こんにちは。理系就活情報局です。
理系学生の中には、大学院進学を視野に入れている人も多いと思います。
一方で、進みたい研究室や研究テーマは思い浮かべられても、大学院修了後のキャリアについては漠然としたイメージしか抱けていない人も少なくありません。
そこで、今回は大学院修了後のキャリアのうち「大学助教」に着目します。
アカデミアでキャリアを重ねていきたいと思っている方は、ぜひ参考にしてみてください！
助教とは？
将来准教授や教授へつながるキャリアパスの始まり
文部科学省「大学教員の職の在り方について＜審議のまとめ＞」によると、助教は「制度上、将来、准教授、教授へつながるキャリアパスの一段階」であると位置付けられています。
大学院博士課程修了後、ポスドクなどを経て就く助教は、研究だけでなく授業のサポートなどの教育も担います。
アカデミアのポストとしては、（ポスドク・助手→）助教→講師→准教授→教授の順でステップアップしていきます。
助教とは、大学教授を目指す人のスタート地点と言えます。
何が違う？どっちが上？助教と他のポストの違い
助教と助教授の違いとは？
助教は、一見よく似たポストである「助教授」と混同されがちですが、助教と助教授はまったくの別物です。
制度の変更により、現在では「助教授」という職位は廃止され、「准教授」がその役割を担うようになりました。
そのため、助教授と助教を比較すると助教授（現・准教授）の方が職位が高いです。
助教と特任助教はどっちが上？
助教と特任助教の職位は基本的に同等ですが雇用形態に違いがあり、安定性や昇進の可能性を考えると通常の助教の方が上位と見なされるケースが一般的です。
助教は常勤職で任期がない場合もあり、将来的に准教授や教授への昇進が可能なキャリアパスが期待されます。
一方、特任助教は主に任期付きの契約職であり、研究プロジェクトや外部資金による雇用が多く契約満了後は別の職を探す必要があります。
助教と助手の違いは？
助教と助手は、役割が異なります。
助教は研究・教育の両方に関わり、大学の講義を担当するケースもあります。
一方、助手は主に教授や准教授の研究補助を行う立場であり、教育業務には関与しないことが一般的です。
また、助教は将来的に准教授や教授へ昇進するキャリアパスが開かれているのに対して助手は研究補助に特化しており、昇進の機会は限られます。
現在では制度の改正により助手の役職は減少し、多くの大学で助教がその役割を担っています。
テニュアトラック助教とは？
一口に助教と言っても、「特任助教」や「テニュアトラック助教」のように、任期付きで採用されるポストもあります。
特任助教は、特定のプロジェクトのために一時的に雇用される任期付きのポストです。
プロジェクト終了とともに雇用も終わる立場ですが、大きなプロジェクトに関われば、アピールするに足る経験を積める点が魅力です。
テニュアトラック助教も同じく期限付きのポストですが、こちらは安定的なポストを得られる可能性があります。
博士号取得後10年以内の若年研究者は、テニュアトラック制度を利用して一定の任期（5年）で雇用されながら研究に専念し、テニュア審査を受けられるのです。
この審査に合格すると、テニュアトラック助教はテニュア期間終了後、任期の定めがない終身雇用のポストとして採用されます。
テニュア＝終身雇用を獲得するために、テニュアトラック助教は5年の間に着実に実績を積んでいかなくてはなりません。
（参考：文部科学省 テニュアトラック普及・定着事業「テニュアトラック制とは？」）
助教になる方法
まずは博士号を取得
助教として働くには、基本的に博士号の取得が必要です。
まずは自分の専門分野の大学院に進学し、修士課程を修了した後に博士課程へ進むことで、より専門的な研究を深めます。
博士号を取得するには研究成果をまとめて審査を受けることが必須となるため、大学卒業後は修士号を取得して博士課程に進んで実績を積みましょう。
ポスドクで経験を積む
次に、ポスドク（ポストドクター）で経験を積みます。
ポスドクとは、博士号取得後に就く一時的な研究職です。博士号を取得すると、公募での採用や指導教員の推薦を通じてポスドクになるケースが一般的です。
ポスドクとして働くことで、研究を継続しながら実績やキャリアを積めます。特に、優れた研究成果を上げることで、大学教員として採用されるチャンスが高まります。
推薦か公募で応募
助教を目指すには、公募への応募や指導教員からの推薦を受けることが一般的です。
公募に応募する際、教授の推薦状の提出が求められるケースも少なくありません。
しかし、助教のポストは限られており、採用のチャンスは多くないのが現状です。
人脈の構築やタイミングによって採用が左右されることもあるため、計画的にキャリアを築いていくことが重要です。
助教の仕事内容
専門分野の研究
助教は教授や准教授の研究室に所属し、専門分野の研究で実験・調査を行ない、論文を執筆して実績を積むことが仕事となります。
アカデミアでステップアップしていくためには、研究実績が不可欠です。
数年ごとに設けられた契約更新が来るまで、限られた時間内に成果を出すことが求められます。
助教とは、大学教員としてキャリアを重ねていくための下積み期間だと言えます。
大学生への教育
研究に取り組む一方で、助教は講義も受け持ちます。
学生の実験や演習の指導も担当するほか、所属している研究室の雑務や指導教授のサポートや事務処理も任されることになります。
大学や研究室の環境によっては、学生の就活相談に乗ることもあるでしょう。
研究と並行して、学生の論文指導や試験の添削も行わなくてはいけないため、研究とのバランス配分が重要です。
助教の待遇
助教の年収と労働時間
令和4年度「学校教員統計調査」によれば、助教の平均月給は約35万円です。
上記の平均月給から税金を引くと、手取りの金額は28万円前後になると考えられます。
同データ内の「本務教員として勤務している学校における週担当授業時数別 職名別 本務教員数」によれば、助教の平均週担当授業時数は5時間です。しかし、助教は授業準備や試験の評価など研究以外の教育活動にも時間を割く必要があります。
さらに、学内外の会議への出席や研究室内での雑務を担当するケースもあり、実際の労働時間はもっと長いと考えられます。
参考：令和4年度「学校教員統計調査」
裁量労働制が多い
助教は勤務時間が労働者の裁量に委ねられる裁量労働制が採用される場合が多く、一般的なサラリーマンのように勤務時間に応じて給与が支払われるわけではありません。
裁量労働制は自分のペースで働けるように思われがちですが、必ずしも楽な仕事とは限りません。
突発的に多くの業務を請け負う可能性もあるため、研究時間を確保するには効率的なスケジュール管理が求められます。
准教授・教授など他の役職との年収の違い
令和4年度「学校教員統計調査」によれば、助教と准教授・教授など他の役職との年収の違いは下記の通りです。
・教授の年収：55.7万円×12ヵ月＝668.4万円
・准教授の年収：46.5万円×12ヵ月＝558万円
・講師の年収：40.6万円×12ヵ月＝487.2万円
・助教の年収：34.9万円×12ヵ月＝418.8万円
※いずれも平均給料月額（切り捨て）×12ヵ月として算出
※金額はあくまで平均値であり、所属する教育機関や論文指導や学内の役職手当、書籍の執筆や講演依頼によって前後します。
参考：令和4年度「学校教員統計調査 給料月額別 職名別 本務教員数」
助教のキャリアパス
大学教員としてステップアップ
大学院修了後、ポスドクを経て助教になった人は、講師や准教授、教授へのキャリアアップを目指すことになります。
大学でキャリアアップしていくためには、自分の研究にコツコツと取り組み、成果を出し続けることが肝要です。
助教として働く期間で実績を積みながら講師の募集に応募し、チャンスを掴みましょう。
飛びぬけて優れた実績があれば別ですが、准教授〜教授のポストに就くまでは時間がかかると考えておく必要があります。
必ずしも教授になれるわけではない
漠然と「ゆくゆくは教授になりたい」と思っているかも知れませんが、アカデミアのポストは、席が空かなければ昇格することは出来ないのです。
必ずしも助教が教授になれるわけではありません。
大学教授になるには講師や准教授への昇格が必要ですが、まずポストの空きがあるかどうかが大きく影響します。
タイミングよくポストが空けば昇格の可能性もありますが、上のポジションが埋まっている場合は順調に昇進し続けるのは難しいでしょう。
また、優れた研究実績を持つ場合は若くして教授に就くケースもありますが、一般的には40代～50代で教授に昇格することが多いとされています。
民間企業へ就職する
助教には、民間企業への就職という道もあります。
アカデミアでの昇進に限界を感じたり、もっと自分のスキルを活かせる会社が見つかったりした場合は、選択肢の1つとして検討してみましょう。
これまで研究してきた専門分野の研究職以外にも、資格や英語力といった汎用性の高いスキルがあれば、さまざまな可能性が開けてきます。
研究職での採用だけに絞り込みすぎず、自分の能力を活かせるフィールドを見極めて就職活動をしてみましょう。
助教から民間企業への就職を目指す場合は、理系に特化した転職エージェントを活用するとスムーズです。
まとめ
大学で助教としてキャリアを積みたいと考える理系就活生は多いですが、実際に将来的な道筋を想像したことのある方は少ないと思います。
本記事で紹介した助教までの道筋と、先のキャリアについて理解したことで、自分らしいキャリアプランが明確になったのではないでしょうか？
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