22卒学生の就職活動の傾向
コロナの影響
コロナ下での理系学生の就職活動への影響は、21卒に比べて22卒の学生の方が不安に感じている傾向が強いことが確認できました。Webを利用した面談など、新しい就活方法にメリットを感じている学生がいる一方で、実際に企業の担当者に会えないことへの不安や不満もあることが分かりました。
業界・職種選びについて
理系学生の93%が専門職種や素養を活かした就職を望んでおり、個別対応での声掛けや企業の丁寧な対応が満足度に繋がり、その結果入社意欲を高めていることが生の声から明らかになりました。特に密で濃く、相手を認めて高評価とするコミュニケーションや選考優遇は、学生の気持ちを盛り上げる要因となっています。
JOB型採用の希望者の変化
JOB型採用を希望する学生は21卒では96%と非常に高い数字となっていましたが、22卒では76%に減少しています。これはコロナの影響により、学生が弱気になっていることが原因であると考えられます。しかしながら、それでも76%がJOB型採用を希望していることから、企業側でもJOB型採用の導入について検討していく事になると思われます。
理工系学生アンケート回答者属性
今回のアンケートは2020年8月7日に行い、212名から回答がありました。内訳は学部12名、修士193名、博士7名となっています。
理工系では全体的に修士課程に進学する学生が多く、今回のアンケートでもその傾向が強いことが分かります。特に研究職を目指す学生にとっては、学部卒よりも修士課程を修めた方が有利であることも影響しているのではないかと考えられます。
就職活動におけるコロナの影響
本格的に就職活動をスタートする時期
22卒の理工系学生は、アンケートを行った2020年8月時点で70%近くがすでに就職活動を始めていることが分かりました。9月にスタートさせる学生が9%、12月スタートが7.1%と続き、90%近い学生が年内に就職活動を始める予定であると回答しています。
就職活動についての不安
就職活動についての不安を複数回答(最大3つ)で尋ねたところ、もっとも多かったのは「求人数が減少する可能性がある」で75%となっています。コロナの影響で景気が不安定になっていることを懸念している学生が多い事が分かります。また、「就職方法がWEB中心になっている」と答えた学生も41%おり、21卒同様に手探りで就職活動を行わなければならないことに不安を感じている学生も半数近くいることが分かりました。
就職活動における新型コロナの影響
就職活動における新型コロナの影響について複数回答(最大3つ)で尋ねたところ、「WEB中心となり雰囲気を感じにくくなる」が55%、「選考が厳しくなり落ちやすくなる」も45%と、マイナスの影響を感じる学生が多くなっていることが分かりました。
一方で、21卒同様に「旅費・交通費」「移動時間」の削減を歓迎する学生が56%、「普段より多くの企業の説明会に参加できそう」が33%と、地方在住の学生にとってはメリットが大きいと考えられます。
21卒の学生では「WEB面接が増えてやりやすかった」という回答が50%だったのに対し、22卒では「やりやすくなる」という回答が35%となっています。実際にWEB面接を行った21卒学生が肯定的にとらえていることから、就活初期の22卒学生がWEB面接のメリットを実感するのはこれからではないかと考えられます。
コロナの影響が1年続いたことから、22卒学生の間には「選考が厳しくなるのではないか?」という警戒感や不安が強くなっている傾向があることが分かりました。
コロナ下での面接・インターンシップに対する抵抗感
採用活動がWEB中心となっている中で、「訪問したい」との回答が47%と半数近くに上りました。「大都市圏以外であれば抵抗がない」を加えると7割近い学生が、一度は会社の雰囲気を確かめてみたいと希望していることが分かりました。就職活動の全てをWEBで終わらせるのではなく、段階によってWEBと訪問を分けていく事も必要ではないかと考えられます。なお、21卒学生からも会社訪問の際に交通費を支給してもらえて嬉しかったという声が多数寄せられていたことを付け加えておきます。
コロナの影響による学業・研究と就活の両立(予想)
コロナの影響という観点から、学業や研究と就職活動の両立はどうなりそうか予想を尋ねたところ、「両立しやすくなる」という意見が41%ある一方で、過半数の学生が学業・研究に影響が出る可能性があると回答しました。これは選考が厳しくなり、就職活動期間が長引く可能性があることを危惧しているものと考えられます。
志望業界の決定時期
志望業界の決定時期
志望業界は決まっているか、あるいはいつ頃決まりそうかを尋ねたところ、理工系修士進学者の多くが夏以降に志望業界を決定していることが分かりました。修士1年生の秋以降には大多数が志望業界を決定しています。
21卒と比較すると、22卒では志望業界を秋ごろ決定していると答えた学生が多くなっています。この結果から、夏のインターンなどへの参加する学生が減少していると考えられ、こういった部分でもコロナの影響がでている可能性があります。
仕事選びへの影響要素
仕事選び(業界・職種)に影響している要素
大学での所属・専攻に関する業界・職種を選んでいる学生が34%と最も多く、続いて先輩の就職業界・職種、大学時代の体験となっています。21卒学生と順位は同じですが、「大学での所属・専攻に関する業界・職種」と答えた学生の割合は21卒の27%だったのに対し、割合がかなり大きくなっています。
大学での所属・専攻に応じての業界、職種選びが首位
大学時代の体験、先輩の就職先(業界・職種)は2 位
親の意見
自身の就職活動や仕事選びに関して、親の意見の影響は「ない」「ほとんどない」と答えた学生が61%と最も多くなっています。一方、39%が何かしらの影響があると回答しています。また、「ある」「かなりある」という学生が15%近くいることが分かりました。
就職先へ求めること
就活初期の企業とのWEB交流内容
企業とのWEBを通しての交流内容について、就職初期に参加しやすく嬉しいものは何かを尋ねたところ、45%の学生が人事部担当者やリクルーターとの個別面談を求めていることが分かりました。座談会を含めると55%がじっくりと個別に話を聞きたいと考えており、密で濃いコミュニケーションを希望する学生が多い事が分かります。
就職先を決めるうえで重視する点
就職先を決めるうえで重視したい点を複数回答で尋ねたところ(最大3つ)、「給料・福利厚生」が一番多くなっています。「仕事のやりがい」、「勤務地」、「企業の知名度・安定度」と続いています。
21卒と比較すると、順番がかなり異なっていることが分かります。これは、就活初期段階では、給料・福利厚生、勤務地といった形式的なメリットに目が向きやすいものの、就職活動を続けていくと「やりがい」や「社員の雰囲気」などを重視するようになるようです。特に「社員の雰囲気」は重視する学生が大幅に増えることから、企業との接点の中で学生の関心が変わっていく事がうかがえます。これは就職初期のWEBでの交流でも個別に話をじっくり聞きたいという希望ともつながっていると推測されます。
あると嬉しいオンライン就活コンテンツ
複数回答(3つまで)で尋ねたところ、読み物よりも動画のほうが人気は高く、就活の成果に直接的な影響があるもののニーズが高いことが分かりました。
JOB型採用に対する意識
JOB型採用に対する意識
22卒(就活初期段階)でJOB型採用を希望する学生は78%となっています。「勤務地が決まっていて転勤がない採用」を希望する学生が多いのは、就職先を決める際に重視する点と同じ傾向だといえます。一方、従来通りの採用を選ぶ学生は21%となっています。
この結果を21卒と比較してみると、21卒(就活終了段階)では96%がJOB型採用を希望しているのに対し、22卒(就活初期段階)では76%と差が出ました。細かく見て行くと「配属先と職種が決定している採用」を希望する学生が51%から30%へと大きく減少しています。
全体としては希望する割合は高いものの、コロナの影響により、学生が新たな方式に対して弱気になっている可能性があると考えられます。
理工系22卒学生の就活実態
推薦制度の活用
理系特有ともいえる学校・学科推薦および教授推薦を積極的に活用したいと答えた学生は5%でした。自由応募との併用を希望する学生を含めると、半数以上が活用に前向きであることが分かりました。一方で活用しないと答えた学生も43%となっています。
21卒学生と比較すると、推薦と自由応募の併用比率が大きく増えています。これはコロナによる求人数の減少に対する警戒心の表れであり、推薦を保険的に利用したいと考える学生が増えた可能性があります。
推薦制度について
推薦制度についてどう思うかを複数回答(最大3つ)で尋ねたところ、メリットを感じる学生は3割でした。一方、使いにくさや不信を感じる学生が7割近くいることが分かりました。
21卒と比較すると、推薦制度をメリット感じる学生が22卒では増加しています。これは「推薦制度の活用」でも述べた通り、コロナの就職活動への影響を不安に感じている学生が増えた可能性があります。
就活スタイル
自分の専攻に関係する業界での就職先を希望すると答えた学生が90%と非常に高い結果となりました。中でも「専門就職(自身の研究などに関係がある就職先)が約半数と、素養就職(自身の学科、研究科など分野として関係ある業種業界での就職)よりも高くなっており、より自身の選考に近い部分での就職を希望している学生が高いことが分かりました。
面接方式
WEB面接とリアル面接はどちらが良いかという問いに対して、回答は拮抗する結果となりました。これは就活終了段階の21卒学生のアンケートと同じ結果となっており、選考段階で使い分けることも必要ではないかと考えられます。
厳選!理系就活生におすすめサイト
メジャーなナビサイトを始め、企業研究やエントリーシート作成・逆求人サイトまで様々な就活サービスがありますが、それぞれ特徴があります。目的に合わせて各媒体を使い分けるのがおすすめです。
TECH OFFER(テックオファー)
理工系学生に特化した逆求人サイトです。大手企業から中小企業まで、技術系の職種を中心にスカウティング(面談や早期選考案内の声掛け)が活発におこなわれており、オファー理由が明示されるので業界・企業研究、志望動機形成に役立ちます。
OfferBox(オファーボックス)
逆求人サイト最大手で、使いやすさや利用企業数・質ともに非常に優秀なサイトです。エントリー前に、スカウトが届いた企業とチャットを使って話すことができるのが大きなメリットですが、理系採用企業は一部に限られるので注意が必要です。
キミスカ
逆求人サイトとしてこちらも有名です。利用企業数はOfferBoxに劣りますが、企業からの本気度のわかりやすい3種類のスカウトと精度の高い適性検査が魅力のサイトです。無料の適性検査が受けられ、各能力の測定値が出るだけでなくそれぞれの項目に長文のコメントが付き、「よく当たっている」と精度の高さも評判です。ただし、こちらも理系採用企業は多くありません。
「キミスカ」
理系マイナビ
理系学生向けに作られたマイナビの理系版で、進路・就活ガイドブックをはじめ、理系の仕事研究など就活ノウハウがたくさん紹介されています。大きな特徴はスカウト機能があること。自己PRをもとに企業側からスカウトメールが送られてくることがあります。
「理系マイナビ」
理系ナビ
理系学生に特化したインターンシップ、就活情報サイトです。総合的なサイトにはない理系特有の就活情報をもとに、キャリアプランについて考えながら就活を進めることができます。キャリアスクールというイベントは、セミナーやグループワークを通して企業理解や職種理解を深めることができるので有用です。また、キャリア相談を利用することで、就活の方向性が定まっていないという方でもコンサルタントと一緒にキャリアプランを立てることが可能です。
「理系ナビ」
まとめ
1.コロナの理系学生の就職活動への影響は、21卒学生に比べると強くなっていることが分かりました。特に求人数の低下や選考が厳しくなるのではないかといった不安を抱え、そのことから学業や研究と就活の両立が難しくなるのではないかと感じる学生の割合も半数を超えていることがデータで明らかになりました。
2.理系就職特有の推薦制度については、利用を前向きにとらえる学生が大きく増えました。しかしながら、推薦制度そのものは使いにくさや不信を感じる学生が7割近くいることからも、コロナの影響を少しでも減らそうという保険的な選択であり、学生なりの自衛手段であることが推測できます。
3.理系学生においてはJOB型採用を希望する学生は、21卒が96%であったのに対し、22卒では76%へと減少しています。依然として希望する学生の割合は高いものの、コロナの影響により、学生が弱気になっている可能性があることがうかがえます。