こんにちは。理系就活情報局です。
研究室に配属が決まると、いよいよ本格的に研究に取り組むことになります。
レポートやレジュメにも基本的なルールがあるように、論文にもルールがあります。
後で何度も修正するということがないよう、本格的に執筆を開始する前に最低限のポイントを押さえておくのがオススメです。
今回は、論文に欠かせない引用に着目します!
論文の引用方法から注意点まで解説しますので、これから研究に取り組む理系学生の方はぜひ参考にしてみてください!
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論文の引用とは?
引用とは、自分の論文で他者の著作物(文章・図・表・研究結果など)を用いることです。
他者の著作物に書かれている場合だけでなく、他者の著作物に書かれたデータや方法を参考にした場合も同様です。
論文の中で、引用は「過去研究を踏まえて自分の研究の独自性」を示したり、「具体的な根拠」を示す手段としての役割を担います。
引用を行うことで、これまでの先行研究の中で自分の研究を位置づけることができたり、主張を論理的に組み立てることが可能になります。
引用ルールを守らないとどうなる?
引用ルールを守らないと、法律に抵触したり、コンプライアンス違反となる場合があります。著作権侵害となった場合は、警察や検察を通して刑事告訴される可能性もあり、損害賠償請求などを求められるケースもあるでしょう。損害賠償は多額になる場合もあるため、注意を払う必要があります。
論文の引用数の目安
論文などで引用を活用する場合は、全体の文章の約2割程度に抑えるのが一般的です。しかし、論文の種類やテーマ、内容によって基準は異なるため、論文提出先へ事前に確認しての作成をおすすめします。
引用が多すぎると独自性が失われるため、適度に自身の研究成果や書簡、調査結果などを入れ込むのが大切です。全体のバランスをみて構成すると、質の高い論文に仕上げられます。
論文引用のルール
論文の引用には、さまざまなルールがあります。
研究室や指導教授の方針によって細かい違いが生じることもありますが、基本的なポイントさえ押さえておけば問題ありません。
以下で紹介するのは、分野を問わず論文の引用に共通する基本的なルールです。
引用する文言は一字たりとも変更しない
参考文献を引用する時に気を付けなくてはいけないのは、「先行研究への敬意を払う」ことです。
先行研究への敬意は、引用のルールを守ることで表します。
参考文献を引用する時、引用者は文言や数値を自分に取って都合が良くなるよう変更してはいけません。
以下は、引用の一例です。※太字が引用箇所
例:
理系の就活に特化したTECH OFFERを利用したきっかけは、誰もが知っている有名企業に就職したA先輩が登壇した就活体験談セミナーの資料だった。TECH OFFERを利用するメリットとして、A先輩は「隙間時間に登録しておくだけで、プロフィールを見た企業からオファーが届く」、「自分で探すだけでは見つけられなかった優良企業を知ることができる」(A先輩「◎◎大学就活体験セミナー」2022、p8~9)の2点を挙げていた。
たとえば、上記の引用を「隙間時間に登録しておくだけで、プロフィールを見た企業からオファーが届いた」と文章を変えてしまうのは、ルールを守っていないことになります。
「たった2字なのに?」と思うかもしれませんが、たった2字でも引用元を自分の都合に合わせて勝手に変えてしまったことに変わりはありません。
独りよがりの論旨にならないためにも、論文の引用は適切に行いましょう。
引用元を特定できる出典を明示
引用する際には、必ず引用元を特定できるように出典を明示しなければなりません。
論文の執筆者は、根拠として用いた参考文献を明記することで、引用元を適切に理解して引用を行っていると示します。
引用と出典が適切に明示されていれば、論文の読み手は引用元にたどりつけます。
つまり、論文では、引用した情報が論文のどこからどこまでに該当し、いつ・誰によって・どの文献に書かれたものかを、誰の目にもはっきり分かるように書く必要があるのです。
孫引き(論文引用の引用)はしない
論文を読み進めていると、その論文に引用されている参考文献をたどることになります。
ここで気を付けておきたいのが、「孫引きはしてはいけない」ということです。
普段何気なく目にしている情報の中には、「いったい誰が最初に言ったのかは分からないけれど、信頼している人が発信している情報だから」と信じる場合があると思います。
論文では、他者が引用した情報を引用元のオリジナルを自分の目で確認せずに引用してしまう(=孫引き=論文引用の引用)のはタブーです。たとえ引用していた研究者が専門分野で権威ある著名な人であったとしても、孫引きがいけないことに変わりはありません。
引用された部分だけを信じてしまうと、意図せぬ引用ミスに気づけなかったり、元の執筆者の意図に反した都合の良い引用をさらに転用してしまうことに繋がりかねません。
外国語の文献を誰かが日本語に訳したものから引用した場合も、孫引きに該当します。
外国の論文を引用する際には、注意しましょう。
引用する際には、必ず参考文献を参照して、「引用元の意図に反した解釈をしていないか」「正確に引用しているか」をチェックする習慣をつけておくことをオススメします。
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引用の方法
以下では、論文で引用をする際の基本的な方法を解説します。
まずはスタンダードな引用方法である「直接引用」と「間接引用」を説明します。
その後、引用文献を示す方法として「参照リスト方式」と「参考文献目録方式」を紹介します。
※番号の振り方や出典情報の記載順については、ジャーナルや研究室によって異なります。
以下で紹介する引用方法の例は、あくまで一例です。今自分が書いている論文に適した引用方法を調べましょう。
直接引用
直接引用とは、引用元の文章を文章内に取り込む引用法です。
短い文章を引用する場合は、引用部分を「」で囲み、引用末尾に()で囲んだ出典情報を記載します。この時、出典に記載するのは著者の姓・出版年・該当ページのみで構いません。
例:
◎◎◎◎の毒性は、「普通の食事を通した摂取量においては、取り立てて人体に影響があるというレベルには達していない」(吉塚・田中,2021,p.24)
2文以上の文章を直接引用する場合は、「」で囲まずに該当部分を2字程度字下げし、引用前後に1行ずつ空行を設けることで引用箇所を明示します。
例:
◎◎◎◎の毒性について、吉塚・田中は
◎◎◎◎にはさまざまな科学形態があるため、毒性や人体への影響も科学形態によって異なる。◎◎◎◎の経口曝露による毒性については多くのデータが集まっているものの、不確定要素も多い。ここでは、普通の食事を通した摂取量においては、取り立てて人体に影響があるというレベルには達していないという評価を述べる。(吉塚・田中,2021,p.24)
と説明している。したがって……
間接引用
間接引用とは、引用元の参考文献の内容を要約して引用する方法です。
自分の論文の文章に引用を組み込めるため、読みやすいというメリットもある一方で、「引用元の意図を適切に押さえて要約する」「引用元をそのまま引くのではなく自分の言葉で再構築する」という作業が求められます。
例:
◎◎◎◎の毒性について、吉塚・田中は、現時点でのデータでは解明しきれていない部分があることを述べた上で、食事を通して摂取する分については人体に然程影響がないと結論づけている。(吉塚・田中,2021,p.24)
参照リスト方式
引用した参考文献を示す方法は、「参照リスト方式」と「参考文献目録方式」があります。
参照リスト方式は、引用した文章の後に(著者の姓・出版年・直接引用の場合はページ数)で出典を記載する方法で、本文の最後に著者名のアルファベット順で引用文献を記します。それぞれの間はカンマなどで区切ります。
例:
【論文本文】
◎◎◎◎の毒性は、「普通の食事を通した摂取量においては、取り立てて人体に影響があるというレベルには達していない」(吉塚・田中,2021,p.24)
【論文末尾】
文献
吉塚正・田中満,2021,「◎◎◎◎の毒性と科学形態の関連性」,日本◎◎◎◎協会
参考文献目録方式
参考文献目録方式とは、引用した文章に番号を振り、論文の最後に脚注や文末脚注で、番号に対応した引用文献を引用順に一覧化して示す方法です。
例:
【論文本文】
吉塚・田中の研究によると、◎◎◎◎の毒性は、「普通の食事を通した摂取量においては、取り立てて人体に影響があるというレベルには達していない」と結論付けられている。[1]
【論文末尾】
[1]吉塚正・田中満,2021,「◎◎◎◎の毒性と科学形態の関連性」,日本◎◎◎◎協会,p.24
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論文で参考文献を引用した際の書き方(文中)
ではここからは、論文で参考文献を引用する際の、文中の書き方を解説します。
出典(参考文献)の書き方
出典(参考文献)の主な書き方には、以下の2つの方法があります。
①注番号順方式
・引用部分に番号を入れ、出典情報を確認しやすいようにする。
・ページの終わりに、参考文献を脚注として記載する。
【例】
1967年に「・・・・」が勃発した1)。
その際山田は「・・・・」であると発言した2)。
1)田中次郎.日本の歴史入門.集英社,1998,220p.
2)山田次郎.歴史とその背景.中央文庫,1990,190p.
②直接記述方式
・著者、出版年を本文中に記載する。
・参考文献一覧をレポート末尾へ記載する。
1967年に「・・・・」が勃発した1)。
その際山田は「・・・・」であると発言した2)。
≪参考文献一覧≫
田中次郎.日本の歴史入門.集英社,1998,220p.
山田次郎.歴史とその背景.中央文庫,1990,190p.
論文でネットの情報を引用する場合の書き方
論文でネット情報を引用する場合は、下記の情報を記載する必要があります。
著者名.“Webページのタイトル”.Webサイトの名称.
更新日付.入手先(URL),(参照年月日).
【例】
田中次郎.”日本の歴史入門WEB1900年代ページ”.
日本の歴史入門WEB.http//~.2024-1-1
論文中で複数人共著を引用する場合の書き方
3人以上など複数人での共著の場合は、最初は全員の姓を記します。また、文中で再度引用が必要な場合は、筆頭著者他(著者ら)などと記載する形でOKです。何度もすべての著者の名前を書くと文章量が多くなるため、まとめられる部分はまとめましょう
図・グラフを引用する場合の書き方
図やグラフを引用する場合は、数値だけ引用する方法と、グラフや図を引用する方法の2通りがあります。グラフや図を引用する場合は、自分でグラフを再作成して引用元を明記することが基本ルールです。数値だけ記載した場合も、必ず下に引用元を明記しましょう。
引用する上で押さえておきたいポイント
これまで、「論文の引用とは?」から「引用の方法」まで解説してきました。
最後に、「引用する上で押さえておきたいポイント」について、基本の構成と例文を用いて解説します。
分野や雑誌によって書き方は異なる
くり返しになりますが、専攻する分野や論文を投稿する雑誌、そして指導教授の方針によって、引用方法や情報の記載順は異なります。
ここまで紹介してきたのは、論文引用のベースとなる知識です。
直接引用が推奨される場合もあれば、実験データをもとにした論文のように間接引用が主流となる場合もあります。
研究室や指導教諭によってもさまざまですので、基本的なポイントを押さえた上で、自分の環境で求められる引用方法に従いましょう。
大学によっては、大学の図書館のHPで引用方法についてまとめられていることがあります。併せてチェックしておくといいでしょう。
文献を複写するときは奥付もチェック
ここまで説明してきたように、論文の引用では引用元の参考文献にして詳細な情報を記載する必要があります。
WEBでダウンロードできる論文なら検索すれば情報が出てきますが、本や雑誌を複写する場合は、該当する論文の書誌情報が書かれた奥付を確認しておきましょう。
時には、WEBで閲覧できる情報が間違っていたり、図書館によって異同があったりする場合があります。
確実な一次情報を掲載するためにも、論文が掲載されている書名や雑誌名・号数・論文の掲載ページなどの詳細情報は、逐一記録したりコピーを取ることをオススメします。
論文を引用する際の注意点
論文を引用する際の注意点は、基本ルールに沿って引用することだといえます。一方で基本ルール以外の注意点としては、「引用している部分を明確にすること」「信頼できる情報を引用すること」です。
特に情報が非常に多い現代社会では、情報の精査は非常に重要なタスクとなっています。自身の文章自体の信頼性がゆらがないよう、使う論文や文書の信頼性を充分に確かめたうえで、ルールに沿った引用をすることが非常に大切です。
これだけは知っておきたいポイント(まとめ)
この記事では、「論文の引用を使い分けよう!引用方法や注意点を解説」について解説してきました。
重要なポイントをおさらいします。
・論文の引用とは過去研究を踏まえた独自性や根拠を示す手段!
・ガクチカに研究活動を用いるメリット
①目標が明確でストーリーを立てやすい
②志望動機に直結させられる
・引用のルール
①引用する文言は一字たりとも変更しない
②引用元を特定できる出典を明示
③孫引きはしない
・引用の方法
①直接引用
②間接引用
③参照リスト方式
④参考文献目録方式
・引用する上で押さえておきたいポイント
①分野や雑誌によって書き方は異なる
②文献を複写するときは奥付もチェック