IT・電気・化学など理系企業の業界は多種多様です。そして同じ業界であっても分野ごとに専門性は大きく変わります。

理系就活では多様な専門分野から就活生が1社に集まりますが、企業は多様性を重視しつつも実際の事業内容に近い分野の学生を採用するでしょう。

そのため採用面接では企業との関連性をアピールしておく必要があります。アカデミアにおける研究内容と直接関係が無かったとしても、考察法やプロセス改良の手段における共通点を見いだせればアピールできるかもしれません。

技術面接でアピールできるか

理系就活は技術面接で差がつく

理系就活では書類選考⇒人事部による面接⇒技術面接という順に選考が進んでいきます。最初の面接では基本的な受け答えや人間力が問われ、技術面接では理系人材としての能力・ポテンシャルが問われます。

人事部の面接では志望理由やこれまでの人生、失敗経験などが問われますが、基本的なテクニックは参考書や学校主催のセミナーを通じて学んでおきましょう。企業の規模によって変化しますが、比較的小規模な企業の場合、基本的な受け答えさえできれば人事部の面接は通過することができます。つまり、技術面接で差がつくのです。

技術面接ではアカデミアでの研究内容を発表します。専門用語を交えながら分かりやすく伝える必要がありますが、論理的コミュニケーション能力を習得すれば難なくこなせるようになると思います。また、技術面接といえど人物面や物事への向き合い方、仕事への姿勢をみられていることを意識しましょう。

いずれにせよ就活を始める最初の頃は緊張で上手く話せないかもしれませんが、採用担当者の顔を伺いながら回を重ねるごとに慣れていきましょう。

能力×専門性

技術系社員の職種は研究開発やプロセス改良、技術営業など論理性が必要な業務を担当します。ルーティーン作業ではなく毎日頭を使わなければなりません。

企業側は入社した人材が業務に対応できるか心配しており、人材流動性の低い日本では簡単に解雇できないため理系就活ではより厳しく選定されます。

技術面接で問われるのは理系人材としての能力と専門性、そして人間性です。

基本事項としてアカデミアでどの程度の知識を習得したかを確認したうえで、論理的思考能力や、物事に取り組む姿勢、考える力を確認します。
技術面接はアカデミアでの研究内容を説明するところから始まりますが、説明があいまいであったり起承転結がうやむやになったりしていれば、自身の受け持つテーマへの取り組み姿勢を疑われる他、コミュニケーションが足りないと判断されてしまいます。
また、専門性をアピールするために難しい用語ばかりを使ってしまうと、採用担当者が理解できず不合格となってしまうでしょう。
多くの場合、会社で行う仕事とアカデミアでの研究テーマは合致しないことから、専門性をPRするよりも技術的な基礎能力があることを書類や簡単な会話でPRしたうえで、自身の仕事や研究に取り組む姿勢や、成長意欲、仮説検証能力、論理的思考能力などをPRしましょう。

ポテンシャルが見られている

技術面接では「ポテンシャル・伸びしろ」が採用の判断因子になります。

ポテンシャルといっても理系分野だけに限らず、その人の性格や体力面もポテンシャルといえます。

化学など実験系の仕事は立ち仕事であるため意外にも体力を使う仕事です。技術営業であれば1日に何件もの客先を訪問することになり、基礎体力が無ければ続かないかもしれません。

アイスブレイクと称して面接官が私生活面について質問してくる場合もありますが、「家にこもるのが好きで運動をしない人」という印象を与えないようにしましょう。

技術面でのポテンシャルとしては考え方の柔軟性があげられます。自分自身の専門性に固執して他人の意見を聞かない人は会社でのチームワークをこなすことができません。学ぶ姿勢があり、仕事を通じて生涯学習していきたいというアピールをする必要があります。現在でも十分優秀だが「伸びしろ」もある人材を企業は求めています。

関連性は欠かせない

企業は入社後のミスマッチを防ぎたい

売り手市場の理系就活では企業は大金をはたいて採用活動を進めます。

そして社員が入社した後の人件費もかなりの出費です。人件費は給料だけと思われがちですが、公的年金保険の半分、労災保険の全額など給料の額面意外も含まれます。

せっかく採用した人材が専門性のミスマッチを理由に辞めてしまうのは、企業にとって防ぎたいことです。そのため入社後に対応できる、大学で学んだことと「関連性」がある程度高い人材が好まれます。

関連性が高ければ社員も自分の知識を活かせるため仕事への意欲も高まることでしょう。しかし、必ずしも関連性が重要というわけではありません。

慢性的な人材不足のIT業界では情報系以外にも生物系や電気系といった他分野から人材を採用しています。そのためIT業界ではプログラミング未経験の人材を雇うことになります。

この場合、過去の実績よりもプログラミング適正が問われるため、集中力や論理的思考力が採用の判断基準となります。

優秀でも使えない社員…

論文執筆、国際会議における数々の学会発表、高いGPA…どれも理系人材として華やかな経歴ですが、必ずしもこの人材が会社で活躍できるとは限りません。評価基準がアカデミアと産業界では異なるということです。

アカデミアで優秀な生徒が社員として優秀な傾向にあるのは間違いないですが、会社の分野次第では合わないこともあります。

会社や産業界が求める価値や評価基準を理解したうえで、PRすることが必要です。

自身と応募企業との関連性を翻訳して明示しよう

優秀な人材に新たな分野を覚えさせるより、その分野で経験のある一般的な人材を育てる方が効率的です。もちろん同じ能力の人材であれば関連性の高い人材が好まれます。そして関連性の高い人材は仮に研究開発としての適正に欠けていたとしても、持ち前の知識を基に営業として活躍できる可能性があるため柔軟に配属できます。

しかし関連性は必ずしも個々の研究分野だけを表すわけではありません。化学畑で理論計算・データ解析を経験してきた人材は分野外の電気系においても解析系の仕事につくことができます。

自然科学系の人材であっても、統計解析やシミュレーションを研究してきた人材はPC関連に強みを持つとしてIT業界で好まれるかもしれません。近い分野であれば事業との関連性をアピールし、仮に離れていたとしても取り組んできた研究内容や考察法から関連性を探し出してアピールしましょう。

採用担当者の専門分野が自己と異なる場合でも、わかりやすく「翻訳」して伝える技術が大切です。

理系就活で企業との関連性をアピールするには

「幅」を広げて説明する

企業との直接の関連性が見つからない場合は幅を広げて考えましょう。

アカデミアでは特定の分野に狭めて専門性を高めますが、自分の研究がどの分野と関連するのか、産業界でどう活かされる可能性があるのか幅を広げて考えてみると関連性が見つかるかもしれません。

化学系出身であってもデバイス向けの研究であれば半導体メーカーとの関連性を見出すことができます。電気系出身であれば電動化が進む自動車業界で活躍できるかもしれません。

比較的就職難易度が高いとされている生物系も、近年では企業がESGへの取り組みを重視しているため環境分野を関連付けて説明できると思います。幅を広げて話すには様々な知識が必要なため、面接の前にしっかりシミュレーションをしておきましょう。知識は1日だけで身に付くことではないため学生のうちから新聞や業界向けメディアに目を通しておくと良さそうです。

仕組み、考え方の関連性をアピールする

仕組み、考え方からも関連性を見出すことができます。大まかにいえば情報系も電気系も失敗原因を探り論理性をもって次の改良につなげる分野です。

シミュレーターを使った理論科学分野であれば近年増えているデータサイエンティストとして活躍できるかもしれません。また、産学官の連携において研究実績があれば、そこで認識した企業側の研究プロセスをアピールすることができます。

特に近年では事業の多角化も進められており、企業側は他分野の学生を積極的に登用したがっています。ただし気を付けて頂きたいのは関連性を伝える際に企業の業務内容を断定してしまう事です。「御社のシステム開発における○○と関連性がある」と伝えるのではなく、「関連性があるのではないかと思う」というように伝えましょう。断定してしまうと不信感をもたれてしまいます。

メタレベルで俯瞰する

分野もしくは仕組み・考え方を通じて企業との関連性を見つける事ができます。

ただし関連性を見つけようとする際は自分の分野から徐々に広げて探そうとするのではなく、メタレベル、つまり高次の視点から探そうとすると比較的簡単に見つける事ができます。

自己の専門分野が産業界でどの位置に存在し、志望する企業がどの位置に居るのかマッピングすると整理できます。実はどちらもEV(電気自動車)の普及に伴って伸びそうな分野である、5Gの普及によって需要が伸びるなど、時代の流れも把握するとより深みが出るかもしれません。メタレベルで俯瞰するのは企業の取締役や証券アナリスト、経済評論家が得意としています。実現までにやや時間がかかるため就活の初期段階から訓練しておくと良いでしょう。

理系就職の採用選考で、

これだけは知っておきたいポイント(まとめ) 

1)理系就活は技術面接が肝

2)企業との関連性は非常に重要

3)視点を変えて関連性を探そう