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「当たり前」を守る、プラントエンジニアの使命と責任

大雨が降ると気になる、自分が設計したポンプ場
西日本の広範囲に被害をもたらした2018年の西日本豪雨。関東、甲信、東北地方の一級河川を含む71の河川で堤防が決壊した2019年の台風19号。「過去にない」災害が頻発する日本列島。昨日まで手の中にあった日常が、一瞬にして崩れ落ちる。そんな被害から少しでも多くの人を守るため、普段は決してスポットライトを浴びることのない舞台裏で奮闘する男たちがいる。

「雨水排水ポンプ場は、大型のものなら25mプールの水を数秒で空にできるような、ものすごい能力のポンプ場です。普段は目立たない存在ですが、大雨が降ると運転し河川の氾濫を防ぎます。ただ逆にいえば、いざというときに動かないと意味がない、ということです。大雨のニュースが流れると、僕たちポンプメーカーは、やっぱりどうしても気になってしまいますね」。

プラントエンジニアの竹﨑がとくに記憶に残っているのが、岐阜県多治見市にある雨水排水ポンプ場だ。多治見市では、2011年9月の台風15号で時間最大67mm、24時間降雨量465mmの豪雨が数時間にわたって降り続き、床上浸水439戸、床下浸水183戸という甚大な被害を記録した。一年間で降る雨の量の四分の一が24時間で降ったという。そこで、国、県、市、地域住民が協力して浸水被害軽減への取組みが進み、その一環として新規ポンプ場の建設が決まった。トリシマが、機械設備工事を受注したのは2016年9月。出水期(6月~10月)に間に合わせるため、ポンプ稼動試験は2018年5月に設定された。

*集中豪雨や台風など洪水が起きやすい時期。6月1日~10月31日。原則として、出水期には河川工事は行われない。
少しの油断も許されない緊張感の中で
竹﨑の仕事は多岐にわたる。まずは、ポンプ場を構成する主要機器の仕様決定と手配。主役のポンプはトリシマ製だが、そのポンプを動かすエンジン、減速機、吐出弁、フラップ弁、空気圧縮機、燃料貯蔵タンク、除塵機など、何一つ欠けてもポンプ場は完成しない。機場のシステム設計を行い、それぞれの専門メーカーから最適なものを集めて組み合わせ、全体の施工図を描いてゆく。管轄する役所や消防署をまわり、消防法や大気汚染防止法に準じた工事であることの申請書も提出しなければならない。いざ施工工事に入ると何度も現場に足を運び、トリシマの現場代理人と一緒に、最後まで細かい調整にあたった。

いよいよ完成間近、エンジンや減速機などそれぞれの機械が正常に作動するかを確認する単体試験が行われた。一つひとつの機械は問題ないが、全体の流れはスムーズにいくか。監理技術者として、機械設備全体に責任を持つのが竹﨑の仕事だ。

「本当にこれで大丈夫か。10年以上経験しても、お客様に引き渡す前の最終確認は、やっぱり一番緊張します。何度も他工事との取合いや自分の設計を見直しました」。

ポンプ場は、エンジンを始動すると急速に速度が上がっていき、クラッチがつながりポンプが稼働する。その流れをコントロールするのが制御盤で、非常に繊細なプログラムが組まれている。今回の想定では、定格回転数の80%まで一気に回転数を上げ、その後は自動運転に入るはずだった。

「ただ、細かい動きでトリシマと制御盤メーカーとのあいだで解釈の違いがあるんじゃないか、と。ふと気になったんです」。

竹﨑の高専時代の専攻は電子制御工学。実際、入社後数年間はトリシマでも制御盤の設計をしていた。得意分野だ。ただ引き渡し期日が迫る中、そんなに多くの時間は残されていない。
「人の役に立てる仕事」だと実感できる瞬間
「どうするのがベストか。いや、そもそも何のための仕事なのか」。その場その場の対応ではなく、つねに本質を考えることを是とする竹﨑の頭にふと、工事の途中、地元の人たちにかけられた言葉が浮かんだ。

「何ができるの? 雨水排水ポンプ場? わー。これで安心できるね。いつできるの?」

普段は忙しさに追われてあまり意識していないが、こんなとき、「人の役に立てる仕事」なのだと実感する。そうだ。トリシマの使命は、ポンプを通して社会に貢献すること。このポンプ場を待っている人がいる。今後数十年、有事の際に確実に動くようにしなければ。

すぐに電気整備業者と打合せをし、制御盤の起動条件と保護回路形成のタイミングについて、あるシミュレーションを提案した。すると、さすがは相手もプロのエンジニアだ。すぐに理解を示し、プログラムを書き換えてくれた。はたして―。試運転当日、エンジンはなめらかに自動運転に入り、ポンプが起動した。

こうしてついに、多治見市のポンプ場は完成。竣工式には、市長をはじめ多くの関係者が出席し、地元の小学生代表も初々しく謝辞を述べてくれた。その様子は地元のケーブルテレビで放映、「市の一大事業だった」という注目の高さがうかがえた。

普段は決して目立つことのない雨水排水ポンプ場。しかし、いざというときには本領を発揮して、人や街を、「当たり前」の毎日を、守る。

高専時代は青少年育成のボランティアに没頭していたという竹﨑は、物腰やわらかく、なるほど子どもたちに慕われそうだ。決して、自分の力を誇示したり、熱く語ったりするようなタイプでは、ない。だが、「中学からの友達が言うんです。俺の仕事はなくてもたいして世の中困らないけど、お前の仕事は絶対になくなったらだめだ、って」。そう言って少しくすぐったそうに笑う瞳には、自らの仕事への自負と使命感が確実に宿っている。
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株式会社酉島製作所