居住用の一戸建て住宅から高層マンション、オフィスビル、大規模商業施設などさまざまな建物を手がける建設業界。
建築系を専攻する理系学生からは就活において根強い人気を誇る業界です。
そんな建設業界ですが、具体的にどのような事業が行われどんな仕事があるのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は建設業界について現状と市場規模、将来性、職種、最新動向も含めて解説します。
建設業界を目指す理系学生はぜひ参考にしてみてください。
建設業界にはどんな企業がある?
建設業界は建物を作る建築のイメージが強いですが、道路や水路の整備などの土木工事など幅広く施工する業界です。
ちなみに建築は建設とは異なり、ビルや公共施設など建築物の施工のみで、土木工事は行いません。
建設業界にはさまざまな事業を行う企業が存在し、1つの工事に複数社が関わることも珍しくありません。
建設会社は工事の種類によっても得意不得意があり、建設会社の9割は中小規模の工務店です。
土木工事から建築工事まで幅広く手掛け、工事の計画から施工管理まで一貫して行う総合建設業会社をゼネコンと呼びますが、企業規模も大きく就活生からも人気が高い企業です。
中でもスーパーゼネコンと呼ばれる大林組・鹿島建設・清水建設・竹中工務店・大成建設は大規模建造物を手掛けており、採用競争率も特に高くなっています。
建設業界の現状と市場規模
ここでは建設業界の現状と市場規模について解説します。
まず市場規模ですが国土交通省の「令和2年度(2020年度)建設投資見通し」によると2020年度の建設投資額63兆1,600億円と国内でもトップクラスの巨額な市場です。
近年の建設業界は東京オリンピックをはじめ、東日本大震災の復興事業、首都圏の再開発などで好調を維持していました。
しかし2020年から新型コロナの影響により、建設業界の好調に歯止めがかかってしまいます。
外国人を中心に観光客の減少や東京オリンピックも終わったことにより、これまでの「需要を期待できず市場の成長も停滞することが予想されます。
建設業界の将来性
ここからは建設業界の将来性について解説します。
これまで好調を維持してきた建設業界ですが、以下2つの課題解決の必要に迫られています。
・深刻な人手不足
・長時間労働
上記2つの課題にどう対処するかが建設業の事業継続の鍵を握るでしょう。
深刻な人手不足
建設業界は深刻な人手不足が問題となっています。
国土交通省の調査によると、建設業界の就業者数は1997年の685万人をピークに減少し続け2017年度には498万人とピーク時の27%も減少しています。
さらに近年建設需要の回復傾向にあるため、工事の件数は増えているものの建設業の就業者数が減少し、より人手不足が深刻化しているのです。
特に専門性の高い職種において人手不足がみられています。
また外国人労働者が増加傾向にありますが、建設業全体の就業者に占める割合はまだまだ少なく、当面は人手不足の問題が続くでしょう。
長時間労働
長時間労働を中心とした労働環境の悪化も課題です。
厚生労働省の調査によると産業全体の平均労働時間と比べて建設業では労働時間が非常に長いという結果が出ています。
理由としては人手不足の影響や建設需要の増加があるため、1人あたりの仕事量が増えているからです。
また建設業界が古くからある業界ということもあり、長時間労働が当たり前という風潮も影響しているようです。
特に技能労働者は人手不足の影響もあり、週休2日がとれないほどの労働を強いられているケースもあります。
建設業界にはどんな仕事がある?
ここでは建設業界での代表的な職種を紹介します。
・施工管理職
・設計職
・技術開発職
・営業職
建設業界では資格が必要な職種もあるため、希望職種の情報は事前にチェックしておきましょう。
施工管理職
施工管理職とは、建設の施工における進捗管理など管理業務を行う職種です。
工事進捗以外にも工事内容や安全面、予算管理などもチェックします。
いわゆるマネジメント職にあたるため、状況把握能力や責任感などが必要となるでしょう。
また工事発注者との打ち合わせや書類作成業務もあり、専門の資格もあることから多くの知識が求められる職種でもあります。
設計職
設計職とは建造物の設計を行い図面におこす職種のことです。
基本的にオフィスで仕事をするケースが多く、建設業界でも人気職種となっています。
設計職は資格が必要なケースもあり、業務内容的にCADオペレーターと建築士に分かれています。
建築士は建築物の設計を担当しますが、CADオペレーターは建築士が考えた設計を図面におこす作業が主な仕事です。
ちなみに建築士は専門の資格が必要で、1級建築士・2級建築士・木造建築士のいずれかを保有する必要があります。
建築士を目指す方は資格取得に向けての勉強も必要です。
技術開発職
技術開発職とは、建設業のシステム関連技術の新規開発を担当する職種です。
近年建設業はデジタル化が進んでおり、生産性向上に貢献する効率的なシステムの開発ニーズが高まっています。
具体的な仕事としては、AIを活用した現場計測システムやロボットによる施工業務の自動化システムの構築などが挙げられるでしょう。
システム構築を主な業務とするため、基本的には理系出身者がメインの職種です。
システム関連に興味のある理系学生は押さえておきたい職種と言えます。
営業職
営業職は顧客から工事を受注するために提案や営業活動を行う職種です。
営業対象は企業によって異なるため、営業職を志望する方は事前に企業ホームページをチェックしておいた方が良いでしょう。
また企業によりますが、営業職は基本給に加え歩合給が設定される企業もあります。
営業成績が高えればその分歩合給も上がるため、高収入を目指す方には検討の余地がある職種です。
建設業界の最新ニュース
ここでは建設業界の最新ニュースについて以下の話題を解説します。
・3Dプリンターによる建築物設計
・人手不足解消に向けたICT化
3Dプリンターによる建築物設計
海外を中心に3Dプリンターによる建築物設計が話題になっています。
例えば米テキサス州オースティンでは、ICON社による100棟を超える住宅を3Dプリンターで建設する計画が進んでいます。
3Dプリンターを活用することで従来よりも設計・工事期間の短縮、さらには建設コストも抑えられるため、これまでと同じクオリティの住宅を低価格で提供できるのが特徴です。
さらに工期が短縮できるため、二酸化炭素排出量も削減でき環境負荷の軽減にも貢献できるでしょう。
日本でも大成建設が建設用3Dプリンター「T-3DP」を開発。
現状では建設材料に対応しており制作できる規模は小さいですが、技術開発が進みより大きい範囲で適用できれば、工事の作業量も減少し人材不足問題の解決につながる可能性があります。
人手不足解消に向けたICT化
現在建設業界では人手不足解消に向けデジタル化が進んでいますが、その中でも「ICT化」というキーワードが注目されています。
ICT化とは「Information and Communication Technology」の略称で、情報テクノロジーを活用しコミュニケーションを円滑にすることです。
国土交通省では建設業でのICT化を「i-construction」と名付け、ICT技術を活用し土木・コンクリート工、施工時期の平準化を進めることで工事作業量を減らす取り組みを行っています。
具体的にはドローンを用いた現場測量や建設機械の自動化、3次元データ活用による施工管理の効率化など生産性向上を目指す動きが活発です。
これらの取り組みを通して、建設業務量を減らし建設業における人手不足問題の解決に繋げています。
これは知っておきたいポイント!(まとめ)
建設業界は大都市の再開発、オリンピック需要などにより建設需要が盛り上がりを見せる一方、年々就業者数は減少しており深刻な人手不足となっています。
こうした課題に対し最新のテクノロジーを活用し生産性向上を目指す動きが活発であるため、建設業界に就職できれば最新テクノロジーに触れながら業務ができるでしょう。
建設業界で注目される最新技術に理解を深め、志望企業の内定を勝ち取りましょう。