こんにちは。理系就活情報局です。
ところで、あなたはAI(人工知能)のことを、どれぐらい知っていますか?
「専攻分野はコンピュータ、情報とは違うから」という人でも、システムエンジニアリングと全く無縁ではないはずです。それは新素材の開発でも、建築・土木の構造計算でも、機器の設計でも、生産ラインの制御でも、データの統計処理でも、重要なツールになるからです。必要なドキュメントの作成や検索、海外の文献の翻訳やマニュアルの作成、コミュニケーションの道具として、それを使っている場合もあるでしょう。
それらに、ほとんど例外なく、AIは関わってきます。知らないではすまされません。
そのAIの世界に今年、突然のように現れたニューフェースが「生成AI」の「Chat GPT」です。「これは本物だ」「これで世の中は変わる」と騒がれて、メディアには「Chat GPT」の言葉があふれ、独り歩きしています。
でも、就活に臨むあなたは冷静になって、「Chat GPT」は何物なのかを現時点で可能な限り、正確に把握する必要があります。それは社会人になってからあなたが関わることになるテクノロジーの各分野をどう変えるのか、あるいは変えないのか、見極める必要もあるでしょう。
「生成AI」「Chat GPT」について簡単に説明した後、その将来性について、その活用に踏み出した具体例について、ご紹介していきます。

「Chat GPT」とは

「Chat GPT」とは

AI(人工知能)の開発史

2022年11月30日、アメリカのIT企業「OpenAI(オープンAI)」が「Chat GPT(チャットGPT)」の開発に成功したと発表して、いま大きな話題になっています

Chat GPTはAI(Artificial Intelligence=人工知能)の一種です。AIの中でも「生成AI」に属する「対話型AI」と呼ばれる汎用タイプで、人間が発する問いかけを理解し、それに対してネット経由であらゆる情報を検索、処理し、回答を出します。まるでAIと会話(チャット)するように使えるので「チャットボット」と言います。

ではそもそも、AIはどんな経過をたどってChat GPTに行き着いたのでしょうか?

AIという言葉自体は1956年、アメリカ・ダートマス大学のジョン・マッカーシー教授が「人間のように考える機械」を「人工知能」と名付けたことに始まりますが、1966年にマサチューセッツ工科大学のジョセフ・ワイゼンバウム教授が開発した自然言語処理プログラム「イライザ」が、最初のAIだとされています。

しかし、産業界で実用段階に達したのは1980年代の「エキスパートシステム」の登場からでした。それでも当時は人間が手動で膨大な知識をコンピュータに記述して教えてやる必要があり、また、例外処理ができないなど融通もきかなかったので、特殊な用途を除けばブームは下火になっていきました。

AIが再び脚光を浴びるのは、21世紀に入って「ビッグデータ」と呼ばれる膨大なデータからAI自ら知識を得る「機械学習」が実用化されたことと、2006年に複雑な問題を処理可能な「ディープラーニング(深層学習)」が出現したことがきっかけでした。この機械学習、深層学習の技術が「強化学習」という技術になり、それが生成AI、Chat GPTへと直接、つながっていきます。

「生成AI」とはどんなAIか

では、Chat GPTが属する「生成AI」とは、どんなAIなのでしょうか?

「生成AI」は英語の「Generative AI(ジェネレーティブAI)」からきている言葉で、「コンテンツを『生成』できるAI」という意味です。

これまで、コンテンツを生み出すのは、人間だと思われてきました。

コンテンツにはソフトウェアだけでなく、新聞記事、学術論文、小説や詩、作曲、学校の授業から単に知的な会話を楽しむことまで、幅広く含まれます。

それらの創作物は「人間にしか創り出せない」と思われてきましたが、それをAIでも創り出せるようにしたのが、生成AIなのです。

ということは、生成AIの実用化が進むと、システムエンジニアも、新聞記者も、学術研究者も、小説家も、詩人も、作曲家も、学校の先生も、AIにとって代わられて仕事を奪われる可能性がある、ということになります。

頭を使って仕事をし、高い収入を得てきたその道のプロが失業するかもしれない。だからこそ「破壊的技術」などと呼ばれて今、大騒ぎになっているのです。

「Chat GPT」の登場と相次ぐニュース

生成AIには、Chat AIのような「対話型AI(チャットボット)」も含まれます。人工知能技術を利用して作成される対話型アプリケーションで、テキストによる会話で人間とコミュニケーションをとることが、その開発目的でした。

たとえば検索エンジンに検索ワードを入力し、検索結果のウェブサイトにアクセスして取捨選択して読むという作業をしなくても、AIが自然な言葉で回答を「手軽に」「早く」「簡単に」出してくれるので、必要な情報を得るためのタイパ(タイム・パフォーマンス)に優れ、コスパ(コスト・パフォーマンス)に優れています。時間の節約がコストの節約につながる「時は金なり」な業務であれば、導入効果は目に見えてわかるでしょう。

Chat GPTを開発した「オープンAI」は、電気自動車(EV)メーカーのテスラの創業者で、2022年10月に短文SNSのツイッターを買収して話題になったイーロン・マスク氏が2015年にアメリカに設立した非営利の研究団体です。

開発成功のニュースを聞いて、その能力を確かめたオープンAI出資者のマイクロソフトは、自社の検索エンジン「Bing」への搭載(「Bing Chat」)を即決し、オープンAIに100億ドル(約1.4兆円)という巨額の追加出資を行っています。

一方、「Bing」のライバルの検索エンジン「Chrome(クローム)」で約9割の世界シェアを占め、莫大な広告収入を得ている「勝ち組」グーグル(Google)は、CEOのサンダー・ピチャイ氏が即座に社内に向けてビジネスモデルが重大な危機に直面しているという「Code Red(緊急警報)」を発令したといいますから、巨大IT企業「GAFAM」の一角があわてふためくほどの衝撃が走りました。

グーグルは取り急ぎ、開発中だった対話型AI「Bard(バード)」を「Chrome」に搭載すると発表し、2月8日に世界の報道機関を集めてパリで発表会を開きますが、会場で「Bard」が珍回答を繰り返すミスを犯し、グーグルを傘下にもつアルファベットの株価が急落するという笑い話を提供。世界はChat GPTのすごさを再認識する結果になりました。

そんな騒ぎの中、Chat GPTは1週間で100万人以上が会話を試み、2カ月でユーザーが1億人を突破しました。これはネット史上最速のペースです。

「Chat GPT」はなぜブレイクしているのか?

産業革命の時代、機械が人間の手の代わりを務めるようになると、多くの職人が職を失いました。たとえばシャツや下着を工場の機械が生産すると、手織りの職人が淘汰されました。

20世紀、自動車工場の生産ラインに産業用ロボットが導入されると、流れ作業の単純労働の作業員が工場から減っていきました。

そして今、生成AI、Chat GPTの出現によって「人間にしかできないと思われていた仕事がAIに奪われる」と、現実味を帯びて語られるようになっています。

今まで、難しい資格を取り、知恵を絞り、頭を使って仕事をして高収入を得ていたその道のプロ、専門職が、あっさり失業するかもしれないと、大騒ぎになっています。

たとえば企業が「こんなことは法律に触れますか?」と顧問弁護士に相談していたのが、代わりにChat GPTに相談して法的に適切な回答が得られるようになったら、顧問弁護士の数は減らされるかもしれません。

実際はChat GPTが出した回答をベテラン弁護士が「監修」して責任者のハンコを押す仕事は残るかもしれませんが、実際に法律相談の回答を作成していた若い弁護士は仕事を失います。

それと似たようなことがホワイトカラーの仕事でたくさん起きる可能性があります。若手社員が残業までしてやっていた開発ワークがAIに奪われて減り、その結果、「若手はもういらない」と、就職難を招く恐れもあります。

企業社会の中間部分がAIに置き換わることで、トップマネジメント層と単純労働層の「二極化」を招く可能性も指摘されています。たとえて言えば、王将と金将と銀将と歩兵だけで対局する将棋のようなものです。

Chat GPTがブレイクしている理由には、そんな危機感も相当な部分を占めています。決して「人類にバラ色の未来をもたらすテクノロジー」と思われているわけではありません。

「シンギュラリティ」に近づくのか?

21世紀になってAIのテクノロジーは「機械学習」が実用化され、「ディープラーニング(深層学習)」が出現し、その過程で「シンギュラリティ」という言葉がクローズアップされました。それはAIの能力が人間の頭脳を超える時点のことで、AI研究の権威レイ・カーツワイル博士は「2029年、AIは人間並みの知能を備え、2045年に技術的特異点(シンギュラリティ)が来る」と述べたため、「2045年問題」と呼ばれています。

はたしてChat GPTのような生成AIはシンギュラリティの到来を早めるのでしょうか? その時が来たら、人間の仕事は、生活は、経済は、社会は、どうなるのでしょうか?

その答えは、まだわかりません。

「生成AI」「Chat GPT」がひらく未来

「生成AI」「Chat GPT」がひらく未来

生成AIの成長性予測

生成AI、Chat GPTは、人類に「明るい未来」も「悲観的なシナリオ」も、ともにもたらすことがありうる、と考えられています。

明るい未来とは、広い意味でビジネスで活用されて利益を生み出し、人間に金銭的な恩恵をもたらす可能性です。それについて具体的な数字を挙げて「将来の市場規模予測」という形で発表されたものをご紹介します。

2023年6月、投資情報メディアを運営するブルームバークが設立したシンクタンク「Bloomberg Inteligence(ブルームバーグ・インテリジェンス)」のシニア・テクノロジー・アナリストのマンディブ・シン氏が、生成AIの世界市場規模予測を発表しました。

それによると、2022年に約400億米ドル(約5兆6000億円)だった生成AI市場は、2032年には約1兆3000億米ドル(約182兆円)に達し、10年で32.5倍に拡大すると予測されています。年平均42%(CAGR)というハイペースで成長していくことになります。

予測される2032年のAI市場の内訳はハードウェアが6410億ドル、デジタル広告が1920億ドル、AIアシスタントソフトウェアが890億ドルで、特にソフトウェアは年平均69%のペースで成長するとみられています。

このレポートでは10年間の爆発的なAIブームの恩恵を受けて勝者になる企業として、Chat GPTを開発したオープンAIに出資を行ったマイクロソフト、それに対抗する生成AI「Bard」を開発したグーグルの親会社アルファベット、エヌビディア、アマゾン・ドット・コムのクラウド部門を挙げています。

2023年1月、Chat GPTやBardのようなチャットボットだけに絞って予測を出したのが日本のグローバルインフォメーションで、その世界市場規模は2022年の42億8000万米ドル(5992億円)から、2028年には137億7000万米ドル(1兆9278億円)へ、6年で3.2倍になると予測しています。年平均で21.5%(CAGR)という成長率になります。

生成AIで大きく変化すると予想される世界

ビジネスでの成長性が期待される一方で、「悲観的なシナリオ」とまではいきませんが、「AIが著作を簡単にマネできてしまったら、著作権はどうなる」「学生が課題レポートを生成AIに作らせたら、単位の認定はどうなる」など、生成AIについてさまざまなことが問題視されています。

学生の皆さんならわかると思いますが、卒業論文が、調べ物をして自分の頭で考えて書いたものなのか、生成AIに任せきりにして、寝ている間に自動的に書かせて提出したものなのか、教授が提出物だけを読んで判断するのは難しいでしょう。

実際、アメリカの名門スタンフォード大学では、期末試験の論文作成にChat GPTを使う学生が続出して問題になっています。

教授は、途中で何回も学生と面接して質疑応答する機会を設けて、卒業論文を単位認定するかどうかを判断する必要があるかもしれません。

そこでボロを出さずに無事に大学を卒業して会社員になったとしても、会議での提案、レポートの提出、プロジェクトの起案など、何でもかんでも生成AIにやらせて自分の頭で考えない社員ばかりになったら、会社は創造力を失い、やがて競争に負けてつぶれてしまいます。

「Chat GPTは人間を、学校を、会社を、社会をダメにする」と危機感が叫ばれているのは、そんな背景があるからです。

人間が移動をクルマに頼り切って歩かなくなると足腰が弱っていくように、人間が知恵を絞って考えていたことをChat GPTのようなAIに頼り切ったら、創造力の源の「頭脳」が弱まって、やがて人類に危機が訪れる、というわけです。

つまり、AIの能力が向上するだけでなく、人間の「考える」能力が低下することによっても、両者がクロスするシンギュラリティはより近づく、という見方です。

AI開発の当事者でも脅威を感じている人は少なくないようで、たとえばChat GPTを開発したオープンAIは、サム・アルトマンCEO自らが公開書簡の中で「AIは適切に規制されなければ人類に絶滅のリスクをもたらす」と述べています。

エンジニアにとっての「生成AI」「Chat GPT」

エンジニアにとっての「生成AI」「Chat GPT」

支援「ツール」としての活用

では、研究開発業務に関わるエンジニアの視点で、Chat GPTのような生成AIの存在をどうとらえて、日々の仕事にどう活用していけばいいのでしょうか?

重要なのは、それはあくまでも「支援ツール」「アシスタント」であり、人間が優位に立ってそれを使いこなす、ということです。たとえシンギュラリティが訪れて、AIの能力が人間の知能を追い越した後であっても、です。

生成AIをまるで「全知全能の神」のように思って、その回答を「絶対に正しい」と無批判に受け入れることがないようにしないといけません。それをしたら大きな間違いのもとになります。もし「Chat GPTがこう言っているから」と言って自説を正当化する人間が現れたら、疑ってかかるべきでしょう。

そもそも、飛ぶ鳥を落とす勢いの生成AI、Chat GPTも「無敵」ではありません。弱点もまだ残っています。

一つは、英語圏で開発されたので、「人間の会話のような自然な言葉で返事をする」と言っても日本語ではまだ多少の違和感が残っていることです。ですから言語感覚が鋭い人なら「ん? 日本語がちょっと変だな」と気づくかもしれません。

もう一つは「情報のアップデートに限界がある」ということです。ネット経由でビッグデータにアクセスして情報を拾ってくると言ってもタイムラグはやはりあり、昨日、今日のニュースに出ていたホットな情報を漏らしてしまう可能性はあります。

情報の正確性が保証できない、という問題も指摘されています。たとえば何者かがSNSなどで虚偽の情報を大量に流し、それをChat GPTが拾ってしまうことも考えられます。

しかし、そんな弱点もいずれ、解決されて、克服されていくことでしょう。

味方につけて仕事を助けてもらうけれど、われわれ人間がそれに支配されるつもりはない、という気持ちでいることが大切だと言えます。

大手企業のビジネスでの活用例

大手企業のビジネスでの活用例

自動車産業 トヨタ自動車「Chat GPT搭載車」開発構想

自動車業界の最重要の技術開発テーマに「自動運転」があります。その最終形態ではドライバーは何もしなくても目的地まで自動的に走ってくれますが、当たり前ですが最初に「東京駅まで」というように目的地を設定しないと、自動車は動いてくれません。

設定されれば東京駅まで最短時間(あるいは燃費最少)で到着するルートを、自動車に搭載されたAIが情報を収集して判断して割り出し、その通りに走ります。

そこに、「生成AI」「Chat GPT」が活躍できるステージが用意されています。

自動運転車の最終形態では、目的地の指示や変更は、スマホアプリなどで目的地をテキスト入力する形も一部では残るものの、タクシーに乗る時のように「音声」が主流になるとみられています。それも人間の指示通りに動くだけでなく、たとえば「皇居の南側を回ったほうがすいてますよ」というように推薦ルートの提案までする「対話型」になるといわれています。

そうであれば、道路の混雑情報を収集して「ルートの最適化」判断に加える生成AIや、人間が話すように答えられるChat GPTは、まさに自動運転車向きだと言えます。

トヨタ自動車は「プリウス」や「カローラ」のような人気車種の一部に「コネクティッドナビ」という機能を搭載しています。ドライバーが音声でカーナビなどを操作するのですが、これが将来、自動運転車と「対話」できる機能に進化するとみられています。

2023年3月22日、アメリカの技術雑誌「The Information」は、トヨタが数年のうちに「コネクティッドナビ」の音声認識システムを現在のアマゾンのAlexaからChat GPTへ段階的に移行させ、統合することを検討していると報じました。手始めに「プリウス」と「カローラ」で、5年前から使われているアマゾンのAlexaのサポートを打ち切ったそうです。

ドイツのメルセデス・ベンツは2023年6月15日、マイクロソフトの協力を得て生産車にChat GPTを搭載すると発表しました。手始めにアメリカで90万台、試験的に実装して必要なデータを得た上で、全車種搭載を目指すそうです。

オープンAIを設立したイーロン・マスク氏の「テスラ」に先駆けて、トヨタとメルセデスという世界のビッグビジネスが将来の自動運転車のインフラ候補として採用したということは、Chat GPTがいかに信頼されているかを物語っています。

IT産業 パナソニックHD 社員が利用するAI「PX-GPT」

日本のIT企業、パナソニックHDは2023年4月14日、関連会社のパナソニックコネクトで2月から試験的に導入していた生成AIを全社規模に拡大し、AIアシスタントサービス「PX-GPT」としてパナソニックグループ国内全社員約9万人が社内イントラネット上からアクセス、利用できるようにしました。

マイクロソフトが提供する「Azure OpenAI Service」を活用した社内DXで、AIのアシストを受けて業務の効率化を図ります。

技術職だけでなく製造、営業などさまざまな部門で、社員の生産性向上と業務プロセスの進化を実現することがその目的です。また、最先端のAIテクノロジーに日々自由に触れられる環境を提供することで、全社員にAIの活用法を学習させて、それを利活用できる人材を育成することも狙っています。

金融業界 三井住友FG 書類作成業務への試験的導入

日本のメガバンク、三井住友FGは2023年4月11日、日本総合研究所、日本電気(NEC)とともに生成AI「SMBC-GPT」の本格導入に向けた実証実験を開始しました。マイクロソフトが提供する「Azure OpenAI Service」を活用したAIアシスタントツールで、主に書類作成業務に利用するとしています。

これは文章の意図を解釈して自然な言葉の文章を生成するテクノロジーで、大量の文章データを学習して高度な文章処理を行うことができるといいます。

従来のチャットボットよりも高度で自然な文章を生成することが可能で、質問すれば文章の作成、要約、翻訳、ソースコードの生成などをチャット形式で手軽に行うことができ、情報収集にかかる時間が減り、生産性の向上が期待できるといいます。

ただし、信頼性の担保が重要な金融機関なのでAIに任せきりにはせず、回答内容の正確性は必ず社員が判断し、社外からの利用は禁止しています。

それでも金融関係ではChat GPTの「自然な会話ができる」点への評価が高く、損害保険ジャパンのようにコールセンターの顧客対応での活用を検討しているところがあります。今後は適材適所での利用が進むことでしょう。

まとめ AIは「仲間」? それとも「敵」?

AIが登場した頃の未来予測を検証

AI(人工知能)は1956年にその概念が生まれ、1966年に最初の自然言語処理プログラムが誕生し、1980年代の「エキスパートシステム」で産業用途が大きくひろがりましたが、そのコンセプトは「人間のように考える機械」で、「人工頭脳」つまり「脳の代わり」でした。

そのため、AIは人間が一から物を教えないと使い物にならないとされていました。放っておいたら、まるでオオカミに育てられた野生児のように言葉は話せず、知性、知識は身につかないと思われてきました。

AIとは、人間が言葉を教えて知性、知識をつけさせるもので、どんなに技術が進化しても「物知りで賢い召使い」のような存在にとどまる、というのが当時の未来予測でした。

「もし脅威だと感じたら、コンセントを抜けばいい」と言われたりもしました。

しかし、今は違います。情報通信の発達で、AIはネットからいくらでも情報を拾ってくることができます。人間以上に物知りで、情報を的確に処理して人間以上に正確に仕事をこなし、シンギュラリティに到達すれば人間よりも賢くなります。

「Chat GPT」がいま騒がれているのは、AIがネットを駆使して、人間がサポートしなくても仕事をし続けることができるという世界の入口に立っているからです。

それは「仲間」なのか?「敵」なのか?

人間がAIを「仲間」だと思っていても、それはいつ「敵」になるかわかりません。

あるいは、人間がAIを別の人間の敵にしてしまうこともありえます。経営者が「AIのほうがタイパ(タイム・パフォーマンス)がいい」「AIのほうがコスパ(コスト・パフォーマンス)がいい」「AIのほうが仕事ができる」「人間を雇うよりAIを使おう」と思って、社員をお払い箱にしてしまうようなケースです。

そうなれば、19世紀、産業革命の時代の英国で、労働者が自分たちの仕事を奪った工場の機械を打ち壊す「ラッダイト運動」が起きたように、クビになった従業員が恨みの矛先を経営者ではなくAIに向けることもありえるでしょう。

だからChat GPTの未来予測に「バラ色の未来」と「悪夢」が両方、存在するのです。

<第2回>いま注目の「Chat GPT」から考える業界・企業研究では、「成長企業編」として、成長企業の業務での活用例や、研究者・技術者にとってのメリットをお伝えします。