理系の学生は知的で理論的という印象があります。一方でおとなしく、自身の世界に閉じこもりがちというステレオタイプ的なイメージも存在します。
企業が求める人材とは、成長力があり、活発で成果を生み出してくれそうな前向きな学生です。そのためには、マイナスなイメージを払拭し、自分が成長力も行動力もある学生であるかを強く印象付けることが重要となります。
前年度の就職活動では、コロナの影響で多くの企業がWEB面接を行いました。現在も影響は収まっておらず、今年度も面接をWEBで行う企業が出てくることが予想されます。
ここではWEB面接でより効果的に自分をアピールするための「ノンバーバルコミュニケーション」についてご説明します。
ノンバーバルコミュニケーションとは
ノンバーバルコミュニケーションは「非言語コミュニケーション」とも呼ばれています。「話す」「筆談する」といった言葉以外の手段でコミュニケーションを取ることです。そういう意味では「手話」も言語によるコミュニケーションと言えます。
これは極端な例ですが、ジェスチャーゲームを想像してみてください。身振り手振りや表情で何かを伝えようとすることはこのノンバーバルコミュニケーションそのものなのです。回答者がとんちんかんな答えを言えば、ジェスチャーをしている人はブンブンと首や手を振って「違う!」と表現しますし、答えが近くなれば「そう、それだよ!」という表情をするでしょう。
実は人は普段からこの言葉以外のコミュニケーションを使っています。
嬉しい時に見せる飛び切りの笑顔やガッツポーズも、がっかりして肩を落としたり、痛いところを突かれて思わず視線を逸らしたりすることも言葉に寄らないコミュニケーションの手段です。
このノンバーバルコミュニケーションには話す言葉そのものに、強い感情をまとわせて言葉の意味を補強する力があるのです。
メラビアンの法則
このノンバーバルコミュニケーションの説明をする際に登場するのがメラビアンの法則です。アルバート・メラビアンはアメリカの心理学者で、この法則は、ビジネスから恋愛までよく引き合いに出されるので聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
この法則の中で、メラビアンはコミュニケーションに3つの要素があることを説明して結論を導き出しているため「3Vの法則」(Vは3つの要素の頭文字)とも呼ばれています。内容としては同じですが、意識すべき点が明確になることから、ここでは「3Vの法則」としてご説明いたします。
3Vの法則とは?
例えば、目の前を歩いている人が落とし物をしたことに気付かずそのまま歩いていくので、それを拾って追いかけ声をかけたとしましょう。その人が笑顔で「ありがとうございます」と言って丁寧に受け取ってくれたら、自分はいい事したなと思いますよね。でも怒った顔で「ありがとうございます」と早口で言うなり、落とし物を奪うように持って行ってしまったらどうでしょうか?何か悪い事をしてしまったのかと困惑するのではないかと思います。
この例では「ありがとうございます」という言葉はどちらも同じですが、表情や口調、態度は正反対となっています。その結果、受ける側の印象も全く違ったものになってしまいました。
言葉と表情やジェスチャーが矛盾している時、表情やジェスチャーが他人にどのような影響を与えるかを実験した結果が「メラビアンの法則」と呼ばれるものです。この中で、メラビアンは人と人が顔を合わせた時のコミュニケーションには3つの要素があると分析しました。その要素が言語情報(Verbal)、聴覚情報(Vocal)、視覚情報(Visual)であったため、頭文字を取って3Vの法則とも呼ばれています。
この3Vの法則では、相手に与える影響は会話の内容(言語情報)が7%、口調や話の速度(聴覚情報)が38%、表情や行動(視覚情報)が55%の割合であったと結論付けられています。この割合から「7-38-55のルール」とも呼ばれています。
先ほどの例で示したように、言葉そのものよりも、それ以外の要素の方が相手に与える印象はずっと大きいと言えるのです。
なお、この法則が得られた実験は「初対面の相手」や「あまり良く知らない相手」に対して行われたものですのですので、良く知っている相手に対して同じ結果が得られるとは限らないことを付け加えておきます。
ノンバーバルコミュニケーションの種類
ノンバーバルコミュニケーションと呼ばれるものにはどのようなものがあるのか、ここでご説明しましょう。
①声:トーン、大きさなど
②話し方:スピード、言葉と言葉の間(ま)など
③顔:表情、目の動き、瞬きなど
④動作:身振り手振り、姿勢、相槌など
⑤外見:服装、髪型、化粧など
⑥相手との距離:パーソナルスペースなど
④の姿勢は背筋を伸ばしている、頬杖をついているというような状態を表します。また⑤と⑥は意外と思われるかもしれませんが、TPOを考えるのも、相手が不愉快に思わない程度の距離を取るのも言語外で相手に自分の印象を変える要素のひとつなのです。
理系就活におけるノンバーバルコミュニケーションの重要性
コミュニケーション・スキルは他人とかかわっていく上で非常に重要です。ではその中で、ノンバーバルコミュニケーションが果たす役割とはどのようなものでしょうか。
言語の補完
ノンバーバルコミュニケーションには言葉だけでは表せない思いや、伝えきれない部分を補完するという役割があります。
真面目な話をしようと思ったら、居ずまいを正して声のトーンを低くして、真剣な顔をするのではないかと思います。その様子を見れば、話を聞く相手も「これはちゃんと聞かないといけない話だ」と分かってくれるでしょう。言語外に話し手の真剣さがきちんと伝わっているのです。
信頼関係の構築
コミュニケーションを取る相手との距離を縮めて、信頼関係を築くのにもノンバーバルコミュニケーションは重要な役割を果たします。
相手が話をしている時に適度なタイミングで相槌をうったり、頷いたりすることによって、相手からは「この人は真剣に聞いてくれている」と判断されます。また笑顔の反応は相手に安心感を与えたりもします。
このような小さな事であっても、積み重なることによって相手に好印象を与え、信頼しても良さそうだという判断をもたらすことができるのです。
相手の気持ち・状況の理解
もうひとつ、ノンバーバルコミュニケーションには相手の本当の気持ち、状況を理解しようとする役割もあります。
態度や表情は、時に言葉よりも雄弁に相手の気持ちを語ります。お腹を押さえて苦しそうにしている人が「大丈夫だから心配しないで」と言っても、その言葉を真に受ける人はまずいないでしょう。また、彼女に「浮気したでしょう?」と詰め寄られて目をそらしたり、急に怒鳴ったりすれば、彼女の疑念が深くなることは間違いありません。
気持ちを正しく、強く伝えるために
前項でご説明した3つのVが同じ方向を向いている時が一番効果的に自分の気持ちを正しく、強く伝えることができます。伝えたい事は言葉で、伝えきれない思いや感情は表情や身振り手振り、声の強さや態度などを使って表現することで、言葉はより強く印象深く相手に伝わります。
自分では笑っていると思っていても相手からはそう思われていない場合もあります。そのためにも、時々鏡を見て自分の表情を確かめたり、まわりの人に自分の話し方や態度などを聞いてみたりすることをおすすめします。
理系就活におけるWEB面接でノンバーバルコミュニケーションが大切な理由
対面式の面接とWEB面接では、一見同じように話をしているように感じていても実はかなり違いがあります。ここではWEB面接においてノンバーバルコミュニケーションを使用するメリットについてご説明します。
WEB面接の問題点
WEB面接が対面式の面接と最も異なるのは、自分と面接官が同じ場所にいないという点です。例えば手が震えているのを見れば、面接官は「この学生はかなり緊張しているな」と感じ、少し緊張をほぐすような話題を振ってくれるかもしれません。しかしWEB面接ではそこまで画面に映りませんので面接はどんどん進んでしまい、言いたいことが半分も伝わらなかったという結果になりかねないのです。
カメラの位置にばかり気を取られて視線がずれてしまったり、マイク越しでは感情が上手く伝わらなかったりすることがあるということを、まず頭に入れておく必要があります。
ノンバーバルコミュニケーションを面接に生かす方法
先ほどもご説明したように、ノンバーバルコミュニケーションには言葉を補完し、相手に強く訴えかけたり、印象を変えたりする力があります。意識的にノンバーバルコミュニケーションを取り入れることで、より多くの情報をカメラ越し、マイク越しでも伝えることができるのです。
これは対面式でも言えることですが、企業の面接では学生の気持ちを読み取るために、話す言葉よりもノンバーバルの部分を注視していることも多いと言われています。具体的にはどのようなことに気を付ければいいのかをご説明しましょう。
相手のペースに合わせた話し方を心がける
話し方やペースが合っていると、相手は話をよく聞いてくれているなと感じ、もっと話をしてみようという気持ちになりやすくなると言われています。緊張で早口になったりすると聞き取りにくいだけでなく、攻撃的な印象を与えてしまうので注意しましょう。
相手の目を見て話すように心がける
目線は相手に与える印象に大きく影響します。事前にカメラを相手からまっすぐ見える位置に固定しておきましょう。そうすることで、考えるために一時的に視線を下に落としても、再びカメラをしっかり見つめれば相手としっかり視線が合うようになります。また特に強調したい部分では大きく目を開いてみましょう。ぱっちりと開いた目と真っ直ぐな視線は、意志の強さなど、ポジティブな印象を与えます。
感情を表情やしぐさで表す
人は好意的な感情を持つ人の前では笑顔になるものです。面接のときに笑顔が大事と言われるのはそういった部分もあるのではないでしょうか。表情が乏しいと言われたことがある人は、鏡を見て笑顔の練習をしてみるといいでしょう。
また身振り手振りをすることで「何としてでも自分の思いを伝えよう」という意志を表現したり、話に説得力を与えたりすることが可能になります。やりすぎるのは問題ですが、WEB面接においては細かな感情が伝わりにくいため、対面式の面接よりも少し大きくするように心がけてみてください。
相手の話を頷きながら聞く
面接官の話は頷きながら聞くようにしてください。頷くというしぐさは「相手の話をしっかり聞いています」という意志表示になります。じっと聞いているだけでは、画面から真剣さなどは伝わってきません。
また何か質問をされた時には、答える際に「はい、私は・・・」のように一言入れるだけで相手の注意を引き付けることができます。その「はい」の声を少し大きくしたり、発音と一緒に「頷き」よりもう少し大きく頭を動かしたりすると、相手に対し「聞いて欲しい」という気持ちも同時に表現することができます。
これだけは知っておきたいポイント(まとめ)
・ノンバーバルコミュニケーションは時に言葉以上に感情を表現することができる
・WEB面接では対面式の面接に比べて感情が伝わりにくい
・言葉とノンバーバルコミュニケーションを組み合わせることで、自分の印象を大きく変えることが可能になる