企業のシステム開発を請け負うSIerにはさまざまな種類の企業が存在します。

しかし、SIerが具体的にどのような業務を行っているか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?

どのSIerも基本的な業務内容は同じものの、SIerによっては得意とする業界や開発するシステムに違いがあります。
今回はSIerについて業務内容や新卒で就職するのに必要なスキルを中心に解説します。
SIerへの就職を目指している理系就活生はぜひ参考にしてみてください。

SIerとは?

Slerとは顧客の要望に合わせてシステム設計や運用、コンサルティングなどシステム関連の仕事を請け負う企業のことです。
SIerは他にも「システムベンダー」や「ITベンダー」と呼ばれることもあります。

SIerは、システム開発や運用を請け負うサービスを表す「System Integration」を省略したSIと「〜する者」を表すerを掛け合わせた造語です。
SIerは日本だけで使われる造語であり、正式な英語ではないため注意しましょう。

SIerの仕事内容

SIerの仕事内容は、顧客の業務を分析し、課題解決に向けてシステムの設計から開発、運用・保守、コンサルティングなどの業務を請け負い遂行することです。
顧客ごとに抱える課題も異なり、SIerが請け負う仕事も顧客によって大きく変わります。
顧客によってシステム規模も異なるため、数ヶ月など短期で終わるものから数年単位の長期にわたるプロジェクトまでさまざまです。

SIerは主に請け負ったプロジェクトの管理がメインであり、開発などの実務作業は他のパートナーと協力して行います。
基本的にSIerがプログラミングなどの実務作業は行うことはありませんが、経験のために若手が下請け会社の人をサポートする形で作業することもあるのです。

顧客のシステム開発を請け負うSIerですが、近年は自社の独自技術を開発してサービス提供する企業も増えており、データサイエンティストなど最先端分野の開発者を雇用するケースも増えています。

SIerの種類

SIerにはさまざまな種類があり、大きく以下の4つに分類できます。

・ユーザー系
・メーカー系
・独立系
・外資系

上記4つで異なる部分もあるため、SIer志望の方はそれぞれの特徴を把握しておきましょう。

ユーザー系

ユーザー系は主に一般企業が母体となるSIerです。
企業のシステム部門が独立してSIerとなるケースが多く、親会社以外の他の企業のシステム開発も請け負っています。
母体としては商社や金融系の企業であることが多く、NTTデータや伊藤忠テクノソリューションズなどが代表的なユーザー系SIerと言えるでしょう。

特に商社系列のSIerは幅広い業界とつながりがあり、さまざまな要件のシステム開発に携わっています。

メーカー系

メーカー系はパソコンなどのハードウェアを製造販売するメーカー系列のSIerです。

ユーザー系と同様、親会社であるメーカーのシステム部門が独立してSIerとなるパターンがメインとなります。
メーカーでの知見を活かし、ハードウェアやソフトウェアの提案も組み合わせたシステム開発が得意です。

企業規模が大きいSIerが多く、大規模なプロジェクトに携われる可能性があります。
代表的なメーカー系SIerとして、日立ソリューションズやNECネッツエスアイなどが挙げられるでしょう。

独立系

独立系とは、メーカーやユーザー系とは異なり親会社を持たない独立したSIerのことです。

元々顧客のシステム開発を請け負うことを目的に設立されており、親会社のしがらみがなく顧客のニーズに合わせて柔軟に対応できる点が強みと言えます。

独立系SIerはシステム開発をメインに請け負っており、開発のノウハウや知見を高めたい方にはおすすめのSIerと言えるでしょう。
代表的な独立系SIerとして、大塚商会やオービックなどが挙げられます。

外資系

外資系とは、文字通り海外企業が母体となるSIerのことです。

コンサルティングに強みをもつ企業が多く、給与など待遇面も比較的良いことからSIerの中でも人気となっています。
一方で成果重視の企業が多く、日本の企業文化とは異なるため自分にあっているかを見極める必要があるでしょう。

SIerに求められるスキルとは?

SIerの業務で求められるスキルは主に以下4つが挙げられます。

・コミュニケーション力
・スケジュール管理能力
・論理的思考力
・プログラミング等ITスキル

SIerを目指している方は、上記スキルを高められるよう普段から意識しておきましょう。

コミュニケーション力

SIerの業務を行う上で、コミュニケーション力は欠かせません。

SIerは請け負った案件を遂行し、顧客のニーズに合うシステムを提案する必要があります。
顧客のニーズに応えるためにも、コミュニケーションを取り顧客が抱える課題を把握することが大切です。

また、実務作業を協力して行うビジネスパートナーに対して、適切に業務を遂行できるよう進捗管理などを行う必要があります。
こうした進捗管理にも、双方のコミュニケーションが欠かせません。

請け負った案件を完遂するには、コミュニケーション力が必要です。

スケジュール管理能力

SIerではスケジュール管理能力も求められます。

顧客から請け負う案件には必ず納期が設定されており、期日までに作業を完遂させるにはスケジュール管理を徹底する必要があるでしょう。
具体的には以下の項目を適切に管理する必要があります。

・作業がスケジュール通り進行しているか
・遅れている作業を素早くサポートする
・各作業の人的リソースが十分であるか

単純にスケジュールを把握するだけでなく、進捗度合いを確認し遅れている作業のリカバリーを行うことも必要です。

納期までに案件を完遂するには、高いスケジュール管理能力が求められます。

論理的思考力

SIerでは論理的思考力も求められます。

システムの要件定義や設計の段階で、論理的に矛盾した仕様書を作成してしまうと、その後の作業が進まず、システムもうまく機能しなくなるでしょう。

特に大規模なプロジェクトとなれば、仕様書の論理的な欠陥でさまざまな箇所に悪影響を及ぼし、修復不可能な状況を生み出すリスクがあります。

顧客の求める品質のシステムを提供するためにも、論理的思考力は重要と言えるでしょう。

プログラミング等ITスキル

プログラミングなどのITスキルもSIerでは不可欠です。

十分な品質のシステムを提供するには、ITシステムに関する幅広い知見が求められます。
SIerで求められるITスキルには、他にもデータベースやネットワークに関するものなど幅広い基礎知識が挙げられます。

SIerがプログラミングをする機会は少ないですが、プログラミングスキルがあることでビジネスパートナーにも適切な指示出しができるでしょう。

案件を無事に完遂するためにも、ITスキルは常に高めておきたいものです。

SIerが「やめとけ」と言われる理由

ネット上ではSIerに対して否定的な意見がいくつかみられますが、その理由の1つに労働環境の悪さが挙げられます。

もちろん全てのSIerに当てはまる訳ではありませんが、顧客から指定される納期に間に合わせるために過度な長時間労働を従業員に強いるケースがあるのです。

ただし、最近では労働基準法が厳しくなったこともあり、こうしたブラック企業は減少し労働環境が大幅に改善されています。
どのSIerも事前に十分な予算や人員を確保し、案件を請け負っているため、こうした懸念は少なくなってきていると言えるでしょう。

これだけは知っておきたいポイント(まとめ)

SIerは顧客の要望に合わせてシステム設計や運用、コンサルティングを行う仕事です。
ユーザー系や独立系などさまざまな種類のSIerが存在し、それぞれ得意とする業界や業務も異なります。

SIerを目指す方は業務で求められるスキルを高めつつ、SIerごとの特徴を把握し自分に合った企業を選択することが重要です。