薬学部を中心に理系学生に人気の高い医薬品業界。
医薬品の研究開発は高い専門性が求められる上、英語力も求められるなど難易度の高い業界と言えます。
そんな医薬品業界ですが、具体的にどのような業務を行うか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、医薬品業界について現状や将来性・最新動向も踏まえて解説します。
医薬品業界を目指す理系学生の方はぜひ参考にしてみてください。
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医薬品業界にはどんな企業がある?
医薬品業界は製薬メーカーを中心に医薬品の製造・販売を行う会社が集まった業界です。
病院や薬局で処方・市販される医薬品の製造だけでなく、既存医薬品の改良や新薬の研究開発など幅広い仕事があります。
医薬品は開発するのに長期間かつ多額の研究開発費がかかるため、資本力のある大企業が多いのが特徴です。
処方箋を必要とする医療用医薬品の市場規模が非常に大きいですが、ドラッグストアなどで市販される一般用医薬品を製造販売する企業も多く存在します。
また近年では医療費抑制の方針から、新薬と同じ有効性がありながら価格が安いジェネリック医薬品も広く浸透しています。
このように医薬品にも様々な種類があるため、医薬品業界の中でも様々な領域に携われるのが特徴です。
製薬業界と医薬品業界の違い
製薬業界と医薬品業界は、ほぼ同義と考えて問題ありません。 製薬業界では、様々な医薬品の研究開発~製造・販売までを行う業界を指します。
医薬品業界の中心事業も、医薬品の研究開発~製造・販売と製薬業界と同じです。互いのビジネスを通じて相互に関連する場合もあるため、ビジネスモデルを参考にするとより理解を深められます。
製薬・医薬品業界のビジネスモデル
ここでは製薬・医薬品業界のビジネスモデルについて解説します。製薬・医薬品業界で扱うのは大きく「医療用医薬品」と「一般用医薬品」の2つです。2つはほぼ同様のビジネスモデルですが、各カテゴリごとにビジネスモデルを解説します。
医療用医薬品
医療用医薬品とは、医師の処方に基づいて患者が使用する薬を指します。医療用医薬品は、製薬会社が研究・開発したものを医薬品卸会社を通して販売するのが一般的なルートです。主な販売先は、医療機関・薬局・薬店などが中心です。まれに卸会社を経由せず、製薬会社から直接のルートで医療機関・薬局などに販売される場合もあります。各段階で発生する売上から得られる収益で成り立つビジネスモデルです。
一般用医薬品
一般用医薬品とは、処方が無くてもドラッグストアや薬店などで購入できる医薬品を指します。一般用医薬品も医療用医薬品と同様に、卸会社を経由してドラッグストアや薬店に販売する流れが一般的です。医療用医薬品とほぼ同じく、販売料金が収益の軸となる仕組みとなっています。
製薬・医薬品業界の現状と市場規模
ここからは、製薬・医薬品業界の現状と市場規模について解説します。
製薬・医薬品業界の市場規模
医薬品業界の世界での市場規模は、2022年時点で約200兆円。日本国内の市場規模も9.9兆円と非常に大きい市場規模となっています。世界での市場シェアをみると、日本はトップのアメリカ・欧州5カ国・中国に次ぐ市場規模となっている状況です。
製薬・医薬品業界の現状と課題
医薬品業界としては、世界視点でみると2027年まで市場の拡大が見込まれており、新たな技術の発展も期待されています。一方で、日本国内の市場成長率はほぼ横ばいの見込みです。さまざまな要因がありますが、高齢化社会の進行による医療費負担を減らすための薬価の値下げも理由のひとつです。新薬開発が激化しているなかで、開発に成功しても採算がとれない可能性があるため、AI技術の活用など新たなアプローチが求められています。
医薬品業界の将来性
ここでは医薬品業界の将来性について解説します。
製薬・医薬品業界の今後は厳しい?
現状苦しい状況が続く医薬品業界ですが、病気がなくなることはないため需要自体は安定していると言えるでしょう。
とはいえ薬価引き下げの影響から国内での収益確保が難しいため、最近では海外市場に進出し売上・利益の確保に努める企業が多くなっています。
象徴的な例として2019年1月の武田薬品工業によるアイルランド製薬会社シャイアーの買収が印象的でしょう。
武田薬品工業はシャイアーが強みとしていた希少疾病医薬品の開発を進め、2024年までに同領域で14もの新製品発売を予定しています。
また、アステラス製薬も外資製薬メーカーのファイザーと提携し前立腺がん治療薬の開発に成功。中国やアメリカでも承認され堅調に売上を伸ばしています。
このように医薬品業界は海外進出を積極的に行っており、今後は海外市場でのシェアを取れるかが事業継続の鍵となるでしょう。
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製薬・医薬品業界ランキング
日経新聞が調査したデータによると、2024年9月時点の製薬会社の売上高は、武田薬品工業がトップです。次いで大塚ホールディングス、アステラス製薬というランキングとなっています。トップの武田薬品の売上高は4兆円以上となっており、国内市場の約半分に迫る勢いです。
2位の大塚ホールディングスは約2億、3位のアステラス製薬は約1.6億となっており、トップとそれ以外との売上高には大きな開きがあります。企業選びの際は、2009年以降増加しているM&Aも視野に入れて総合的な判断が求められます。
参考:日本企業 売上高ランキング【日経】上場企業売上トップ200|日本経済新聞
これから10年後伸びる可能性のある製薬・医薬品会社
製薬会社の動向は社会情勢とともに大きく変わりつつあるため、10年後伸びる確証のある製薬・医薬品会社は断言することが難しい状況です。今後多くの企業に導入される創薬研究のDX化やAI技術などの動向を確認したうえで、しっかりとした事前研究が必要です。常に新しい情報にアンテナを立てながら、自分が進むべき道を見出していきましょう。
製薬・医薬品会社の他業界と比較した強み
製薬・医薬品業界は市場規模が大きく、事業として安定していることがメリットのひとつです。働く環境や福利厚生が充実している傾向もあるため、就活生には人気の業界となっています。
職種や事業内容などにより変動しますが、収入が高い水準にあることも人気の一因です。自身がやりたい仕事と待遇などのバランスにも充分注意すれば、自分の特徴や強みを活かしながら安定した働き方ができる業界です。
製薬・医薬品業界にはどんな仕事がある?
ここでは医薬品業界の代表的な職種について以下3つを解説します。
- ・研究職
- ・開発職
- ・MR
医薬品業界を目指す方は上記職種を中心にどのような仕事があるのか詳しくチェックしておきましょう。
研究職
研究職は医薬品の有効成分分析や薬の合成実験など実験や分析がメインとなる職種です。
製薬メーカーの研究職につくには理系の修士・博士の取得など大学院の卒業を条件としている場合がほとんどです。
もしくは薬学部を卒業していてもエントリーできます。
主な研究内容としては医薬品の基礎研究から非臨床試験まで幅広い研究を実施します。
基礎研究とは医薬品の元となる化合物を発見し作り出す研究です。
植物や動物などから天然素材を抽出し、様々なテクノロジーを駆使して化合物の発見に繋げます。
非臨床試験とは新薬を人間に投与する前に、動物等へ投与し有効性・安全性を確かめる試験のことを言います。
開発職
開発職では臨床試験などを通して、医薬品開発をする職種です。
研究職と同様、理系の修士・博士など大学院の卒業が必須で、薬学部卒の学生もエントリーできます。
臨床試験とは医薬品を市場に流通させる前に健康な成人や患者に投与して有効性や安全性を確かめる試験のことです。
この臨床試験で医薬品としての有効性や安全性を証明できないと、製造承認を取得できず市場に流通させられないため、非常に重要な業務となります。
臨床試験では医療関係者とのコミュニケーションが大切なので、研究以外の能力も問われる職種です。
また、海外のデータや論文を目にする機会も多く、英語でのやりとりも頻繁に発生するため英語力も必要となるでしょう。
MR
MRとは製薬メーカーの営業担当のことで、正式名称は「Medical Representatives(医療情報担当者)」です。
病院やクリニックに訪問し、医師に自社の医薬品に関する情報を提供することが主な業務となります。
医薬品にもそれぞれ特性があるため、正確な情報を医師に提供し適切な患者に自社医薬品を処方してもらうことがMRの役割です。
製薬・医薬品業界の最新ニュース
ここでは医薬品業界の最新ニュースについて以下の項目を紹介します。
- ・医薬品開発にAI活用が進む
- ・バイオ医薬品の台頭
医薬品開発にAI活用が進む
近年医薬品開発でAI活用が進んでいます。
医薬品開発は長い年月と巨額の研究開発費がかかることから、資本力のある大手企業のみが事業を継続させられてきました。
こうした中AIを活用することで新薬の元となる化合物を素早く特定し、開発期間の短縮と開発コストの削減に取り組む流れが加速しています。
また、日立製作所が開発した医療向けの自然言語処理やディープラーニングなどのAI技術を活用することで、従来の作業と比較して臨床試験に関する情報収集時間を従来よりも70%削減できる見通しが立っており、臨床試験の短縮に貢献できる可能性も出てきているのです。
このように医薬品開発ではAI活用による開発期間短縮やコスト削減を目指しており、これまで資本力がなく医薬品開発に参入できなかった企業も着手できる日が近いかもしれません。
バイオ医薬品の台頭
近年医薬品業界では「バイオ医薬品」という新しいタイプの製品が登場しています。
バイオ医薬品とは人間の体内にあるホルモンや酵素などの生体分子を応用して作られる医薬品のことです。
バイオ医薬品は有効性が高く副作用も少ないという優れた性質を持ちますが、従来は比較的簡単な低分子化合物を用いた医薬品しか作成できませんでした。
しかし近年バイオテクノロジーが進歩したことにより、タンパク質医薬品や抗体医薬品といった複雑な生体分子の生産が可能となり、適応できる疾病の数も増えてきています。
具体的にはがんやC型肝炎の治療薬として使われるインターフェロンや糖尿病の治療薬として使われるインスリンなどが挙げられます。
バイオ医薬品も近年大量生産が可能となっており、希少疾病にも対応できる薬剤が多いことから今後も各製薬メーカーが力を入れて取り組む分野となるでしょう。
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製薬・医薬品業界と関連する業界
製薬・医薬品業界と関連する業界には、以下のようなものがあります。
専門商社
医療用医薬品などを、流通させる役割を担っています。
CRO(医薬品開発業務受託機関)
CROは医薬品メーカーなどの委託を受けて、臨床試験手順の確認や症例などのデータ管理を行う機関です。医薬品を効率良く予算内で開発するため、近年では開発の中心を製薬会社が行い、周辺業務をCROへ委託するケースも増えつつあります。
CSO(MR派遣・MR業務受託)
CSOは、MR派遣やMR業務受託を行う企業です。派遣や請負など様々な契約にも対応しており、製薬企業の業務の一端を支える役割を担っています。
製薬・医薬品業界で自己PRを書く方法
製薬・医薬品業界で自己PRを書く場合は、事前に業界・企業研究をしっかりと行うことが大切です。業界や企業を知ったうえで深い自己分析を行い、志望企業にとってアピールになりうる自身の強みを見つけます。
自己PRを書く方法のポイントとしては、構成と相手(企業)の価値観を意識することです。基本構成は自身の強みをまずは端的に述べ、具体的なエピソードとともに語ります。そのため、まずは企業が求める人材の傾向を把握し、それに近い自身の強みをみつけることが重要です。相手に信頼感を与えられるよう、企業の価値観を意識して作成を行いましょう。
製薬・医薬品業界で志望動機を書く方法
医薬品業界向けに志望動機を書く場合も、自己PR作成と同様にまずは自己分析と業界・企業分析を行います。そのうえで、業界・企業を志望した理由や自身の強みを見つけてアピールする内容の軸を決定することが大切です。上記の準備が整えば、構成に従って作成すれば要点を押さえたアピールができます。
志望動機の基本構成例としては、「業界・企業へ志望した理由」⇒「自身の強みやアピールポイント」⇒「入社後の展望」が一般的です。基本構成が最も伝わりやすいため、内容やアピールポイントを工夫しましょう。自身が入社することで企業にどんな価値提供ができるのか、しっかり伝えることが非常に大切です。
製薬・医薬品業界で理想とされる人物像
製薬・医薬業界といっても、求められる人物像は企業や職種によって異なりますが、共通する部分はあります。共通点のひとつが倫理観や正義感、几帳面さです。製薬・医薬業界はほかの業界とは異なり、命や健康に関わる仕事に携わります。確認不足やミスが大きな事故につながることもあるため、作業の几帳面さや正しい倫理観を持った人物が求められるのです。
上記の前提となる条件を踏まえたうえで、コミュニケーション能力や発想力を持った人物が理想とされます。研究開発や販売などの様々な場面で必要とされる対話力は、製薬・医薬業界での仕事で欠かせない能力のひとつです。
また、新たな技術を活用し、コストを抑えてより良い医薬品を開発する発想力を求める企業も少なくありません。企業ごとに人物像は異なるため、志望の際にはしっかりと調べて事前に把握しておきましょう。
これは知っておきたいポイント!(まとめ)
医薬品業界は理系学生からも人気の高い業界ですが、近年薬価引き下げなどの影響で収益がうまく確保できず苦しい状況となっています。
そんな状況を打開するため、大手を中心とした国内企業が海外進出による収益確保に努めており、グローバルに活躍できる人材が求められるでしょう。
特に理系学生に人気の職種である研究開発職は英語を多用するため、英語力に長けていた方が良いです。
医薬品業界についてしっかりと理解し、志望企業の内定を勝ち取りましょう。
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