インターンシップや初期選考において行われる「グループディスカッション」。理系学生が参加する機会は文系学生よりも少なめですが、対策をせずに選考を通過するのは容易ではありません。

この記事では、理系学生がグループディスカッションに参加する場合の対策やノウハウ、注意点について詳しく解説します。

理系就活でのグループディスカッションの基礎知識

まず、「グループディスカッションとは何か?」の基本から解説します。

グループディスカッションとグループ面接の違い

グループディスカッションとは、複数の候補者に特定のテーマを与えて議論を行わせ、結論に至るまでの過程を評価する選考方法です。

グループディスカッションは、いわば疑似的な会議のようなシチュエーションです。集団における候補者それぞれの振る舞いや折衝力、協調性などが評価の対象となります。

理系就活においては、行動力や調整力を重視する社風の企業で行われる他、インターンシップにおいて仕事の雰囲気を体験してもらう目的で行われることもあります。

一方グループ面接は、個人面接を複数人で行う選考方法です。対話の相手はあくまで面接官となり、候補者同士での会話はありません。候補者が多い場合のふるい落としとして行われることが多く、選考の初期に行われます。

なお、グループ面接は、理系就活ではそれほど行われない選考方法です。

グループディスカッションの種類

グループディスカッションは、討論の形式によっていくつかの種類に分けられます。それぞれの特徴について種類別に解説します。

自由討論形式

与えられたテーマに対して、自由に討論する形式のグループディスカッションです。

正解のないテーマが与えられることが多く、結論を出すことよりも討論の過程における発言や振る舞いが評価の対象となります。

ディベート形式

与えられたテーマに対して、「肯定派」「否定派」に分かれて討論する形式のグループディスカッションです。

ディぺート形式では、相手の主張の弱点や矛盾点を指摘する論理的思考力が問われます。

企業側の指示でグループ分けが行われる場合、本来の自分であれば支持しない側のグループに属して、議論に参加しなければならない可能性もあります。

課題発表形式

グループごとに一つの課題へ取り組む形式のグループディスカッションです。理系のインターンシップでしばしば行われます。

与えられた複数の選択肢から一つを選びだすテーマや、用意されたデータや資料に基づいて業務の戦略を考える実践的なテーマも存在します。

最終的に発表を行うため、限られた時間内でチーム内の意見をまとめる必要があります。

グループディスカッションのテーマ例

理系新卒採用のグループディスカッションで実際に採用されたテーマを、いくつかご紹介します。

自由討論形式のテーマ例

・当社が良い会社であるための条件を3つ述べよ。

・AIに代替されない人材とはどのような人材か。

・最近の理科離れについて、会社が出来ることは何か。

ディベート形式のテーマ例

・裁判員制度について、賛成か反対か。

・プログラミングの義務教育化について是非を述べよ。

・無人島に持って行くとしたら、ナイフかライターのどちらか。

課題発表形式のテーマ例

・新製品開発チームに配属されたと仮定し、顧客ターゲットを①シニア層②若年層のどちらをターゲットにして商品開発を行うべきか考察せよ。

・ATMに新機能を追加するとしたら何がよいか。

・日本国内でEVを売るための戦略を考えよ。

理系就活でのグループディスカッションで採用担当者が見るポイント

理系学生がグループディスカッションで好印象を得るためには、どうすればよいのでしょうか。採用担当者が見るポイントについて個別に解説します。

チーム内での役割

グループディスカッションに参加する際は、まず自分がどの役割で参加するかを意識します。他の参加者の雰囲気を感じつつ、自分の出来るポジションをこなしましょう。

リーダー

リーダーは、チームの意見をまとめながらグループディスカッションを進行する司会役です。採用担当者の印象に残りやすいポジションですから、自分が適任だと思ったら率先してリーダーを狙いましょう。

目立つポジションであるため、独りよがり態度や強引な進行で評価を下げないよう、注意が必要です。

タイムキーパー

グループディスカッションでは、限られた時間内に結論を導き出すことが重要です。リーダーを補佐しながら、残り時間から逆算して議論の進行を管理するのがタイムキーパーです。

当然ながら、時間を測るだけでは良い評価は得られません。白熱した議論を切り上げるタイミングを作る、議事録を取って書記の役割を兼任する、などの工夫が必要です。

ムードメーカー

リーダーポジションを取れなかった場合、無理に仕切ろうとせずムードメーカーに徹します。積極的な発言はもちろん、話すのが苦手そうな人に話しかけて発言を促す、意見が対立した場合の落としどころを見つけるなど、場の空気を作る姿勢をアピールしましょう。

書記

グループディスカッションで書記役となった場合、議論を書き留めるだけで高評価を得るのは難しいでしょう。議論の対立点をまとめて折衝案を提案したり、論点がずれた場合の軌道修正を提案したりなど、書記としての役割に加え、積極的に発言する姿勢が必要です。

論理的思考力

理系就活のグループディスカッションで重要な評価ポイントの一つが、論理的思考力です。

グループディスカッションで自分の意見を通すためには、他の参加者に賛同してもらうための説得力が必要です。

論理的思考力をアピールするために重要なポイントは主に3つです。

・意見を述べる際は必ず根拠に触れる

・筋道を立て、なるべく簡潔に話す

・話すときは結論から述べる

なお、論理的思考力を強みとしてアピールしたい理系学生は、他の参加者の意見を否定しすぎないように注意してください。

参加者の中には、直感的に発言する人や論理展開が矛盾している人がいるかもしれません。論理的思考にこだわるあまり否定的な発言を繰り返すと、グループ内の雰囲気が悪くなるだけではなく、採用担当者から「コミュニケーション力に乏しい」と見なされてしまう可能性があります。

的外れな意見であっても頭ごなしに否定せず、一旦受け止める姿勢を見せたうえで、自分の意見を発言するとよいでしょう。

積極性

当事者意識を持って、積極的にグループディスカッションへ参加している姿勢も評価されるポイントです。

グループディスカッションにおいて積極性をアピールするためのポイントは、次の通りです。

・発言が無いときに第一声を上げる

・議論が混乱した際に方向修正を試みる

・合意形成に向けて参加者の意見をまとめる

なお、とにかく発言を増やせば積極性を評価される、という訳ではありません。発言が多くてもミスリードが多ければ、マイナス評価につながります。

積極性を評価されるためには、「議論の進行と同意形成にどれだけ貢献できたか」が重要です。

協調性・コミュニケーション能力

グループディスカッションでは、他参加者との関わり合い方が評価に大きく影響します。協調性・コミュニケーション能力をアピールするために、次のようなポイントを意識しましょう。

・他参加者の意見に対して、理解や共感の意志を示す

・反論意見を述べる際は、相手に対して配慮する

・周囲を巻き込みながら賛同者を増やす

・シャイな参加者から意見を引き出す

短い時間の中でいかに良好な関係を築き、参加者同士が協力できる雰囲気づくりが評価の対象です。

理系就活でのグループディスカッションに参加する際の心構え4つ

グループディスカッションへ参加する際に役立つ、意識するべき心構えについて解説します。

リーダーだけが評価されるわけではない

グループディスカッションにおいてリーダー役が目立ちやすいのは事実ですが、必ずしもリーダーになる必要はありません。

リーダーシップを取るのが苦手な理系学生や、同じグループ内にリーダー気質の参加者がいる場合は、無理せず他のポジションをこなしましょう。

例えば、基本的には聞き役に徹し、議論の要所で流れを作る発言が出来れば充分良い評価が得られます。進行度合や時間配分を冷静に把握しながら、出そろった意見をまとめる役もよいでしょう。

なお、人前でのプレゼンテーションを得意とする人は、発表者のポジションも併せて狙っていくことをおすすめします。

人の話をしっかり聞く

グループディスカッションに参加する際の基本姿勢として、「人の話をしっかり聞く」ことが重要です。

参加者は就活におけるライバルですが、グループディスカッションにおいては同じ課題に取り組む仲間同士です。誰かが話しているときに資料ばかり見る、発言を遮るなどの行為は避けたほうが無難です。

傾聴姿勢を示す態度として、以下を意識しましょう。

・相づちや頷き、微笑みなどのリアクションをしっかりとる。

・適度に質問を交え、相手の意見を引き立てる。

・腕組みや椅子に寄りかかるなど、威圧的と誤解される姿勢を取らない。

また、参加者の名前はすべて覚え、話しかける場面では意識的に名前を呼ぶように心掛けましょう。チーム内の協力的な雰囲気を作る上で有効です。

目的と論点を見失わない

議論の目的は「結論を出すこと」ですが、グループディスカッションのそもそもの目的は「選考の通過」です。

つまり、選考にさえ通過できれば、必ずしも自分の意見が採用される必要はありません。

自分の意見を無理に通すよりも「制限時間内での合意形成に貢献する」姿勢が重要です。

本来の意見と異なる案がチーム内で採用されたとしても、その意見が論理的であれば同調し、議論を前に進めることを意識してください。

また、議論が白熱すると、つい論点がずれてしまいがちです。

「今、何を話すべきか」「この議論はゴールに向かっているか」を定期的に確認する、理系学生としての冷静な意識を持って、グループディスカッションに臨みましょう。

クラッシャーへの対応

多くの就活生が参加するグループディスカッションでは、「クラッシャー」と呼ばれる参加者と同じチームになってしまうことがあります。

クラッシャーとは、文字通り議論を破壊する人、場の空気を壊す人です。クラッシャーは、次のような行動で議論を乱します。

・リーダーシップが無いにもかかわらず仕切りたがる

・自己主張が激しい

・論点のずれた発言をする

クラッシャーと真っ向から対立してしまうと、議論の輪を乱したと見なされ、あなたの評価まで同時にさがってしまいます。クラッシャー対策として、以下のようなポイントに気をつけましょう。

・クラッシャーからリーダーの立場を奪い取らず、補佐の位置から議論を仕切る

・クラッシャーと意見が対立したら、かならず第三者からの意見を募る

・論点のずれた発言は、一旦受け止める姿勢をみせた上で、他の意見を採用する

もちろん、自分自身がクラッシャーにならないことも重要です。

これだけは知っておきたいポイント

理系学生がグループディスカッションに参加する場合の対策やノウハウ、注意点について解説しました。今回のポイントは以下の通りです。

・グループディスカッションでは、自分の役割を意識する

・目立つポジションはリーダーだが、リーダーになることよりも「チーム内での合意形成にいかに貢献するか」の方が重要

・他の参加者はライバルでもあり仲間でもある。協力と傾聴姿勢が重要

この記事が現在就活中の皆さんのお役に立てば幸いです。