キャリアカウンセリングの現場から
理系学生のための就活アドバイスシリーズ

学生が企業の視点を持つことが求められる就職活動。経験したことがないのに相手の立場に立って考えるというのは難しいことです。しかしできないことではありません。

相手の立場や目的を理解することで意識の修正ポイントは見えてくるものです。

1 本題にはいる前にあたって

これから挙げる事例はキャリアカウンセリングにおいて、相談の多い内容です。あくまでも例にすぎません。読んで恐れる必要はありません。

どのようなことが起こる可能性があるのかを知ることはとても大切なことです。先輩たちの事例を知り本番に備えましょう。ビジネスで言うところの「リスクヘッジ」です。

[本タイトルの目標]

□就職活動に必要な思考方法について考えてみる。

□就職活動に必要な視点について考えてみる。

2<キャリアカウンセリング>事例 通過できない

キャリアカウンセリング事例 『エントリーシートや一次面接が通過できない』

キャリアカウンセリングにおいて多い相談内容に、『エントリーシートもしくは一次面接がなかなか通過できない』というものがあります。本人も本格的な選考プロセスにのせることができず、焦りを感じられていることが多いです。

エントリーシートや一次面接で苦戦している学生に共通している部分は2つあります。

この2つは、就職活動を正しく理解していないためにこのような状況に陥っていることが多いです。

プレエントリーや会社説明会の時点から選考が始まっていると考えるほうが無難です。会社説明会では、アンケートと称した用紙に志望動機や自己PRの記載を促されることもあります。

選考されているという意識を持って臨んでいる学生と準備もせず参加した学生とでは印象に差が生じます。人間が採用選考を行っていることを忘れてはいけません。

また、学生に就職活動とは何だと思いますかと質問をすると大抵「自分のことをアピールする場」と返答があります。それは間違いではありませんが大切なことが抜けています。

どんなに素晴らしいアピールができても採用されないことがあるのです。なぜなら、企業が応募者とのつながりを見出せないからです。決め手がないと採用は見送られてしまうのです。

就職活動は「いかに自分と希望する企業がつながっているのかをアピールする場」なのです。

とくに、就職活動開始時において多くの学生がこの点を理解できていません。

言葉は厳しいですが、独りよがりのアピールになってしまい、企業に自分の前向きな思いや意欲、仕事で活かせるはずの力を伝えられずに苦労をしている学生が多いです。

就職活動の選考スケジュールは、募集している時に応募をしなければ選考のチャンスを逃してしまいます。その状況を考慮して考えると活動初期段階から理解しているほうが優位に進められます。

2-1 会社説明会や一次面接において基本的マナーを軽視している

なぜ、マナーを軽視することが選考に影響すると思いますか。

色々な見解があると思います。

私は「チャンスを掴むマナー&コミュニケーション」というテーマで講義を行っています。

マナーは、「ことば」「こうどう」そして「コミュニケーション」で表現するものです。マナーはルールだと思うと私はそんなの気にしないと思う方もいるのかもしれません。

マナーに絶対的なルールなど存在しません。文化や育ってきた背景などで考え方はそれぞれことなります。国が違うと挨拶の仕方も異なりますよね。だからどうでもいいと言っているわけではありません。

マナーというのは、自分の気持ちや意見を相手がわかる方法で表現すると考えてみてはいかがでしょうか。そもそも、コミュニケーションも同じです。次のワークをやってみましょう。

【WORK 1

大学のそばにある小学校からの依頼です。その小学校の校長先生から生徒に科学の面白さを伝えるための協力要請がありました。

理由は、身近にあるあらゆるものが科学とつながっていることをわかってもらいたい。

そして、やらされているではなく興味を持ったものを主体的に取り組む姿勢を育てたいということでした。あなたならどうしますか?自分の専攻で内容を考えてみてください。

 □どのような内容にしますか

 □どのような心構えで臨みますか

 □どのような言葉遣いが好ましいと思いますか

 □どのような立ち振る舞いが好ましいと思いますか

色々な案を想像されたと思います。まず、どのような挨拶からはじめます? 表情は? どんな服装がいいですかね。

そして、どのような言葉を遣いますか? 大学の授業で使うテキストにある難解な言葉で小学生に話しますか。ポカーンと聞いている小学生が目に浮かびます。

そもそもあなたは小学生に説明する機会があったらそのような言葉で説明しないと思います。

おそらく、わかりやすい言葉、つまり日常の何かに例えたり、図解してみたり、実験してみたりして相手に合わせて説明し、相手が退屈しないように工夫しますよね。

そして学ぶことが楽しいということが伝わるよう色々工夫されると思います。

どうして就職活動になるとそれができなくなってしまうのでしょうか。

そして、もう一つこの想定から気づいてほしいポイントがあります。あなたは小学生を経験したことがあるということです。経験や価値観は人それぞれですので全く同じ経験とは言えません。

しかし、その頃の同世代の方々の様子も記憶にあるでしょう。そのような体験や記憶があるので相手に寄り添った対応が可能になっているのかもしれませんね。

就職活動はどうでしょうか。経験したこともないし、企業の人がどういう考え方なのか想像できなくて当然!と言って適当な対応をしてはいけないことはあなたもわかっていますよね。

では、どうしましょうか。相手の立場に立って想像してみることです。その場に相応しい対応とはどういうものなのか。考慮してとった行動から感じるあなたの姿勢は相手にはどのように映ると思いますか?

何で会社説明会に参加するのですか。その会社に関心があるから行く。そしたら、関心を持っているという気持ちを表すためのはじめの一歩は応募する。

次は、当日参加する。そしてその次は、1対1でお話はできません。どうしますか。そういう時は、自分がどう思うではなく、多くの人はどういう人を見て「うちの会社に興味があるのだな、誠実そうだな、アピールを聞いてみたい、話してみたい」と思うのか考えてみましょう。

そうやってチャンスを掴んでいくのです。日常において人は他人の行動を差ほど見ていません。しかし、就職活動つまり、企業にとっての採用活動は、限られた期間で判断する必要があります。

限られた期間で得られる情報はどのようなものでもピックアップし評価しているのです。

こんなところまで見ているのかと驚いてしまうくらい見られていますよ。企業の成長戦略実現のための重要な活動ですから。採用活動は。

一方、企業説明会への参加は情報収集が目的です。と言って他人ごとではいけません。情報収集でもかまいません。でも考えてみてください。

どれだけの情報を収集できるかは自分次第なのですから。相手から提示される情報はちょっと調べればそれに近い情報は手に入る情報です。

本当に価値ある情報は、ホームページの中にもパンフレットにもありません。就職活動に本当に必要な情報は自分で質問する注意深く観察するどうしてだろうと考えながら聞いてみた先にあります。

どなたかにプレゼントをあげるため、何にしようか考えたことありませんか。母の日に、父の日、敬老の日、友人や恋人に。相手の言動から何がいいか探ったりしませんか?何をあげたら喜ぶのか。

就職活動に置き換えると自己アピールや志望動機がプレゼントにあたります。媚を売るということではありません。企業にとっての最高のプレゼントは、入社したらきっと活躍するだろうと期待を感じる学生との出会いです。

少し、話は脱線してしまいましたが、本当に大切な情報を得ようと目を見開き、頷きながらつまり理解しようとしながら聞いている学生がいたら企業があなたに関心を持ちます。

そして質疑応答の際、手をあげてくれたら思わず指してしまいがちです。そうやって、価値のあるものを取りに行くのです。

マナー&コミュニケーションは、ルールではなく、出会ったことへの感謝。お互いが関心をもち近づき始めるきっかけ。

そして、目的を達成するための土台づくりなのです。きっと仕事においてもプライベートにおいても同じなのかもしれません。

私は、マナーやコミュニケーションの講座の際、学生に伝えていることがあります。今日の出会いは一瞬かもしれませんが、長いお付き合いがスタートするきっかけになるかもしれません。

この先この出会いからすばらしい何かがうまれるかもしれません。出会いの瞬間を大切にしましょう。

2-2 アピールポイントがズレている

就職活動は学生が社会人の視点で行う必要があります。社会人を理解するとか、マナーの意識というのも大事なポイントです。しかし、もっとも理解されていないことがあります。それは、言葉の捉え方です。

言葉の捉え方のズレが顕著に表れるのは、学生が自己アピールする時のエピソードの使い方です。学生が良いと思うポイントと採用担当者が聞きたいポイントが一致しないのです。

例えば、「好奇心」。学生の皆さんは色々なことに興味を示し取り組んできたことをエピソードで伝えようとします。

そのこと自体はとても素晴らしいことですが、この部分が最大の山場になってはいけないのです。

なぜなら、企業はその先が知りたいのです。山場にするポイントを間違えると「それがどうしたの?」という内容になってしまうのです。

好奇心という自分の特徴を活かしてあらゆることにチャレンジした結果何を学んだのか。その中でもどのチャレンジが一番自分に影響を与えたエピソードなのか。

この自分に多大な影響をもたらしたエピソードを詳しく聞きたいのです。ほとんどの面接官は、質問して詳しく聞き出してくれます。

ですが、限られた時間で聞き出すにも限界があります。また、冒頭から、企業の知りたいことを伝えることができた学生はさらに自分の良さを伝えられる質問展開になっていくのです。戦略的に準備する必要があります。

学生と企業の採用担当者の間にズレが生じている言葉は他にもたくさんあります。これらについては別の機会に触れることにしましょう。

3 振り返り

□就職活動を有意義にするために何を知りたいですか?  それは、どうしてですか。

□就職活動に必要だと思った能力はどのようなものですか? それは、どうしてですか。

□今日からやってみようと思ったことはありますか?

□就職活動とはどのようなものだと感じましたか?

□何か他に気づいたことがあれば書き残しておきましょう。

4 まとめ

振り返りはいかがでしたでしょうか。今の考えでいいですよ。これからの活動で増えたり減ったり、変わったりしてもかまいません。今この瞬間の気持ちを大切にしてください。

自分の世界とは違う世界から自分を見ると新たな発見があります。視野を広げたり、視点や視座を変えたりすることで得られるものは大きいです。

きっと、新たな発想や課題が見えてくるでしょう。つまり自分がどうすれば良いのかも見えてくるということです。

ここまで、色々考えながら読むのはとても大変だったと思います。

ここまでの健闘を称えつつ、今後の健闘をお祈りし終わりにします。

キャリアカウンセラー 加藤真琴

一歩踏み出す瞬間の人の輝きに魅せられキャリア支援に携わっていくことを決意したのが20年前。理系大学での活動を中心に、延べ15,000人以上の学生を対象としたキャリアカウンセリング実績をもつ。

現在の志事(ライフワーク)は、セルフブランディングとフレームワークを活用したキャリアサポートプログラムの企画運用。

「正解なんてない。こたえはツクルもの♪」をモットーに活動中♪