新卒の通年採用とは?メリット・デメリットと成功させるポイントを解説

新卒の通年採用についてメリットとデメリットを解説

新卒採用では売り手市場が続いているため、計画通りに採用が進まず苦労している担当者も多いのではないでしょうか。限られた人員と時間をフルに投入しても、なかなか目標とする人数を確保できないという声をよく聞きます。

そんなときに検討したいのが、新卒の通年採用です。通年採用なら、今まで学業や部活動、留学等の事情で接点が持てなかった、優秀な学生に出会える可能性があります

本記事では通年採用のメリット・デメリットや、成功させるポイントについて詳しく解説します。卒業研究などで忙しい理系学生にアプローチしたいとお考えの方も、ぜひご覧ください。

通年採用とは

通年採用について解説

通年採用とは、企業が時期や期間を限定せずに年間を通して採用活動をすることです。中途採用においては以前から行われてきましたが、最近は新卒採用でも行われるようになってきました。通年採用の特徴を詳しく見てみましょう。

  • 通年採用と一括採用の違い
  • 通年採用の現状
  • 通年採用が注目される背景

通年採用と一括採用の違い

これまでの新卒採用では「一括採用」が主流とされ、企業も学生も決まった時期に一斉に動いていました。具体的な就活スケジュールは経団連によって定められており、近年は3月に広報活動を解禁(エントリー受付開始)、6月に選考開始という流れでした。

一方、通年採用では広報活動や選考の時期を限定せず、年間を通して採用活動を行います。これにより、春・夏の就活が難しかった留学生や、卒業研究・部活動で忙しかった学生も採用しやすくなりました。

通年採用の現状

新卒の通年採用を取り入れる企業は、年々増加しています。リクルートが約1,200社を対象に行った調査によると、23卒の採用活動では25.5%の企業が通年採用を行っているという結果になりました。20卒では17.5%だったので、この3年で8ポイントの上昇です。

また、企業の規模別に見ると従業員が300人未満の企業では30.3%が通年採用をしていると回答しました。中小企業では3社に1社近くが通年採用を行っているというのが現状です。

引用元:就職白書2022 (recruit.co.jp)

通年採用が注目される背景

新卒の通年採用が注目される理由として、従来の一括採用が時代に合わなくなってきたことが挙げられます。少子化による人材不足やビジネスのグローバル化に対応するため、留学生なども含めて多様な人材を確保する必要が出てきました

また、従来の一括採用ではどうしても大手企業や有名企業に応募が殺到していましたが、中小企業やベンチャーは、大手との競争を回避したいのが本音です。通年採用なら大手との競合を回避できるのもメリットと言えます。

こうした背景をふまえると、今後も通年採用は増加すると予想されます。

通年採用を成功させた事例

通年採用を成功させた事例を紹介

ひとことで通年採用と言っても、その取り組みは企業によってさまざまです。ここからは、実際に通年採用を成功させた企業の事例を見てみましょう。

  • 楽天グループ株式会社
  • ソフトバンク株式会社
  • 株式会社リクルートホールディングス

楽天グループ株式会社

楽天のビジネス職(営業・企画・管理部門など)では一括採用を行っていますが、エンジニア職では通年採用を行っています。年間を通して採用活動をしているだけでなく、内定時に職種や配属するポジションを確定させているのが特徴です。

楽天は多様なサービスと職種を持つ企業なので、入社後のポジションをあらかじめ確定させることにより、卒業までに専門性を磨いてもらうという狙いがあるようです。また、エンジニア職の初任給は、新卒採用でありながら給与は個人の能力により決定することになっており、日本の企業では珍しい形式と言えます。

参考:エンジニア職 | 新卒採用 | 楽天グループ株式会社 (rakuten.co.jp)

ソフトバンク株式会社

ソフトバンクでは、挑戦する意欲のある人に広く門戸を開き、自由な時期に自己の意思で活動できることを目的として、2015年から「ユニバーサル採用」をスタートさせました。具体的には、入社時30歳未満であれば就業経験を問わずポテンシャル採用をする、入社時期は年2回(4月・10月)とする、などの特徴があります。

採用手法についても「通常採用」の他に、スポーツや芸術・コンテスト等で全国大会レベル以上の経験を持つ人だけが応募できる「No.1採用」という手法も用いています。学生が持つ専門スキルや努力のプロセスを評価するためのユニークな採用手法です。

参考:ユニバーサル採用 | ソフトバンク中途採用 (softbank.jp)

   No.1採用 | ソフトバンク新卒採用 (softbank.jp)

株式会社リクルートホールディングス

リクルートでは、2019年度からグループ9社の新卒採用を一元化し、「30歳まで応募可能な新卒採用」や「365日通年エントリー」などに取り組んでいるのが特徴です。これにより学業や部活動、留学、起業など、学生のさまざまなチャレンジを後押しすると宣言しています。

また「選考時のスーツ着用不要」、「インターンシップは大学1年生から参加可能」など、独自の採用方針を打ち出すことで他社との差別化も図っています。

参考:リクルート、国内9社の新卒採用を統合 より自由度の高い新卒採用へ(recruit-holdings.co.jp)

通年採用を成功させる3つのポイント

通年採用を成功させるポイントを解説

通年採用は、単純に1年中エントリーを受け付けていればうまくいくというものではありません。ここからは、成功させるためのポイントを3つご紹介します。

  • 学生への理解を深める
  • ターゲットを拡大する
  • 効率の良いシステムを活用する

学生への理解を深める

優秀な学生を採用するためには、個々が持つ志向やスケジュールの都合などを理解しておくことが必要です。例えば、海外志向のある留学経験者は、留学先からいつ頃帰国するのかなどの情報を把握していなければなりません。

また、将来的に転職や起業を志望する学生も多いため、自社でのキャリアをどのように考えているかの確認も大切です。学生への理解を深めると同時に、企業のことも理解してもらうことで、早期離職やミスマッチを防ぐ効果があります。

ターゲットを拡大する

新卒の採用計画を達成するためには、ターゲットとなる層を拡大することも有効です。成功事例でご紹介した企業でも、30歳までは新卒としてポテンシャル採用とするなどの対応がされています。

また、年齢以外のところでは採用エリアを拡大する企業も増えています。説明会や選考をオンラインで行えば、地方に住む学生でも移動の時間や交通費を気にせず応募できるのがメリットです。

効率の良いシステムを活用する

従来の就活市場では、春の情報解禁と同時にたくさんの合同説明会に出展し、エントリーで母集団を形成するという方法が主流でした。しかし、企業側も学生側も多様なニーズを持つようになった今、この方法だけでは必要な人数を確保できないのが現状です。

最近は学生に対して企業側からアプローチする「オファー型採用」や、既存社員などから紹介してもらう「リファラル採用」なども注目されています。過去の手法にとらわれず、自社に合った効率の良いシステムを活用することが必要です。

通年採用のメリット

通年採用のメリットを解説

新卒を通年採用すると、企業にとっては次のようなメリットがあります。

  • 多様な人材と出会える
  • 慎重に選考ができる
  • 内定辞退の補填も柔軟にできる

それぞれについて、詳しく見てみましょう。

多様な人材と出会える

通年採用を導入すると、従来の一括採用では出会えなかった学生と出会えるようになります。例えば春・夏には卒業研究や部活動で忙しかった学生、帰国していなかった留学生などです。このような事情を抱える学生の中には優秀な人材も多いため、これまでとは違った属性の学生を採用できる可能性が広がります。

慎重に選考ができる

通年採用には期限がないため、一人ひとりの学生とじっくり向き合いながら慎重に選考できるのもメリットです。

一括採用においてはどうしても締切に追われるため、短期間で何十名もの合否を決めざるを得ないことがあります。一方、通年採用では企業側がある程度スケジュールを融通できるため、個別の学生に時間をかけたり、相互理解を深めながら結論を出したりすることが可能です。

内定辞退の補填も柔軟に対応できる

売り手市場の就活においては、学生が複数の内定先から就職先を決めるため、自社の内定が辞退されてしまうことも多々あります。採用活動が一段落した段階で欠員が出るという事態は、採用担当者にとっては頭の痛い問題です。

通年採用であれば、必要に応じて追加の採用ができるため、媒体やスケジュールをイチから手配しなくて済みます。また、一括採用では一定の辞退者を見越して「多めに」「とりあえず」内定を出しておくこともありますが、通年採用なら「繰り上げ採用」のような学生を生むことがないのもメリットです。

通年採用のデメリット

通年採用のデメリットを解説

さまざまなメリットがある通年採用ですが、注意すべき点もあります。ここからは、通年採用のデメリットについても見ていきましょう。

  • 採用担当者の負担が増える
  • 採用コストが高くなる
  • すべり止めにされる

採用担当者の負担が増える

1年を通して採用活動を行うということは、当然ながら採用担当者の負担が大きくなります。特に採用担当者が労務業務、総務業務なども兼務している場合は、一括採用の時と同じスケジュールでは業務がこなせなくなる可能性が高いです。必要に応じて効率化に必要なシステムを導入する、切り分けやすい業務はアウトソーシングするなどの対策をしましょう。

採用コストが高くなる

通年採用をすると、これまでは春・夏だけだったイベントの出展や求人広告の打ち出しが、秋・冬にも発生することになり、その分コストが増加する可能性があります。また、内定の時期だけでなく入社時期も分散させる場合は、それぞれに研修を実施することが必要です。

すべり止めにされる

通年採用を導入したとしても、大手や人気企業が一括採用を行っている時期には、どうしても学生がそちらに流れてしまいがちです。学生側からすると「この企業は通年採用だからいつでも応募できる」という認識にもつながりやすく、すべり止めとして応募される可能性があります。

このような事態を避けるためには、接点を持った学生には丁寧に自社の魅力を伝え、内定後もこまめにフォローをすることなどが有効です。

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新卒の通年採用を行うと、今まで出会えなかった多様な人材に出会うことができ、慎重にじっくり選考できるなどのメリットがあります。一方で、何も準備をしないまま通年採用を導入すると、採用担当者の負担や費用だけが増え、採用数が思うように伸びないという事態にもなりかねません。

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