研究者として働く上で見落とせないポイントが、”どこ”で働くかです。
研究者として働く場所は大きく2つにわかれます。
アカデミアと民間企業の研究機関です。
どちらも同じ研究機関でありながら、方向性は大きく異なります。
今回はアカデミアとは具体的にどのような機関を指すのか、民間企業の研究機関との違いを解説します。
将来、研究者として働こうと考えている理系学生はぜひ参考にしてみてください。
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アカデミアとは公的な研究機関
アカデミアとは大学や国立の研究機関など、公的な研究機関を指します。
具体的には以下の機関が公的な研究機関にあたります。
- ・文科省 科学技術・学術政策研究所
- ・厚生労働省 国立感染症研究所
- ・大阪大学 産業科学研究所
- ・理化学研究所
参考:大阪大学 産業科学研究所
参考:理化学研究所
アカデミアと企業の違い
本章ではアカデミアと民間企業の研究機関との違いを、以下の観点から解説します。
- ・目的
- ・研究予算・設備
- ・研究に携わる人の数
- ・研究機関
- ・待遇面
- ・研究難易度
様々な角度から両者の違いを取り上げるので、アカデミアと民間企業の研究機関との違いをしっかり理解しましょう。
アカデミアは非営利・企業は営利目的
組織には必ず目的や目標があり、アカデミアや民間企業の研究機関も例外ではありません。
目的という観点からみると、アカデミアと民間企業の研究機関は大きく異なります。
アカデミアは公的機関のため、非営利の団体です。
研究結果が国の発展や未知への追求、科学的根拠の下地となるように研究をおこなっています。
いわゆる、基礎研究と呼ばれる分野がアカデミアのおこなうメインの研究です。
一方で民間企業の研究機関は民間企業のため、あくまで営利を目的としています。
研究結果が企業の利益につながるように、研究をおこなっています。
応用研究や開発研究と呼ばれる分野が、民間企業の研究機関が主におこなっている研究です。
アカデミアと民間企業の研究所では目的の違いから、メインのアウトプットも異なります。
アカデミアは科学的な発見を目的としているため、アウトプットは自然と論文になります。
対して、民間企業の研究機関のアウトプットは当然ながら、製品もしくは製品につながる研究結果です。
研究予算・設備は企業の方が比較的充実
研究に欠かせない研究予算や研究設備に関しては、民間企業の研究機関の方が比較的充実しています。
民間企業の研究機関は営利目的のため、必要な予算や設備には積極的に投資するのが特徴です。
対して、アカデミアは国の予算から分配されるため、予算や設備は限定的になりがちです。
もちろん例外的に予算が潤沢なアカデミアもあるにはありますが、多くはありません。
予算が限られるため、アカデミアで働く研究者は助成金や補助金を自ら申請して、研究の予算を獲得しにいく必要があります。
予算や設備では、アカデミアが民間企業の研究機関に勝るケースは多くないでしょう。
一方で情報という観点では、アカデミアの方が充実しているかもしれません。
アカデミアは論文発表での情報発信や学会参加などを通じて、多くの情報交換をおこなっています。
特に学会では様々な分野の研究者と接する機会も多いため、新たな発見や仮説が生まれやすくなります。
広い角度から情報を集められるので、アカデミアの方が情報収集はしやすい状況にあるでしょう。
民間企業の研究機関の場合、営利目的のため、情報交換が積極的におこないにくい側面があります。
新たな発見が製品につながるケースもあるため、情報交換が中々しにくいのが現状です
研究に携わる人の数は企業の方が多い
1つの研究に携わる人の数は、民間企業の研究機関が多いといえます。
理屈としてはいたってシンプルで、民間企業の研究機関では研究のスピードや成果をより重視しているため、人を多く割いています。
人を多く割けるのは予算の話と関連しており、積極的に予算を投資しているためです。
対して、アカデミアでは、研究に携わる人の数は多くありません。
1つの研究に1人というケースも決して珍しくはないでしょう。
研究の性質や予算の関係上、アカデミアでは研究に携わる人の数は多くありません。
研究期間はアカデミアの方が長い傾向
研究にはヒト・モノ・カネといったリソースは欠かせません。
同様に多くの「時間」も必要としており、研究内容によっては数十年単位といった長い年月を必要とする研究もあります。
研究に対する期間の長さでいえば、アカデミアの方がじっくりとできる傾向にあります。
アカデミアの場合、研究のメインは基礎研究です。
基礎研究では長い時間を要する研究もあるため、研究期間が自然と長くなるケースも少なくありません。
対して、民間企業の研究機関は営利目的のため、長期での研究はしにくい性質があります。
なぜなら、研究期間が長ければ長いほど、コストがかかってしまうからです。
もちろん製品の改良のために、長期にわたる研究がおこなわれているケースもあります。
しかし基本的にはコストが多くかかる長期での研究はあまりおこなわない傾向にあります。
民間企業の研究機関の場合、研究を途中で打ち切るケースも少なくありません。
アカデミアと民間企業の研究機関では目的が異なるので、研究期間に対する捉え方が異なります。
待遇面は企業の方が安定している
研究者になれば、好きな研究・得意な研究に打ち込めるからといっても待遇面は気になる要素でしょう。
待遇面は将来性やプライベートに関わる要素なので、人によっては外せない要素になりえます。
待遇面でいえば、民間企業の研究所の方が安定しているといえるでしょう。
民間企業で研究者として雇用される場合には、正社員となるケースが多いです。
日本における正社員は説明するまでもなく、安定的です。
もちろん昨今の厳しい経済状況から、将来にわたり安定的と断言できませんが、現状では非常に安定的な地位になります。
対してアカデミアの場合は、正社員のような安定的な地位は限定的です。
多くの場合が任期ありのポジションでアカデミアに勤めるケースになります。
文部科学省が2022年に発表した博士人材調査の第4次報告書によると、以下のデータがあがっています。
- ・アカデミアに就職した方の約33%が任期なしのポジション
- ・アカデミアに就職した方の約67%が任期ありのポジション
もちろん、公務員として研究機関に勤める場合や大学の准教授や教授になれば、安定的な地位になります。
一方でアカデミアにおける安定的な地位は、狭き道である点は留意しておきましょう。
研究難易度はアカデミアの方が高い傾向にあり
学生がおこなう勉強や試験にも難易度があるように、研究にも難易度があります。
研究の難易度という観点では、アカデミアの方が難易度の高い傾向にあります。
なぜなら、アカデミアでは基礎研究がメインとなっている傾向にあるからです。
基礎研究は新たな知を発見する研究です。
当然ながら、新たな知を発見するのは簡単なことではなく、アカデミアの方が研究難易度は高い傾向にあるといえます。
対して、民間企業の研究機関では製品化に向けた研究、いわゆる応用研究や開発研究をメインとしています。
もちろん民間企業の研究機関における研究がすぐ結果が出るほど、簡単ではないでしょう。
しかし、見つかるかもわからない新たな知を発見する基礎研究よりかは、幾分か難易度は下がります。
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アカデミア・民間企業の研究機関におすすめのタイプ
ここまではアカデミアと民間企業の研究機関の違いを解説してきました。
本章では両方の違いを踏まえて、アカデミアにおすすめの人と民間企業の研究機関がおすすめの人をタイプ別に解説します。
ぜひ自身のタイプを振り返りながら、本章を参考にしてみてください。
アカデミアにおすすめなのは1つの道を極めたい人
アカデミアにおすすめのタイプはズバリ、1つの道を究めたいタイプの方です。
特に博士を修めた後も、同じ研究を続けたいタイプの方にはアカデミアがおすすめです。
アカデミアは企業と異なり、学術的な発見につながりそうな研究であれば、研究がしやすいのが特徴です。
自身がおこないたい研究の有用性をキチンと証明さえすれば、研究を進められます。
アカデミアでの研究ペースは研究の性質や体制上、決して早くはありません。
物事を地道に、コツコツと進められるタイプの方にも向いているといえるでしょう。
また研究を一人で進めることが多いため、自身で仮説・検証をおこない、どんどん突き進めるタイプの方もアカデミアに向いているといえます。
民間企業の研究機関におすすめなのは安定性を目指す人
民間企業での研究におすすめのタイプはズバリ、安定性を目指すタイプの方です。
民間企業の研究機関に勤める上で、最大のメリットは安定性です。
安定した雇用は、生活をする上での安心感が段違いなのはいうまでもないでしょう。
安心感があるからこそ、日々の業務でチャレンジができるものです。
安定した雇用に加えて、福利厚生面が充実しているのも民間企業ならではの良さといえます。
研究予算の潤沢さや研究設備が優れている点も、民間企業の研究機関に勤めるメリットです。
利益につながる研究であれば、予算や設備が足らずに研究ができないという展開は民間企業の研究機関では少ないでしょう。
まとめ
研究者を目指すにあたり、アカデミアか民間企業の研究機関かの選択は避けては通れません。
アカデミア・民間企業の研究機関ではメリットとデメリットがハッキリしています
ぜひ今の内から違いを比べて、どちらに進むかを検討しておきましょう。
もし1つの研究をじっくりおこない、新たな知を発見したい方でしたら、アカデミアをおすすめします。