研究者として企業に入社し、自分の研究が企業の製品やサービスとなって多くの人々の生活をより良くしているのを見たいと考えている人も多いでしょう。

ただ、製造業や医薬を始め研究所を持つ企業は多く、どこを選んだらよいのか迷ってしまう就活生も多いのではないでしょうか? 

本記事では企業研究職を目指す就活生に向けて、研究開発に投資意欲の高い企業と見つけ方を紹介し、「狭き門」を突破するために必要なことを解説します。

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研究職を志望する人の企業選びのポイント

研究職を志望する人の企業選びのポイント

一口に研究職と言っても、企業によって仕事内容も研究環境も大きく異なります。自分に合った企業を見つけるために、次のポイントに注意しましょう。

研究領域が自分の専門性と一致するか

企業を選ぶ上では、自分の専門分野や関心のある分野の研究に力を入れている企業を探すことが第一歩です。具体的に企業がどのような研究を行っているのかを理解するために、企業サイト・業界地図・会社四季報などのリサーチを積極的に行いましょう。

また、科学技術・学術政策研究所は、毎年「民間企業の研究活動に関する調査報告」を発表しています。この報告書を見ると業界ごとの研究開発動向を把握できます。

さらに企業の研究内容を知りたい場合は、論文や特許公報を探しましょう。論文や出願されている特許件数を見ることで、企業がどのような分野に力を入れているか、詳しく把握できます。

研究支援体制が整っているか

企業の研究職に求められるのは、研究を通じて利益を上げて企業に貢献すること。逆に言えば、企業が価値がないと判断すれば、研究活動は続けられません。企業で研究を続けたいと考える人は、研究開発に積極的に投資して支援する体制を構築している企業を選ぶことが必要です。

企業がどれだけ研究に力を入れているかを把握するには、企業の売上高比率が指標となります。この点については次の項で詳しく説明します。

研究環境は充実しているか

企業の研究環境や施設の充実度を見ることも重要なポイントです。企業によっては研究所の見学会や説明会を開催するところもあります。企業説明会やOB・OG訪問、インターンシップへの参加も含めて、さまざまな機会を利用して研究環境の情報を収集しましょう。

研究に力を入れている企業ランキング

研究に力を入れている企業ランキング

研究開発に力を入れている企業を選ぶためには、研究開発費だけでなく、研究開発への投資の割合(売上高比率)を見ることが重要です。ここでは上位企業のランキングを紹介しつつ、このランキングに載らない中小企業でも、研究開発にどれだけ力を入れているか知る方法を紹介します。

2022年度研究開発費ランキング

最初に、日刊工業新聞が2022年に行ったランキングを見てみましょう。

(出典:日刊工業新聞

研究開発費の投資額を見ると、トヨタが1兆1,300億円とずば抜けて多いことがわかります。しかも、トヨタは21年連続で首位をキープしています。

次に売上高比率を見てみましょう。この売上高比率は、売上高全体に対する開発費の割合で以下のように求められます。

売上高比率(%)=研究開発費÷売上高×100

この売上高比率を見ると、トヨタは上位企業の中でも決して高い方ではないことがわかります。トヨタと同じく自動車業界の日産を比較すると、投資額はトヨタの方が大きくても、売上高比率は日産の方が高いことがわかります。事業規模の大きな会社は研究開発費も多額であることは、ある意味、当然です。売上高比率で確認することで、規模の異なる企業の比較が可能になるのです。

次に、前年比を見てみましょう。前年比の数値を見ることで、企業の方針の転換を見て取ることができます。ここでもトヨタと比較して、日産が大きく伸びていることがわかります。

このように、企業の研究開発費を見る場合は、次の2つのポイントを意識すると良いでしょう。

  • 競合企業と比較する

1社の数字を見ただけでは、その数字の意味を理解できません。同一業界の他の企業と比較することによって、売上高比率が高いのか・低いのかを理解できます。

  • 時系列でみる

単年の数字を見るだけでなく、前年比、できれば3年程度は見ておきたいところです。企業の動向をより正確に把握できます。

志望企業の研究開発費を知るには?

研究開発費ランキングに掲載されるのは大企業が中心ですが、比較的事業規模の小さな企業の研究開発費や売上高比率を調べることも可能です。

企業の有価証券報告書は、EDINETで公開されています。閲覧したい企業名で検索し、有価証券報告書の第一部「企業情報」>第5【経理の状況】へ進むと、「売上収益」と「研究開発費」の情報を取得できます。この数値から売上高比率の算出が可能です。

この場合も、単年度の数字だけを見るのではなく、競合と比較したり、時系列の変化を見ておきましょう。

研究開発に力を入れている企業を志望する時の注意点

研究開発に力を入れている企業を志望する時の注意点

企業で研究職に就くのなら、研究開発に多額の投資を行って研究環境も充実している企業に入社したいと誰もが考えるでしょう。しかし、研究開発に力を入れている企業には、相応の厳しさがあることも理解する必要があります。

成果が求められる 

企業の研究職は有益な研究テーマを選び、毎日の研究を通じて結果を出すだけでなく価値につなげることが期待されます。納期は厳しく、研究の能力だけでなくプロジェクトマネジメントの能力も求められます。

企業全体の方針に左右される

企業研究職は、市場の動向・消費者ニーズ・国内外の経済状況の影響を強く受けます。企業のビジョン・方針に基づいて研究テーマが決まるのが一般的です。企業のビジョンや方針が変更すれば、研究テーマの変更や、チームや予算の縮小、プロジェクト自体の廃止もあります。

研究チームの一員として研究活動に全力を注ぎながらも、同時に自分自身のキャリアパスを常に意識しておく必要があります。

転職が難しい場合がある

研究開発に力を入れている企業の場合、研究内容の専門性が高く、そこで働くことを通じて、深い知識と高度なスキルを身につけられます。同時に企業の一員であるため、企業の方針で配置転換の辞令が出た場合は、従うか・転職するかを選ばなければなりません。

転職を選んだ場合、自分の専門性やスキルに見合う転職先が見つかるかどうかの問題があります。積み上げてきた自分のスキルや経験が、他の研究分野への転用が難しい場合もあるでしょう。常に長期的なキャリアパスを考えた上で、転職に向けて少しずつ準備をする必要があります。

人気企業の研究職、狭き門を突破するには

人気企業の研究職、狭き門を突破するには

企業の研究職は、募集人員がそもそも少ない上に人気も高い狭き門となっています。研究開発費を多く投資し、研究設備も完備されている企業に入社するには厳しい競争に勝ち残らなければなりません。そのため、次のような対策を講じてください。

専門分野を早めに決め経験を積む

研究職を志望する就活生にとって最大の武器は、研究を通じて企業の生産性に寄与できる実績です。就活までに研究としてまとまっていなくても、良い研究課題を見つけて研究計画を立案すれば十分なアピールになります。

学部の早い段階で、自分の専門分野を見つけることが重要です。専門分野に必要な勉強・読むべき論文・文献などを、指導教官や院生に紹介してもらいましょう。可能であれば早い段階から研究室の見学に行き、研究とはどのようなものかを体感するのも良い方法です。

企業研究は入念に

就活生の多くが、企業についてはほとんど知識も情報もない状態からスタートします。最初は目標を絞りすぎず、自分がキャリアを通じて「何を達成したいか」「どんな役割を果たしたいか」という目標を立てましょう。次に、目標が達成できそうな業界や企業を調べます。実際に企業で働く人やOB・OGに会い、話を聞きましょう。

新卒研究者を募集しているのは、有名企業ばかりではありません。一般的な知名度がなくても、高い業績を上げている中小企業は少なくありません。そのような企業を見つけるためには、まず業界団体を調べて業界・最新技術について知りましょう。業界団体傘下の企業を見ていきます。

企業がどのような製品・サービスを生み出しているのかを切り口に、「製品がどのようにして開発されたのか」「基礎にはどのような研究があるのか」と深堀りします。

企業研究のプロセスを通じて、自分自身が企業で達成したい目標も少しずつ具体的になるはずです。エントリーの前に企業を入念に研究し、志望動機などのイメージを徐々に固めていきましょう。

企業研究のやり方については次の記事で詳しく説明しています。こちらも参考にしてください。

自己分析では専門に焦点を当てる

企業は自社に価値をもたらしてくれる就活生を探しています。それに応えるために、自己分析も、自分の専門的な強みや研究への志向性を明確にするために行います。

研究職を志望する人は、すでに自分の将来や方向性が定まっているでしょう。漠然と過去を振り返るのではなく「自分が研究をしたいと思うのはなぜなのか」「研究を通じてどのような役割を果たそうと感じているのか」「自分はどのような価値が提供できるのか」などのように、焦点を絞った自己分析が有効です。

自己分析について詳しく知りたい人は、次の記事も参考にしてください。

研究職関連のインターンシップに積極的に参加する

研究職に関連するインターンシップに積極的に参加することで、現場の空気にふれられます。そこで感じる「第一印象」や「相性」は、意外と参考になります。ワンデーインターンのように、ざっと見て回るだけのものではなく、現役の研究者と触れ合うことのできる機会をぜひ持ってください。

インターンシップの具体的な始め方については、次の記事で詳しく説明しています。

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研究職を志すなら早めの準備がカギ

本記事では研究開発費ランキングを紹介しながら、企業研究職を志望する人の企業選びのポイントについて説明してきました。

研究職として働くことを考えると、企業を選ぶ上でどれだけ研究開発費に投資しているかを理解することは重要なポイントです。

また、単純に投資額だけを比較するのではなく、売上高比率や前年比を見ることの重要性についても触れました。ランキングには載らない中小企業の売上高比率の算出方法も説明しました。

企業研究職は、外部の世界からは分かりにくいものです。研究開発費の売上高比率や前年比を見ることで、「企業がどれだけ研究開発に力を入れているか」「今後、さらに強化しようとしているのか」を理解できます。

研究職を目指す皆さんの参考にしてください。