就活をしていて企業の実態を掴みにくいと思ったことがあるかもしれません。企業HPや就活サイトに掲載される情報はあくまでも企業が「見せたい」情報であり、具体的な内容が欠けていることがあるためです。
表面的な情報から得られるイメージで会社を志願した場合、具体的な事業内容を把握していないことが面接で明らかになってしまい不採用となるかもしれません。本当に自分に合った会社を選ぶためにも、真の情報を集める方法を確認しておきましょう。
会社のイメージと事業内容は必ずしも一致しない
認識不足は不採用の理由に
面接では必ず志望理由を聞かれることになりますが、企業の特徴や事業内容を考えた上で、なぜ自分が入社したいか答えなければなりません。例え自己の専門分野と関連性の低い企業であったとしても、採用担当者が納得できるような志望理由を用意しておく必要があります。
企業の事業内容や研究開発分野、社風などが志望理由の対象となりますが、面接で誤ったことを伝えてしまうと「余り調べていないな」という印象を与えてしまい、その会社の優先度が低いという事が相手に分かってしまいます。会社としては内定後の辞退を防ぎたいため、自社の優先度が低いと思われる学生には採用通知を出さないでしょう。また、志望する会社に入社できたとしても、事前の認識と実態が異なっていると辞職を考えてしまうかもしれません。
企業HP、宣伝内容が実態と異なるパターン
企業の事業内容、勤務形態、社風といった具体的な内容は、実は簡単に得られるものではありません。情報を得る際は必ず企業のHPを確認すると思いますが、こうしたページに記載されている情報はあくまでも会社が「見せたい」企業の実態です。近年業績が悪化しています…自社で研究開発するのではなく委託生産が主な事業です…テレビCMで宣伝しているあの商品は来年販売停止します…こうした負の側面を表立って公表することはないのです。
ちなみにある化学メーカーは航空機向けの部品を生産しているとして企業HPに飛行機の写真を載せていますが、航空機部品が売上高に占める割合は5%程度で、残りの80%以上は建築部材向けです。航空分野で携わりたいと思って入社しても、希望通りの仕事はできないかもしれません。
就活生向けサイトと実態が異なるパターン
就活サイトの企業ページには就活生に入社後のイメージを持たせる目的で社員紹介や、ある社員の1日のスケジュールなどが掲載されていると思います。
自己の裁量で判断でき、ライフワークバランスを重視しながら自己の成長を実感できる、そんな入社後の自分を思い浮かべるかもしれません。しかし、紹介されているような社員像はあくまでもモデルケースです。また、近年では企業のグローバル性を訴えるために英語力の重要性や海外における業務を記載する例が多く見られますが、実態は管理職が年に2、3回程度、海外出張をするだけということもあります。
実態は社員に直接聞かないとわからないため、あくまでも参考値として留めておきましょう。ちなみに筆者は勤めていた企業の就活生向けページに掲載されたことがありますが、良い写真を撮るために笑顔になるよう求められました。
事業内容を把握するには
決算短信のセグメント情報
日本では会社はお客様・社員のためと認識されていますが、経営上は出資してくれた株主のために会社は存在します。
企業は投資家の出資無くして成長はできないため、一般向けには定性的な情報を開示していても、投資家向けには定量的な情報を開示しなければなりません。上場企業では株主に対して四半期おきに業績を公表する義務があり、「決算短信」を通じて報告されます。中でも「セグメント情報」の欄では事業・製品別に売上高が記載されるため、会社の得意分野を数字で判断することができます。
とある化学メーカーではショッピングモールに土地を貸しており、不動産事業が売上高の2割を占めますが、こうした情報は企業名・HP・就活サイトでは得られない情報です。決算短信の他に「中期経営計画」には経営陣が考えている今後の方針が記載されています。ビジネスの軸をどの分野・地域に集中させたいかが分かるため、将来性で会社を判断したい方は中期経営計画を見ると良いでしょう。
転職サイトの口コミ
中途採用向けの転職サイトは意外な穴場です。
一般的に他企業の口コミを見るには自分が勤めていた企業の年収・仕事のやりがい・成長性といった社員視点の情報を登録しなければいけないため、登録すれば生身の情報を得ることができます。
年功序列or成果主義、月の平均残業時間、社員旅行の有無、社風など、就活生が最も知りたい情報は企業HPでは得られません。技術情報や経営状態ではなく有機的な情報を得たい場合は転職サイトに登録してみましょう。
ただし転職サイトに登録する人は更なる成長を求めている、もしくは会社に不満を持っている人が多いため、負の情報に偏りがちなのも事実です。とりあえず登録のためにテキトーに書いているかもしれません。鵜呑みにするのではなく情報の一つとして捉えましょう。
技術的な側面も忘れずに
事業内容や経営方針を把握するに越したことはないですが、理系就活ではやはり専門分野の知識が問われます。
会社の方針に合った大きなビジョンを有していても、肝心の専門分野に乏しければ入社後に戦力として期待できません。会社の研究開発・技術分野をしっかり把握し、自己の専門性との関連を訴えることができれば面接での印象は良くなるでしょう。
ただし技術関連の情報も、事業内容と同様に会社HPや就活サイトでは得られないことがあります。次の項目では具体的な技術情報の集め方を見ていきましょう。
面接で差をつける! 技術情報のつかみ方
特許調査
特許は自社技術の先行性を主張し、他社に新技術を利用させない手段として使われます。そのため企業は研究開発の成果を特許として出願します。特許は独特の表現技法が使われており、慣れていなければすらすら読むことはできませんが、論文同様に要旨・背景・結果の順に記載されています。特に化学・材料系のメーカーは特許を読む機会が多いので、入社前に読む練習をしておくと良いでしょう。
「Google Patent」で企業名を検索するとその企業が出願した特許を見ることができます。ただし、特許は出願すると1年半から2年後に公開されてしまうため、企業は必ずしも自社の成果を特許として出願するわけではありません。秘匿にしておきたい技術で他社が開発できる可能性が低ければ出願しないと思われます。特許の内容が企業の技術力の全てではないことに注意しましょう。
会社の技術報告資料でも十分
社員数が1万人以上、業界トップを走る会社は自社技術を独自の公報で公開することがあります。
技術報告資料は技術誌のような形で構成され、pdf形式で公開されています。特許のように具体的なプロセス・解決策が記載されているわけではなく、同分野の人が読めるように書かれているためハードルは高くありません。商品・サービス開発の背景が紹介されていることもあります。
ただし技術報告資料は宣伝を目的として公開されるため、企業HP同様に企業が「見せたい」姿を見せる場といえます。企業が実施している研究の中でも先端をいくような技術しか紹介されていないことが多く、入社後にそのような開発に携われるかは分かりません。公開情報に期待しすぎないようにしましょう。
ちなみに志望する企業が技術情報を公開していない場合、業界新聞のHPで企業名を検索すると、その企業の技術紹介記事が見つけられるかもしれません。
面接での質問は好印象
特許・技術報告資料から情報収集するのも良いですが、面接の場で聞くことも一つの手段です。技術に関する質問はその企業に興味があると思ってもらえるため、採用担当者には好印象かもしれません。
しかし企業説明会やHPで得られるような簡単な質問をしてしまうと事前に調査していないと思われるので注意が必要です。調べたうえでさらに知りたい、というスタンスで臨むと良いのではないでしょうか。また。事業内容や技術に関する質問も良いですが、入社後の働き方に関する質問でも好印象を与えられます。どんな心構えで仕事に挑めばいいのか、どんな能力・性格の人を求めているのか等、会社が理想とする社員像を聞いてみると良いでしょう。
俯瞰的な視点も忘れずに
近年変わってきてはいるものの、日本の企業は就活生を将来性で選ぶ側面があります。事業内容、技術内容を把握したうえで面接に挑むのは良いことですが、あまり偏りすぎると頭の硬い人と思われかねません。ポテンシャル採用では即戦力を求めているのではなく長い目で成長し続けられる社員、企業に対する忠誠心が揺るぎにくい社員を求めています。
そのため面接官に対し、入社後も自己啓発に励む旨を伝えられると良いでしょう。そういった意味で謙虚な姿勢を忘れないようにしてください。職種の決まっている中途採用では知識が問われますが、入社後に振り分ける新卒採用では知識に加え、性格や素質も判断基準となります。企業情報と自分の得意分野のマッチング、そして新人としての意気込みを主張することで、高い総合力を印象付けられるかもしれません。今一度、俯瞰的な視点で自己分析をしてみてください。
これだけは知っておきたいポイント(まとめ)
1)すぐ得られる情報は企業の実態を表していない
2)投資家向け情報から事業内容を把握する
3)技術情報も忘れずに
4)自己を俯瞰し総合力を採点してみよう