こんにちは。理系就活情報局です。
研究が本格化してくると、理系学生は「インパクトファクター」という言葉を耳にする機会が増えるのではないでしょうか?
研究論文の投稿先を選ぶ基準となる「インパクトファクター」は、自分の論文に合うジャーナルを決めるのに役立ちます。
今回は、そんな「インパクトファクター」の基本や上手な活用方法まで解説します。
「そういえばインパクトファクターって何?」という方から「せっかく書いた論文だから、評価の高いジャーナルに投稿して自分の能力を試したい」という方まで、論文執筆を開始した理系学生の方は、ぜひ参考にしてみてください!
インパクトファクターとは?
学術雑誌の影響力を示す指標の1つ
インパクトファクター(impact factor/ IF)とは、学術雑誌(ジャーナル)の影響力を示す指標の1つです。
インパクトファクターを使うと、同じ分野の雑誌同士を客観的に比較できます。
インパクトファクターは、Clarivate Analytics社のデータベース「JCR(Journal Citation Reports)」のデータを元に、過去2年間に学術雑誌に掲載された論文の被引用状況から、毎年新たに計算されています。
研究者は、学術雑誌に論文を投稿することで業績を重ねていきます。
学術雑誌に論文が掲載されるには、その分野に造詣の深い専門家による査読を通過しなくてはなりません。つまり、査読を通過した掲載された論文は、質の高さや研究の信頼性が担保されたことを意味します。
論文の投稿先を吟味することは、研究者としてのキャリアを重ねていく上で重要です。
学術雑誌には、インパクトファクターで判断できる影響力の大小が存在します。
その分野で最も影響力のある学術雑誌に論文が掲載されると、大学や研究機関のポストが舞い込んできたり、研究費の支援が寄せられたりするなどといった評価に直結するケースもあるのです。
あまりにレベルの高い学術雑誌にいきなり投稿しても、不採択になってしまうでしょう。
自分の論文に合う学術雑誌を見つける時には、論文のニーズや予算、幅広い分野の研究者の目に留まる媒体など、目的に合わせて媒体を選択することが重要です。その判断基準の一つとして、今回はインパクトファクターに着目します。
インパクトファクターの調べ方
JCRを利用する
インパクトファクターを調べるためには、JCR(Journal Citation Reports)にアクセスします。
JCRは有料のサービスのため、通っている大学図書館のHPで、有料契約のデータベースを調べてみましょう。
インパクトファクターは、JCRで学術雑誌名を検索すれば調べられます。
各雑誌のインパクトファクターを一覧にして表示したり、フィルターでソートすることが可能です。
Web of Scienceから検索する
同じく有料のオンライン学術データベースWeb of Scienceから検索する方法もあります。
データベース内の「ジャーナル情報」に記載されているジャーナル名のリンクをクリックし、「分野の四分位」を確認することでインパクトファクターが検索できます。
学術雑誌から検索する
個別の学術雑誌を検索して、公式ページなどでインパクトファクターを確認する方法もあります。
一部の学術雑誌では、インパクトファクターを公式サイト上で公開しているケースがあり、JCRの会員でなくても閲覧可能な場合があります。
ただし、すべての雑誌がインパクトファクターを公表しているわけではなく、中には非公開のものや数年前の古いデータが掲載されたままの場合も多いです。そのため、情報が最新で正しいものなのかを常に確認しましょう。
インパクトファクターの計算方法
とある学術雑誌の1年間のインパクトファクターを計算する場合、数式は下記のようになります。
・インパクトファクター= 過去2年間に掲載された論文の総数÷対象年に引用された過去2年間の論文の総被引用数
例:2024年のインパクトファクターを求めたい
・2022年と2023年にジャーナルXが発表した論文数:500本
・2024年に上記の論文が引用された回数の合計:2,000回
この場合、インパクトファクターは2000÷500=4.0となります。
インパクトファクターの値が高いほど、被引用数の高い論文が多く掲載されている学術雑誌ということができます。
インパクトファクターを一覧で見たい
JCRを見る
インパクトファクターを一覧で見たい場合は、JCRを見ましょう。
JCRを提供するClarivate Plcのリリースによると、2024年版のJCRでは、初めて分野に関して統一ランキング表示が導入されました。
この統一ランキングの導入は、研究の公正性をサポートし、ジャーナルインパクトファクターを学術的影響力だけでなく信頼性を示す指標とするために行われた変更とのことです。
インパクトファクターの一覧やランキング表示を見たい場合は、まとめサイトなどではなく、直接JCR内で確認しましょう。
参考:Clarivate Plc「クラリベイト、2024年版Journal Citation Reportsで世界をリードする信頼性の高いジャーナルを発表」
3以上あれば安心?インパクトファクターの目安
インパクトファクターはあくまで目安
インパクトファクターを用いると、学術雑誌の影響力を数値という分かりやすい形で確認できます。
注意したいのは、インパクトファクターが低いからといって、必ずしもその学術雑誌に論文を掲載する価値が低いということにはならないという点です。
インパクトファクターはあくまで判断基準の1つと考えて、その学術雑誌の査読システムや投稿基準といった他の情報も参照しながら、総合的に判断しましょう。
インパクトファクターは雑誌の評価で論文の評価ではない
インパクトファクターは学術雑誌の影響力を測る1つの指標ですが、掲載された論文や執筆者の評価を表すものではありません。
インパクトファクターから分かるのは、あくまでその学術雑誌の被引用数の多寡です。
その値からは、それぞれの引用がどんな文脈において行われたのかは見えてきません。
インパクトファクターの数値が高いからといって、その学術雑誌の質が担保される訳ではないため注意しましょう。
数値は頼りになる存在ですが、インパクトファクターだけで学術雑誌の良し悪しを判断しないようにしましょう。
インパクトファクターを調べる時に気をつけるポイント
インパクトファクターを調べる際、以下のポイントに気をつけましょう。
・大学図書館とJCRの契約があるかチェック
・最新版は昨年度のデータになる
・異分野の比較はできない
・インパクトファクターは雑誌の評価で論文の評価ではない
大学図書館とJCRの契約があるかチェック
インパクトファクターを調べるには「Web of Science」もしくは「JCR」の有料契約が必要です。
研究に携わらなければ閲覧しないデータベースのため、一般の市立図書館などではまず契約されていないと思ったほうが良いでしょう。
理系の学部を持つ大学図書館の多くは契約していますが、学内からのアクセスに限定している大学もあります。
大学図書館が契約している有料のデータベースは、専門分野の研究を進める上で頼りになる存在です。
専門性の高い辞書や論文データベースなど、個人で契約すれば負担になる金額のサービスを無料で使用できるため、積極的に活用していきましょう。
最新版は昨年度のデータになる
インパクトファクターを調べる際の注意点として、最新版は常に昨年度のデータであると理解しておきましょう。
インパクトファクターは各学術誌の影響度を示す指標ですが、計算には過去2年間の被引用数が使用される仕組みです。そのため、最新のJCRで発表されるインパクトファクターは、前年のデータに基づいています。
インパクトファクターの最新数値が発表されるタイミングは年1回であり、通常6月頃に更新されます。そのため、論文投稿や評価の際には常に「どの年度のデータを参照しているのか」を確認しましょう。
ランキングやまとめ情報を当てにせず一次情報を調べる
インパクトファクターを調べる際、「ランキング」と打ち込んで調べようとする理系学生もいると思います。
しかし、インパクトファクターに関するランキングやまとめ情報は少ない上に二次情報です。けっして鵜呑みにせず、必ず一次情報を確認しましょう。
インターネット上には、過去のデータや誤った情報が含まれたランキングが多く存在します。最新の正確なインパクトファクターを知るには、JCRなどの公式データベースを利用するのが確実です。
また、学術誌の影響度は毎年変動するため、最新のインパクトファクターを直接調べると正確なデータを得られます。
異分野の比較はできない
インパクトファクターの数値は、基本的に同分野内で比較します。
インパクトファクターは、各分野が抱えている研究者人口や論文の引用動向など、分野ごとのデータから算出されるためです。
分野Aの学術雑誌と分野Bの学術雑誌を比較したいと思っても、論文の引用の慣習や研究者人口が大きく異なれば、計算式に当てはめても具体性のある数値にはなりえません。
客観的なデータをもとにしていても、計算者にとって都合の良いデータになってしまいます。
異分野の学術雑誌を比較したい場合は、「それぞれの分野の有力誌への引用・被引用回数」を比較するなど、別の観点から行わなければなりません。
eLife誌のようにインパクトファクターの発行中止がされている場合も
インパクトファクターを調べる際には、一部の学術誌がインパクトファクターの発行を中止している場合がある点に注意が必要です。
例えば、eLife誌は2022年に査読を経た全てのプレプリントを“Reviewed Preprint”として掲載する新たなモデルを導入しています。
そして、eLife誌は2024年10月24日付けで学術文献データベースWeb of Scienceへの同誌の採録が保留となったことを発表しました。
ここで、eLife誌はインパクトファクターについて「当初から、インパクトファクターなどのあいまいな指標を支持したことはない」「より意味のある研究評価の必要性を感じ、代理を必要とせずに研究をレビュー、評価し、直接関与するモデルを作成した」と述べています。
上記のように、ジャーナルによってはインパクトファクターを採用せず、別の指標で評価するケースも増えています。
そのため、調査の際には対象のジャーナルがインパクトファクターを発行しているかどうかを事前に確認し、必要に応じて他の評価指標も考慮しましょう。
参考:eLife「Update on eLife’s indexing status at Web of Science」
実際に学術雑誌に目を通してみる
論文を投稿する前に、実際に複数の学術雑誌に目を通してみましょう。
WEBで掲載論文を読んだことがあったり、インパクトファクターで理解しているつもりであったとしても、1つの媒体として通読することでその学術雑誌の傾向が理解できます。
一見同じ分野の学術雑誌であったとしても、「この学術雑誌の傾向なら自分の論文が合いそうな気がする」「この学術雑誌に掲載されるのは難しいかもしれないけれど、査読を通れば実績としてアピールできそう」といった気づきが得られるはずです。
まとめ
この記事では、「インパクトファクターって何?調べ方や注意ポイントを解説」について解説してきました。
インパクトファクターについて理解したら、あわせて就活準備も進めましょう。
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