば企業からオファーが来る点です。

オファーも単なるオファーではなく、マッチ度の高い企業からオファーがきます。

企業側も自社にマッチする人材を求めているため、マッチングの条件は厳しく設定をしています。

また最近では、オファー後のやり取りもLINEのようなチャット形式でコミュニケーションが取れるものも多いため、返信に労力を取られません。

マッチングサイトを活用した就活は、マッチング度が高い企業のみとやり取りが進むため、効率的に就活が進められます。

まとめ

博士課程はより高い専門知識やスキルを身につけられるため、魅力的な一方で進路問題が大きくつきまといます。

特に博士学生が民間企業への就職を目指す場合には、就職難易度は決して易しくありません。

博士学生の就活は難しいとされていますが、しっかりと手を打っていけば、十分志望する企業は狙えるでしょう。

今回紹介した博士学生を採用している企業や業界、就活のポイントを参考にして就活に取り組んでいただければと思います。