「なんとなく大学院進学してしまったので、自己PRすることがみつからない…」
「理系院卒ならではの自己PRはどうしたらいいんだろう?」
自己PRの方法について悩んでいませんか?
理系院卒の就職活動は、学部卒とは大きく異なります。効果的な自己PRには、採用担当者が理系院卒に何を求めるかについての理解が必要です。
この記事では皆さんが大学院生活で得た経験やスキルの中から使える、「7つの自己PRのポイント」についてご紹介します。
採用担当者が抱く理系院卒(修士、博士)のイメージを理解する

採用担当者に響く自己PRを考えるためには、企業側が理系院卒に求める能力や資質について把握する必要があります。
自己PRを用意する前に、まず企業側が採用したいと考える理系院卒のイメージを、正しく理解しておきましょう。
理系院卒はある程度、職種によっては即戦力として期待されている
学部卒の学生が「ポテンシャルと入社後の成長性」を重視されるのに対し、院卒学生はある程度「即戦力」としての活躍を期待されています。
例えばメーカーの研究職や開発職のポジションでは、分析機器類の取り扱い経験や、研究分野における知見などが必要不可欠です。
理系院卒の学生は、研究の過程でこれらの経験を得る機会に恵まれています。院卒学生を積極採用するメーカー企業が多いのはそのためです。
その分学部卒に比べて要求されるレベルは高く、「自分は何が出来るか」を具体性に主張する自己PRが必要です。
また、企業ならではの職種(製造職や生産系の職種)においては、即戦力ということは難しいことから技術的素養(技術用語の理解や、学習能力、理系としての仮説検証思考等ができること、理系であること)での採用となり、即戦力ほどの能力は必要とされず、大学院卒であっても意欲と成長でチャレンジができます。
大学院進学を選んだ理由は重要
理系院卒は、研究職や開発職など特定のポジションで優遇される反面、若さを重視する企業ではマイナスに評価される可能性があります。
理系院卒の経歴が、就職活動に必ずしも有利というわけではありません。
つまり、大学院進学を選んだ理由、学部卒での就職を選ばなかった理由は重要です。
進学率の高い大学であればそこまで問題になりませんが、もともと進学率の低い大学において大学院に進学をしている場合、大学院進学の動機が曖昧だと「学部卒では就職が難しかったのでは?」とネガティブな印象を持たれかねません。面接で確認される可能性もあるため、採用担当者からの質問を想定した自己PRの準備が必要です。
特に博士後期課程進学の場合は質問があることが多いと考えましょう。
院卒が理系就活で自己PRするべき7つのポイント

企業が理系院卒採用に求める能力やイメージを前提に、自己PRするべきポイントについて解説します。
下記で紹介する7つの能力が、すべてが必要という訳ではありません。自分のPRポイントがどの項目に当てはまるのかを考えてみてください。
仮説検証能力
課題を解決に導くための仮説を立案し、論理的な検証によって解決に導く能力です。仮説検証能力は、ビジネスの様々な場面において必要とされています。
理系の大学院生は、実験や研究の中で「トライアンドエラー」の繰り返しを多く経験します。
目的達成の過程を自ら考えて取り組める姿勢は、研究とビジネス、両方に共通して求められるスキルといえます。
仮説に対して、常に想定する結果が得られるとは限りません。成果が得られるまで仮説検証を続けられる粘り強さも、併せてPRのポイントとなります。
仮説検証能力は、研究開発職以外のポジションでも必要とされる能力です。例えば下記のような職種が挙げられます。
・生産技術職:
生産効率を上げるためのボトルネックを確認して改善案を立案し(仮説)、新技術の導入や工程改善により生産効率向上に取り組む(検証)
・技術営業職:
技術動向、販売動向から需要を見込める業界やターゲットとなる企業・部署を想定し(仮説)、顧客のバックグラウンドに即した提案営業を実施(検証)
・マーケティング職:
自社製品・サービスの顧客へのアプローチストーリー(仮説)を組み立てて、広報や広告を展開(検証)
論理的思考能力
原因から結果に至るまでを分かりやすく整理・分解し、順序だてて思考する能力です。
必要な情報を効率よく組み立てることで論理が飛躍せず、結論まで最短でたどり着くことができます。
論理的思考は、同じ条件・手順であれば再現性がある点でも優れています。理系の大学院生は、実験や研究の経験上理論理的思考の重要さを理解しており、主観と客観を切り離して考える能力が身についています。
自信の考えを分かりやすく相手に伝える上でも必要不可欠な能力といえます。
論理的思考能力は、例えば次のような職種で活躍が可能です。
・システムエンジニア職 :
課題に対する的確なヒアリングで状況を把握し、システムの仕様を作成
・コンサルティング職:
客観的な事実を元に問題を細分化し、解決の糸口を提案する
データ分析・モデリング能力・シミュレーション能力
数学、物理系の研究室では統計やデータ分析を行う機会が多く、データサイエンティストとしての資質や経験値が自己PRとして有効です。
・金融アナリスト職、機械学習エンジニア職など:
ビッグデータの解析能力、統計解析能力、モデル設計、シミュレーションの構築能力
扱うデータの種類や分量にもよりますが、解析能力などは産業分野において需要のあるスキルです。
生態学専攻の学生が統計解析手法を活用したり、化学系の学生が分子シミュレーションを利用したり、理系大学院生であれば何かしらの分析手法を用いた経験があるのではないでしょうか。
データ分析・モデリング能力・シミュレーションに関する経験やスキルは、研究・開発だけではなくビジネスの分野においても応用力の高いスキルといえます。
PDCA回し
業務改善の基本的な方法として知られるPCDA。「Plan:計画」→「Do:実行」→「Check:検証実行」→「Action:改善」のサイクルを繰り返し行うため「PCDA回し」と表現します。
理系大学院生は日々の生活の中で、常にPDCA回しのトレーニングを行っています。研究においては、PDCA回しから得る結果の集合体が根拠となり結論を導きます。
これはビジネスにおいても同様であり、企業は「大学院での生活でいかにPCDAを回してきたか」について評価します。
前項で述べた仮説検証能力とも関わりますが、自発的に研究に取り組んだ経験が長くなればなるほど、PDCA回しの経験値は蓄積します。
研究の内容について自己PRする際は、PDCA回しの経験についても伝えるように意識しましょう。
調査能力、ヒアリング力
現在大学院で研究をしている皆さんは、日常的に下記のような経験をしているのではないでしょうか。
・論文や文献の調査、整理
・英語の文献の検索
・研究ゼミやディスカッション
当たり前に行っている文献検索や調査も、ポイントをおさえれば自己PRとして有効です。
調査能力、ヒアリング力のPRに重要なのは「自発性」です。
採用担当者は、面接の場面で「困難をにどのように乗り越えますか(乗り越えましたか)?」という質問を頻繁にします。
これは候補者の「自己解決能力」を確認する意図があります。この質問を受けた場合、自身の調査能力やヒアリング力を念頭に回答してみましょう。
解決すべき課題に遭遇した際、すぐに誰かに聞くのではなく、まずは自分で調べてみる姿勢はが重要です。
一人では解決できない場合まずは疑問点を明確にし、解決の方向性について自分の仮説を持った上で教授や先輩に相談する姿勢が評価されます。
「答えを教えてもらう」のではなく、「意見を求める」スタンスがポイントです。
プログラミング能力
プログラミング能力は様々な業界で必要不可欠なスキルです。求められるレベルは業界によって異なります。
・SaaS系スタートアップ:即戦力レベルの高いプログラミング能力
・ゲーム会社:ゲームやアプリを自作できるレベル
・システムインテクレーター(SIer):プログラムの授業、自主学習レベルでも採用の可能性あり
・企業メーカー:授業や実験でC言語、fortranなどの組み込みを行ったレベル
上記の例の通り、情報系研究室所属でなくても、プログラミングスキル+専門分野の組み合わせで就職の選択肢は大きく広がります。
授業レベルでもプログラミングの経験があれば、使用経験やレベルを自己PRに盛り込んでみると良い反応を得られるかもしれません。
就職活動のスタートまでに余裕のある人は、自己投資としてプログラミングの学習をおすすめします。
コミュニティでの能力・経験
理系の大学院生は数年間、研究室に所属して研究を行います。研究室コミュニティ内での生活は、会社の部署や仕事のチームを疑似体験している状態です。
研究室の一員としての活躍した経験や誰かに助けられた経験、研究チームのまとめ役、他大学との共同研究の経験を持つ人もいるのではないでしょうか。
これらの経験は、社会人に必要な「コミュニケーション能力」に直結します。
研究室には教授や社会人研究者、外国人留学生、学士の後輩など、年齢や立場の異なる様々な人が在籍しています。
多様性のある組織の中での人間関係の構築した経験は理系の大学院生ならではの自己PRポイントです。
マネジメントや折衝力、プレゼン力、異文化理解など、各々の経験次第でPRできる能力・経験は異なりますが、研究室に所属しているだけで得られる能力は意外に多いことに気づくのではないでしょうか。
研究室コミュニティの中で自分がどのような位置づけか、どのようなキャラクターとして受け入れられているかを俯瞰的に分析し、自己PRの材料として利用できるか考えてみましょう。
院卒理系就活生にありがちなミス!自己PRは研究発表ではない

大学院生活で研究を頑張った人ほどやってしまいがちな「研究発表のような自己PR」「研究の売込み」について解説します。
研究の内容や成果を自己PRの主軸とするのは問題ありません。しかし、専門分野が完全に一致する場合を除いて、採用担当者は研究内容よりも「研究への取り組み方・経験から得たスキル」を知りたいと考えています。
面接で「その研究は当社でどう役立つの?」と返された経験のある人は、注意が必要です。自分の研究ではなく、自分という人材をPRする場であることは常に念頭に置きましょう。
バランスは応募先に応じて調整を行います。研究内容が応募先企業と親和性がある場合は研究内容についての質問があれば質問に応じて回答し、研究内容が応募先企業とそれほど関係がない場合は、研究などで培った能力のほうに焦点を当てて、研究内容にはそれほど触れる必要はありません。
また、採用担当者が理系の専門分野の話を理解できるとはかぎりません。人事担当部署は文系出身者も多く所属しています。
研究内容は、何も知らない一般の人が理解できるレベルに要約して説明できるように準備しておきましょう。
これだけは知っておきたいポイント(まとめ)

理系院卒ならではの自己PRについて解説しました。要点は以下の通りです。
1.理系院卒は即戦力性を求められている
2.自己PRは研究で培った経験やスキルを主軸に展開する
3.研究発表のような自己PRではなく、入社後に役立てるポイントをPRする
これから自己PRを考える皆さんは、大学院生活で得た経験やスキルをリスト化し、企業が求める能力と重なる部分を照らし合わせてみましょう。