こんにちは。理系就活情報局です。
「将来、ものづくりに関わりたい」と理系に進んだ人は多いかと思います。しかし、実際に就職先を決める段階になって、「ものづくり」に関連する職種の広さに驚いているのではないでしょうか?
そんな「ものづくり」職のひとつ、生産技術職は、「ものづくり」のあらゆる工程に関わる仕事です。本記事では生産技術職について仕事内容・やりがい・キャリアプランなど、さまざまな観点から紹介します。志望職選びの参考にしてください。
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生産技術職とは?
一口に生産技術といっても仕事内容は幅広く業界によっても異なるため、なかなか全体像がつかみにくい仕事です。ここでは生産技術の目的・ものづくりとの関係・製造技術との関係の3つの観点から説明します。
生産技術の目的
ものづくりは、企業が市場や顧客のニーズを把握し、市場に受け入れられる製品をつくることを目的としています。市場が求める製品とは、安定した品質・適正な価格で、必要な時に購入できなければなりません。そのために、ものづくりは製造だけでなく、「Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)」の管理が重要になってきます。
生産技術は上記のQCDが達成できる生産体制を構築するための技術です。
ものづくりと生産技術の関係
ものづくりと生産技術は「ものづくりを生産技術が支える」という関係にあります。製品が目標とする品質の設定から、製造工程で実現した製品の品質の評価まで、企画設計の段階から生産管理・工程管理にまで及ぶ幅広い技術として、生産技術はものづくりの土台となります。
生産技術と製造技術の違い
生産技術はものづくり全体に関わる技術であるのに対し、製造技術は生産技術の中での製造工程を担う技術です。
製造工程での製品の製造業務や製造設備の修理・点検などが製造技術の仕事内容です。一方で生産技術は製品の企画業務から関与し、製造する過程・プロセスの開発、製造工程の企画や設計、製造工程の評価などが仕事に含まれます。
生産技術職については以下の記事でも説明しています。参考にしてください。
生産技術職の仕事内容
ものづくりのプロセスは、「企画設計」「製造・加工」「製造後の振り返り」の3つに大別できます。生産技術職はその3つのプロセスすべてに関わります。詳細な仕事内容は、業種・企業によって異なりますが、ここでは基本的な仕事内容を紹介します。
製品の企画設計プロセス
生産技術職は新製品の立ち上げ・準備段階で、設計・開発部門が決定したねらいの品質が製品に過不足なく転写されるように準備を行います。設計・開発については生産技術職の中の設備設計エンジニアが担当しますが、予算の確保や導入手順の作成なども生産技術職が行います。
製品の製造・加工プロセス
市場に製品を届けるためには、設計・開発部門が決定したねらいの品質が製品に忠実に反映され、量産される必要があります。このプロセスでは品質が許容範囲内かつ定められた期限内であることが求められます。この工程では、生産技術は製品のQCDを達成するために、次のような仕事を行います。
製品・製造プロセスの評価・改善
量産された製品の品質は、市場の要求を満たしているか、またばらつきはないかなどの確認を行います。その他にも生産工程で明らかになった不具合の対処など、さまざまな課題を解決し、生産性や生産効率の向上を目指します。
生産技術職のやりがいと難しさ
生産技術職のやりがいと難しさを整理します。
生産技術職のやりがい
生産技術職のやりがいは、次の3点にまとめられます。
・企画から出荷まで、幅広いプロセスでものづくりに関われる
生産技術は生産立ち上げ段階から出荷まで、幅広い役割をカバーします。製造に直接関わるのではなく、全体を俯瞰・課題を発見し、改善・調整を行って、ものづくりに一貫して関われます。
・製品の質・付加価値を高めることに貢献できる
製品は量産することで、どうしてもばらつきが生じます。生産技術職がQCDを管理する仕組み・方法・道具・ソフトウェアを用意することで、市場や顧客の期待に応える質の高い製品・困りごとを解決する付加価値の高い製品の安定供給に貢献し、企業やブランドの価値を高められます。
・あらゆる産業で活用できる
生産技術職はものづくりに欠かすことのできない技術です。近年では企業の品質責任についての評価はますます厳しくなっており、AI・デジタル機器など新しい技術を取り入れながら、製造工程全体を革新していくことが求められています。業界や企業によって手法などは異なっても、基本的な生産技術のスキルを持っていれば応用でき他業界でも活用可能です。
生産技術職の難しさ
生産技術職のやりがいだけでなく、難しさも押さえておきましょう。生産技術職の難しさは次の3点です。
・長時間勤務や休日出勤が求められる
安定的な量産体制が確立するまで、生産技術職は長時間勤務が求められる場合があります。また、生産ラインの整備点検などは休日や夜間に行われることが多いため、休日出勤・夜間勤務を定期的に求められるでしょう。
・多くの部署との調整を行わなければならない
生産技術職は幅広い部署と協働が必要となります。しかし、企画・開発プロセスと製造プロセスでは中心となって関わる部署も異なり、重視するポイント・仕事のやり方などが違うことも多くあります。異なる部署の間に入り、調整を行うのも生産技術職の役割であるため、板挟みになることもあります。
・生産拠点に合わせ、出張・転勤が求められる
製造部門は本社から離れた場所に設置されていることも多く、生産拠点が全国、時には海外にも点在している場合もあります。そのため、生産技術職も必要に応じて出張や転勤が求められます。
転職しやすいという強みも
生産技術職のもうひとつの強みとして、業務範囲が広いがゆえに異業種に転職しやすいことがあります。生産技術職で身につけたスキルは、そのまま生産管理や企画・設計に活かせます。また、調整力や他部署との協働の経験は、製造技術系のコンサルタントなどにも活きるでしょう。
生産技術職のキャリアプラン
生産技術職の代表的なキャリアプランを紹介します。
入社5年目まで
生産技術職として入社すると、ほとんどの場合、製造現場である工場に配属されます。数週間から半年程度のOJTを受けながら、基本的な製造技術を学ぶのが一般的な流れです。その後、生産ラインに加わったり、工程管理を学んだりしながら、1年目ごろから徐々に新製品の生産工程に参加します。
実務経験を重ねながら必要な技術やスキルを身につけ、3年をめどに一人前の生産技術者になります。またCADや情報処理技術者などのさまざまな資格を取ることで、生産技術者としてより一層のステップアップも図れます。他部署との調整が行えるよう、交渉力やコミュニケーション能力が求められるでしょう。
6年目~10年目
6年目頃から新入社員や非正規社員を指導する役割も求められるようになります。未経験の新入社員や派遣社員にも理解できるような資料の作成が求められる場合もあります。これまでの学ぶ立場・教わる立場から、中心となって業務を担いつつ指導する役割へと変化する時期です。
また、海外を含む別の生産拠点への配置転換・別の部署への移動を通じて、より重要な役割を任されるケースもあります。
資格面では、実務経験5年以上が条件となる生産技術者マネジメントスキル資格認定試験(CPE試験)のB級取得を目指すことも可能です。CPE資格を取ることで生産技術のマネジメント能力が証明できます。
10年目以降
10年目に入ると、生産技術職・企業の一員として重要な職責を担うようになります。
生産技術職として直接現場に立つよりも、部門全体を統括するなどのマネジメント業務が増えます。また、製造業の中でもゼネラリストとしての側面の強い生産技術職は、経営者としての視点も持ち合わせるようになります。そのため、経営陣に入ることを目標としたキャリア形成を考えるのもこの時期です。
生産技術職に向く人・向かない人
生産技術職に興味はあるけれども、自分が向いているかどうか不安な人もいるでしょう。ここでは、向く人と向かない人に焦点を当て、その特徴を見ていきます。
生産技術職に向く人の5つの特徴
生産技術職に向く人は、次の5つの特徴を備えている人です。
・ものづくりが好き
ものづくりが好きで興味がある人にとって、生産技術は重要な選択肢です。実際に手を動かすことが好きで、さまざまな工夫を重ねられる人であれば、生産・製造現場の仕事にも積極的に取り組めるでしょう。
・計画を立ててものごとに取り組むのが好き
生産技術職に向いているのは、ものづくりに関連して段取りを立てたり、計画を練ったりするのが好きな人です。「〇〇するためには、これと、これを用意しなければならない、そのためには、まず〜をして、次に…」と作業工程を思いつくタイプの人は、生産技術職にうってつけです。
・逐次報告が苦にならない
生産技術職にとって絶対に必要なのが、進捗状況・現状・課題点などを逐次報告し共有することです。報告がおろそかになると全体の工程の中で、作業が現在どの段階にあるのか、チームメンバーや他部署の人が把握できません。最悪の場合、報告の遅れが事故につながるケースもあります。面倒がらず、逐次報告できるというのも、重要な資質です。
・学ぶことに意欲がある
現代はさまざまな技術が、ものすごい勢いで進化しています。新しい技術・情報に興味を持ち、積極的に学んで身につける意欲の高い人が生産技術職に向いているといえます。
・コミュニケーション能力がある
生産技術職に求められるコミュニケーション能力とは、巧みな話術・雄弁さを指しているわけではありません。自分の考えを明確に伝え、「相手の意図を正しく把握する」「理解できない時は質問する」「意見が対立したら双方が納得できる落としどころをさがす」などコミュニケーションを通じた課題解決能力です。
生産技術職だけでなく、その他の職種でも求められる能力については次の記事で説明されています。こちらも参考にしてください。
生産技術職に向かない人の5つの特徴
生産技術職に向かないのは、次の5つの特徴を持っている人です。
・早く結果を求める
生産技術職は新製品の開発から量産・出荷という長いプロセスに関わる仕事です。そのため、最終的な結果が出るまで粘り強く試行錯誤を繰り返さなければなりません。良い・悪いなどの結果がすぐに出ないとイライラしてしまうような人は、生産技術職には向いていないでしょう。
・段取りを立てるのが苦手
あらかじめ段取りを立てて進むのが好きなタイプの人だけではありません。臨機応変にものごとを進めるのが好きなタイプの人もいます。後者のタイプは、クリエイティブな場では真価が発揮できても、生産技術職に向かない可能性があります。
・規律よりも自由を求める
生産技術職の現場では細かい段取りや手順が設けられ、1ステップずつ確実に進めることが求められます。自分なりのやり方でものごとを進めたり、自由にやりたいと考えたりする人は、生産技術職には不向きかもしれません。
・手先が不器用
生産・製造現場ではある程度の手先の器用さが求められます。機械・デジタル化がなされていても、手作業の分野はなくなりません。正確な技術力が求められる生産技術職や製造現場では、手先の不器用さはハンデになりえます。
・完璧主義者
量産化にともない、製品のばらつきは出てしまいます。また、コストとの兼ね合いで、ねらいの品質通りの製品は達成できない場合もあります。そのため、生産技術職ではより良い品質を求めると同時に、一定程度の許容範囲も定めます。「納得いくまで作りこみたい」「製品の質に満足できない」という完璧主義の傾向がある人は、息苦しく感じるかもしれません。
生産技術職に就くには?
生産技術職に就くための具体的な方法を紹介します。
生産技術職に進みやすい学部
生産技術職では電気工学や機械工学の知識が求められますが、その企業のコア業務に関する知識は、OJTが用意されていることがほとんどです。そのため、生産技術職の多くは、特に学部が指定されていることはありません。
しかし、食品・医薬品メーカーなどの生産技術職では、志望する業界によって専門的な知識が必要となる場合もあります。企業によっては募集する人材の学部が指定されている場合もあります。
まずはメーカーのインターンシップに参加してみよう
生産技術職は業界や企業によって仕事内容が異なります。まずは志望業界を決め、インターンシップに参加してみましょう。企業によっては生産技術職のインターンシップを指定して行っているところもあります。生産技術の現場をぜひ体験してください。
生産技術職の募集がない場合でも
志望する企業が生産技術職を募集していない場合でも、エンジニアなどで就職した後に希望を出し、配置転換によって生産技術職に就く方法もあります。
以下の記事は、当初は研究開発職を志望していたけれども、途中で生産技術職に志望を切り替え、見事内定を勝ち取った人のエントリーシートや体験談が語られています。ぜひ参考にしてください。
トヨタ自動車株式会社_生産技術職_採用選考最終選考通過(内定)のES ・本選考体験談
生産技術職:ものづくりに興味があれば挑戦してみよう(まとめ)
本記事では生産技術職とはどのような仕事なのか、やりがいやキャリアプラン、向く人、生産技術職に就く方法など、さまざまな観点から生産技術職を説明しました。
製品の開発から量産・出荷まで、ものづくりのプロセス全般に関与して製品の質と付加価値を高める生産技術職は、ものごとを俯瞰的に見て計画的に進めることが得意な理系就活生にとってぴったりの職業です。ものづくりの土台を作る生産技術職をぜひ検討してください。
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