グローバルに展開する日本発の医療機器メーカー「テルモ」
テルモは日本発の医療機器メーカーで、2021年にコロナワクチン用注射器を開発して、コロナワクチンの供給に貢献し話題となりました。
この注射器の開発を主導した工場の技術部門が今求めているのはどのような人材なのか。企業の取り組みや入社後のキャリアなどを採用担当の武田氏、廣瀬氏、技術部門の五十嵐氏、柴氏にお話をうかがいました。
テルモ株式会社(以下、テルモ)は「医療を通じて社会に貢献する」という理念を掲げ、100年以上の歴史をもつ日本発の医療機器メーカーです。
テルモ公式採用サイト
世界160以上の国と地域で事業を展開し、28,000人以上のアソシエイトが革新的なソリューションを届けるために日々働いています。
体温計の国産化から始まり、設立以来、医療の基盤を支え続けてきました。現在は、カテーテル治療、心臓外科手術、薬剤投与、糖尿病管理、腹膜透析、輸血や細胞治療などに関する幅広い製品・サービスを提供しています。テルモは、患者さんや医療従事者をはじめ、広く社会にとって価値ある企業を目指します。
まずは事業内容についてお伺いできますでしょうか?
武田:弊社は1921年に一本の体温計から始まったメーカーですが、今では3つのカンパニー、8つの事業に展開しています。
家庭向けの体温計や血圧計から、病院内の様々な医療現場で使用される製品の開発、最近では製薬メーカーとの提携を積極的に行い、多角的に事業を展開している総合医療メーカーです。
今後の展開ですが、中長期のビジョンとして「デバイスからソリューションへ」というフレーズを掲げ、これまでの良い物を作って届けるというデバイス軸にプラスして、さまざまな医療現場の課題を解決するソリューションを提案する企業へと取り組み始めています。
今回フォーカスする技術開発職についてお伺いできますか?
武田:技術開発職では既存商品の改良や、新製品に関して研究開発・商品開発部門が作ったプロトタイプを量産化に持って行くための技術開発がメインです。
開発フローに関して幅広くカバーしており、部門としては以下の3つに分かれています。
- 製造技術:製品の品質や安定的な製造方法・コストを見据えた製造プロセスの設計
- 設備技術:生産設備の開発・設計・導入、生産システムの構築
- 金型・成形技術:医療機器等の金型設計、成形ラインの導入や成形技術開発
製造技術が世間一般でいう生産技術に近く、
より生産設備に特化した部門が設備技術で、金型や成形技術に特化した部門が金型・成形技術です。
職種ごとに応募フローが分かれる採用形式で専門性の高い人材を育成
御社の採用フローについてお伺いできますか?
武田:弊社では応募時のコースが4つに分かれており、モノづくりを担当する開発技術コースはそのうちの1つとなっています。その中で5つの職種(研究開発職、技術開発職、品質保証職、臨床・薬事職、知的財産職)と、更に10の部門に分かれています。
最近はジョブ型採用を弊社でも取り入れつつあり、応募段階から志望する部門を選んで、エントリー頂いています。
御社はグローバルに展開されておりますが、新卒の方がグローバルに活躍できる機会はありますか?
武田:人それぞれですが、海外拠点に赴任するケースもあれば、海外出張や国内拠点から海外拠点とやり取りする機会もあります。
技術開発職の方も、例えば2年目の方が海外出張を行うこともありますね。
御社で実施されているインターンシップについて特徴をお伺いできますか?
武田:最近ではさまざまな形式のインターンシップを行っており、機械系や電気系などの専門分野別や、職種別のインターンシップを行っています。
他にも製品のアイデア段階から量産まで一連の流れを学ぶインターンシップなども実施しています。
学生が弊社に対する理解を深められるよう、多角的な視点からインターンシップを企画しているのが特徴です。
専門分野・職種別のインターンシップは、1日で全職種を学べるので、進みたい分野が決まっておらず開発技術コース全体のことを知りたいという学生さんも参加できる内容です。
御社ではどのような学生を求め、どのような方が活躍されていますか?
武田:「挑戦」「主体性」「柔軟な発想」の3要素を備えている社員が弊社で活躍しています。
「自分の仕事はこれだけ」と決めつけるのではなく、さまざまなことに興味を持ち、積極的に業務範囲を広げて行動する人たちは、早い段階で目立って活躍している印象がありますね。
また、1部署だけで完結する業務はなく、他部署と連携しながら進めていく必要があるため、コミュニケーションを積極的に取る姿勢も大切です。
廣瀬:自分で周囲を見ながら課題設定ができる方が活躍している印象です。新たな課題を見つけ、その仕事を自分で手がけていくことで実績が生まれ、経験を積むことで自分の成長にも繋がっていきます。
コロナワクチン用注射器を開発した「技術開発職」とは?現場で活躍する社員に聞いてみた!
技術開発職の仕事についてお伺いできますか?
五十嵐:現在工場の製造技術部門に所属しており、注射器関連の開発から改善改良、生産技術の設定、国内外の規制対応等、生産管理に関わるあらゆる業務を担当しています。
生産管理の仕事というと一般的なイメージは工程管理だと思いますが、私たちの部門では新製品の開発や既存製品の改良も行います。
そのため、既存製品を中心に医療現場で何か課題があり、「このような商品を作った方が医療現場の課題解決につながる」というものがあれば、自分たちでどんどん提案できる環境です。
私の部署で言うと注射器や針関連の製品に関して新規製品の提案を行っていますし、担当ではない他の製品に関しても自由に提案できる機会があります。
基本的には既存製品をより良くするための改善・改良を行っています。
柴:五十嵐さんと同じチームに所属しており、新卒で入社してから今年で8年目になります。
既に売られている製品の品質改善・改良や開発を行っています。
今売られている製品で生産体制を維持する必要もあるので、生産工程の管理も業務として行いますが、今売られている製品だけでなく、新たなものを作る開発も積極的に行っています。
技術開発職に就いたきっかけをお伺いできますか?
五十嵐:もともと僕も理系で、ものを作り形になる楽しさを感じていたので、ものを作れる仕事に携わりたいと思いこの部署にいます。
柴:まずテルモに入った理由は、私の近しいところで不幸があり、人を助け役に立つ仕事をしたいと思ったのがきっかけです。
医者を目指すのは現実的ではなかったため、医療従事者を助けられる仕事を考えて医療機器のメーカーのテルモを受けました。
そして、新しいものを作りそれが認められて、世の中でたくさん使われる形で貢献できればやりがいがあるのではと思い、技術開発職を志望しました。
コロナウイルスをきっかけに開発された「汎用針付注射筒」とは?
御社で注力される汎用針付注射筒について開発経緯や特徴をお伺いできますか?
五十嵐:汎用針付注射筒は2009年に豚インフルエンザが流行った際、ワクチンの供給不足が問題となり、薬剤ロスを減らす目的で開発されました。
今回コロナウイルスが流行りワクチンが足りないという話が出た時に、汎用針付注射筒が活用できるのではないかとなり、汎用針付注射筒を改良しより効率的にコロナワクチン対応用のものを再開発しました。
医療現場では安全性の面から、ワクチンが含有されるバイアル内の残液は処分してしまいます。
汎用針付注射筒を活用することで、注射器に残ってしまうワクチンを少なくできるので、処分する残液が減り、コロナワクチンの供給不足解決に貢献しています。
汎用針付注射筒は工場が主導して開発されたのでしょうか?
柴:そうですね。より早く世に提供するとなると今あるものを改善するのが一番早いため、工場が主導し関連部署にも協力いただいた上で製品の改良に臨みました。
汎用針付注射筒に関して、貴部署の具体的な関わり方や業務をお伺いできますか?
五十嵐:まず製品仕様の設定を行います。
製品コンセプトや製造方法を我々で決めて、実際に生産するまでの日程管理も行いました。
我々の部門だけで全部の工程を実施できるわけではないので、プロジェクトを立ち上げ、メンバー選び、そのメンバーと共同で進めました。
製品仕様の設計が決まったら、製造条件の設定や薬事申請時の書類作成、臨床現場でのヒアリングなども行いました。
臨床現場のヒアリングは、実際にワクチン接種会場に出向きました。
技術部門が、製品が使われる現場に出向くのですね。
五十嵐:他の商品でも、使い勝手や臨床の現場での使われ方を確認してくることはあります。
また、新商品につながるような情報やフィードバックを得られれば、製品開発の提案にも繋げています。
技術開発職の魅力は「製品開発を通して医療に貢献できること」
技術開発職の魅力についてお伺いできますか?
五十嵐:一般的な会社の生産技術では工程管理が中心となることもありますが、テルモの技術開発職では製品設計・開発ができます。
自分の考えたものが形になり、医療を通じて社会に貢献できるのは魅力的なところだと思います。
柴:今までのやり方では駄目だったところを自分の考えたやり方で改善できたり、不良品をゼロにできたりなど、品質の安定性に自分の活動が繋がり、良いものが世に出せている時が一番やりがいを感じます。
今後のキャリアプランもお伺いできますか?
五十嵐:現職での経験や知識はだいぶ蓄積できているので、チームメンバーがたくさんいる中でのマネジメントをしっかりやっていきたいです。
また、医療現場の課題はまだまだたくさんあるので、今まで以上に踏み込んで課題解決できるように活動していきたいです。
実際に医療現場へ行き、コミュニケーションを取って、課題解決の糸口をみつけて、もう少し新しい提案をしたいと思っています。
柴:製品の開発をメインに行っていますが、現在は特定の製品に限定してやっている状況です。
弊社には色々な製品があるので、特定の分野だけでなく、幅広い製品に携わり知識を蓄え、より多くの製品を開発できる技術者になりたいと思っています。
御社を目指す理系学生にメッセージをお願いします。
五十嵐:テルモの技術開発職は、ものづくりを通して医療を支え、貢献できる仕事なので、社会貢献の出来る仕事です。
医療機器はさまざまな要素や技術を合わせて作られているので、自身の専門性をどこかで活かせます。
また、医療について詳しく勉強できますし、研修も充実しているので、入社後も自分を成長させられるでしょう。
ぜひ未来の医療を皆さんと築ければいいなと思っています。
柴:医療機器メーカーなので「医療機器の知識がないと入れない」と思う方も多いかもしれませんが、そんなことはありません。
研修は充実していますし、医療関連の知識も入社後に勉強できます。
開発技術にはさまざまな分野の人が集まっており、さまざまなアイデアが生まれることで品質の高い製品を生み出せています。
そのため、「専攻が関係ないから難しいかな」と思わず、医療機器メーカーで働きたいと感じたら、ぜひ応募してみてください。
武田:医療に興味を持ち、可能性があると感じたら、自身の研究内容の枠だけに固執せずチャレンジしてほしいです。
テルモでは研究開発はもちろんですが、技術開発の部門も自分の仕事がダイレクトに社会に貢献していると実感できるので、やりがいにもつながります。
これからの医療を自分たちで作っていけるのは間違いないです。
特にテルモは規模も大きいので、その分貢献できる範囲ややりがいは大きくなるでしょう。
研究開発部門が新しいものを生み出しただけでは医療貢献が難しく、量産化して医療現場に届けることで初めて医療貢献ができます。
量産化の仕組みを作る部分で技術開発が重要な役割を担っているため、ぜひ挑戦してほしいですね。
廣瀬:弊社はグローバル規模で展開しており、自分の技術・スキルでたくさんの人を救える可能性があります。
こうしたやりがいに共感してくださる方は沢山いらっしゃると思うので、テルモでの仕事の魅力として感じてもらえたら嬉しいです。
弊社でなぜ専門分野を問わないかというと、医療機器そのものが複合化してきており、さまざまな機能やソリューションが求められているためです。医療に貢献したい思いのある、さまざまなバックグラウンドをお持ちの方に挑戦してほしいと思っています。
商品開発で新しいものを思いつくだけでは世の中に変革を起こすには及ばず、それを量産化して何千万・何億と作れるようになり、製品として世界中に届けられることで初めて世の中が変わっていきます。供給不足となれば結果的に医療現場のニーズに応えられなくなります。生産体制までを考えた開発技術の取り組みは非常に重要な役割を担っています。
自分の能力を枠にはめず、医療現場に貢献したい志をお持ちの方にぜひ入ってもらいたいです。