こんにちは。理系就活情報局です。
理系就活生なら、「プラントエンジニアリング」について聞き知っている方も多いと思います。
工場=プラントやインフラを建設するプラントエンジニアリングは、ここ数年理系就活生から熱い注目を集めています。
石油以外のエネルギーを作るための工場のニーズが増えたことで、プラントエンジニアリング業界は勢いを増しています。
日本国内での大規模な工場の建設は縮小傾向にですが、海外での需要は今もなお成長中です。グローバルに活躍したいという理系就活生の希望ともうまく噛み合い、将来性のある業種として一定の評価を得ています。
本記事では「プラントエンジニア」の仕事にフォーカスし、仕事内容だけでなく年収や将来性などについても解説します。ぜひ参考にしてください。
プラントエンジニアの仕事とは

海外での需要が中心となりつつあることもあって、近年注目を集めるプラントエンジニアの仕事について、まだ詳しく知らないという理系就活生の方もいると思います。
プラントエンジニアは、理系就活生の多くが希望する「専門性が直結する仕事」の一つです。
国内での需要は既存のプラントの改修がメインとなりつつありますが、海外では仕事が増加しており、ニーズとやりがいが釣り合った職種です。以下では、プラントエンジニアの仕事について解説していきます!
プラントエンジニアリングの工程
プラントエンジニアとは、石油や電力といったエネルギーから食品や医薬品まで、幅広い種類の工場の設計や保守を手がける仕事です。
プラントエンジニアリングの工程は、「設計→建設→運用→保守」に大きく大別されます。
そして、担当する工程によって内容や必要とされる専門性が以下のように異なります。
工程 | 活きる学科・知識 |
設計 | 機械工学、化学工学、電気電子工学 |
建設 | 土木・建築、機械、施工管理 |
運用 | 化学工学、制御工学、生産技術 |
保守 | 機械工学、電気、信頼性工学 |
① 設計(Design)
プラント全体の構成や配置、配管や機器の仕様などを計画する段階で、プロセス設計・機械設計・電気制御設計など理系知識が幅広く活かされます。
職種の例としては、プロセス設計エンジニア・配管設計エンジニア・電気計装エンジニアなどが該当します。
② 建設(Construction)
設計図面に基づいてプラントを建設する工程で、施工管理・安全管理・進捗管理など現場を円滑に進めるための統率力が求められます。
職種の例としては、建設管理エンジニア・現場監督・安全管理担当などがあげられます。
③ 運用(Operation)
完成したプラントを実際に稼働させ、安定的に製品を生産する段階で、トラブルを未然に防ぎ、効率よく稼働させる工夫が求められます。
活躍する職種例としては、運転管理エンジニア・品質保証エンジニア・プロセス改善担当などになります。
④ 保守(Maintenance)
プラントを長期間安定して動かすために定期点検や修理、老朽化対策を行う工程で、トラブル対応力や診断技術が重要です。
活躍する職種例としては、メンテナンスエンジニア・設備保全技術者・信頼性エンジニアなどが該当します。
なお、職種名は企業や業界によっても異なるため、似たような名前であったとしても業務内容がまったく違う場合もあり、注意が必要です。
プラントエンジニアが携わる設計の仕事
プラントエンジニアリングの仕事で多く理系学生が関わる可能性が高い職種の1つが、設計関連です。設計には、それぞれ異なる専門性を持つエンジニアが多数関わります。
プラントエンジニアが行う設計の仕事は、以下の5つに分類できます。
- ①「プロセス設計」:プラント全体の作業工程を設計する仕事
- ②「土木・建築設計」:プラントの敷地の設計を手がける仕事
- ③「配管設計」:プロセス設計をベースに配管と機器設計を行う仕事
- ④「電気・計装設計」:プラント全体の電器屋通信装置に携わる仕事
- ⑤「防消化に関わる設計」:散水節義やガス検知機などを設計する仕事
プラントの建設には、こういった各領域のスペシャリストであるエンジニアが共同して作業にあたることで、プロジェクトを進めています。
プラントエンジニアの職種

プラントエンジニアの仕事は、前述の通り4つの工程(設計・建設・運用・保守)に大別される点を説明しました。
ここでは、4つの工程における代表的な職種名と必要となる知識について紹介します。
① 設計(Design)
・基礎設計…プロセス設計エンジニア
「どのような原材料を、どの条件で処理すれば目的の製品を得られるか」など、プロセス全体の構想を練る仕事です。反応・分離・加熱冷却などの工程を流れとして設計するのが主な業務で、活かせる知識は化学工学、熱力学、流体力学です。
・詳細設計…機械設計・配管設計エンジニア
ポンプやタンク、熱交換器など個々の設備の寸法・仕様を図面化し、配管や架台のレイアウトも含めて具体化する仕事です。強度計算や安全性の検討も行い、活かせる知識は機械力学、材料工学、CADスキルです。
・仕様検討…電気・計装設計エンジニア
センサー、制御盤、モーターなどの電気機器の仕様や制御方法を検討する仕事で、自動制御や非常停止系などプラントの「頭脳」部分を担います。活かせる知識は電気電子工学、制御工学、プログラミング(PLCなど)です。
② 建設(Construction)
・工事管理…施工管理エンジニア(建設管理)
設計通りに安全かつスケジュール通り工事が進むよう協力会社の作業や資材搬入を管理する仕事で、図面の理解力と現場対応力が求められます。活かせる知識は機械・建築知識、施工フロー、安全・工程管理手法です。
・安全管理…HSEエンジニア(Health, Safety, Environment)
作業員の安全確保、作業環境の管理、有害物質の取り扱いなど事故・災害を防ぐためのルール作りと監視を行う仕事です。活かせる知識は労働安全衛生法、リスクアセスメント、化学物質管理です。
③ 運用(Operation)
・運転監視…運転管理オペレーター
中央制御室などでプラントの稼働状況を24時間体制で監視・調整する仕事で、異常があれば迅速に対応し、安定稼働を維持します。活かせる知識はプロセス制御、装置操作、モニタリング技術です。
・品質管理…品質保証・品質管理エンジニア(QA/QC)
製品の成分や純度を分析し、規格を満たしているかチェックする仕事で、問題があれば製造条件の調整や原因追究を行います。活かせる知識は分析化学、統計解析、ISO管理手法です。
・改善提案…生産技術エンジニア
運用データや現場の課題から、省エネ・コスト削減・安全性向上などの改善策を企画・実行する仕事で、継続的改善に携わります。
活かせる知識はIE(インダストリアル・エンジニアリング)、データ分析、設備知識です。
④ 保守(Maintenance)
・設備点検…保全エンジニア
設備の異常や劣化を早期に発見するため、定期的な点検や診断(振動・熱・音など)を行う仕事で、機械の「健康診断」のような役割があります。活かせる知識は機械保全、診断技術、測定機器操作などです。
・予防保全…信頼性エンジニア(Reliability Engineer)
過去の故障履歴や運用データをもとに、故障を未然に防ぐ仕組み(メンテナンススケジュールなど)を立案・実施する仕事です。活かせる知識は、統計的手法、FMEA、設備信頼性工学です。
・修理対応…トラブル対応エンジニア(緊急保全)
設備トラブルや事故発生時に迅速に対応し、原因を特定・修理する仕事です。活かせる知識は、故障解析、電気・機械修理技術、応急処置ノウハウなどが該当します。
プラントエンジニアのやりがい

プラントエンジニアと一口に言っても、担当するプラントや業務によって仕事内容はさまざまに異なります。しかし、やりがいという点では共通しています。
そこで、プラントエンジニアのやりがいについて解説します!
事業規模の大きさ
プラントエンジニアのやりがいの一つは、建築物から工期に至るまで規模の大きなプロジェクトに携われることです。
海外でのニーズが高まっているプラントエンジニアリング業では、建設に携わったプラントが地域の発展に貢献するという喜びも得られます。国内では既存のプラントを保守することに留まっていますが、海外では多額の資金を投じたプラント建設が盛んです。
自分の仕事がそこで暮らす人々の生活に貢献できる喜びを感じられるのは、プラントエンジニアならではです。
プラントエンジニアは、スケールの大きい仕事に挑戦して、自分の能力を発揮してみたい方にオススメの仕事です。
世界をフィールドに働ける
プラントエンジニアリング業界の現状を鑑みると、国内の企業に就職したとしても、海外出張・赴任となる確率は非常に高いです。
その分、英語力や異国での暮らしに慣れる必要はありますが、グローバルな領域で働けるという大きなやりがいが得られますよ。
プラントエンジニアは、仕事を通じて社会経済に貢献できる仕事です。
海洋開発やエネルギー開発が進む現在において、プラントエンジニアリング業界の需要は留まるところを知りません。
プラントエンジニアに向いている人は?

複雑な仕組みを論理的に考えるのが好きな人
プラントエンジニアに向いているのは、複雑な仕組みを論理的に考えるのが好きな人です。
プラントは、多数の機器や配管が組み合わさった巨大なシステムです。プロセスの流れや因果関係を整理し、効率的かつ安全に動かす設計や運用を考えるには、論理的思考力と構造理解力が求められます。
チームで物事を進めるのが得意な人
チームで物事を進めるのが得意な人も、プラントエンジニアに向いています。プラント建設や運用は一人では完結せず、多くの技術者や現場作業員との連携が欠かせません。異なる専門性を持つ人たちと情報を共有し、共通のゴールに向かって動けるコミュニケーション力と協調性が活かせる仕事です。
安定した環境で長く働きたい人
安定した環境で長く働きたい人にも、プラントエンジニアはおすすめの仕事です。プラントの仕事は長期スパンでの設計・建設・運用が基本であり、設備の寿命も数十年単位のため、腰を据えてじっくりと技術を高めたい人に向いています。社会インフラや製造業を支える役割から、景気に左右されにくい安定性もあります。
プラントエンジニアに必要なスキル

ここまで、プラントエンジニアの仕事内容からやりがいまでを解説してきました。
最後は、「プラントエンジニアに必要なスキル」について解説します。
プラントエンジニア志望の理系就活生は、エントリー前に以下を読んで、自分の強みと弱みを再確認しておくことをオススメします!
軸になるのは専門性と語学力
プラントエンジニアは、理系就活生が目指す職種の中で、最も「専門性と英語力が等しく求められる仕事」です。
プラントエンジニアにとって、仕事をする上で専門スキルは大きな武器です。
専門性が直結するのは理系就活生にとって嬉しいポイントではありますが、こうしたテクニカルな部分が弱いと、選考でほかの就活生に差をつけるのは難しいでしょう。
そこでオススメしたいのが、語学力を磨くことです。
前述したように、プラントエンジニアリング業界のニーズは海外プロジェクトに集中しています。技術的な部分に自信がなくとも、英語ができれば採用担当者の目に止まりやすくなりますよ。
入社後は高い確率で英語を使用することになるので、早いうちから語学力を養っておくと、後々焦ることもありません。
コミュニケーション能力が加われば最強
プラントの建設には、膨大な時間とお金、そして人が掛かります。
プラントエンジニアは、ただ設計を担当するだけではありません。
エンジニアもまた現場に出て、作業スタッフや職人と関係性を築くことが、建設をスムーズに進める秘訣なのです。
自分が設計した理想のプラントを造り上げるためにも、また、規模の大きな仕事だからこそ、人との関係を疎かにすることはできません。
技術力や英語力だけでなく、コミュニケーションが加われば、あなたは最強のプラントエンジニア候補になれるのです。
この3つの魅力を磨いて、プラントエンジニアへの道を掴みましょう!
プラントエンジニアの将来性

社会インフラとしての継続的需要がある
プラントエンジニアは景気に左右されにくく、長期的な視点で安定した需要が続く職種といえます。プラントは、エネルギー・化学・食品・製薬・水処理など、人々の生活や産業を支えるインフラそのものです。老朽化プラントの更新や、再生可能エネルギー・水素・カーボンリサイクルなど新技術を取り入れた設備の新設も進んでおり、今後も「作る・運ぶ・動かす・直す」技術は不可欠です。
DXや自動化技術との連携が進んでいる
近年、プラント運用の現場ではIoTやAI、デジタルツインなどの新技術導入が進んでいます。設備の稼働データをもとに異常を予測したり、遠隔監視で効率的に運用を行ったりする「スマートプラント化」が加速中です。従来の機械・電気の知識に加え、データ分析やシステム設計に関心のある理系人材にとって、技術の進化とともにスキルを伸ばせる成長分野です。
プラントエンジニアの年収は?

厚生労働省が職業紹介をしているjob tagによると、平均年収は669.4万円です。
ただ、企業によっても違うため、あくまでも平均ですが技術職で専門性を活かせる点から高い水準となっています。
以下の表は、job tagより引用した年齢別のプラントエンジニアの平均的な年収です。

プラントエンジニアの年収は徐々に上がる傾向にあり、50代後半で責任者や一定の役職に就いた時にピークを迎えています。
ただし、企業によってキャリアアップや給与は違うため、志望企業の採用要項や選考で確認しておきましょう。
プラントエンジニアについてよくあるQ&A

Q激務って本当?
プラントエンジニアが激務と言われる理由は、次のような事実が挙げられます。
プラントエンジニアが激務と言われる理由 | 概要 |
プロジェクト納期が厳しい | 特に、建設フェーズでは工程が遅れると全体に影響し、休日出勤や残業が発生しやすくなる |
海外・地方出張が多い(職種による) | 大手総合エンジニアリング企業では国内外への長期出張・赴任もあり、体力的な負担が大きい |
トラブル対応での突発業務 | 保守や運転管理の現場では、トラブルや緊急停止への即応が求められる |
ただし、ワークライフバランスや残業に対する規制が厳しくなっている今、適切に勤務時間や残業を管理している企業が多いです。繁忙期と閑散期の差が大きいため、プロジェクトが終わるとしっかり休めるケースも多くあります。
Q向いている人は?
プラントエンジニアが向いている人の特徴をまとめると、以下のとおりです。
プラントエンジニアが向いている人の特徴 | 概要 |
論理的に考えるのが得意な人 | 複雑なシステムや工程を整理し、筋道を立てて解決策を考える力が求められる |
チームで協力して働くのが好きな人 | 多職種と連携しながら仕事を進めるため、協調性とコミュニケーション力が重要 |
安定した環境で専門性を深めたい人 | 長期的なプロジェクトが多く、専門技術を積み上げながらじっくり成長できる |
Q資格は必要?
基本的に不要です。企業は新卒に即戦力ではなく、「素質」や「ポテンシャル」を重視します。入社後の研修やOJTで、必要な技術や知識は身につけられます。
ただし、以下のように選考でアピールしやすい資格はいくつかあります。
資格名 | 概要 | 活かせるフェーズ |
危険物取扱者(乙4類) | 化学系プラントや燃料関係で有利 | 運用・保守 |
機械設計技術者試験(2級) | CADや設計の基礎知識を証明 | 設計 |
電気工事士(第2種) | 電気設備の基礎が身につく | 保守・建設 |
TOEIC 600点以上 | 海外案件がある企業では評価対象 | 設計・建設(グローバル) |
公害防止管理者(大気・水質) | 環境系プラントで重視される | 運用・保守 |
上記の資格は絶対に必要というわけではなく、重視されるのは学ぼうという姿勢と熱意・ポテンシャルです。なお、志望企業によっては英語力が重視されるケースもあるため、採用要項を確認しておきましょう。
これだけは知っておきたいポイント(まとめ)
この記事では、「【理系就活】目指すはプラントエンジニア!スケールの大きな仕事に携わりたい理系就活生にオススメ」について解説してきました。
専攻を活かし、世界で活躍したい学生にとって、プラントエンジニアは魅力的な職業です。プラントエンジニアについて理解を深め、ぜひ就活の選択肢の1つとして検討してみてください。