「工学部、工学研究科を卒業するから機械や情報、電気関係の就職先を探さないと」と思っている方は多いと思います。もちろんやりたいことや将来の目標があって大学を選んでいる人もいるかと思いますが、そうでない人もいます。
そういった人が「工学」という枠に捉われず、やりたいことを見つける方法を紹介します。
工学部、工学研究科で身に付く汎用性の高いスキル

パソコンの操作や扱い方
社会人になってからパソコンを使う機会が増えるため、基本的な操作からoffice関連の使い方には慣れておく必要があります。
大学であまり触ったことのない学生が社会人になってから一から学ぶための研修があるほど、企業として考えておかなければならない悩みとなっています。
その点、工学部出身の場合は基本的なパソコン操作はもちろんのこと、解析処理やCAD、プログラミングで使用機会が多いため、問題なく使えるようになることが多いです。
データや数値に基づく理論的な考え方
工学系では授業や研究室で学ぶ中でデータの解析や数値のグラフ化、そこから理論的な答えを導き出すといった考え方を身に付けることになります。
こうした思考は数字を扱う仕事や分析データを使って新しい発見をする仕事で役立つことになります。
例えば営業職のような、結果や数値を元に提案していく仕事では、自社の商品を詳しく知っておくことが必要なため、同じ分野の知識に明るいと即戦力になります。
工学系の資格
大学や学科によっては所定の単位を取得してから卒業することで、資格が取れる場合や試験の一部免除などの条件がつきます。
これらを活かすことで就活にはもちろんのこと、入社後に必要な資格を早期に取得できる可能性や資格による手当ての給付が見込めます。
機械系学科が就職できる可能性のある専門外の分野

自動車や精密機器の営業職
講義や研究室で自動車を扱った経験のある人の場合はディーラーでの営業職として勤務できる道があります。
自動車工学や機械工学の知識があるため、新車のスペック表なども理解しながら見ることができます。
また専門的な知識があることで、他の車種との比較を的確に行い、お客様にしっかりとアピールできるといった点で有利になります。
大手自動車メーカーの開発部門で働きたいと思っていても、実際にはかなり狭き門であるため苦労する方もいると思いますが、同じ好きなメーカーの車に関われるといったことからディーラーでの営業職を選択肢、実際にやりがいや適性を見つけて働いている方も多くいます。
土木施工や建築業界
構造学や力学などを学んでいると土木施工や建築といった業界でも活躍できます。
就職してからすぐに使う場面はないかもしれませんが、知っておくことで図面や建物の構造に対して理解度が高まるため、早く仕事に慣れることや理解を深める足掛かりになります。
また、CADを使って図面などを制作する仕事も経験次第では可能になり、管理と現場どちらでも活躍できると、施工管理責任者などの肩書きのついた、現場を管理する責任者を目指すこともできます。
逆に、建築科の学生が構造力学を理解していて機械メーカーに就職するというパターンも存在します。
大手メーカーの商品開発部門
機械系や工業系でなくても、商品開発に携われる仕事に就職することができます。例えば製品を梱包する容器(包材)の設計やプラスチック製品の金型加工といった開発に必要な部分を専門的な知識でサポートすることができます。
例えば、空気を入れて膨らませる梱包材のメーカーでは、流体力学の人を求めていたりします。大手以外でもこうした分野に特化した企業も多く存在するため、興味があれば活躍の場が広がります。
情報系学生が就職できる可能性のある専門外の分野

サーバーやオンラインサービスの営業職
レンタルサーバーやインターネット関連のサービスの営業職は、お客様の豊富な知識や経験と対等に質疑応答をするための専門的な知識が求められます。
さらに知識があることで社内外問わず信頼を得ることができるので、上を目指すことも可能です。
自社の扱う製品の特性だけでなく、他社との違いや製品情報だけではわかりにくい部分まで理解するために大学で学んだ知識が生かせます。
企業の広報やマーケティング分析・アナリスト
ウェブのマーケティングやアナリティクス などができることで企業の広報や戦略担当を目指すことができます。これにホームページの成り立ちであるHTMLやCSSの知識があることで、企業のウェブサイトを分析しながら手直しできる運営担当としての素質も出てきます。
アナリストの仕事は、googleなどに広告を出して顧客HPやサービスサイトへのアクセスとコンバージョン(ex.商品購入)等を最大化するサイト施策および広告展開方法を提案する仕事です。
コーディングの仕事以外の分野で知識を役立てたい人におすすめです。
各種メーカー、インフラ、金融業界、小売りなどの他業種
今後、様々なものはインタ―ネットとつながり、機器等の利用情報を含めたビッグデータの解析が価値を生み出します。同様に金融業界、小売業界ではデータ解析を行うビッグデータがたくさん存在します。
まだまだ採用人数は少ない状況ですが、既にこれらの採用に動いている会社が存在します。
また、情報系学生やデータやプログラミングを扱える学生は様々なメーカー内での情報システム関連の仕事に携わることができます。
メーカーやインフラ業界における情報システム担当者は全て自分で行うことができる必要はありません。情報システムの会社に対して、発注者側として技術内容を理解したうえで自社カスタマイズしたものを納品し、実装していく判断ができればよい場合も多く存在します。
日々の情報システム対応に加えて上記のような面白い場面もありますので検討しましょう。
パソコン教室や資格取得のための講座を担当する講師
パソコン分野で特化した知識があると、パソコン教室などの講師になることも可能です。
パソコンの基本的な操作を教える「パソコン教室」だけでなく、近年ではビジネスで役立つofficeやPhotoshop講座を受講する方、さらには子供向けのプログラミング講座、人工知能のプログラミング講座なども増えています。
電気系学科が就職できる可能性のある専門外の分野

測定機器やパソコンなどの商社の営業職
電気系でも専門分野の知識を生かした営業職に就くことができます。主に測定機器やパソコンといった電気製品になり、個人だけでなく企業向けの営業職もあります。
測定機器などの営業職は顧客(技術を利用する会社)の技術内容を理解して、課題を解決するための最適な提案を行う必要があります。このために理工系出身者が活躍しています。
例えば、機器のトラブルなどの不具合発生時は基本的にメンテナンス専門のスタッフが向かいますが、その前に簡単な動作確認や回路のチェックといった作業ができることで、その後の修理作業がスムーズになります。
こうした作業を電気・機械系の知識を持った担当の営業が行うことになります。知識があることで専門的な話をする機会が増え、お客様からの信頼も得やすいため、向いている仕事と言えます。
家電量販店の販売員
こちらは先ほどの営業職の仕事が個人向けになったものと言えます。
他の機械や情報系の知識を持った人よりも、電気系の知識がある方が販売員として店頭に立っていることが多いです。
これは店頭で家電製品について質問する際に「この製品の強度は大丈夫なのか」「コーディングでエラーが発生したがどうしたらいいか」ということは聞かれません。
「家で使う際の電気配線は専用のものが必要か」「何ワットまでなら使用可能か」といった電気に関わる質問や修理対応が多いため、工学部の中でも電気系の知識を持った人が適任と言えます。
街灯や電子案内板などを施工する工務店
建築や構造物の施工を担当する工務店などは、近隣の該当や電子案内板・信号機などのメンテナンスを自治体から任されている場合があります。
こうした仕事は緊急性が高く、インフラにつながっているため、常に人材が足りていない状況です。
電気系の知識があることでそういった仕事に就くことができ、将来にわたって必要とされるでしょう。
電気工事の仕事と言うと電力会社や保安協会、街の電気屋さんのような企業を想像しがちですが、こういった工務店や土木関連企業でもチャンスはあるため調べてみる価値はあります。
これだけは知っておきたいポイント(まとめ)
1)CADやプログラミング、電気工事士などのスキルは様々な業界で役に立つ
工学部のどの学科でも身につけたスキルを活かす場面は、業界や業種問わず数多くあります。自分が知っている業界に固執せず、いろいろな目線で仕事を探してみると新しい仕事に出会えるはずです。一人で考えるのが難しい場合は、就活相談やキャリアセンターといった大学施設を利用することや、就活専門サイトに登録してオファーやエージェントを利用してみるのも手です。
2)コミュニケーション能力を生かせば営業職ができる
どの専門分野でも、それを扱う営業職の仕事にマッチする可能性があります。ただし共通して言えることは「コミュニケーション能力」が重要であることです。
知識を多く持っていても、それを伝える手段を持っていないと営業として活躍はできません。人と話すのが好きな人や、物事の必要な部分を捉えるのが得意な人は、アピールすべき商品を魅力的に伝えることができます。
営業職と聞くとノルマの辛さやインセンティブがないと収入が高くならないイメージがあるかと思いますが、最近ではそういった企業では社員の定着率が低くなり、人材募集に支障が出るため昔ほど厳しい業界ではないようです。
3)学んできたことに捉われず、何に生かせるかを考えてアピールする
学科を選ぶ際にイメージしていた職業に捉われると、同じ業界ばかりで探してしまいがちです。
大手メーカーや有名企業で働きたいと希望していても、現実にはなかなか難しく挫折しそうになると思います。
そうした時に一度「自分には何ができるか」を棚卸しして自己分析してみましょう。
そしてそれを生かすにはどんな仕事があるかを業種や職種に捉われず、ゼロから探してみることで、今まで目にしてこなかった仕事にも興味が持てるようになります。
そこから自己アピールを構築して企業へ応募、面接に挑むと新しい可能性が開けるのではないでしょうか。