近年、自己PRなどで人気のある「吸収力」という言葉。就活生にとって、さまざまな場面で使うことができるし、企業にとっても即戦力となる「吸収力」の高い人材は、高評価が期待できるでしょう。
しかし、「吸収力」の高さを客観的に示す指標も資格もないため、「吸収力があります」と言っただけでは、なかなか説得力を持ったアピールにはなりません。
そこで、「吸収力」を軸に、自己PRをどのように展開するかがカギになります。
本記事では「吸収力」とはどんな能力かを分析することから始め、企業がどのように吸収力を評価するのか、また自分の強みを伝えるための「吸収力」を軸にした自己PRの作成法などをわかりやすく紹介します。
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吸収力とはどんな能力?
最初に「吸収力」という言葉や、「吸収力」を持つ人の特徴を整理しておきましょう。「自分はない」とあきらめる必要はありません。今から高める方法も合わせて紹介します。
吸収力とは
「吸収力」とは体験や学習、人とのコミュニケーションを通じて、さまざまな外部情報を自分の内に取り込む能力です。
「飲み込みが早い」「理解力が高い」「仕事の覚えが早い」とも言い換えられます。
たとえば、指導教官が実験の手順を一通り説明すると、すぐ手順に従って実験を始められるような人が、「吸収力が高い」と言えます。また、コンビニのアルバイトであれば、指導係のやり方を見ながら品出しやレジなどの仕事を覚え、即戦力になる人も「吸収力が高い」人です。
吸収力が高い人の特徴
吸収力が高い人は、次のような特徴を持っています。
- ・全体を俯瞰してものごとを見ることができる
- ・「こうしたらこうなる」「こうなったのはこうだからだ」など、因果関係を見つけ出せる
- ・新しいことでも、すでに知っていることと関連付けながら理解できる
- ・疑問があればすぐに質問して、疑問点を解消しようとする
- ・日常的にインプット量が多い
上記の特徴を持つ人は、周囲の人から見ても吸収力が高いと感じられるでしょう。
今からでも吸収力は高められる
「自分はそんなことはできない」とがっかりする必要はありません。上記で紹介したように、吸収力はさまざまな要素をかけ合わせた複合的な能力です。
上記のような特徴をひとつでも持っていたら、自分の強みを「吸収力」ということができます。特に理系の学生は、日ごろから論理的思考力を鍛えているため、吸収力を鍛える下地は十分にできています。胸を張って「吸収力」をアピールできるよう、トレーニングで吸収力を高めていきましょう。
ここでは吸収力を鍛えるトレーニングの方法を紹介します。
- ・知識の引き出しを増やす
専門知識だけでなく、国際情勢や経済の動きなどにふれ、毎日少しずつ知識を増やしましょう。少し興味が出てきたら、新書を読んだりして、吸収の土台を作ることができます。
- ・自分の思考の癖に気づく
人は誰でも無意識の思考バイアスや、先入観を持っています。例えば、年長の男性に頭ごなしに言われたら、内容によらず拒絶してしまうなどの傾向を知っておくだけで、吸収力の幅を広げることができます。
- ・抽象化と具体化の転換をスムーズにできるようにする
「抽象化と具体化の転換をスムーズにできるようになることは、理系学生にとって大切な能力の一つです。
理論的で抽象的な概念を適切に具体化できる力があれば、専門知識を分かりやすく説明したり、実践的に応用したりすることができます。一方、具体的な事象を抽象化し、一般化できれば、個別の出来事から本質を捉え、幅広い事例にも適用できる原理を見出せます。
専門用語を一般の人にも分かりやすい言葉に置き換えたり、逆に日常の言葉を、その概念を表す理論用語に置き換えてみましょう。言葉の具体と抽象のレベルを自在に行き来できるよう訓練することで、専門家、非専門家を問わず、相手の話から重要な本質を吸収できます。
- ・感情を言語化する
論理的思考力に長じている理系学生は、反対に感情の言語化を苦手とする傾向があります。自分や相手の感情を言語化するトレーニングを通じて、共感力を高めることができるようになります。相手から何かを吸収する場合、共感力は土台となります。
企業から見た「吸収力」の評価ポイント
企業は「吸収力」の高い就活生をどのように評価するのか、3つの観点から説明します。評価ポイントをふまえ、自己PRを作成しましょう。
業務理解が早い
吸収力が高い社員は、飲み込みが早く、「1を聞いて10を知る」業務理解が早いことが期待できます。企業が求める業務内容や手順、関連する概念などを短期間で習得できるため、研修期間を短縮でき、早期に本格的な業務に携わることができます。このような即戦力となる人材は、企業にとって大きな強みとなります。
学ぶことに意欲的
吸収力が高い人は、常に新しいことを学ぼうとする向上心と好奇心を持っています。企業における製品やサービス、業務プロセスは常に進化し続けており、それに対応するためには、継続的な学習が欠かせません。吸収力の高い人材は、積極的に自己研鑽に努め、変化に柔軟に対応できる人材として期待されます。
即戦力として期待できる
吸収力が高い学生を、企業は即戦力として期待しています。企業は限られた時間とリソースの中で、できる限り早く人材を育成し、活用したいと考えているためです。
自己PRでの「吸収力」のアピールポイント
自己PRでは「吸収力」をどのようにアピールしたら良いのでしょうか?ここでは2つの方法を紹介します。
「吸収力」を具体的な表現に言い換える
「吸収力が高い」だけではあまりに漠然としていて、評価ができません。自分自身の吸収力の高さはどのように表現できるのか、言い換えを考えます。ここでは代表的な言い換えと、使い方の例を紹介します。
- ・飲み込みが早い
私の強みは、飲み込みが早いことです。実験の手順なども一度説明を受けただけで、正規の手順を踏んで進めることができます。
- ・理解力が高い
理解力の高さには自信があります。緊急で対応しなければならない事態に際しても、状況の一部を聞いただけで何をすべきかを判断できます。
- ・仕事の覚えが早い
私は仕事の覚えが早い方です。これまでコンビニエンスストアやドラッグストアなどのアルバイトをしてきましたが、商品の品出しやレジの手順など、すぐに覚えることができました。
「吸収力」でどのように貢献できるかを考える
自分の吸収力の高さを使って、どのように貢献できるかを考えます。業種分析や企業分析を通じて業務を理解して、吸収力の高さをどのように活かすことができるでしょうか?以下にいくつかの例を挙げます。
- ・新技術の吸収で企業の生産性向上やイノベーションに貢献できる
- ・複数の専門分野の知識を短期間で修得できるため、部門横断的な課題解決に貢献できる
- ・理論や技術情報を素早く吸収できるため、開発の効率化に貢献できる
面接で吸収力をアピールするためには言葉遣い・態度も大切
自己PRで吸収力を強調するためには、言葉遣いや態度も重要です。ここでは、吸収力をアピールできる言葉遣いと態度を押さえておきましょう。
吸収力がアピールできる言葉遣いとは?
言葉遣いでは、素早く理解し知識を活用できることを強調します。また、学習意欲の高さもアピールポイントです。次の3点を意識しましょう。
- ・「素早い理解」を示す表現を使う
【例】
「期間は短かったですが、すぐに習得できました」
「理解は早い方だと考えます。~の時に(過去の経験を述べる)」
「今のご説明でだいたい理解できましたが、2点目についておうかがいしたいことがあります」
- ・得た情報や知識をすぐに活かして表現する
【例】
「さきほどのご説明は〇〇と理解して問題ないでしょうか?」
「今、ご説明くださったことは、〇〇にも応用できますね」
- ・学習意欲を示す表現を使う
【例】
「常に新しいことを吸収し続けたいと考えます」
「知識を絶えず更新していきたいと考えます」
「積極的に研鑽を重ねていきます」
吸収力は態度でも表せる
態度では、理解を深めるための質問をし、理解した内容を自分の言葉で確実にアウトプットする様子を示すことが大切です。さらに、常に学び続ける姿勢を見せることも重要でしょう。吸収力の高さを示せる態度は、次のようなものです。
【熱心に質問し、理解を深める姿勢を示す】
・分からないことは素直に質問する
・追加説明を求め、確実に理解する
【素早く知識をアウトプットする姿勢を示す】
・理解したことを自分の言葉で説明する
・類推してほかの事例にも当てはめる
【常に学ぶ姿勢を示す】
・最新の情報や技術動向に注目していることを伝える
・自発的に新しいスキルを身に付けようとしていることを伝える
自己分析で「吸収力」を深掘りしよう
ここでは、「吸収力」に焦点を当てた自己分析の方法を紹介します。
自分の「吸収力」はどんなもの?
「吸収力」にもさまざまな性質があります。自分の吸収力がどのような性質のものか、次の4つの観点から、これまでの過去を振り返り、自己分析を通じて深掘りしましょう。
- 1.新しい情報に接したとき、これまで自分はどうしていたか?
- 2.知識や経験をどのように活用してきたか?
- 3.知識を整理し、体系化したり関連づけたりできるか?その経験はあるか?
- 4.学習意欲はあるか?学習意欲を活かしてどのようなことをしたか?
端的なエピソードを探す
上記の4点を、「学業」「サークル活動」「アルバイト」「ボランティア」の観点から振り返り、以下のような表を作成して当てはまるエピソードをすべて書き込みます。
新しい情報に対しては? | 知識や経験をどう活用した? | 知識を体系化・関連付けたか? | 学習意欲はあるか? | |
学業 | ||||
サークル活動 | ||||
アルバイト | ||||
ボランティア |
その中から、自分が最もしっかり説明できるエピソードを選びましょう。
「吸収力」で自己PRを作成しよう
「吸収力」を軸に自己PRを作成する方法を説明します。
基本的に、自己PRは以下の4点から構成されます。
- 1.結論
- 2.なぜそういえるのか
- 3.エピソード
- 4.どのように貢献できるか
詳しく見ていきましょう。
1.結論
自己PRの核となる主張を簡潔に述べます。
最初に結論を述べることで、聞き手はすぐに「これから聞く話は〇〇についてなのだな」と理解でき、頭の中でその準備ができます。つまり、結論ファーストの話は、聞き手ファースト(最優先)の話でもあるのです。
例えば「私は吸収力が高く、学んだことを素早く実践に生かせる人材です」と伝えましょう。面接官は、就活生に対して、明確なメッセージを持つことができます。
2.なぜそういえるのか
結論部分の主張の根拠を示します。例えば「常に新しいことに挑戦し、得た経験を活かす姿勢を大切にしてきました」など、自分がその資質を備えている理由を説明します。
3.エピソード
上記の根拠となるエピソードを具体例として語ります。例えば、「サークル活動で〇〇という新しい試みに挑戦し、△△の知見を活用して問題を解決しました」など、実際の出来事を交えて説得力を持たせます。
4.どのように貢献できるか
最後に、自分の強みが企業でどのように活かせるかをアピールします。例えば、「素早い吸収力で新たな技術を取り入れ、業務の効率化や新製品開発に貢献できます」など、具体的な貢献ポイントを示します。
このように、自己PRは結論から根拠、具体例、貢献という一連の流れで構成されます。自分の強みを明確に伝え、実例で裏付け、さらにその強みが企業でどう活かせるかを示すことで、説得力のある自己アピールができます。
自己PRの書き方については、次の記事でも詳しく説明しています。
「吸収力」の自己PRの例文
「吸収力」を軸にした自己PRの例文を、「学業」「サークル」「アルバイト」「長期インターン」「ボランティア活動」の5点に分けて紹介します。
学業での「吸収力」の例文
私の強みは理解が早いことです。
たいていのことは、説明を一通り聞けば、実践に移すことができます。
この能力のおかげで、高校までは勉強面で大きな苦労をしたことがありませんでした。しかし、専門の勉強が進むにつれ、理解の早さだけではどうにもならないことに気づきました。特に、3年次の電子回路設計の授業では、教科書の内容だけではどうにもならず、教授に質問するなかで、理解を深める努力が必要だと指摘されました。そこで、講義後は自主的に参考文献や論文を読むなど、主体的な学習を進めるようになりました。その結果、GPA3.8を取ることができ、知識の定着を実感しています。
このように、私の理解の早さとともに、指摘を受けるとすぐに自分の過ちに気づき、対策が立てられる能力は、入社後の技術研修などで大きな強みとなると考えます。
サークル活動での「吸収力」の例文
私は幅広い知識を短期間で吸収し、実践に生かすことができます。
大学ではオーケストラのサークルに所属しており、指揮を行っています。指揮者は団員のスキルや個性を把握し、各人の最も良い演奏を引き出す必要がありますが、私は自分の強みを活かして115人の団員全員の個性や演奏の特質を把握しています。
理系の多いオーケストラでは、練習時間の確保がネックとなっています。私は3年次、正指揮者に昇格してから、パートリーダーや団員と話し合い、パートごとの練習プログラムを作成しました。各パートを訪れ進捗状態を把握、ガントチャートで全体共有し、全体練習とパート練習の連関を図りました。その結果、限られた練習時間だったにもかかわらず、定期演奏会では高い評価を得ることができました。
このように、私には幅広い楽器の特質や115人の団員の個性に対する理解力、また、それぞれの持ち味を活かせる発想力があります。この能力を活かし、入社後は、配属先の業務に関連する幅広い技術情報を積極的に収集し、短期間で習得することで、高度な生産性の実現と業務の効率化に貢献したいと考えます。
アルバイトでの「吸収力」の例文
私には新しいことを理解し、実務に活かせる吸収力があります。
大学2年次より、週20時間程度、ファミリーレストランでアルバイトをしています。そこでは、頻繁にメニューやサービス内容が変更になるため、常に新しい情報を学び続ける必要がありました。短期間で知識を確実に身につけ、業務に反映させることを心がけていました。
昨年の春に新作デザートメニューが12種類一挙に追加されたことがありました。2週間の研修期間中、一つひとつの食材の特徴や適した調理方法、おすすめのデザートなど、様々な知識を習得する必要がありました。限られた時間の中で、私はメニューや食材の読み込みを徹底しました。研修最終日に行われたテストでは、満点を取り、新メニュー発売当日から滞りなく対応できました。
このように、私は自分の強みを活かし、短期間で大量の新しい情報を確実に吸収し、業務に生かしています。この理解力と吸収力は、御社でも業務をすみやかに理解できると考えています。また、製品やサービスが変更になった際も、必要な知識を素早く習得し、スムーズな業務遂行に貢献できると考えています。
長期インターンでの「吸収力」の例文
私には専門分野の知識を素早く吸収し、実務に活かせる応用力があります。
2年次の冬季から半年間、AIスタートアップ企業でディープラーニングエンジニアとしてインターンに従事しています。入社時は機械学習の基礎知識しかありませんでしたが、現場の最前線で実践的なOJTを受けながら、集中的に学習を重ねました。その結果、業務の中でGANを応用した生成モデルを開発するなど、短期間で専門性を身につけることができました。
インターン4ヶ月目に、社内の製品開発プロジェクトに携わる機会がありました。プロジェクトでは、大量の画像データからモデルを生成する必要がありましたが、私には画像処理の知見が乏しく、対応に困ってしまいました。「無理をしなくていいから」と上司に言われたことで、闘志に火が付き、毎晩徹夜しながら、画像処理・コンピュータビジョンの文献を20冊以上読破しました。その結果、1週間ほどで画像データを適切に前処理し、高精度なモデルを構築することができました。
このように、私は短期間で新領域の専門知識を吸収できる柔軟性があります。また、得た知識を実務に確実に活かせる応用力も身につけていると考えます。入社後は配属先の業務に迅速に理解を深め、生産性の向上に貢献したいです。
ボランティア活動での「吸収力」の例文
私は状況を速やかに理解し、それに合わせて柔軟に対応する能力を備えています。また、必要に応じて、新しい知識やスキルも短期間で身につけることができます。
私は、1年次から困難を抱えた子どもたちのボランティア活動に参加してきました。当初は学習支援だけだったのですが、子どもたちと接する中で、心理面のサポートや支援機関への連絡など、さまざまな知識が必要なことに気づき、短期間で心理学や教育学を始め、多くのことを学びました。
ある時、私は子供たちに算数を教えていたのですが、文章題の意味を把握できない子どもがいました。文章題を音読することもできない子に対して、まずは簡単な絵本が音読できるようになることから始めました。次に、自分が読んでいる文章を、その子に説明してもらうようにしました。教育学の事例で読んだことをアレンジしたのですが、そのやり方は、その子にフィットし、その子は急速にできるようになったのです。
私の飲み込みの速さと、現実への応用力は、新しい業務や課題に素早く適応でき、貴社の発展に貢献できると確信しています。今後も常に学ぶ姿勢を忘れず、スキルアップに努め、貴社の一員として貢献していきたいと考えています。
自己PRの文例は次の記事でも詳しく紹介されています。参考にしてください。
「吸収力」で自己PRを作成する場合の注意点
「吸収力」を軸にした自己PRを作成する場合の注意点を紹介します。
仕事にどう活かすかの視点で作成する
自己PRでは、単に自分のスキルや経験を羅列するだけでなく、それらがどのように会社や職務に役立つのかを明確に示すことが重要です。「吸収力」を強調する場合も、それがどのように業務に活かせるのかを具体的に述べる必要があります。例えば、新しいシステムや手順の導入時に素早く適応できること、複数の業務を同時に効率的にこなせることなど、吸収力を仕事に転換して説明しましょう。
「成長したい」ではなく「貢献したい」
自己PRでは、自分の成長を望むだけでなく、会社への貢献意欲を示すことが求められます。「吸収力が高いので、常に成長し続けたい」という自分視点の自己PRではなく、「吸収力を活かして、会社の発展に貢献したい」という会社視点に立った貢献姿勢を明確に打ち出すことが重要です。自分の吸収力が、会社にとってどのようなメリットがあるかを伝えることで、より説得力のある自己PRになります。
オファーを活用する方法も
また、エントリーシートや面接用にまとめた自己PRは、企業からの逆オファーでも活用できます。
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まとめ
本記事では自己PRで吸収力を伝えたいときの方法や自己分析、実際のPRの文例も交えて説明しました。
吸収力にもさまざまな要素があります。自己分析によって、自分の中にある「吸収力」の要素を探り当て、ふさわしいエピソードとともに、自己PRにまとめましょう。
その時、重要なのは、「吸収力を活かして学びたい」という自分視点ではなく、「貢献したい」という企業視点です。自分の持っている吸収力という強みが、どのように業務に貢献できるかを考えましょう。