長所・短所は、面接で聞かれることの多い質問です。それは短時間で就活生が「どんな人なのか」「共に仕事ができる人間性を備えているのか」を、ある程度まで理解できる質問だからです。だからこそ、就活生も自己PRとして長所・短所をうまく伝える必要があります。
しかし、長所に比べて短所を伝えるのは、簡単ではありません。仮に、「私の短所は面倒くさがりなところです」と答えたらどうでしょうか? 自己PRの場で「面倒くさがり」と回答するのですから、面接官は「こんな学生を採用して、きちんと働いてくれるだろうか?」と不安に思うでしょう。実際に「面倒くさがり」な面があったとしても、もっとうまく伝える必要があります。
本記事では、自己PRで自分がどんな人間か、短所の適切な伝え方を文例とあわせて紹介します。
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自己PRで短所はなぜ書くべきなのか?
「自己PRで自分の短所を書くのは気が引けるな」「企業に悪い印象を与えるのではないか」と感じている人もいるかもしれません。
しかし、自己PRでは長所だけでなく短所も書かなければならないのには、次の4つの理由があります。
人間性を伝えられる
短所のない人はいません。しかし、自分の強みや長所をアピールしたい自己PRの場では、できれば短所は隠しておきたいもの。そんな場面で、自分の短所を率直に認め、正直に打ち明ける人からは、自分に誠実に向き合い、謙虚にそれを認める人間性が伝わってきます。
自己分析をしっかりしていると伝えられる
企業にとって、採用は多くのリソースを投資して行う重要な事業です。だからこそ、しっかり自己分析をし、自分の志望や適正を把握したうえで、自社を選ぶ就活生を求めています。自分自身の短所を把握し、それをどのように補っているかを述べる就活生であれば、「自分を深く知り、向上心を持っている」と期待するでしょう。
短所をどのように克服しているかを伝えられる
短所を書く場合には、かならず短所とあわせて「どのように克服しているか」も書きましょう。それによって、社会人基礎力の重要な2つの要素を備えているとアピールできます。
経済産業省が提唱する「社会人基礎力」の「3つの能力」として、次の能力が挙げられています。
- 前に踏み出す力
- 考え抜く力
- チームで働く力
「短所を発見する力」は「考え抜く力」の要素である「課題発見力」に通じます。また、短所を克服するためには「前に踏み出す力」の「主体性」の要素が求められます。「自分の短所をどのように克服しているか」を通じて「社会人基礎力」の2つの要素を備えていることを伝えられるのです。
企業文化に合致していると伝えられる
企業は完璧な人材ではなく、課題に対処し、改善しようとする人物を求めています。自分の短所を率直に伝え、企業文化に即してその克服方法を伝えることで、企業文化に合致していることをアピールできます。
自己PRで書く短所を見つけるコツ
自分の性格は、意外に自分では見つけにくいものです。できないことや苦手なことを「短所」と誤解する場合も少なくありません。ここではまず、自分の短所を把握するためのコツを紹介します。
自分史やツールを活用して自己分析を行う
過去の経験を振り返り、うまくいかなかったことやしっぱいしたことをピックアップしてみましょう。その原因となったのは、自分のどのような傾向や性格の癖だったのかを考えます。
自分での振り返りが苦手な人は、エニアグラムやストレングスファインダーなどのツールを使って客観的な指標を参考にするのも良いでしょう。
自己分析の詳しいやり方については、次の記事でも紹介しています。参考にしてください。
家族や親しい友人に聞く
自分の考える短所と、自分と長年一緒に過ごしてきた家族や友人の考える短所が異なっていることも、よくあります。自分の気づかない自分の短所は、「外から見た自分の姿」であり、面接官も同様の印象を抱いている可能性が高いのです。自己分析と一緒に、親しい人から見た自分の短所もかならず聞いておきましょう。
自分の長所から分析する
「明るい」という長所は、「騒がしい」という短所にも通じます。「考え深い」人が「判断が遅い」ことも少なくありません。同じ性格が、時と場合によって長所にもなれば短所にもなるものです。
「これが自分の長所だ」と思うポイントが見つかったら、その長所が別の場面で短所になることはないかを分析し、どのような言葉で表現すればいいか、考えてみましょう。
自己PRの短所で書くべきポイント
自分の短所が見つかったら、次は自己PRの文章に落とし込みます。短所を書く際に、かならず盛り込んでおくべき3つのポイントを紹介します。
長所と合わせて「どんな人か」が伝わるように
先述のように、採用担当者は限られた時間の中で、就活生がどんな人かを把握しようとしています。就活生の側も、長所・短所がそれぞれ関連しあい、1人の人間として像を結ぶように、長所と短所を言語化します。
短所の内容、エピソード、改善策のセットで
- 短所の内容と言い換え
仮に、「私の短所は優柔不断なところです」と短所だけを挙げたとします。これだと「優柔不断」というだけで、「どんな人なのか」「どのように優柔不断なのか」がまったく相手に伝わりません。さらに、「そんな優柔不断な人には重要な決定は任せられない」と思われてしまいます。
「優柔不断」といっても、多くの人はつねに優柔不断なわけではありません。最初に短所として「優柔不断」という言葉を思いついたとしたら、その背景にはどんな経験があったのかを考えます。そこで短所をストレートに表現するのではなく、「〇〇の傾向がある」や「〇〇に課題がある」のように言い換えます。
自分の過去を振り返り、「優柔不断というよりも、いろいろ考えすぎてなかなか決定できなかったんだな」という結論が出たら、「優柔不断」を「慎重に考えすぎる傾向がある」と言い換えます。
- エピソード
次に、自分がそのように感じたり、行動した場面をエピソードにまとめます。上記の例であれば、たとえば「研究室選びに迷い、いろいろ考えすぎてしまってぎりぎりになるまで決められなかった」などのように具体的な場面が伝わるように作成します。
- 改善策
短所を書くうえでかならず盛り込みたいのは、その短所をどのように克服しようとしているのかという改善策です。「慎重に考えすぎる傾向がある」であれば、「自分一人であれこれ考えるのではなく、その分野に詳しい人のアドバイスを参考にするようにしている」などを盛り込みます。
仕事と関連したものを
企業が知りたいのは、就活生が「自社の仕事をきちんとできるか」「自社の一員として、協力して仕事ができるか」という点にあります。例えば技術系の企業の面接で、「子供が苦手です」などは、ほとんど意味がなく、逆に「なぜそんなことをいうのだろう?」と疑問に思われるかもしれません。
なお、短所と仕事を関連づけるためには、企業研究が欠かせません。企業研究については次の記事も参考にしてください。
自己PRでの短所の書き方~パターン別文例紹介
ここではありがちな短所を「性格に由来するもの」「行動に由来するもの」に分けて、文例を挙げます。
性格に由来するもの
性格に由来するものとして、ここでは次の3つの例を紹介します。
- ・人見知り
- ・頑固
- ・あがり症
【文例1】人見知り→コミュニケーションに課題
私はコミュニケーション面で、初対面の人とうまく話せないという課題があります。以前、ある授業で共同研究をする機会がありました。チーム全員が初対面で、最初のうち、私はなかなか自分から積極的に話せませんでした。しかし、その分、人の話に真摯に耳を傾け、自分から進んで議事録を作成し、全体化しました。次第にメンバーとも打ち解け、研究もうまくいったのですが、「最初はとっつきにくい人かと思った」とも言われてしまいました。そこで、私は周囲に「とっつきにくい」という印象を与えないように、聞いているときはあいづちをうったり、笑顔で挨拶するように気を付けています。
【文例2】頑固→柔軟性に欠ける傾向
私の短所は柔軟性にやや欠ける傾向があることです。研究でも日々の筋トレでも、ひとたび自分がやろうと決めたら、よほどの事情がない限り、毎日かならずやり遂げます。その反面、柔軟性に欠けているために失敗したこともあります。過去、プロジェクトの締め切りが間近に迫っているにもかかわらず、自分のやり方を変更することを良しとせず、そのまま押し通したのです。その結果、締め切りに間に合わず、指導教官から「完成度は高くても、期限に間に合わなければ評価はできない」と言われてしまいました。そこから学んだのは、プロジェクトでも研究でも計画を立て、優先順位をつけることでした。タイムマネジメントの重要性を認識し、柔軟性を身につけるよう努力しています。
【文例3】あがり症→緊張しやすい傾向
私の短所は緊張しやすい傾向があることです。初めて学会発表の機会が与えられた時は、緊張のあまり、逃げ出したくなりました。しかし、自分にとって成長の機会だからこそ緊張するのだと気づきました。そこで、この発表を通してなんとか成長してやろうと考え、資料を入念に作成し、発表の練習も繰り返し行いました。当日は、直前まで緊張で足がガクガクしていましたが、本番では練習の通りにやることに集中し、最後までやりきりました。その後、プレゼンや発表の機会を積極的に求め、少しずつ人前で話すのにも慣れるようにしました。この経験から得た教訓を通じて、私は意図的に新しい挑戦を受け入れ、緊張を克服するための実践を続けています。
行動特性に由来するもの
行動特性に由来する短所として、ここでは次の3つの文例を紹介します。
- ・失敗をいつまでも引きずってしまう
- ・人目が気になってしょうがない
- ・遅刻が多い
【文例4】失敗をいつまでも引きずってしまう→気持ちの切り替えが遅い傾向
私の短所は、気持ちの切り替えが遅い傾向があることです。高校時代、私は野球部に所属していたのですが、公式戦で私のミスが失点につながったことがありました。監督もコーチも「気にするな、次で取り返そう」と声をかけてくれたのですが、「失敗した」と落ち込んだ気持ちを立て直すことができず、結局その後、集中して打席に立てませんでした。時間の経過とともに、自分を責める気持ちが強くなり、部活に行くのさえ嫌になりました。そんな時、たまたま友人が撮っていたビデオを見て、自分のフォームに問題があったことに気づきました。それからフォームの矯正に徹底的に取り組んだ結果、守備でミスをすることもなくなりました。今でも気持ちの切り替えは早い方ではありませんが、自分を責める代わりに、原因を分析し、次に活かすことを心がけています。
【文例5】人目が気になってしょうがない→人の意見を尊重しすぎる傾向
私は人の意見を尊重しすぎる傾向があります。ゼミ旅行の企画で、世界遺産に興味のある私は、できれば世界遺産のあるところに行きたいと思っていました。しかし、「自分の興味ばかり主張する」と思われるのではないかと気になって、みんなの意見を聞くばかりで自分からは何も言えませんでした。後になって親しい友人に「自分はいつも人の意見ばかり聞いてしまう」というと、「すごいことだよ、そんな人がいてくれるから、ケンカしないで決められるんだよ」と肯定的に評価され、短所だとばかり思っていた点が長所でもあることに気づきました。それ以来、主体的に人の意見に耳を傾けるようになり、その意見に合わせて自分の主張も少しずつですが、できるようになってきたと感じています。
【文例6】遅刻が多い→タイムマネジメントに課題
私はタイムマネジメントに課題があります。過去、課題とアルバイトが重なったために睡眠時間が確保できなくなり、授業に遅れることが重なったことがあります。その経験を通じて、月初めや週初めに予定を確認し、毎日タイムスケジュールを立てるようにしました。必要に応じて優先順位をつけることを徹底することで、タイムマネジメントの能力を向上させたいと考えています。
自己PRで短所を書く場合の注意点
自己PRで短所を書く場合に気を付ける3点を紹介します。
ネガティブなハロー効果に気を付ける
ハロー効果とは、認知バイアスのひとつで、一部の特徴に引きずられて全体を評価する人間の心理的傾向を指します。例えば、企業全体のイメージアップを狙うために社会貢献活動を行うなど、ハロー効果はさまざまな場面で活用されています。
一方、こうした良い効果を生むハロー効果だけではなく、悪い効果を生むハロー効果もあります。ネガティブな側面に焦点を当てる短所は、全体の印象を悪くしないように書き方を工夫しましょう。
【例】
怒りっぽい→ものごとを善悪で判断しがちな傾向(対策:なるべく相手の立場に立って考える)
身体的な内容は避ける
外見や身体的なことがら、健康問題など、当人にとっては対処のしようがない面は、短所には相当しません。このようなことを短所に挙げると、逆に常識を疑われることにもなりかねません。
社会人として不適切なものは避ける
「真面目ではない」「無気力なところがある」など、組織の一員として仕事をするうえで、問題になりそうなことを「短所」に挙げるのは避けましょう。
日ごろから自分の「不真面目さ」や「無気力」が短所として意識されているのであれば、就活に限った問題ではありません。原因と向き合い、根本的な解決に取り組みましょう。
自己PRの短所を面接で伝える際のポイント
エントリーシートや面接カードで書いた「長所・短所」を、実際の面接の場面で口頭で伝えるときの注意点を紹介します。
言葉選びとトーンを意識する
文字に書かれた言葉から受ける印象と、対面で話す言葉から受ける印象は異なります。短所を口頭で説明する場合は、過剰に自己嫌悪感を示さないように、気を付けましょう。一方、軽くなりすぎると誠実さを欠いてしまいます。バランス感覚を持ちながら、自分らしさを保ちつつ伝えることが大切です。
具体例とエピソードを交える
エントリーシートや面接カードの欄は限られているため、具体例やエピソードが書けないこともよくあります。そのため、面接の場では簡潔かつ具体的なエピソードや例を用いて説明することが重要です。これにより、文字上ではありふれた短所でも、自分の経験や行動からくる洞察が伝わり、他の就活生と差別化を図りやすくなります。
ポジティブな視点を強調する
短所を述べる際でも、その短所を克服するための努力や学びを強調し、前向きな意欲をアピールすることが大切です。これにより、短所が成長の機会であることを印象づけることができます。
自己PR、短所を通してあなたの人柄を伝えよう
本記事では自己PRで書くべき短所の見つけ方や書き方を紹介しました。また、短所をストレートに伝えるのではなく、仕事に関連させ、ポジティブに書く方法も、例文とともに紹介しています。あわせて面接での短所の伝え方も説明しています。
短所を伝えるためには、まず自分自身の短所を知ることが大切です。自分の性格は、自分でも把握しづらく、「これが短所だ」と思っても、周囲の人が持っている印象とは異なる場合があります。保護者や友人など、身近で自分のことをよく理解してくれている人の意見も参考にしながら、短所の伝え方を考えてください。
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