就職活動では、書類選考から面接までのあらゆる場面で「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」を質問されます。ガクチカは志望動機と同様に、就活で基本となる重要な項目です。自分の学生生活を振り返って、将来の仕事につながるエピソードを見つけてみましょう。

この記事では、理系学生の就職活動でも重要な「学生時代に力を入れたこと」の書き方をお伝えします。エピソード別の例文もご紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。

なお、自己PRの書き方については以下の関連記事で詳しく解説しているので、こちらもチェックしてみてください。

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「学生時代に力を入れたこと」とは?

「学生時代に力を入れたこと」とは?

「学生時代に力を入れたこと」は、新卒採用で履歴書・エントリーシート(ES)を作成するときや、面接などで聞かれる定番の質問です。通称「ガクチカ」とも呼ばれています。主に「学生時代に一生懸命取り組んだこと」や「印象に残っている出来事」などを書きます。理系学生は研究内容など学業について書くのが一般的ですが、部活動やサークル活動、アルバイトやインターンなどのエピソードでアピールすることも可能です。

企業が「学生時代に力を入れたこと」を聞く理由

企業が「学生時代に力を入れたこと」を聞く理由

企業側はどのような目的があって「学生時代に力を入れたこと」を質問するのでしょうか。面接官が就活生に求める情報をもとに、答え方のコツを確認してみましょう。

人柄を知りたいから

面接官は「学生時代に力を入れたこと」を通じて、応募者の趣味趣向、物事に対する考え方、向き合い方などの特徴を知ろうとしています。また、大学生活において友達や周囲の人との関わりの中でどのような役割を担っていたのかを確認する意図もあります。

自社との相性を見極めたいから

「学生時代に力を入れたこと」で課題に対するアプローチ方法を知ることで、面接官は自社の価値観・社風・業務内容とマッチしているか判断できます。特に日系企業では長期的な雇用が前提となるため、企業との相性が重要視されるケースが多いといえます。

伝える力を見たいから

「学生時代に力を入れたこと」の回答で物事をわかりやすく説得力をもって相手に伝えるには、論理的思考力・言語化能力・表現力などのスキルが必要です。これらの能力は仕事の進捗報告・会議・営業といったビジネスシーンでも不可欠なため、エピソードの伝え方も評価されています。

強みを知りたいから

「学生時代に力を入れたこと」で困難を乗り越えたエピソードや成功体験は、応募者本人の課題解決能力や行動力などの長所や強みを積極的にアピールする機会だといえるでしょう。面接官は「この学生を採用する意味は何か」「入社後はどんな力を発揮してくれるのか」といった判断をしています。

「学生時代に力を入れたこと」の作成方法

「学生時代に力を入れたこと」の作成方法

ここでは、基本的な「学生時代に力を入れたこと」の作成方法のステップをご紹介します。たとえ一生懸命に物事へ取り組んだのが事実だったとしても、アピール内容を適切に伝えられなければエピソードの魅力が半減してしまいます。下記の構成順に組み立てて文章を整理してみましょう。

結論何に取り組んだのか?
動機なぜそれに取り組んだのか?
目標・課題どのような目標を掲げたのか?どのような課題があったのか?
対策どのように目標を達成したのか?
結果その結果どうなったのか?
学び経験から何を学び、社会でどのように活かそうと考えているか?

①【結論】簡潔にまとめる

最初に、結論を簡潔に述べましょう。これから何について話すのかを冒頭で説明して相手に理解してもらうことで、後述する内容が伝わりやすくなります。

②【動機】モチベーションの源泉を掘り下げる

続いて、なぜ力を入れたかの動機を述べます。その際は、自分が何に対して熱意を持っているのか、モチベーションの源泉やきっかけを深堀して明確にしましょう。一般的に、幼少期の経験や価値観に根差した能動的な動機が求められ、他人の勧めなどによる受動的な動機はあまり歓迎されません。

③【目標・課題】特別なものである必要はない

目標や課題は、特別なものでなくても構いません。企業の採用担当者は、目標や課題の内容そのものよりも、次に述べる「課題に対して取った対策」の方を重視する傾向にあります。そのため、わかりやすくシンプルにまとめると良いでしょう。

④【対策】課題解決のために取った対策を具体的に伝える

課題解決へ向けて自分自身が取った行動や、努力の方法などの経緯を書きましょう。この部分は、応募者の仕事に対する取り組み方が見える箇所のため、重要な評価ポイントになりやすいといえます。他の就活生との差別化にもなるので、より具体的に書くことが大切です。

⑤【結果】「数字」「比較」「他人からの言葉」を使う

結果の部分には、可能であれば具体的な数字を使います。例えば「前月に比べて売上が増えた」ではなく、「前月に比べて売上が20万円増えた」と詳細な実績を書きましょう。このほかに「施策前は〜だったが、施策後は〜となった」と前後を比較するのも効果的です。また、「お客様から今までで一番の接客だと褒めていただいた」のように他人からの言葉を使っても良いでしょう。

⑥【学び】「仕事に通じる気づき」にする

最後に、経験から学んだことをまとめます。ここで重要なのは、仕事につながる気づきや学びを盛り込むことです。例えば「チームワークの重要性」「計画性のある戦略」といった例が挙げられます。今後の仕事に活かせるかどうかを基準に判断しましょう。

「学生時代に力を入れたこと」を作成する際の注意点

「学生時代に力を入れたこと」を作成する際の注意点

「学生時代に力を入れたこと」を作成する際は、以下のポイントに注意しておきましょう。書類選考や面接対策で知っておきたい注意点をお伝えします。

企業が求める人物像を把握する

企業の求める人物像を意識して書くことが評価アップにつながります。企業理念や企業の方針を十分に理解していない段階で、求める人物像と関連性の低い経験をアピールしても、好印象を与えるのは難しいといえます。「学生時代に力を入れたこと」を考える前に、まずは念入りに企業研究を行いましょう。

エピソードを1つに絞って書く

話の内容が相手に伝わりやすい構成にするためにも、「学生時代に力を入れたこと」のエピソードは1つに絞り込みましょう。複数のエピソードを盛り込むと話の要点がわかりづらくなるおそれがあります。1つのエピソードを深く掘り下げることで、より印象に残りやすくなります。

嘘のエピソードや過度な誇張は避ける

嘘のエピソードや過度な誇張は、採用担当者から見破られて却って評価が低下するリスクがあるため避けておきましょう。話の内容が矛盾していたり、話し方に違和感があったりして、嘘と見抜かれるケースが多いです。あくまでも自分自身のエピソードを盛り込むようにしましょう。

ギャンブルや犯罪を連想させる内容は避ける

「学生時代に力を入れたこと」として趣味の話題を挙げる際は、最終的に企業の業務に結びつく内容にまとめることが大切です。その際、ギャンブルや犯罪を連想させる趣味趣向など、社会的に印象の良くないNGな内容は避けておきましょう。

「学生時代に力を入れたこと」の例文

「学生時代に力を入れたこと」の例文

ここでは、理系の就活生が「学生時代に力を入れたこと」のエピソード別の例文をご紹介します。先ほど解説した①~⑥の作成方法に当てはめながら考えてみましょう。

研究に力を入れたときの例文

私が学生時代に力を入れたことは、研究室での色素増感太陽電池の研究です。この研究室を選んだ理由は、高校生の頃に再生可能エネルギーについての小論文を書いて、ハイブリッド材料に興味を持っていたからです。色素増感太陽電池は、色素の性質を使って従来の太陽電池よりも低コストで発電できる技術です。もし実用化が進めば、低炭素社会の実現に貢献すると期待されています。
私の研究テーマでは、食品廃棄物から取り出した色素で、環境に配慮した方法で発電することを目標にしていました。しかし、最初に研究した△△の素材では思うような成果を出せませんでした。私はそれでも諦めずに、□□や◇◇などの素材でも再挑戦しました。結果として実用に至る成果は得られませんでしたが、指導教官から「諦めずに挑戦したことで××××という事実を明らかにできた」と評価していただきました。
2年間の研究を通じて、私は困難な状況でも諦めずに取り組み続ける継続力を身につけました。企業で研究職として働く上で、継続力は不可欠な能力の一つだと考えています。大学時代に身につけた力を活かして、低炭素社会の実現に寄与する御社の事業に研究職として長期的に貢献したいです。

①結論:色素増感太陽電池の研究に力を入れた
②動機:ハイブリッド材料に興味があったから
③目標・課題:食品廃棄物を発電に使うのが目標
④対策:一度失敗しても、別の素材に再挑戦した
⑤結果:成果は出せなかったが、新たな事実を明らかにできた
⑥学び:諦めずに取り組む継続力が身についた

部活やサークルに力を入れたときの例文

私が学生時代に力を入れたことは、学生フォーミュラでの活動です。幼い頃から車が好きで、「車づくりに関わる仕事に就きたい」という強い思いがあり、車づくりを設計から製作まで一貫して行える学生フォーミュラに1年次から参加しました。
初めての車づくりでは、CADのデータ通りに製作しても不具合が生じたり、原因がわからなかったりすることもありました。さらには、部員数が少なく一人で何役も兼務する必要があり、部員間のコミュニケーションも課題でした。そこで私が行ったことは2つあります。

(1)教員やOBに相談したり、自動車メーカーが開催する講座に参加したりして解決策を見つける
(2)部員間で進捗状況や変更点を共有しミスを防ぐ

結果として、関わってくださった方々の思いが詰まった車を完成させることができました。全日本学生フォーミュラ大会では目標としていた総合15位には惜しくも届きませんでしたが、動的審査の1項目では6位に入り、昨年から100点以上点数を上げ、成長を感じる結果となりました。
私はこの経験から、目標に向かって周りを巻き込みながら、達成に向けて計画的に取り組む力を得ることができました。御社でも良い製品づくりのために学んだことを活かし、世の中に貢献したいと考えています。

①結論:学生フォーミュラでの活動に力を入れた
②動機:「車づくりに関わる仕事に就きたい」と思ったから
③目標・課題:製作における不具合や部員間でのコミュニケーション
④対策:課題解決のために(1)(2)の対策を実践した
⑤結果:1項目では6位に入り、昨年から100点以上点数を上げた
⑥学び:目標に向かって周りを巻き込み、達成に向けて計画的に取り組む力を得た

アルバイトに力を入れたときの例文

私が学生時代に力を入れたことは、研究発表会の運営スタッフのアルバイトです。趣味の音楽活動を通じて身につけた音響機材の知識を活かして、所属する研究室に貢献したいと考えて、2年次から運営スタッフに立候補しました。
初めて運営スタッフとして携わった研究発表会では、事前に準備していたにもかかわらず機材トラブルが発生し、進行が滞り多くの方に迷惑をかけてしまいました。その後はこの反省を活かして、想定外のアクシデントに備えて事前準備を徹底しています。例えば、「予備の機器をすぐに使える状態にして待機する」「異変に気づいたら速やかにスタッフ同士で報告し合うルールを作る」といった工夫をしました。
運営スタッフは現在も続けており、今では後輩に指示を出すリーダーの立場になり、研究発表会を円滑に運営できるようになりました。私はこれまでのアルバイト経験から、大事なイベントを成功させるための準備の大切さや、臨機応変に対応することの重要性を学びました。御社の社員としてお客様にプレゼンテーションをする場面でも、学生時代の経験を活かして成功させたいと考えています。

①結論:研究発表会の運営スタッフのアルバイトに力を入れた
②動機:「音響機材の知識を活かして研究室に貢献したい」と思ったから
③目標・課題:機材トラブルなど想定外のアクシデントが発生
④対策:アクシデントを想定して事前準備を行った
⑤結果:円滑な運営ができるようになり、後輩のサポートまで任された
⑥学び:入念に準備し、臨機応変に対応する重要性を学んだ

ボランティアに力を入れたときの例文

私が学生時代に力を入れたことはボランティア活動です。「次世代を担う子どもたちに科学の楽しさを伝えたい」という思いから、ホームスクーラーの子どもたちに実験を教える活動に参加し、1~3年次に月1回のペースで講師を務めました。
ボランティア活動で苦労したのは、限られた時間内で全員へ平等に教えるのが難しかったことです。子どもによって作業の進捗に大きな差があり、初めのうちは思うように指導できず悩みました。そこで、作業が早い子たちには適度に声がけしながら進めてもらい、作業が遅れている子たちにできるだけ寄り添えるよう、時間配分に工夫しました。その結果、初めは時間内に実験を終えられなかった子が、ほかの子たちと一緒に片づけまでできるようになりました。
私はこの経験から、目の前にやるべきことが多数あるとき、優先順位をつけて取り組む大切さを学びました。社会人になってからも、限られたリソースで最大限の成果を出せる方法を常に考え、御社に貢献したいと考えています。

①結論:ホームスクーラーの子どもたちに実験を教えるボランティアに参加した
②動機:「次世代を担う子どもたちに科学の楽しさを伝えたい」と思ったから
③目標・課題:限られた時間内で全員を平等に指導するのが難しい
④対策:時間配分に工夫して、作業が遅れている子に寄り添った
⑤結果:全員が時間内に実験を終えられるようになった
⑥学び:やるべきことが多くあるとき、優先順位をつけて取り組む大切さを学んだ

趣味に力を入れたときの例文

私が学生時代に力を入れたことは、趣味の電子工作でコンテストに参加したことです。電子工作は中学生の頃からずっと続けています。「周りの人を驚かせる楽しい作品を作りたい」と思い、大学時代からはコンテストに参加するようになりました。
それまで電子工作の技術には自信を持っていましたが、コンテストの参加者はレベルが高く、最初のうちは一次選考も通過できませんでした。そこで、「アイデアは良かったがデザインのインパクトが弱かったのではないか?」のように落選した理由の仮説を立てて改善し、何度もコンテストに挑戦しました。その結果、3回目のコンテストから一次選考を通過するようになり、7回目の参加となる20XX年の〇〇コンテストで学生賞に選ばれました。
私はこの経験から、改善を続けながら粘り強く挑戦する重要性を学びました。御社の社員として製品開発に携わる際も、コンテストを通じて学んだことを活かし、世の中の人を驚かせる新商品を作って社会に貢献したいです。

①結論:趣味の電子工作でコンテストに参加した
②動機:「周りの人を驚かせる楽しい作品を作りたい」と思ったから
③目標・課題:参加者のレベルが高く入選が難しい
④対策:過去の受賞作から学び、何度もコンテストに参加した
⑤結果:3回目のコンテストから一次選考を通過、7回目で学生賞に選ばれた
⑥学び:改善を続けながら粘り強く挑戦する重要性を学んだ

「学生時代に力を入れたこと」が思いつかないときの対処法

「学生時代に力を入れたこと」が思いつかないときの対処法

もしも「学生時代に力を入れたこと」が思いつかなかったら、以下の対処法を試してみてはいかがでしょうか。最後に、エピソードの切り口や題材に困っている就活生へのアドバイスをお伝えします。

自己分析で過去の成功や失敗を振り返る

たとえ具体的な成果に結びついていなくても、課題や困難を乗り越えた体験があれば、その過程であるエピソード自体がアピール材料になります。その際は、課題や困難に対する取り組み方や、向き合う姿勢を強調することで、失敗体験のプロセスが高評価につながるでしょう。

他己分析を活用する

身近にいる家族や友人にあなた自身のことを質問する「他己分析」を行うのもおすすめです。「あなた自身の印象的なエピソードがないか」「あなたの人間性・性格についてどのようなイメージを持っているか」などの質問をしてみましょう。一人では気づけなかった経験を客観的な視点から浮き彫りにできる可能性があります。

企業の求める人物像から考える

志望企業の求める人物像をリサーチした上で自分自身の経験を振り返り、入社後の活躍につながるイメージのエピソードを探してみましょう。例えば、チームワークが重視される企業の場合は、研究室やサークルのメンバーと連携してチームで課題を解決したエピソードを探します。

就活の基本「学生時代に力を入れたこと」の書き方をマスターしよう!

ここまで、理系学生の就職活動で書類選考や面接を突破するために必要な「学生時代に力を入れたこと」の書き方を解説しました。文章構成のパターンを意識すると、魅力的なガクチカを簡単に書きやすくなります。アピールできる経験がないと感じたら、エピソードの見つけ方も参考にしてみてください。企業の求める人物像に合わせて、学生時代のさまざまな経験を振り返ってみましょう。

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