こんにちは。理系就活情報局です。
今回は、院試において必須となってくる研究計画書について解説します。
基礎情報から書く時のポイントまで、例文も踏まえて紹介しますので、大学院進学をめざす理系学生の方は参考にしてみてください!
研究計画書とは?
まず最初に、そもそも研究計画書とは何なのか、何を書かなければいけないのかを解説していきましょう。
誰が何のために書くのか?
研究計画書は、大学院入学試験に必要とされる書類の1つです。
主に、院試受験生が大学院に向けて、自分が研究している研究や目的などを簡潔にまとめたものです。
自分が研究している研究の他、大学院進学後に達成したい研究目的などをまとめることも求められます。
どうして必要なのか?
研究計画書が必要な理由は、大学院に対して自分の研究ビジョンを明確に示し、理解してもらうためです。
企業で例えると、研究計画書は「企画書」に当たります。
大学院に進学するのも、大学受験と同じように受験者の興味と大学院の提供する学びがマッチしていないと意味がありません。
大学院は提出された研究計画書を見て、大学院や研究室の方向性と応募者の研究内容が適合しているのかを確認します。あわせて、指導教員が適切なサポートを提供できるかどうかもチェックされています。
大学院に進学するにあたっては、研究計画書でしっかり自分の研究を大学院に伝えていくことが必要です。
研究計画書がひどいと大学院入試に落ちるのか?
研究計画書は大学院入試で重要な評価基準のため、内容が不十分だと研究の適性や意欲が低いと判断されて合否に大きく影響する可能性があります。
特に、研究テーマが曖昧だったり、論理性が欠けていたりする場合は面接官の印象が悪くなります。
また、指導教員との研究の適合性が低い場合も、合格が難しくなるケースが多いです。
研究計画書で押さえる基本
研究計画書がどんなものかを理解したところで、押さえるべきポイントを紹介していきます。
研究の目的を記載する
研究計画書では、まず研究の目的を記載します。
大学院入試の研究計画書では、研究の方向性や意義を理解してもらう必要があるため、「研究で何を解決したいのか」「研究でどのようなメリットが得られるのか」を論理的に説明しましょう。
研究の目的が曖昧だと研究の意義が伝わらず、評価が低くなる可能性があります。
具体的な目的を示して研究の必要性や期待される成果を明確に述べれば、説得力のある計画書になります。
研究の背景・理由を記載する
研究計画書では、研究の背景や理由を記載しましょう。
研究を行うにあたり、「なぜこのテーマを選んだのか」「社会や学問にどのような貢献ができるのか」を説明すると計画の説得力が増します。
研究の背景や理由が曖昧なままの場合、研究の必要性が伝わりにくくなってしまいます。
先行研究を踏まえて社会的に必要とされる根拠を述べたうえで、課題と課題解決のために自分の研究が必要である点を伝えましょう。
どのように研究を進めるか記載する
研究計画書の中でも、「どのように研究を進めるのか」は特に重要なポイントです。
研究場所・調査対象・時期・研究手法などを踏まえながら、研究を進める方針・手順などを書きましょう。
どのように研究を進めるのかを記載する際には、実現性を考慮することも大切です。
ただし、実際に研究を進める中で当初の方法では期待した結果が得られず、方針を変更する場合もあります。その際には、研究計画書を適宜修正して研究の方向性を見直すことも求められます。
研究計画書の基本構成と書き方の例
研究計画書に大学院側が指定したフォーマットがある場合には、大学院側の指定に沿って記載しましょう。
一方で大学院側の指定がない場合には、研究計画書を以下の構成でまとめることをおすすめします。
①研究テーマ
研究計画書において最も重要なのが研究テーマ(タイトル)の設定で、研究内容を要約して30~40字を目安にタイトルを付けましょう。
研究テーマは自分が大学院で取り組む研究の核となる部分であり、明確に定める必要があります。
テーマが曖昧だと研究の方向性が不明確になり、計画の説得力が弱まります。そのため、「何を研究するのか」「どのような課題に取り組むのか」を具体的に示すことが重要です。
また、研究テーマは学問的な意義に加え、実現可能であることも求められます。
書き方の例:
・◎◎◎における△△について
・◎◎◎における△△の研究ー◎◎◎◎◎◎のシミュレーション-
②研究背景
研究背景では、「なぜこの研究を行うのか」という理由を明確にして学術的および社会的な意義を説明します。
具体的には、先行研究を踏まえた上で現在の研究動向や未解決の課題を整理し、自分の研究がどのように貢献できるのかを示します。また、社会的背景を加えると、研究の重要性をより強調できます。
研究の動機や意義を論理的に説明できれば、研究計画の説得力を高められます。
書き方の例:
◎◎◎を用い◎◎◎は,、◎◎◎を解決するために用いられる機会が増えた。
しかし、◎◎◎を導入するにあたり、◎◎◎という課題について検討した事例は少ない。 この問題については、これまでにも先行研究があり、◎◎◎といった学術的背景がある。
③研究目的
研究背景を踏まえて、研究目的では「この研究で何を明らかにするのか」「どのような課題を解決するのか」を明確に示しましょう。
研究目的が不明確だと、計画の意義が伝わりにくくなる可能性があります。
そのため、研究の目標を具体的に設定して研究の成果がどのように学術や社会に貢献するのかを論理的に説明しましょう。
書き方の例:
◎◎◎問題を解決するにあたって、本研究では◎◎◎の手法を取り、◎◎◎の課題解決と◎◎◎の効率化を図る。◎◎◎は◎◎◎◎◎◎◎◎◎であり、◎◎◎という結果が期待される。 そこで本研究では、◎◎◎用いた◎◎◎◎◎◎手法を提案することを目的とする。
④研究対象
研究対象とは「何を」「どの範囲で」研究するのかを具体的に示す部分であり、研究の焦点を定める役割を果たします。
研究対象が曖昧だと調査や実験の範囲が不明確になり、計画の妥当性が疑問視される可能性があります。
そのため、具体的なデータや対象群、調査対象の選定基準を示して研究が適切に進められることを明確に示しましょう。
書き方の例:
・本研究では、日本国内の中小企業を対象に、◎◎◎の影響を分析する
・本研究では、対象企業100社を無作為に抽出し、オンラインアンケートとインタビューを実施する
⑤研究方法とスケジュール
研究方法では具体的に「どのようにデータを収集・分析するのか」「どの実験や調査を行うのか」を明確に示し、計画の実現可能性があると説明しましょう。
スケジュールでは修士・博士課程の期間内に研究を完了できるように、調査や分析、論文執筆の進行を段階的に示すことが重要です。
書き方の例:
・◎◎◎の影響を客観的に測定するため、◎◎◎結果を◎◎◎分析し、◎◎◎との相関を検討する。
・2年間の研究のうち、1年目は◎◎◎・データ収集、2年目はデータ収集・データ分析・報告書作成を行う。
⑥結果と予想
結果と予想では、「研究を進めた場合、どのような結論が得られる可能性があるのか」を論理的に示します。
研究成果を完全に予測するのは難しいですが、先行研究や仮説に基づいて「どのような傾向や新しい発見が得られるか」を考察すれば、研究の意義をより明確にできます。
また、「研究結果がどのように学問や社会に貢献するのか」を説明すると、研究の価値を強調できるでしょう。
書き方の例:
・本研究では、日本国内の中小企業における◎◎◎の影響を分析し、◎◎◎向上に関する具体的な数値データを得ることを目指す。
・本研究の成果は、企業の◎◎◎を促進するための政策立案や経営戦略の指針となることが期待される。
⑦参考文献
参考文献は研究の背景や方法が先行研究に基づいていることを示し、計画の信頼性を高める役割を果たします。
研究の動機や方法論を説明する際に、「どの文献を根拠としているのか」を明確にすれば、研究分野への理解や論の妥当性を示せます。
参考文献は、著者名・出版年月日・論文名・雑誌名・巻数・号数あるいは通巻・該当ページを書きましょう。
参考文献の形式は学問分野ごとに異なるため、指定されたスタイルに従って記載します。
書き方の例:
・理系太郎(2020).AIデータ分析と社会的意義の系譜.○○出版社.
・理系花子・佐藤一郎(2021).AI機械学習の応用に関する研究.◎◎◎誌,35(2),123-135.
研究計画書のテンプレート/フォーマット
紹介した研究計画書の基本構成に基づき、テンプレート・フォーマットを用意しました。
研究テーマ:
氏名:
所属:
①研究背景
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②研究背景
・ ・ ・ |
③研究目的
・ ・ ・ |
④研究対象
・ ・ ・ |
⑤研究方法とスケジュール
・ ・ ・ |
⑥結果と予想
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⑦参考文献
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好まれる研究計画書のポイント
自分の共有したいビジョンを提示する
前述したように、研究計画書を書いていく1つの目的として、大学院側に自分の追求する研究を提示していくことで自分が大学院で何を学びたいかを提示することが挙げられます。
大学院側に研究計画書を通して自分の持っているビジョンが共有できると、好印象を与えられます。
研究計画書はあくまで計画書であるため、実現可能性も念頭に置きつつ、自分の持っているものや求めるものを大学院側と共有することをめざしましょう。
研究内容が新しく、魅力的である
研究計画書は、研究内容に今まで誰も触れてこなかったような新規性があると大学院側も魅力に感じます。
例えば、すでに研究結果が出ているような研究計画書を作成すれば、「先行研究は調べたのだろうか?」とリサーチ不足を指摘されてしまうかもしれません。
しっかり先行研究を理解した上で、その中でも欠けている部分やまだ解決されていない部分に注目し、魅力的な研究計画書を作り上げましょう。
研究内容が具体的である
大学院側の読み手から好まれる研究計画書を書く上では、研究内容の具体性も大切なポイントです。
例えば、「持続可能な社会を作りたい」などの、全体的に曖昧で具体性のない研究計画書はゴールが見えず、好ましくありません。
研究テーマから参考文献まで全て細かく具体的に提示して、「まだ実現はしていないが、実現可能でありそうな研究計画書」を作成しましょう。
大学院側に避けられる研究計画書
大学側に好まれる研究計画書があれば、反対に好まれない・避けられる研究計画書もあります。
以下の特徴を持つ研究計画書は大学院に避けられるため、計画書を作成するうえで注意が必要です。
具体性に乏しい
大学院側に避けられる研究計画書の特徴は、具体性に乏しいことです。
研究テーマや方法が曖昧で「何をどのように研究するのか」が明確でない場合、計画の実現可能性が低く見られてしまいます。
例えば、「環境問題について研究する」といった漠然とした表現では研究の方向性が不明確で評価されにくくなります。研究対象、手法、スケジュールなどを具体的に示して論理的な研究計画を作成しましょう。
研究の必要性が感じられない
大学院側に避けられる研究計画書の特徴は、研究の必要性が感じられないことです。
研究の背景や意義が明確でないと「なぜこの研究を行うのか」が伝わらず、評価されにくくなります。
例えば、先行研究との違いが示されていない場合や社会・学術への貢献が不明確な場合は計画の説得力が低くなります。研究の意義を明確にし、どのような課題を解決するのかを論理的に説明しましょう。
調査方法・研究内容が言及されていない
大学院側に避けられる研究計画書の特徴は、調査方法や研究内容が明確に記載されていないことです。
研究の進め方が示されていないと計画の実現可能性が疑問視され、評価が低くなる可能性があります。
例えば、「データを収集して分析する」といった曖昧な表現では「どのような手法で、どのデータを用いるのか」が不明確です。具体的な調査対象、研究手法、分析方法を示して論理的に研究計画を説明する必要があります。
社会実装にまで言及されてしまっている
大学院側に避けられる研究計画書の特徴は、社会実装にまで言及されてしまっていることです。
研究計画書は、あくまで「学術研究」としての妥当性や意義を示すものであり、実用化やビジネス展開に過度に焦点を当てると学問的な価値が不明確になってしまいます。
例えば、「この研究で新技術を開発し、企業と連携して商品化を目指す」といった実践に言及した記述は研究の目的として適切でない場合があります。
研究計画書を書くときのポイント
大切なのは明確さと一貫性
研究計画書で大切なのは、明確さと一貫性です。
研究計画書は、研究の重要性を明確に伝えるためのものです。
曖昧な表現や矛盾があると計画の意図が伝わりづらくなり、自分がやりたい研究について理解してもらえない可能性があります。
研究計画書は基本的な構成を押さえ、研究テーマから結果までが自然につながるようにしましょう。
研究計画書では接続詞など文章表現も工夫し、文章面でも情報の論理的な流れを追いやすくします。「しかし」「その結果」などの接続詞を適切に用いると文章のつながりが明確になり、大学院側が理解しやすくなります。
簡潔に書く
研究計画書は簡潔にまとめ、冗長にならないように気をつけましょう。
ここで言う簡潔さとは字数を減らすことではなく、効率よく内容を伝えることを指します。
ただし、簡潔さを意識するあまり重要な情報を省略してしまうのは避けましょう。
研究計画書は研究を説明する上で必要な情報を取りこぼさないように留意しながら、無駄な表現をそぎ落とすことを意識してください。
校正を念入りにする
研究計画書を書く際は、校正を念入りに行うことが重要です。
誤字脱字や表現の曖昧さは、研究の意図を正しく伝える妨げになります。例えば、専門用語の使い方に一貫性がないと読者に混乱を与える可能性があります。
校正は研究計画書の明確さ、一貫性、論理性を向上させる重要な作業で、単純な見落としが読者の混乱を招くケースもあります。
また、書いた直後は誤字脱字や論理破綻に気づかない恐れがあるため、数時間~1日時間を置いて冷静な目で校正を行いましょう。
人に見てもらいフィードバックをもらう
研究計画書を書く際は、人に見てもらいフィードバックをもらいましょう。
第三者に見てもらうことで自分では気づきにくい論理の矛盾や表現の曖昧さ、冗長な部分を客観的に指摘してもらえます。
特に、指導教員や信頼できる研究者仲間に意見を求めると研究の方向性や計画の実現可能性について有益なアドバイスを得られるでしょう。
第三者の視点を取り入れれば、研究計画書の完成度を高められます。
研究計画書でよくある質問
文献検討って何?
文献検討とは、先行研究を調査・分析し、自分の研究の位置づけを明確にする作業です。
研究計画書では単に研究テーマを提示するだけでなく、「これまでにどのような研究が行われてきたのか」「自分の研究がどのように新しい視点を提供するのか」を示す必要があります。
そのため、文献検討は研究計画書の信頼性を高める重要な要素となります。
先行研究の書き方は?
研究計画書で先行研究について書く時は、自分の研究との関係を踏まえた上で研究の意義をアピールできるように書きましょう。
書き方の例:
◎◎◎を用いた◎◎◎システムは~~~~~~に至るまで共通している。
◎◎◎システムを用いた研究では、=======におくことで======となる可能性が示されていた。本研究では、=======に◎◎◎をした場合に、======となりうるかを確かめる。
まとめ
今回は、研究計画書について、書く目的から各項目における抑えるポイントや例文などを解説してきました。
今回の記事を通して大学院への選択肢、また研究計画書で悩んでいる学生への参考になれば幸いです。
理系学生は自分の研究する分野をもっと追求するために、大学院に応募する学生も少なくはないでしょう。
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